2024年10月07日号

(2024年09月30日~2024年10月04日)

先週の為替相場

週後半に向けて円安進行から、一気に円高へ

 先週(9月30日-10月4日)のドル円は、ドル高円安となった。

 9月27日の自民党総裁選で石破氏が勝利したことを受けてドル安円高が進んだ流れが継続し、ドル円は週明け30日に1ドル=141円65銭と9月18日以来のドル安円高となった。安値から反発を見せると、同日のNY市場午後にパウエル議長が全米企業エコノミスト協会で行った講演において、利下げを急がない姿勢を改めて表明。金利先物市場での11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ見通しは、この講演を受けて0.25%と0.50%での拮抗から0.25%が優勢に変化。ドル買い円売りを誘った。

 イスラエル軍によるレバノン地上侵攻などを警戒して円買いが入る場面が見られたが、すぐに反発するなど、影響は限定的。中国当局による景気支援本格化への期待を受けた中国買いの動きが、リスク選好の円売りにつながる形でドル円は144円台を付けた。

 イランによるイスラエル空爆を受けて、数日以内に大規模報復を計画と報じられ、いったん円買いも、すぐに反発。

 2日に石破新首相と植田日銀総裁が石破政権発足後初の会談を行い、植田総裁が「見極める時間十分にある」と従来の姿勢通りながら当面の据え置きを示唆、石破新首相は「現在追加の利上げをするような環境にはない」と発言したことで、円売りが強まった。

 ドル円は147円台を付けた後、4日の米雇用統計を前に146円台後半を中心とした推移。大きなイベントを前に調整ムードが広がり、4日の発表前の時間帯に145円90銭台までドル売りが入った。少し戻して146円台半ばで米雇用統計を迎えた。

 米雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比+25.4万人と、市場予想の+15.0万人前後を大きく上回った。前回値も速報時点での+14.2万人から+15.9万人に上方修正された。失業率も前回の4.2%から4.1%に予想外に低下した。

 この結果を受けて11月のFOMCでの0.5%利下げ見通しがほぼ払しょくされた。ドル円は一気に上昇し、149円00銭前後を付けた。

 ユーロ円はドル円の上昇などを支えに9月30日の1ユーロ=158円11銭から10月4日の163円37銭まで上昇。米雇用統計後はドル買いが優勢となり、ユーロドルでユーロ安ドル高となったが、ドル円などでの円売りの勢いが勝り、ユーロ円は上昇している。

 ユーロドルは30日に1ユーロ=1.1209ドルを付けるなど、1.1200ドル超えを試す展開を見せていたが、その後じりじりとユーロ売りが進んだ。30日に欧州議会で証言を行ったラガルドECB総裁が、インフレ目標達成に自信を見せていたことなどが、ECBの追加利下げ期待につながり、ユーロ売りとなった。

 心理的な節目である1.1000ドルがサポートとなる場面が見られたが、米雇用統計後のユーロ売りドル買いに1.0951ドルまで下げている。

今週の見通し

 米国の大幅利下げ期待の後退と、日銀の早期追加利上げ期待の後退の両面から、日米金利差の縮小期待が後退し、ドル買い円売りにつながっている。石破首相誕生を受けて進んだ円買いの分の反動も見られ、ドル高円安が優勢となった。

 もっとも心理的な節目でもある150円00銭手前には、オプション取引などからのドル売り円買い注文が入っているとみられ、一気の上昇にも慎重。

 一時はかなりの確率で織り込むところまで進んでいた11月の米FOMCでの0.5%利下げ見通しが払しょくされ、一部であるが金利据え置き見通しが出てきている状況。ほぼ織り込んでいた12月の0.5%利下げ期待も大きく後退。11月か12月ともに0.5%という見通しは見られず、どちらかでも0.5%という見通しでも17%程度に留まっている。こうした見通しの大きな変化はドル買い材料として意識されており、ドル円は下がると買いが出る流れ。下値しっかり感が強まると、150円トライの意識が広がりそう。

 金利見通しの変化につながった先週の米雇用統計に関しては、景気に敏感な小売業が3カ月ぶりにプラスになるなど、内訳も比較的しっかりしたものとなっていた。ソフトランディング期待が強まる展開で、大幅利下げ期待が再び強まるとは考えにくい。ドルは当面しっかりと見ている。

 ユーロドルは1.12超えの重さが確認できたこともあり、いったん売りが強まる可能性がある。ただ、対円でのユーロ買いもあり、動きはゆっくりとしたものとなりそう。

 ユーロ円はドル円同様にしっかりの展開か。165円トライの流れを意識している。

用語の解説

ラガルド総裁 クリスティーヌ・ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁。パリ第10大学卒、エクス=アン=プロヴァンス政治学院で修士号取得。弁護士資格を取り、ベーカー&マッケンジー国際法律事務所に勤務。2005年6月にフランス政府対外貿易相に就任、農業・漁業相を経て、2007年に財務・経済相就任。2011年7月に女性初のIMF専務理事、2019年11月からECB総裁に就任。
ソフトランディング 本来は航空機や宇宙船などの軟着陸を意味する言葉。転じて、景気が過熱しているときや好景気の最終段階において、急激な景気後退や経済の混乱を招くことなく、緩やかに景気を減速させることを指す。

今週の注目指標

NZ中銀政策金利
10月9日10:00
☆☆☆
 ニュージーランド準備銀行(RBNZ/中央銀行)金融政策会合の結果が9日10時に発表される。前回8月の会合で0.25%の利下げを実施したRBNZ。今回も追加利下げが見込まれている。利下げ幅については見方が分かれている。短期金融市場では約70%が0.5%の大幅利下げを見込み、約30%が0.25%利下げを見込んでいる。エコノミストなど専門家の予想は0.5%がより強く、80%強が0.5%利下げを予想し、20%弱が0.25%を予想している。先月19日に発表されたNZ第2四半期GDPは前期比マイナスとなった。これまでの金融引き締めの影響で住宅価格が低下するなどの状況も見られており、今回の大幅利下げ期待につながっている。ただ、より慎重な利下げとなる可能性も意識されており、見方が分かれているため、結果次第でNZ相場が上下するとみられる。また次回11月の会合でも0.5%の利下げを行うとの見方が広がっている。今後に向けて声明なども注目される。0.5%利下げを実施し、11月に再び0.5%下げる可能性が強まるとNZドル売りが見込まれる。1NZドル=90円00銭をターゲットとした動きが見込まれる。
米FOMC議事要旨(9月17日、18日開催分)
10月10日3:00
☆☆☆
 0.5%の大幅利下げとなった9月のFOMCの議事要旨が公表される。パウエル議長は9月のFOMC後の会見で米経済の現状は良い、それを維持するためフォワードルッキング的(予防的)に大幅利下げを実施したと示した。一方ボウマンFRB理事は大幅利下げに反対票を入れ、0.25%利下げを主張した。投票権を持っていない地区連銀総裁の中で、どれだけのメンバーが大幅利下げに消極的であったのかなども含めて今回の議事要旨での利下げに関する議論に注目が集まる。今後についての慎重姿勢が印象付けられると、11月、12月のFOMCでの0.25%ずつの利下げ見通しにつながりドル高となる可能性がある。ドル円は150円トライが意識される。
米消費者物価指数(9月)
10月10日21:30
☆☆☆
 前回8月の米消費者物価指数(CPI)は前年比+2.5%と7月の+2.9%から大きく鈍化。3月の+3.5%から5カ月連続の伸び鈍化となった。ガソリン価格が前年比-10.3%と大きく低下した影響が大きいとみられ、食品とエネルギーを除いたコアは前年比+3.2%と7月と同水準の伸びとなった。 
 今回は前年比+2.3%とさらなる鈍化が見込まれている。8月から9月にかけて米国のガソリン価格が低下したことが鈍化継続期待につながっている。コアは3カ月連続となる+3.2%が見込まれている。予想外にコアまで鈍化するようだと、米大幅利下げ期待が再開され、ドル売りとなる可能性がある。ドル円は145円に向けた動きが見込まれる。

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