2024年09月30日号

(2024年09月23日~2024年09月27日)

先週の為替相場

週後半に向けて円安進行から、一気に円高へ

 先週(9月23日-9月27日)のドル円は、週の後半にかけてドル高円安となったが、一気に円高が進むという展開になった。

 先週前半は1ドル=144円00銭を中心としたレンジ取引となった。日本市場が秋分の日で休場となった23日、欧州朝に発表されたユーロ圏やドイツの購買担当者景気指数(PMI)が市場予想を下回る弱さを見せたことで、ユーロ円などでユーロ安ドル高となり、ドル円も上値が重くなった。143円10銭台を付けたものの、ドル売りに勢いが見られず、その後144円台を回復。

 少しポジション調整のドル売りが入って143円台後半で迎えた24日の市場では、植田日銀総裁が大阪経済四団体懇談会で「政策判断に時間的余裕がある」と、市場の早期利上げ期待を牽制する発言を行ったことで円売りとなり、中国の景気支援への期待からのアジア株高を受けたリスク選好の円売りもあって144円60銭台までドル高円安となった。

 その後はドイツIfo景況感指数の弱さなどを受けたユーロ売り円買いなどをきっかけにドル安円高となり、25日東京朝に142円90銭台を付けた。

 安値を付けた後は、一転してドル高円安となった。中国の景気支援策が本格化するとの期待がアジア市場でのリスク選好につながった。また、27日に行われる自民党総裁選において、積極財政姿勢が目立つ高市氏が優勢との見通しが広がったことで、海外勢を中心に円売りを進める展開となった。

 27日の自民党総裁選第一回投票において、高市氏がトップで決選投票に向かったことが好感され9月3日以来のドル高円安となる146円49銭を付けた。少し調整も146円台前半で決選投票を迎えると、第1回投票で2位となった石破氏(用語説明1)が逆転勝利したことで一気にドル安円高となった。

 ドル円は146円台から一気に143円50銭台へ急落。その後の戻りは144円台前半に留まり、その後も円買いが優勢となって142円07銭を付けた。142円20銭台のドル安円高圏で週の取引を終えた。

 ユーロ円も同様に週末にかけて円安が進み、27日に1ユーロ=163円49銭を付けた。そこから一気に円高となり158円57銭を付け、158円70銭台で週の取引を終えた。ポンド円が1ポンド=195円97銭から190円02銭、豪ドル円が1豪ドル=100円72銭から98円03銭など、軒並みの円高進行となっている。

 ユーロドルは1ユーロ=1.1100-1.1200ドルを中心とした推移。23日にドイツやユーロ圏のPMIが弱く出たことを受けたユーロ売りに1.1083ドルを付けたが、すぐに1.11の大台を回復。24日のユーロ安局面では1.1100ドル台と大台を維持すると、ユーロ高となり25日に一時1.1214ドルを付けたが、1.12の大台を維持できず、1.1120ドル台へ急落した。

 27日にドル円でドル安円高が一気に強まると、いったんはユーロ円でのユーロ安円高に押されて1.1120ドル台を付けた後、一転して1.1200ドル台を付けた。大台を維持出来ず1.1150ドル前後に下げている。

今週の見通し

 自民党総裁選の影響がどこまで続くか。高市氏の積極財政姿勢と、同氏が総裁となった場合、日銀の追加利上げが難しくなるとの見方から、海外勢が総裁選前に円を売り過ぎた感があり、当面は影響が残りそう。ただ、米国のソフトランディング期待がある中で、同材料だけでドル安円高が続くことは難しい。

 注目は4日の米雇用統計となりそう。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)は0.5%の大幅利下げとなった。今後についてはデータ次第という姿勢を強調。米FRBの二大命題(用語説明2)のうち、物価については鈍化が進展しており、利下げのカギを握るのは雇用となっているだけに、雇用統計に対していつも以上に注目度が増している。

 かなり厳しい数字が見込まれており、ドルは売りが出やすい地合い。米雇用統計は前回かなり厳しい結果となったが、今回も前回並みの雇用の伸びが見込まれている。失業率も横ばい見込み。予想よりも弱く出た場合はドル売りが加速する可能性がある点にも注意したい。

 ユーロは10月の追加利下げ期待が上値を抑えている。先週のユーロ圏PMIの弱さに見られる、ここにきての景況感悪化が警戒材料。ドル安基調の中、下がると買いが出る流れで、基本的にレンジ取引となっているが、リスクはやや下方向か。

 ユーロ円は対ドル、対円ともにやや下方向にリスク。ドル円同様に円はやや不安定な点に注意が必要か。

用語の解説

石破茂 石破茂衆議院議員(12期、鳥取1区)。第28代自由民主党総裁。慶応大学卒業後、三井銀行行員を経て、1986年に29歳で衆議院に初当選。一時自民党を離党し新生党に参加も、その後自由民主党に復党。2002年第1次小泉内閣で防衛庁長官として初入閣。その後防衛大臣、農林水産大臣、自民党政調会長、自民党幹事長などを歴任。
二大命題 米FRBは連邦準備法第2条Aにより、その目的として「物価の安定」「雇用の最大化」「長期金利の安定」の達成が定められている。このうち、長期金利の安定は物価の安定が実現すれば達成されるため、前者2つを二大命題(Dual Mandate)と呼ぶ。

今週の注目指標

ISM製造業景気指数(9月)
10月1日23:00
☆☆☆
 前回8月のISM製造業は47.2と7月の46.8から小幅改善したが、市場予想の47.5及び好悪判断の境となる50を下回った。7月に43.4と厳しい数字となった雇用が46.0まで改善したものの、注目度が高い新規受注が44.6と7月の47.4から悪化、生産も44.8と7月の45.9から悪化した。
 今回の予想は47.6と小幅改善する見込みとなっているが、依然として50を下回る水準での推移が見込まれている。予想及び前回を下回った場合、同時に発表されるJOLTS次第であるが、140円台トライが見込まれる。
米雇用動態調査(JOLTS)求人件数(8月)
10月1日23:00
☆☆☆
 米ISM製造業と同時刻にJOLTSが発表される。雇用関連指標への注目度が高まっており、ISM以上に注目を集める可能性がある。前回7月の求人件数は予想の810万件に対して767.3万件と、2021年1月以来の低い水準に留まった。6月の数字も818.4万件から791万件に大きく下方修正された。求人件数以外の項目も厳しい数字が並んでおり、特にレイオフは176.2万件と昨年3月以来の高水準となっている。今回の求人件数も前回並みの766万件が見込まれている。予想通りもしくはより低い水準となり、雇用市場の厳しさが印象付けられると、同時に発表されるISM製造業の結果にもよるが、ドル売りが予想され。ドル円は140円台に向けた動きが見込まれる。
米雇用統計(9月)
10月4日21:30
☆☆☆
 前回8月の雇用統計はかなり厳しい結果となった。非農業部門雇用者数は市場予想の前月比+16.4万人を下回る+14.2万人となった。失業率は7月の4.3%から4.2%に市場予想通りとはいえ改善しているが、実態としては4.25%から4.22%へわずか0.03%の改善に過ぎない。また非自発的なパートタイム労働者(正社員の職を欲しているが、職がなくパートタイム労働に従事している人)などを加えた広義の失業率であるU-6失業率(一般的な失業率はU-3失業率)は7.9%まで上昇。2021年11月以降で最悪の水準となった。非農業部門雇用者数は8月の数字が低かったことに加え、6月が+17.9万人から+11.8万人に、7月が+11.4万人から+8.9万人にそれぞれ大きく下方修正されている。これにより3カ月平均は+11.6万人となり、2020年7月以来の低水準となった。
 非農業部門雇用者数の内訳をみると、製造業が-2.4万人と大きくマイナスとなった。混戦が続く米大統領選の結果次第での政策変更リスクを意識し、事業活動拡大を避ける傾向があるとの指摘がある。建設業が+3.4万人と好結果になったことで財部門全体では+1.0万人とプラス圏となった。サービス部門は小売業が-1.1万人と3カ月連続でのマイナス圏。景気に敏感で雇用の流動性も高い同部門の厳しい結果は、米雇用市場の厳しさを印象付けている。一部企業で厳しさが見られるIT/ ハイテクを含む情報業は-0.7万人と2カ月連続で雇用減となった。介護部門などを擁し堅調さが続く教育・医療部門は+4.7万人と堅調さを維持。ただ、増加幅としては2022年12月以来の低い水準となっている。娯楽接客部門も+4.6万人と好調。中でも部門単体で1233万人と各部門の中で最も雇用者数の多い飲食部門が昨年夏以来の高水準となる+2.99万人となって全体を支えた。その他、雇用の先行指標といわれるテンポラリーヘルプサービスが-0.29万人と小幅ながら3カ月連続のマイナス圏となった。
 今回の非農業部門雇用者数の予想は+14.6万人とほぼ横ばい。失業率も4.2%で前回と同水準見込みとなっている。悪化しなかったという点は安心材料で、予想前後であれば影響は抑えられるとみられるが、予想に反して前回から悪化した場合は、今後の大幅利下げ期待につながり、大きなドル売りが見込まれる。ドル円は140円割れが視野に入ってくる。

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