2024年11月18日号

(2024年11月11日~2024年11月15日)

先週の為替相場

トランプラリー継続も、週末に大きく調整

 先週(11月4日11日-11月15日)のドル円は、5日の米大統領選で勝利したドナルド・トランプ氏の今後の政策への思惑などを受けたトランプラリーと呼ばれる米株高・ドル高を受けて一時1ドル=156円70銭台を付けた。もっとも、米株式市場は史上最高値を更新した11日をピークに調整が強まった。為替市場でのドル高は継続したが、15日日本時間午前に先週の高値を付けた後、同日海外市場で153円80銭台までと、3円弱の大きなドル売りが出るなど、調整の動きも見られた。

 週明け11日は株高ドル高円安の展開。9日にミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が「好調な経済を背景に利下げ幅は従来の予想よりも縮小する可能性がある」と発言したことで、ドル買いが強まった。ベテランズデー(退役軍人の日)の祝日で、債券市場が休場(株式・商品市場はオープン)となる中、やや取引参加者が少なかったが、ダウ平均が史上最高値を更新したことを好感したリスク選好の円売りなども見られ、しっかりした動きとなった。

 12日にトランプ次期大統領が国務長官に対中強硬派のルビオ上院議員(用語説明1)、国家安全保障担当補佐官に同じく対中強硬派のウォルツ下院議員(用語説明2)を指名する方針と報じられたことで、米中関係の悪化警戒感が強まり、ドル円が154円台から153円40銭台まで売られる場面が見られたが、その後休場明けの米債券市場で利回りが上昇したことなどを受けてドルが反発。ドル高の勢いが見られた。

 12日の市場で155円00銭を付けきれなかったことで、154円50銭台までポジション調整売りが入る場面が見られたが、すぐに反発し、13日の市場で155円台に乗せた。同日の10月米消費者物価指数(CPI)は市場予想と基本的に一致。短期金利市場でイベントクリアもあって12月の利下げが当初の予想通り実施されるとの思惑が広がったことでドル売りが入る場面が見られたが、すぐに反発。逆にドル買いに勢いがつく形となり、米大統領選開票後に付けた水準を超えて7月以来のドル高円安となる155円60銭台を付けた。

 その後もドル高円安が継続し、14日に156円台に乗せると、同日のパウエル米FRB議長による講演で利下げを急がない姿勢が示されたことでドル高がさらに強まり、15日日本時間午前に先週の高値となる156円75銭を付けた。

 加藤財務相が「行き過ぎた動きには適切な対応を取る」「投機的な動き含め極めて高い緊張感を持って為替を注視」など円安をけん制する発言を行ったことで、高値から調整のドル売り円買いが入ると、その後も週末を前にしたポジション調整などもあってドル売り円買いが進み、同日海外市場で153円80銭台までと、高値から3円弱のドル安円高となった。少し戻して154円台前半で先週の取引を終えた。

 ユーロドルもトランプラリーを意識したユーロ安ドル高が優勢となった。11日の1ユーロ=1.0720ドル台から14日に1.0497ドルを付けている。1.0500ドル割れでのユーロ売りに慎重だったこともあり、15日はいったんユーロ買いが強まり1.0590ドル台を付けたが、その後対円でのユーロ売りなどに押され1.05台前半で先週の取引を終えた。

 ポンドドルでもドル高が優勢となり、11日の1ポンド=1.2920ドル台からじりじりとポンド安が進んだ。10月30日に発表された歴史的規模の増税への警戒感が強く、安値からのポンドの買いに勢いがなく、週末前までポンド安が継続。15日に1.2590ドル台を付けた。

 ドルが相場を主導する展開でユーロ円などクロス円は不安定な動き。ユーロ円は1ユーロ=164円00銭を中心としたレンジ取引から、ドル円の上昇もあって15日に165円00銭台を付けたが、その後リスク警戒の円買いが強まり162円30銭台まで急落した。

今週の見通し

 トランプラリーを意識しながらの展開となる。市場が注目する財務長官人事がまだ発表されていないほか、ライトハイザー前USTR代表の処遇も決まっていない。対外強硬姿勢が強調されると、トランプラリーが強まり、ドル高が進む可能性が高い。ドル円は介入警戒感が上値を抑えるものの、上方向を意識する展開か。

 7月に付けた161円90銭台を再び試すことが出来るかは微妙。ただドル全面高の中、値ごろ感などだけではドル円の上昇は止まらない可能性が高い。

 今週は目立った米指標発表予定などもなく、トランプラリーの動向と、日銀の利上げ期待や介入の可能性などを意識しながらの展開が続くとみられる。流れは上方向も、上値追いには慎重で下がると買いが出る流れと見ている。

 ユーロは今週ラガルド総裁をはじめECB関係者の発言予定が目白押しとなっており、やや注意が必要。利下げに前向きな姿勢が目立つようだと、売りが出る可能性がある。ただ、行き過ぎた動きにも警戒感が出ており、じっくりした下げになるとみている。

 対円ではドル主導の中で不安定な動きとなりそう。ドル円の上昇基調を支えに、下がると買いが出る展開か。

 ポンドは10月末に示された増税案への警戒が強く、下方向のリスクがやや高そう。1ポンド=1.2500ドルを目指す展開と見ている。

用語の解説

ルビオ上院議員 マルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州選出・当選3回)。フロリダ大学卒。マイアミ大学大学院で法務博士を取得。州議会議員(5回当選、最後の2年間は州議会議長)を経て、2011年から上院議員。2016年の大統領選では共和党予備選に出馬、有力候補の一人であったが、地元フロリダ州の予備選挙でトランプ氏に敗れ、その後はトランプ氏支持を表明した。イランへの経済制裁維持、キューバとの融和路線反対(ルビオ氏はキューバ系米国人)など対外強硬路線が目立つ。ウイグル問題などに関する連邦議会の委員会議長を務めるなど、対中強硬派としても知られている。
ウォルツ下院議員 マイケル・ウォルツ下院議員(フロリダ6区)。バージニア陸軍士官学校卒。陸軍と州兵に27年間勤務。陸軍特殊部隊(グリーンベレー)でアフガニスタン、中東、アフリカなどで作戦に従事。最終階級は州兵大佐。下院中国タスクフォースに所属し、中国産レアメタルへの依存を減らす法案を支援するなど、対中政策に関与。

今週の注目指標

ラガルドECB総裁講演 11月19日03:30
☆☆☆
 今週は欧州最大規模の金融フォーラム「ユーロ・ファイナンス・ウィーク」が18日から22日、ECB金融安定化及びマクロプルーデンス政策カンファレンスが20日、21日に行われるなど、ユーロ圏のイベントが並んでいる。ECBカンファレンスではラガルドECB総裁が開会挨拶、デギンドスECB副総裁が基調講演を実施する。ラガルド総裁は18日、22日にも講演を実施、デギンドス副総裁も18日にユーロフィナンシャルウィークの開会挨拶を行う予定、その他ECB要人も多くの発言予定が並んでいる。こうしたECB要人発言の中で今後の利下げ継続に向けての積極姿勢が見られるようだと、ユーロ売りが見込まれる。ユーロドルは1.03ドル台に向けた動きが見込まれる。
英消費者物価指数
11月20日16:00
☆☆☆
 10月の英物価統計が発表される。インフレターゲットの対象である消費者物価指数前年比は前回9月分が+1.7%と8月の+2.2%から急低下。市場予想の+1.9%も割り込み、2021年4月以来の低い水準となり利下げ期待につながった。英中銀は8月1日に利下げを実施した後、9月の会合で据え置きとなり、11月7日に物価の鈍化もあって再び利下げを実施した。12月に追加利下げを行うのかどうかは見方が分かれており、また今後の金融政策動向についても不透明感が強いなか、金融政策への影響が大きい物価統計に注目が集まる。
 今回の英消費者物価指数前年比の予想は+2.1%に上昇し、ターゲットの2.0%を上回る見込みとなっている。ただ、英景気の不安定さが少し警戒感を誘う中、予想を下回って前回並みなどの数字が出てくると、ポンド売りになるとみられる。
米新規失業保険申請件数(11月10日から16日)
11月21日22:30
☆☆
 1日に発表された10月米雇用統計はハリケーンの影響もあって予想を大きく下回る伸びにとどまった。ハリケーンという特殊事情だけに、実際の雇用市場の弱さを示したものではないとの見方が強いが、やや警戒感が出ている。毎週発表される新規失業保険申請件数であるが、今回の発表は11月米雇用統計と計測期間が重なる(月次の米雇用統計は基準日12日を含む1週間のデータから計算される)ため、注目度が高まっている。予想は22.0万件と前週の21.7万件からやや悪化も、10月12日を含む週の24.1万件よりも好結果となっている。予想から大きく乖離し、弱めの数字を示すと、ドル売りが強まる可能性がある。ドル円は152円台を付ける可能性がある。

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