2024年10月28日号
先週の為替相場
ドル高円安続く
先週(10月21日-10月28日)のドル円は、7月31日以来の1ドル=153円台を付けるなどドル高円安となった。
週明け21日の東京市場は日経平均の下げなどを材料に午前中に円買いが入り、結果的に先週の安値となった149円09銭を付ける展開となった。149円の大台を維持したことで、その後反発。海外市場に入って米債利回りの上昇を材料にドル高が強まった。
目立った米指標発表などがなく、やや材料不足感がある中で、11月5日に迫った米大統領選の世論調査において、勝敗のカギを握るといわれる激戦州の情勢でトランプ共和党大統領候補が優勢との思惑がドル買いにつながった。トランプ氏の公約から、同氏が大統領に返り咲いた場合、物価高圧力が高まると予想されている。また同時に行われる連邦議会選挙(用語説明1)でも共和党がやや優勢な状況となっており、トランプ氏の公約が通りやすい状況となっていることも、ドル高につながっている。
さらに27日投開票の日本の衆議院選挙において、自民党が苦戦するとの見通しが円売りにつながった。政権の混乱から日銀の利上げが遅れるとの見通しが円売りにつながったとみられる。
151円台を付けた後、いったん151円00銭前後でもみ合いとなったが、23日に入ってドル高円安が強まった。米債利回りの上昇などを材料にドルがが広がったほか、衆院選での自民党苦戦予想を受けて、日銀の早期利上げが難しいとの思惑からの円売りも見られ、153円19銭と7月31日以来のドル高円安となった。
その後はいったん利益確定のドル売り円買いが入った。週末の衆院選を前にポジションを整理しておきたいとの思惑などが見られ、一時151円46銭を付けた。少し戻して152円30銭前後で先週の取引を終えた。
ユーロドルはドル全般の上昇もあり、先週半ばまでユーロ安ドル高が優勢となった。ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁は22日の講演で「インフレに勝利したと宣言する段階にない」と、今後の利下げ継続を示唆。節目の1ユーロ=1.0800ドルを割り込んで低下した。8月2日以来の1.07ドル台となった。23日もユーロ安ドル高となり1.0761ドルを付けた。
その後週末を前にしたポジション調整などにユーロ買いとなった。24日のドイツ購買担当者景気指数(PMI)の好結果などもユーロ買いとなった。ナーゲルドイツ連邦銀行(中央銀行)総裁が、ECBの利下げについて「急ぎすぎるべきではないが、柔軟性は維持している」と発言。12月のECB理事会について、市場は利下げを確実視も、利下げ幅見通しが0.25%と0.50%で割れており、やや不安定な動き。25日に一時1.0839ドルを付けたが、その後ユーロ売りが入り1.0790ドル台で週の取引を終えた。
ユーロ円はドル円の下落もあって21日に1ユーロ=162円00銭を付けたが、その後の円安に23日に165円02銭と、7月31日以来となる165円台を付けた。その後ドル円の高値からの調整に加え、対ドルでのユーロ安もあって上値が抑えられ、162円台を中心とした推移となった。
今週の見通し
1日の米雇用統計と来週5日の米大統領選が大きな材料となっている。
米雇用統計は前回かなり強めに出たことで、米国の大幅利下げ期待後退のきっかけとなった。今回は前回の反動に加え、ハリケーンなどの影響もあって少し弱く出る見込み。ただ、ある程度は想定済みとなっており、予想を大きく下回る伸びにとどまるなど、数字のブレが目立たない限り、相場への影響は限定的となりそう。
今後米FRBがどれぐらい積極的に利下げを実施していくのか、その判断材料としてかなり重要な今回の雇用統計であるが、今回はそれ以上に5日の米大統領選への注目が大きい。バイデン大統領からハリス副大統領に民主党大統領候補が替わった後、ハリス氏人気が上昇。トランプVSバイデンの時期はトランプ氏が大きくリードしていた世論調査での支持率は、8月5日にハリス氏がトランプ氏を上回ると、その後もハリス氏が優位な状況が続き、10月5日時点でも2.1%(各社世論調査平均値)の差でハリス氏がリードしていた。しかし、その後急速にトランプ氏が支持を広げ、10月26日になってついにトランプ氏が上回る状況となった。
勝敗のカギを握るといわれる激戦州では元々トランプ氏が優勢となっており、トランプ氏が一歩リードという印象を与えている。トランプ氏が選挙戦の中で示した政策を実行すると、米物価の上昇を招くとみられており、ドル高の材料となっている。
大統領選までは基本的にドルがしっかりと見ている。衆院選で自民党が大きく議席を減らしたことを受けた円売りの流れがもう少し続くとみられることもあり、ドル円は155円に向けてしっかりの展開となりそう
ユーロドルは対円でのユーロ高も、対ドルでの重さが継続か。1.08台前半の売り意欲が確認されると1.07台前半トライがありそう。
ユーロ円はドル円次第。基本的にはしっかりの展開が見込まれるが、大きな調整がドル円に入る可能性を警戒しておきたい。
用語の解説
連邦議会選挙 | 11月5日の米大統領選に併せて、連邦上下両院選挙が行われる。上院は定数100、任期は6年で、2年ごとに三分の一ずつ改選される。今回は34州で実施される。下院は任期が2年で、全員が改選となる。上院の現在の勢力は民主党が51(民主系無所属含む)、共和党が49で民主党が多数派となっている。上院は基本的に現職が強いが、モンタナ州で4期目を目指す現職のテスター氏が支持率で伸び悩み、共和党のシェリー候補が6.5%の差でリードしている。 また、民主党現職の引退により新人二人の争いとなっているウェストバージニア州は共和党候補が30%以上差を付けてリードしている。これにより共和党は少なくとも51議席の確保が見込まれている。 なお、民主党現職がリードしているとはいえ、支持率の差が0.8%のウィスコンシン州、1.0%のオハイオ州、1.4%のペンシルベニア州などは共和党候補が逆転する可能性がそれなりにあり、その場合、差が開くこととなる。下院はほぼ互角の様相で、共和、民主どちらが勝ってもおかしくない状況となっている。 |
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カマラ・ハリス | カマラ・ハリス(Kamala Harris)米民主党大統領候補、現副大統領。カリフォルニア州オークランド生まれ。ハワード大学、カリフォルニア大学ヘイスティングス・ロースクール卒。地方検事局に勤務後、2004年にサンフランシスコ地方検事に就任。2010年からカリフォルニア州司法長官を二期務めた。2016年の上院選挙に当選(カリフォルニア州)。2020年の大統領選での民主党予備選挙に出馬、撤退後バイデン候補により副大統領候補に選ばれ当選。米国発の女性、アフリカ系、南アジア系副大統領。 |
今週の注目指標
米第3四半期GDP速報値 10月30日21:30 ☆☆☆ | 前期まで8期連続でプラス成長となっている米国。前期は前期比年率+3.0%(確報値)と第1四半期の+1.4%と比べて高い成長を示した。今回も同じく+3.0%の高い伸びが見込まれている。直近の雇用の力強さやそれに伴う小売売上高の好結果もあり、GDPの約7割を占める個人消費が前期の+2.8%から+3.2%に伸びると見られており、全体を支える見込み。予想前後もしくはそれ以上の力強い成長を示すと、米国の大幅利下げは必要ないという見方につながるだけでなく、連続利下げも必要なく、据え置きを交えながらのゆっくりした利下げサイクルになるとの思惑からドル買いにつながる可能性がる。ドル円は155円台に向けた動きが見込まれる。 |
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日銀金融政策決定会合 10月30日、31日 ☆☆☆ | 3月、7月と利上げを実施した日本銀行であるが、今回は9月会合に続いての据え置きが見込まれている。植田日銀総裁は週末のG20後の会見で、金融政策判断の「時間的余裕ある」と発言しており、今回の据え置きを示唆している。 注目は今回発表される回にあたっている経済・物価情勢の展望(日銀展望レポート)。経済、物価の見通しなどを通じて、今後の利上げについてどこまで積極的な姿勢が示されるかなどが注目材料。政治情勢を受けて、日銀の利上げが遠のいたとの見方が海外勢を中心に強くなっているだけに、展望レポートの結果、年度内利上げへの期待が再び強まるようだと、円買い材料となる。その場合151円台に向けた動きが期待される。 |
米雇用統計(10月) 11月1日 ☆☆☆ | 前回9月の米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)の伸びが前月比+25.4万人と3月以来の強い伸びとなった。市場予想の+14.7万を大きく上回った。専門家の予想で最も強かった数字でも+22.0万人であり、かなりのサプライズとなった。また、7月の数字が+8.9万人から+14.4万人に、8月の数字が+14.2万人から+15.9万人に上方修正されており、雇用の力強さを印象付けた。失業率は前回と同水準の4.2%予想に対して4.1%に低下した。また、正社員を望みながら非正規雇用となっている雇用者などを加えた広義の失業率(U6失業率)も7.7%と8月の7.9%から低下している。 前回の非農業部門雇用者数の内訳をみると、製造業は-0.7万人と小幅ながら前回に続くマイナス圏となった。建設業が前回に続いて好調で+2.5万人となり、財部門全体としては+2.1万人と前回の+0.5万人を超える伸びとなった。民間サービス部門は+20.2万人と好調で9月の雇用統計全体の力強さにつながった。小売業が+1.6万人と、4カ月ぶりのプラス圏となった。同部門は比較的景気に敏感な業種だけに、市場に好印象を与えた。一方運輸・倉庫は-0.9万人と冴えない状況が続いた。介護部門など慢性的に人手不足な業種を含むことから基本的に雇用の増加が続く教育・医療部門は+8.1万人と力強い伸びを維持。娯楽・接客業は+7.8万人と前回の+5.3万人を上回り2023年1月以来の伸びとなった。単体の部門で1200万人超の雇用者を抱える飲食部門が+6.94万人と好調となり、娯楽・接客業全体を支えた。 関連指標を確認すると、新規失業保険申請件数は雇用統計と調査対象期間の被る12日を含む週のベースで、9月は+22.2万件、10月は+24.2万件と10月分が悪化している。今回の雇用統計は1日の発表のため、多くの関連指標はまだ発表されていない。中でもISM製造業は雇用統計と同じ日の23時発表、同非製造業は11月5日(日本時間6日午前0時、3日に米冬時間へ移行)と、雇用統計の後の発表となっている。29日発表の9月米雇用動態調査(JOLTS)求人件数の予想は793.5万件と前回の804万件から小幅低下。同時に発表される10月の米コンファレンスボード消費者信頼感指数の予想は99.3と前回の98.7から小幅改善見込みとなっている。30日発表のADP雇用者数の予想は前月比+11.0万人と前回の+14.3万人から伸びが鈍化する見込みとなった。 こうした状況を踏まえて今回の予想は、非農業部門雇用者数+11.0万人、失業率が4.1%となった。非農業部門雇用者数は前回から一気に伸びが鈍化する見込み。前回が強すぎた分の反動が警戒されているほか、9月末に米国南東部を襲ったハリケーン「へリーン」の影響が出てくるとみられている。 今後の米金融政策動向を考えるうえで重要な今回の雇用統計であるが、市場の注目度がより高い米大統領選を5日に控えていることもあって、相場の反応は抑えられる可能性が高い。もっとも、ドル高が進む中で、非農業部門雇用者数の伸びが予想を大きく上回るなど、力強さを示した場合、ドル高が進みドル円は155円超えが意識される展開となる可能性がある。 |
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