2024年09月09日号

(2024年09月02日~2024年09月06日)

先週の為替相場

ドル安円高優勢

 先週(9月2日-9月6日)のドル円は、週初めにドル高円安となったものの、その後ドル安円高が優勢となった。

 米国がレーバーデーの祝日で休場となった2日の市場はドル高円安が優勢となった。先々週後半の流れが継続した形。3日東京午前までドル高基調が続き、1ドル=147円21銭と8月20日以来のドル高円安となった。

 その後は株高一服もあって円買いが優勢となった。3日の経済財政諮問会議(用語説明1)に出席した植田日銀総裁が提出資料において「経済・物価見通しが実現していくとすれば、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整」と示したことも円買いにつながった。また中国景気の先行き不透明感が意識され、リスク警戒の動きが広がったことも円買いとなった。

 3日の8月米ISM製造業景気指数は7月から改善も予想を下回った。米製造業の厳しい状況が示されたことでリスク警戒の動きが広がった。

 4日の7月米雇用動態調査(JOLTS)求人件数は予想を大きく下回った。前回分も大幅な下方修正となった。この結果を受けて6日の米雇用統計への警戒感が広がり、ドル売りとなった。9月の利下げ実施自体は織り込み済みも、0.5%の大幅利下げになるのではとの思惑が広がり、ドル売りとなった。金利先物市場動向からの政策金利見通しを示すCMEFedWatchツールでは、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)について53%が0.25%の利下げ、47%が0.50%の利下げとなり、見方が拮抗する状況となった。

 さらに5日の米ADP雇用者数が予想を下回る伸びとなったことでドル売り円買いとなり、142円80銭台を付けた。同日の米ISM非製造業景気指数はほぼ横ばい。雇用が鈍化するなどの弱い面があったが、新規受注の改善などが好感されてドル売りが一服。144円20銭台までドル買いが入る場面が見られたが、すぐに143円10銭台までドル売りが入るなど、上値の重い展開が続いた。

 6日の雇用統計発表を前に神経質な動きとなり、同日東京市場で142円00銭台までドル売り円買いとなった。その後143円20銭台まで戻して雇用統計の発表を迎えた。

 8月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が予想を下回る伸びとなった。6月分、7月分も下方修正されており、米労働市場の厳しい状況が印象付けられた。失業率は予想通り4.2%に低下した。ドル円は発表前後に144円00銭を瞬間付けたものの、雇用の低い伸びをみて141円台まで急落。しかしすぐにドル買いが入り143円90銭台を付ける動きとなった。

 その後株安もあって再びドル売り円買いとなり141円78銭を付けた。少し戻して142円台前半で先週の取引を終えている。

 ユーロドルは1ユーロ=1.1050ドルを中心とした推移から、週の後半にかけてドル売りが優勢となった。

 米雇用統計前に1.1120ドル前後を付けると、米雇用統計前後に振幅。一時1.1155ドルを付けたが、その後ユーロ売りに押され1.1060台を付けている。

 ユーロ円はドル円同様に先週初めは円安が優勢となり1ユーロ=162円89銭を付けた。その後は円買いに押され、6日に157円50銭前後を付けている。

 4日のカナダ銀行(中央銀行)金融政策会合は3会合連続の利下げを実施した。声明では追加利下げの可能性に言及。ほぼ予想通りということで、イベントクリアでのカナダ買いが出ていた。

今週の見通し

 9月17日、18日の米FOMCでの利下げについては、0.25%を織り込む動きが広がっている。先週の軒並みの米指標の弱さを受けても、0.25%が大勢という状況が継続。米JOLTSの後に、0.5%利下げの期待が強まる場面が一時広がったが、その後落ち着いてきている。

 こうした流れから積極的にドルの安値圏を売りに行く動きにはならないとみている。もっとも、今月のFOMCが0.25%利下げにとどまったとしても、今後の利下げペース加速への期待が続いている以上、上値も限定的か。

 ドル円は調整を交えつつ、中期的にドル安円高を試す展開と見ている。

 ユーロは木曜日のECB理事会次第。利下げ自体はほぼ確定的。今後の利下げペースについてのヒントが声明などで出てくるかどうか。米国ほど利下げに積極的ではないとの印象が強まると、ユーロ高ドル安となりそう。

 対ドルではユーロ高となる可能性も、円高の勢いが勝りそうで、ユーロ円はドル円同様に円高方向を意識する展開か。

用語の解説

経済財政諮問会議 内閣府設置法によって定められた経済財政の重要な政策を審議する会議。首相が議長を務め、内閣官房長官、経済財政担当大臣が常設議員となることが法で定められており、財務大臣、総務大臣、経済産業大臣などの閣僚、日銀総裁などがメンバーとなる。
米雇用動態調査(JOLTS) 米労働省労働統計局(BLS)による雇用に関する統計の一つ。一般的な雇用統計が労働者側からの統計であるのに対し、採用側から見た統計となっている。最も注目度の高い求人件数のほか、求人率、採用数、採用率、離職者数、離職率なども発表される。

今週の注目指標

米大統領候補者討論会
9月11日10:00
☆☆☆
 トランプ共和党大統領候補とハリス民主党大統領候補による初の公開討論会が10日(日本時間11日午前10時)にフィラデルフィアで実施される。6月に行われたトランプ氏とバイデン大統領との討論会で、バイデン氏が精彩を欠いたことが、民主党候補の交代につながったとみられるなど、重要なイベントとなっている。米メディアABCニュースが主催し、同局の「ワールドニューストゥナイト」のアンカーであるミュアー氏と「ニュースライブプライム」のアンカーであるデイビス氏が司会を務める。2回のCMを挟み90分で行われる。会場に聴衆は入らない。
 トランプ氏とハリス氏の支持率は拮抗しており、混戦州と呼ばれる州の状況次第でどちらが勝利してもおかしくない。討論会の結果、情勢が一方に傾くと相場にも影響が出るとみられる。基本的にトランプ氏優勢でドル買い、ハリス氏優勢でドル売りと見られている。
米消費者物価指数(CPI)(8月)
9月11日21:30
☆☆☆
 米FOMCを前に、物価動向が注目される。米FRBの2大命題(デュアルマンデート)は物価の安定と雇用の最大化。物価の安定がなければ、大幅な利下げは難しい。
 前回7月のCPIは前年比+2.9%と4カ月連続で物価が鈍化。2021年4月以来の3%割れとなった。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数は前年比+3.2%とこちらも4カ月連続の鈍化となった。内訳をみると、ガソリン価格の低下(-2.2%)を受けて、エネルギー全体も+1.1%と低い伸びとなり、全体を押し下げた。コア部門では自動車価格の低下が目立ち、新車が-1.0%(6月-0.9%)、中古車は-10.9%(6月-10.1%)と厳しい状況を示した。中古車は2023年3月以来の下落率となった。CPI全体を100としたとき36.2%を占める大きな項目である住居費は+5.1%となり、6月の5.2%からは鈍化も、かなりの高水準。医療サービスが+3.3%と6月と同水準で全体よりも強めの伸びを維持。自動車保険が+18.6%と6月の+19.5%からは鈍化もかなり高い水準ということもあり、同部門を含む輸送サービスが+8.8%となった。
 今回の予想は前年比+2.6%と、大幅鈍化が見込まれている。もっともコアは+3.2%と横ばい見込みとなっている。
 米国ではガソリン価格が7月から8月にかけて低下しており、これがCPIにも影響するとみられている。米エネルギー庁エネルギー情報局(EIA)調査での全米全種平均の小売価格は7月の1ガロン当たり3.600ドルから3.507ドルへ2.6%の低下となった。なお、2023年は7月の3.712ドルから8月は3.954ドルに上昇。前年比で見た場合、比較対象元が上昇しているにもかかわらず、価格が低下しており、前年比での大きなマイナスになると見込まれている。EIAの数字は全米平均のため、都市部平均であるCPIとは水準が若干異なるが、EIAベースでは7月の前年比-3.01%から8月は-11.3%まで低下している。
 ただ、ガソリン価格の低下は中東情勢など景気動向以外の側面が大きい。コアの横ばい見込みがより注目を集めるとみられる。コアが予想外に鈍化した場合、大幅利下げへの期待が強まりドル売りにつながる可能性がある。ドル円は140円台に向けた動きが見込まれる。
ECB理事会
9月12日21:15
☆☆☆
 ECBは6月の理事会で4年9か月ぶりとなる利下げを実施した。7月の理事会では据え置きとなったが、今回は利下げ再開が見込まれている。
 今月2日にカザークス・ラトビア中銀総裁が追加利下げの可能性を示唆。4日にはチポローネECB専務理事が、インフレの鈍化などを受けて「制約的な政策を引き続き緩和できることに期待」「スタンスが制約的になりすぎるという現実的なリスクがある」などと発言しており、ECB理事会メンバーからの追加利下げへの姿勢が示されている。
 市場は預金ファシリティ金利を0.25%引き下げて3.50%にするという見方でほぼ一致している。なお、3月に発表された政策金利の運営見直しにより、預金ファシリティ金利とリファイナンスオペ金利の金利差が0.15%に縮小されることが決まっており、リファイナンスオペ金利は現行の4.25%から3.65%に、限界ファシリティ金利は4.50%から3.90%に引き下げられる見込みとなっている。
 0.25%の利下げは織り込み済みで、市場の注目は今後に向けた声明やラガルド総裁の会見となっている。市場の見通しは10月の理事会について、据え置きと利下げが拮抗。10月を見送った場合でも12月には利下げ、10月に実施した場合は12月を見送り、今回を除き年内はあと一回の利下げとなっている。声明で今後の景気動向により慎重な姿勢が示され、追加利下げ期待が広がるとユーロ売りとなる。ユーロドルは1.09台に向けた動きが見込まれる。

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