2024年09月17日号

(2024年09月09日~2024年09月13日)

先週の為替相場

FOMCにらみ、ドル安円高やや優勢

 先週(9月9日-9月13日)のドル円は、方向感のはっきりしない展開から、週の後半にかけてドル安円高が優勢となった。

 先週(9月3日-9月6日)に1ドル=147円21銭から141円78銭まで下げたドル円は、142円30銭台で週の取引をスタ-トすると、いったん141円台を試したものの、すぐにドル買いが優勢となった。6日の米雇用統計は雇用者数の伸びが予想を下回る弱い結果となったが、17日、18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.5%大幅利下げの期待がそれほど高まらず、0.25%が大勢という状況が維持された。これを好感したドル買いが入り、143円80銭前後を付けた。

 その後143円00銭を挟んでの推移を経て、10日の海外市場でリスク警戒の円買いが広がった。中国貿易統計の弱さから、原油需要の減退懸念につながり、NY原油先物が大幅安となったことなどが警戒感を誘った。日本時間11日午前10時からの米大統領選候補者討論会を前にした警戒感もあり、142円00銭台を一時付ける動きとなって討論会を迎えた。

 討論会では最中からドル売りが優勢となった。直後の世論調査で、討論会では民主党候補のハリス副大統領が勝利と見た視聴者が多かったように、討論会はハリス氏が優勢との見方が強く、ドル売りにつながった。

 ドル円は討論会の最中に8月5日に付けた直近安値141円70銭前後を割り込むと、その後もドル売りが進み、年初来安値を割り込んで140円71銭を付けた。日銀審議委員の中では利上げに慎重なハト派と見られている中川審議委員(用語説明1)が、今後の利上げに言及したことなども円買いにつながった。

 ドル安一服後の買い戻しを経て、11日の米消費者物価指数(CPI)で食品とエネルギ-を除くコア指数の前月比が予想を上回る伸びとなったことで、ドル高となった。ドル円は142円50銭台を付けたが、ダウ平均が序盤に大幅安となったことで一転してドル安円高となり、141円20銭台まで大きく下げた。

 米株の買い戻しが入ると、一転してドル買いとなり、12日には143円00銭台を付けた。その後少しドル売りが入って142円台を中心とした推移を経て、12日米国市場で米WSJ紙のFRB担当記者ニック・ティミラオス氏(用語説明2)の記事を受けてドル安となった。同氏はFRB当局者は0.25%と0.50%の利下げを決めかねていると指摘。米CPIなどを経て0.25%でほぼ決まりとの見方が広がっていた市場は、大幅利下げの可能性を改めて認識する形でドル売りとなった。

 13日に入ってもドル安の流れが続き、140円29銭を付けている。

 ユ-ロドルは6日の米雇用統計後のドル安局面で1ユ-ロ=1.1150ドル超えでのユ-ロ買いに慎重姿勢が見られ、その後下げて1.1100ドルを割り込むと、同水準が上値を抑える形となったことで、週前半はユ-ロ安が優勢となった。

 11日に1.1002ドルを付け、12日にも1.1006ドルを付けたが、1.1000割れを果たせず。週後半の米紙報道を受けたドル売りに1.1100ドル台を付けている。

 12日のECB理事会は市場予想通り0.25%の利下げを実施。声明などもおおむね想定通りとなった。四半期に一度示されるECBスタッフ予想では成長率見通しが引き下げられたが、インフレ見通しが据え置かれたことで、積極的な利下げは難しいとの見方から、ユ-ロ買いを支えた。

 ユ-ロ円はドル主導の展開の中、やや不安定な動き。リスク警戒の円買いもあり、11日に1ユ-ロ=155円40銭台を付けた。その後対ドルでのユ-ロ買いもあって157円50銭台まで一時上昇したが、週末にかけてのドル円の下げに155円60銭台を付けている。

今週の見通し

 9月17日、18日の米FOMC次第の展開。約4年半ぶりの利下げ実施自体は織り込み済み。焦点は利下げ幅となっている。雇用の弱さが大幅利下げ期待につながる一方、物価の鈍化がゆっくりとなっており、最初の利下げは0.25%からという見方も強い。

 また、今回は四半期に一度示されるFOMCメンバ-による経済・物価見通し(Summary of Economic Projections)が発表される回にあたっている。その中でも各メンバ-の政策金利見通しを示すドットプロットの状況次第で、今回だけでなく、今後の利下げペ-スの見通しが変化することで、相場にも影響が出てくる。

 今回の決定が0.25%利下げであればドル買い、0.50%利下げであればドル売りの反応を基本として、ドットプロットの状況、声明やパウエル議長会見の内容次第で方向性が決まる。

 今回の方向性はこれから年末にかけての大きな流れにつながる可能性があるだけに、FOMCまでは動きにくく、FOMC後はその結果次第となる。

 流れ的にはややドル安円高方向か。ドル円は138円に向けた動きを予想している。

 ユ-ロドルは1.1200前後の売り意欲が継続しているが、流れ的には上方向。ECBの利下げペ-スがゆっくりとしたものになるとの見方が広がる一方で、米国の積極的な利下げ継続が見込まれていることで、ユ-ロ買いドル売りが出やすい地合い。

 ユ-ロ円はドル主導の展開でやや不安定も、ドル円同様に流れはやや下方向か。

用語の解説

中川審議委員 中川順子日本銀行政策委員会審議委員。野村証券出身で、野村ホ-ルディングス執行役員、野村アセットマネジメントCEO兼代表取締役社長、代表取締役会長などを経て、令和3年6月30日より同職。利上げに慎重なハト派と市場で認識されている。
ニック・ティミラオス氏 ニック・ティミラオス(Nick Timiraos)氏は米経済紙WSJのFRB担当記者。米国を代表する経済紙であるWSJのFRB担当記者はFRB関係者との強いパイプがあることで知られている。FOMC関係者は会合の前々週土曜日からブラックアウト期間として金融政策に関する発言が出来ないこともあり、市場の混乱を抑えるための情報提供として同記者などを利用しているとの憶測があることもあり、FOMC前の同記者の記事は注目されている。

今週の注目指標

米小売売上高(8月)
9月17日21:30
☆☆☆
 米国はGDPの約7割が個人消費となっており、個人消費動向が景気に密接に結びついている。そのため今回の小売売上高の結果は、今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ幅の決定にも影響を及ぼす可能性があり、注目を集めている。
 市場予想は前月比-0.2%と前回の+1.0%から一転してマイナスの予想となっている。前回強かった分の反動に加え、ガソリン価格の低下を受けたガソリンスタンド売り上げの低迷や、自動車販売の厳しい数字が見込まれている。8月の自動車販売は新車販売台数が7月から増加する見込みとなっているが、CPIを確認すると、新車価格が6カ月連続、中古車価格が22カ月連続で前年比マイナス圏と厳しい状況となっており、売上高ベ-スでは厳しい数字が見込まれている。
 なお、自動車を除く前月比は+0.2%と7月の+0.4%から小幅鈍化見込み。自動車とガソリンを除いたコア指数は前月比+0.3%と8月の+0.4%には届かないものの、比較的しっかりした伸びが見込まれている。
 予想を下回る弱さを見せると、FOMCでの大幅利下げの期待につながり、ドル安となる可能性が高い。ドル円は139円台トライが見込まれる。
米連邦公開市場委員会(FOMC)
9月19日03:00
☆☆☆
 17日、18日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。2020年3月に新型コロナのパンデミックを受けて政策金利を事実上のゼロまで引き下げて以来の利下げ実施がほぼ確実で、焦点は利下げ幅となる。
 もともと今回のFOMCに関しては0.25%の利下げ見通しが大勢となっていた。しかし、物価の鈍化、雇用市場の予想以上の後退などを受けて大幅利下げを見込む動きが一部で広がった。特に4日に発表された7月のJOLTS(雇用動態調査)求人件数が予想をはるかに下回る767.3万件となり、6月の数字も818.4万件から791.0万件まで下方修正される弱いものとなったことで、一時0.25%と0.50%の利下げ見通しが拮抗する状況となった。ただ、行き過ぎた緩和期待への警戒感もあって、その後0.25%利下げ見通しが優勢となり、6日の米雇用統計で非農業部門雇用者数の伸びが予想を下回っても、大きな流れは変わらず65%が0.25%利下げ、35%が0.50%の利下げを見込む動きが見られた。11日の8月米消費者物価指数はほぼ予想通りも食品・エネルギ-を除くコア前月比が+0.3%と予想の及び7月分の+0.2%を上回った。これを受けて大幅利下げ期待がさらに後退。85%が0.25%見込み、15%が0.50%見込みと、0.25%をほぼ織り込む動きとなった。
 しかし12日海外市場で状況が一変した。米WSJ紙のFRB担当記者がFRB当局は今回のFOMCについて0.25%と0.50%で利下げ幅を決めかねていると報じた。13日には前NY連銀総裁のダドリ-氏が0.50%利下げの可能性に言及した。これらの報道を受けて0.5%利下げの見通しが台頭。0.25%利下げ見通しが過半数を維持しているものの、0.5%利下げ見通しが40%台まで上昇している。
 見通しが分かれている分、どちらになった場合でも相場への影響が見込まれる。0.25%利下げの実施でドル買い、0.50%利下げの実施でドル売りの反応となりそう。
 また、今回は四半期に一度示されるFOMCメンバ-による経済見通し(SEP)が公表される回となっている。特に年末時点での政策金利見通しをドットで示すドットプロットが注目されている。前回6月のドットプロットでは2024年末の政策金利見通しについて、4.75-5.00%が8名、5.00-5.25%が7名、5.25-5.50%が4名となり、5.00-5.25%が中央値となった。2025年末は2.75-3.00%が1名、3.50-3.75%が1名、3.75-4.00%が2名、4.00-4.25%が9名、4.25-4.50%が4名、4.75-5.00%が1名、5.25-5.50%が1名と上下に大きなブレを見せ、中央値は4.00-4.25%となった。これに対し、現在米短期金利市場や金利先物市場では2024年末について4.00-4.25%と4.25-4.50%が拮抗(若干4.00-4.25%が優勢)、2025年末時点では2.75-3.00%が大勢という状況となっている。前回のSEPと大きな乖離が生じており、どこまでこの乖離が調整されるのかがポイントとなる。今後の大幅利下げ期待が強まるようだとドル売り。ドル円は138円台に向けた動きが見込まれる。
日銀金融政策決定会合
9月19、20日
☆☆
 7月に追加利上げを実施した日銀金融政策決定会合であるが、今回は据え置きが見込まれている。
 ここにきて日銀審議委員からはタカ派・ハト派を問わず今後の利上げに向けた姿勢が示されている。ただ、いずれも経済・物価が見通し通り進めばという前提に立っており、今回は状況を確認する期間として、据え置きで見通しが一致している。波乱要素は少ないと考えられる。

auじぶん銀行外貨預金口座をお持ちのお客さま

ログイン後、外貨預金メニューからお取引いただけます

免責事項

本レポートは株式会社時事通信社が提供しています。また本レポートの内容は、株式会社時事通信社が提供する情報をもとに、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが執筆しています。本レポートは、情報提供のみを目的にしたもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。投資決定に当たっては、投資家ご自身のご判断でなされますようお願いいたします。株式会社時事通信社、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドおよび情報提供元は、本レポートに記載されているいずれの情報についても、その信頼性、正確性または完全性について保証するものではありません。また本レポートに基づいて被った損害・損失についても何ら責任を負いません。本レポートに掲載されている情報の著作権は、株式会社時事通信社および株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに帰属します。本レポートに掲載されている情報を株式会社時事通信社の許諾なしに転用、複製、複写等することはできません。

Copyright(C) JIJI Press Ltd. All rights reserved.

auじぶん銀行からのご注意

  • 本画面に掲載されている情報は、auじぶん銀行の見解を代弁したものではなく、auじぶん銀行がその正確性、完全性を保証するものではありません。

以上の点をご了承のうえ、ご利用ください。