2024年10月15日号

(2024年10月07日~2024年10月11日)

先週の為替相場

ドル高の流れ継続

 先週(10月7日-10月11日)のドル円は、今月に入ってのドル高円安が継続した。米国の大幅利下げ継続期待が後退。利下げサイクルは継続も、落ち着いたものになるとの見方からドル買いとなった。

 4日の米雇用統計の好結果を受けて1ドル=149円00銭を付けた流れから、週明け7日の東京朝に8月16日以来のドル高となる149円13銭を付けた。三村財務官(用語説明1)が「為替相場の動向を、緊張感をもって注視していく」と発言したことで、いったん円買いとなり、148円台前半を付けると、その後は上値追いに少し慎重となり、8日に147円35銭を付けた。

 その後は再びドル高が優勢となった。米大幅利下げ期待の後退がドルを支えた。9日の海外市場で7日の高値を更新すると、同日公表された米FOMC議事要旨(9月17日、18日開催分)において、実際に0.5%利下げに反対したボウマン理事(用語説明2)の他にも0.25%利下げを支持するメンバーがいたことが判明し、ドルを支える展開となった。

 10日の市場で149円50銭台まで上値を伸ばしたが、予想よりもやや強めに出た米消費者物価指数(CPI)後のドル買いが一服すると、150円手前のドル売りが意識される形でいったん利益確定売りが入った。もっとも148円台ではドル買いが出る流れで、149円10銭台で週の取引を終えた。

 ユーロ円はドル主導の展開でやや不安定な動きとなったが、ドル円の上昇を支えに10日に1ユーロ=163円61銭と7日朝の高値を超えて8月16日以来のユーロ高となった。

 高値を付けた後は米消費者物価指数発表前のポジション調整などもあっていったん円買いとなった。神田前財務官による「当局は強い警戒を続けるだろう」などの発言も円買いを誘い、同日海外市場で162円18銭までユーロ安となった。その後はドル円の上昇もあって、しっかりとなり163円台で週の取引を終えた。

 ユーロドルはドル高に押されてじりじりと下げた。4日の米雇用統計後のドル買いに一気に下げた後、先週前半はポジション調整のユーロ買いなどが見られたが、1ユーロ=1.1000前後が重くなり、ユーロ安に転じた。

 米CPIやFOMC議事要旨後のドル買いもあって1.0900ドル前後までつけたが、1.08台のユーロ売りには慎重姿勢が見られた。

今週の見通し

 心理的な節目である150円00銭前後にドル売り注文が入っているものの、流れはまだドル高円安方向。150円を超えての上昇が見込まれる。

 米国の大幅利下げ期待の後退がドルを支えている。11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の見通しは、先月末時点で0.5%利下げと0.25%利下げが拮抗、やや0.5%が優勢という状況まで見られた。しかし、その後の米指標の強さもあって0.5%利下げ見通しは払しょくされ、15%程度であるが据え置き見通しまで出てきている。

 こうした金融政策見通しの変化によるドル高に加え、11月5日に迫った米大統領選を前にしたドル買いも意識されている。依然として混戦模様となっているが、カギを握る接戦州の中でも代議員数が多く注目されているペンシルベニア州とジョージア州の世論調査でトランプ氏がリードしていることなどから、米賭けサイトなどではトランプ氏がやや優勢という見方が強まっている。同氏が勝利した場合は、財政支出拡大や規制緩和が見込まれるためドル高の反応が予想されており、現時点でもドルを支える材料となっている。

 ドル全般の上昇が見込まれる中、150円00銭超え後のドル円の大きなターゲットは152円00銭前後となりそう。

 ユーロドルもドル高継続が見込まれる。木曜日のECB理事会は利下げで見通しが一致しており、波乱要素は少ない。ただ、ラガルド総裁の会見などで今後の利下げ継続に向けた姿勢が強調されるとユーロ売りに拍車がかかる可能性があるため、上値の重い展開が続きそう。

 ドル主導の展開でユーロ円などは不安定な動き。ドル円の堅調地合いを意識し、流れはユーロ高円安方向か。165円トライを見込んでいる。

用語の解説

三村財務官 三村淳財務官。1989年東京大学法学部卒、大蔵省入省。2020年7月財務省大臣官房審議官(国際局担当)、2021年7月国際局長就任、2024年7月31日より現職。
ボウマンFRB理事 ミシェル・ボウマンFRB理事。カンザス大学卒、ウォッシュバーン法科大学院で法務博士取得、NY州の弁護士資格を有する。下院運輸・インフラ委員会などでの勤務を経て、夫の仕事の関係で渡英。帰国後は親族の経営する銀行の取締役などを経て、カンザス州銀行協会コミッショナーを務めた。2018年11月に退任するフィッシャー理事の残りの任期2年を埋める形でFRB理事に就任。2020年に再任された(任期は2034年まで)。金融法務の専門家で、金融政策としては当初中立姿勢が目立っていたが、近年タカ派色を強めているとされている。

今週の注目指標

英消費者物価指数(CPI)(9月)
10月16日15:00
☆☆☆
 イングランド銀行(中央銀行)のベイリー総裁は、物価の鈍化が進めば金融緩和により積極的になれると姿勢を示している。そうした中、今回の9月消費者物価指数(CPI)前年比の予想は+1.9%と、8月の+2.2%から鈍化し、インフレターゲットである+2%を下回ってくると見られている。予想通りの鈍化が見られると、今後の利下げ継続期待に加え、11月会合での大幅利下げの可能性まで意識されることでポンド売りが強まる可能性がある。ポンドドルは1ポンド=1.2900ドルがターゲットとなりそう。
ECB理事会
10月17日21:15
☆☆☆
 前回9月の理事会に続く利下げがほぼ確実視されている。ECBは今年6月に利下げに踏み切り、7月の据え置きを経て、9月に追加利下げを実施。今回利下げを実施すると、今年3度目となる。利下げ幅は主要3金利とも0.25%の見込み。事実上メインの政策金利となっている預金ファシリティ金利の利下げ幅はこれまでも0.25%となっていた。前回、リバースレポ金利、限界ファシリティ金利は0.6%の引き下げとなったが、これは今年3月の会合で決定した預金ファシリティとリバースレポ金利の金利差を9月の会合で0.15%まで縮めるという方針に沿ったもので、大幅利下げには当たらない。
 1日に発表された9月のユーロ圏消費者物価指数は前年比1.8%とインフレターゲットである2.0%を下回ってきている。ドイツ、フランスなど加盟主要国の物価鈍化はユーロ圏全体以上に鈍化しており、利下げ圧力につながっている。一部の会合参加者には慎重姿勢が見られるが、加盟主要国は利下げに同意する姿勢を示しており、波乱要素は少ない。
 注目は声明とラガルド総裁の会見。市場では来年春まで利下げを連続で続けるとの見方がかなり強くなっており、声明や会合後のラガルド総裁の会見でどこまで利下げに向けた姿勢が示されるかがポイントとなる。基本は今後のデータ次第との姿勢を維持するとみられるが、利下げに積極的な姿勢が見られると、ユーロ売りが見込まれる。ユーロドルは1.0800に向けた動きが期待される。
米小売売上高(9月)
10月17日21:30
☆☆☆
 前回8月は前月比-0.2%予想に対して、+0.1%と予想を上回り前月比プラスと好結果となった。もっとも伸び率は7月の+1.1%から鈍化した。
 前回の内訳を確認すると、上昇に最も寄与したのが無店舗小売り(アマゾンなど)。8月は9月から始まる米国の新学期に向けて、学用品などの需要が伸びる月であるが、これらをアマゾンなどで安く買い求める消費者の姿勢が強まっていると分析されている。マイナスとなったのはガソリン価格の低下を反映したガソリンスタンドのほか、自動車、家具・家電など。消費者の節約志向から支出が裁量的な商品から必需品に移っているとの指摘があり、数字ほど強くないとの見方がある。
 今回の予想は前月比+0.3%、変動の激しい自動車を除くコア部分が前月比+0.2%となっており、ともに8月を上回る伸びが見込まれている。4日に発表された米雇用統計が力強く、個人消費と密接に結びつく雇用への警戒感が一服したことで、小売売上高も回復が期待されている。予想通り小売売上高が強めに出ると、今後の年末商戦への期待にもつながり、ドル買いが見込まれる。また、米景気のソフトランディングへの期待が広がる形で、ドル円の上昇だけでなく、リスク選好からのクロス円全般の買いも期待される。ドル円は151円に向けた動きが予想される。

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