2024年10月21日号

(2024年10月14日~2024年10月18日)

先週の為替相場

ドル高の流れ継続

 先週(10月14日-10月18日)のドル円は、一時1ドル=150円00銭を超えるなど、ドル高となった。

 14日は東京がスポーツの日の祝日、米国はコロンブスデーで銀行が休業(株式市場はオープン)、カナダが感謝祭の祝日と取引参加者が少ない中でドル高が優勢となった。週末の中国財政省による会見で、債券発行の余地が大きくあると示され、追加の財政出動への期待が広がったことが、世界的なリスク選好での円売りを誘った。また、週末の米世論調査で大統領選のカギを握るとされるスウィングステート(激戦州)(用語説明1)でトランプ共和党大統領候補がハリス民主党候補に対して優勢との報道が、ドル買いを支えた面もある。ドル円は149円95銭と、150円00銭手前まで上値を伸ばした。

 150円の大台を付けきれなかったことで、15日の市場ではいったんポジション調整のドル売りが入り、ドル円は148円85銭を付けた。米債利回りの低下が見られ、ドル売りを誘っていた。特に目立った材料は見られず、あくまで上昇分の調整売りと見られた。

 149円20銭前後まで戻した後、16日東京午前に安達日銀審議委員(用語説明2)「金融正常化の条件すでに整っている」と発言したことで、一時148円88銭を付けた。その後149円台を回復。同日東京午後に安達日銀審議委員が「円安加速による物価上昇圧力やや低下」などと発言したこともドル円を支えた。149円台でしっかりした推移となった後、17日の米小売売上高(9月)の好結果でドル高が加速し、節目の150円00銭を超えて上昇した。

 150円30銭台まで上昇した後、三村財務官の「投機的な動き含め、相場を高い緊張感をもって注視」などの発言もあって、いったんドル売りとなった。週末を前にしたドル買いポジションの調整売りもあって、149円30銭台まで一時下げている。

 ユーロドルはドル高に押されて、上値の重い展開となった。4日の米雇用統計後に一気に下げて以降は、ゆっくりとした動きながら下を試す展開が続いた。14日の1ユーロ=1.0942ドル前後から17日のECB理事会を前に1.0850前後まで下落。少し戻して迎えた理事会は、市場予想通りの0.25%の利下げを決定も、織り込み済みとして市場の反応は限定的となった。しかし、理事会結果発表の15分後に発表された米小売売上高の好結果を受けたドル買いに1.0811ドルまで下げている。その後は週末を前にした調整もあり1.0870ドル前後を付けた。

 ユーロ円はドル円の上昇もあって14日に1ユーロ=163円60銭前後を付けた。その後は17日のECB理事会結果発表前のポジション調整によるユーロ売りなどに押されて162円00銭台を付けた。その後は162円台を中心とした推移。ユーロドルの売りが強まった17日に161円85銭を付けたが、すぐにユーロ買いが入った。

今週の見通し

 今週は目立った材料がなく、大きな動きにはなりにくい。流れ的にはドル高が意識されるところであるが、150円を超えた後、さらに買い進むだけの勢いがあるかどうかは微妙なところと見ている。

 米大幅利下げ期待の後退もあり、下がるとドル買いが出る流れ。148円台ではドル買いがしっかりと出てきそう。

 11月5日に迫った米大統領選及び上下両院選挙も、ドル買い材料となる。各種世論調査の平均をとると、米大統領選については、全米の支持率でハリス氏が小幅リードを保っているが、勝敗のカギを握るスウィングステート7州はいずれもトランプ氏がリードしている。上院選は僅差ながら共和党の勝利見通しが強い。現時点での世論調査通りに決まると51対49で共和党の勝利となる。下院は混戦ながら共和党が若干リードしている。ただ、過半数確保までは遠く、現在支持率が拮抗している32選挙区のうち12選挙区を抑えると共和党が過半数を確保できる。ただ拮抗中の選挙区は小幅ながら民主党リードという地域が多いだけに、まだまだ不透明といったところ。トランプ氏が勝利し、両院を共和党が抑えると、保護主義的な政策が加速する可能性があるとみられ、短期的なドル買いにつながっている。

 ユーロドルなどでもドル高が優勢で、じっくりと1.07台をトライする展開を見込んでいる。

 ユーロ円はドル主導の中、やや神経質な動きとなりそう。ドル円の買い意欲もあり、ややしっかりの展開か。

用語の解説

スウィングステート 米大統領選で有権者が大統領になってほしい候補者に投票した票は、そのまま候補者の票になるわけではなく、各州及び首都ワシントンに割り当てられた選挙人を介在する間接選挙となっている。ほとんどの州ではその州で1位となった候補者が、その州に割り当てられた選挙人すべてを獲得する勝者総取り(ウィナーテイクスオール)という方式を採用している。州によって支持率の高い党が違い、例えば最大の選挙人を擁するカリフォルニア州では民主党がほぼ確実に勝利する。50州の中には党勢が拮抗していて選挙によって勝者が違うという州が7州あり、それをスウィングステートもしくはバトルグラウンドステートと呼ぶ。日本語では激戦州や接戦州と訳すことが多い。具体的にはペンシルベニア州、ノースカロライナ州、ジョージア州、アリゾナ州、ウィスコンシン州、ミシガン州、ネバダ州となる。現在各州ともトランプ氏が支持率でリードしているが、その差は2%未満となっている。その他の州はいずれも4%以上の差で片側がリードしている。
安達日銀審議委員 安達誠司日本銀行政策委員会審議委員。東京大学経済学部卒、大和証券、大和総研、クレディスイスファーストボストン証券、ドイツ証券、丸万証券などを経て、令和2年3月より現職。審議委員の中では、金融緩和に積極的なハト派として知られている。

今週の注目指標

カナダ中銀政策金利
10月23日22:45
☆☆☆
 23日にカナダ銀行(中央銀行)金融政策会合の結果が発表される。カナダ中銀は新型コロナを受けて0.25%まで金利を引き下げた後、2022年3月と米国とほぼ同時期から利上げを開始。昨年7月に5%まで金利を引き上げた後、今年6月に0.25%の利下げを実施、7月、9月と0.25%ずつ引き下げも4会合連続の利下げが確実視されている。見通しが分かれているのが利下げ幅。
 前回9月の会合においてマックレム・カナダ中銀総裁は、予想以上に弱い経済成長によってインフレ率が急速に低下するリスクがあるという懸念を示した。10月15日に発表されたカナダの9月消費者物価指数(CPI)は前年比+1.6%となり、市場予想値の+1.9%、8月の+2.0%を大きく下回った。インフレターゲットの+2.0%を大きく下回る状況に、今回の利下げが大幅なものになるとの期待が出てきている。もっともカナダの第2四半期GDPは前期比年率+2.1%と市場予想の+1.8%を上回る好結果。カナダ経済は昨年第2、第3四半期と2期連続マイナス成長のテクニカルリセッション入りしたが、直近3四半期連続で伸びが強まっている。先月27日に発表された7月の月次GDPは前月比+0.2%、前年比+1.5%と共に市場予想及び前回値を上回る伸びとなっており、堅調さを維持している。こうした好悪の判断が難しい状況が、0.25%か0.50%かで利下げ幅見通しが分かれる背景にある。
 二つの見通しは拮抗しており、基本的に0.25%利下げでカナダ買い、0.50%利下げでのカナダ売りの反応が見込まれる。また、今後の利下げ継続が見込まれる中、声明についても要注意。大幅利下げを実施し、さらに今後も利下げ継続を強く示してくるようだとカナダ売り。カナダ円は1カナダ=106円00銭がターゲット。
米購買担当者景気指数(PMI)(10月/速報値)
10月24日22:45
☆☆☆
 今月発表された米雇用統計や小売売上高の好結果を受けて、米国のソフトランディング期待が広がっている。米個人消費の底堅さを受けて、企業の景況感も比較的しっかりの数字が期待される。製造業PMIは47.5と前回の47.3から小幅改善見込み。好悪判断の境となる50を下回った推移となっているが、前回かなり弱く出た状況から改善が見込まれている。非製造業は55.0と前回55.2から小幅鈍化見込み。ただ水準的にはしっかりしたところに留まりそう。予想前後もしくは予想を上回る結果が出てくると、米景気の底堅さへの期待に繋がり、ドル買いが見込まれる。ドル円は151円台に向けた動きが期待される。
ハマック・クリーブランド連銀総裁発言
10月24日 ☆☆
 今週はそれほど大きな米指標発表がなく、やや材料不足感がある。そうした中、今週土曜日から11月のFOMCを前にしたブラックアウト期間(FOMC前に参加メンバーが金融政策や経済についての発言を制限される期間)に入るということで、その手前でFRB関係者の発言予定が並んでいる。いまのところ、21日にカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、ローガン・ダラス連銀総裁、シュミッド・カンザスシティ連銀総裁、22日にはハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、23日にバーキン・リッチモンド連銀総裁。24日にハマック・クリーブランド連銀総裁が発言予定。この中では今年8月に就任し、前回9月が初めてのFOMC参加となったハマック・クリーブランド連銀総裁の発言が最も気になるところ。参加初回で大幅利下げ実施となった前回であるが、議長の意見に沿った形であり、まだ自身の色が出ていない。元米ゴールドマンサックスの幹部で、金融関連の知識も豊富なだけに、今後金利についてタカ派・ハト派の個性が出てくる可能性がある。今後の利下げに慎重なタカ派姿勢を見せるとドル買い。ドル円は152円台トライに向けた動きが期待される。

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