2024年11月25日号

(2024年11月18日~2024年11月22日)

先週の為替相場

ウクライナ情勢などにらみやや不安定

 先週(11月18日-11月22日)のドル円は、根強いドル買いも、ウクライナ情勢を警戒した円買いなども見られ、1ドル=153円台から155円台にかけてのレンジ内でやや不安定な動きを見せた。

 15日に156円70銭台を付けた後、週末を前にしたポジション調整のドル売り円買いや、海外勢を中心とした日銀の早期利上げ期待からの円買いなどに153円台まで値を落とし、154円台前半まで少し戻した流れを受けて迎えた週明け18日の市場。朝方はドル安円高が継続し、153円84銭を付けたが、植田日銀総裁が金融経済懇談会で追加利上げのタイミングについて、「先行きの経済・物価・金融情報次第」と発言したことなどから早期利上げ期待が後退。一転して155円10銭台を付ける展開となった。円売りは続かず、いったん154円台前半まで売りが出たが、米債利回り上昇などを材料に同日海外市場で155円30銭台を付けるなど、根強いドル買いが見られた。

 しかし、ウクライナ情勢の緊迫化がリスク警戒の円買いを誘い、19日にドル円は153円29銭と先週の安値を付けた。ロシア側から「プーチン氏、核兵器使用の拡大を承認 最新の核ドクトリンで」との一報が入り、ドル円が153円29銭まで急落。その後154円台をいったん戻すも、ウクライナ側からロシア領内に戦術弾道ミサイルATACMS(用語説明1)で攻撃を実施したと報じられ、再び153円台前半までドル安円高となった。

 その後は再びドル高となり、ドルの堅調さが印象的となった。米債利回りの上昇や、米半導体大手エヌビディア決算を前にした期待感からの米株先物の上昇などが支えとなり、20日に155円85銭を付けた。

 その後、ロシアが大陸間弾道弾(ICBM)(用語説明2)でウクライナを攻撃とウクライナ軍が発表したとの報道が円買いを誘った。もっとも米国をはじめ西側諸国はICBMであることを否定、その後ロシアも中距離ミサイルでの攻撃と、ICBMであることを否定した。

 また、21日に植田日銀総裁が次回12月の日銀金融政策決定会合までにより多くのデータが得られると発言したことで、利上げはデータ次第というこれまでの発言を受けて12月利上げの可能性があるとの期待が強まり、こちらも円買いとなった。

 153円台を付ける動きとなったが、週末を前にした積極的なドル売りには慎重姿勢が見られ、154円台推移で週の取引を終えた。

 ユーロドルは週の半ばまで1ユーロ=1.05ドル台を中心とした推移。ウクライナ情勢への警戒感から1.0600ドル超えでのユーロ買いに慎重も、1.05ドル台前半ではユーロ買いが出る流れとなっていた。

 20日に付けた1.0610ドルを高値にその後はユーロ安となった。ロシアがICBMを世界で初めて実戦利用したのではとの観測が、ユーロ売りを誘った。節目の1.0500ドルを割り込むと、ストップロス注文を巻き込んで売りが強まった。さらに、22日のユーロ圏購買担当者景気指数(PMI)が予想を下回ったこともユーロ売りを誘い、一時1.0335まで急落。ECBが12月の理事会で0.5%の大幅利下げに踏み切るのではとの期待がユーロ売りにつながった。少し買いが入って1.04ドル台前半で週の取引を終えた。

 ユーロ円はウクライナ情勢への警戒感からの円買いに19日に1ユーロ=161円50銭前後を付けた後、対ドルでのユーロ高もあり164円70銭台まで上昇した。ただ、ウクライナ情勢への警戒が強い中、その後は売りが優勢。ユーロ売り、円買い両面からの動きに、22日に159円93銭と節目の160円を一時割り込む場面も見られた。

今週の見通し

 今週は木曜日が米国の感謝祭、金曜日も連休をとる参加者が多い。祝日でもそれなりに取引がある米国市場であるが、クリスマス、イースターと並んで感謝祭はしっかり休む傾向があり、取引量が減る。

 週後半の米市場の動向を前に、週前半も比較的様子見ムードとなることが例年は多い。今年はトランプラリーの動向がある分、動きが出る可能性があるが、行き過ぎた動きには警戒感が出そう。

 ドル円は153円台から155円にかけてのレンジを中心とした取引が見込まれる。目立った米指標発表予定などもなく、大きく動く展開にはなりにくい。

 ユーロドルは上値の重さを少し警戒したい。先週のユーロ圏PMIの弱さもあって、12月のECB理事会で0.5%利下げに踏み切るとの思惑が広がってきている。短期金利市場での織り込みをみると、0.25%と0.50%の利下げ見通しがほぼ拮抗している状態。こうした見通しが分かれる状態が不安定な動きにつながっている。0.5%利下げ期待がこの後強まるようだと1.03台トライの意識につながる。

 ユーロ円はやや不安定。ウクライナ情勢への警戒もあってリスク警戒の円買いが入りやすいが、下がると買いが出る展開。

用語の解説

ATACMS ATACMS(エイタクムス)は米陸軍で採用されている地対地ミサイル。米ロッキードマーティン社製造。射程距離は300キロ。2024年にバイデン大統領がウクライナへの供給を認め、3月より輸送が開始されたとされている。その他、韓国、ギリシャ、バーレーン、トルコ、ポーランドなどの軍隊も採用している。
大陸間弾道弾(ICBM) 欧州大陸と北米大陸のように大洋を挟んでの攻撃が可能な超長距離ミサイル。1972年に米国と当時のソ連との間で調印された第1次戦略兵器制限交渉(SALT)での定義では有効射程距離が5500キロ以上のミサイルとなる。ウクライナ軍側からロシアがICBMを発射したと発表があったが、事実だった場合実戦で初めて利用されたことになる。もっともロシア、米国など西側諸国はICBMではなかったとの見解を発表している。

今週の注目指標

NZ中銀政策金利 11月27日10:00
☆☆☆
 NZ準備銀行(RBNZ/中央銀行)金融政策会合は3会合連続での利下げを決定する見込み。RBNZは8月14日に今年最初の利下げを実施。10月9日の会合では0.5%の大幅利下げに踏み切った。今回も大幅利下げが見込まれている。
 10月に発表されたNZ第3四半期消費者物価指数は前年比+2.2%と第2四半期の+3.3%から一気に鈍化した。10月9日の会合声明で「今の経済環境では、責務であるインフレ率の低位安定と整合する形で、景気抑制的な金融政策のレベルをさらに緩和する余地が与えられている」と物価が抑制された状況では追加利下げ実施の可能性が高まることを示していたこともあり、市場では一時0.75%の利下げを約60%も織り込む動きとなった。さすがに0.75%はやりすぎとの意識もあり、その後は50%利下げ見通しが広がった。直前の状況では短期金利市場での織り込みは0.50%が78%、0.75%が22%、金融機関のエコノミストなどの予想は0.5%利下げでほぼ一致となっている。
 この状況で0.75%となった場合は、ビッグサプライズとなってNZドルが大きく崩れる可能性がある。1NZドル=0.5700ドルに向けた動きが見込まれる。大方の予想通り0.5%利下げとなった場合は声明に注目。追加利下げへの姿勢を前回同様にしっかりと示してくると、0.5800ドル割れに向けた動きが予想される。
米PCEデフレータ(10月)
11月28日00:00
☆☆☆
 10月の米消費者物価指数は前年比+2.6%と9月の+2.4%から小幅伸びが強まった。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数は前年比+3.3%と9月と同水準の伸びとなった。前月比は+0.2%、コア前月比は+0.3%。いずれも市場予想通りとなっている。エネルギー価格の低下が9月から少し落ち着いたことが総合の押し上げにつながった。住居費は横ばい。やや目立ったのが宿泊費で9月の-2.8%から-0.1%となった。これはハリケーンの影響とみられる。
 こうした状況を受けてPCEデフレータは前年比+2.3%と9月の+2.1%から小幅伸びが強まる見込み、コアPCE前年比は+2.8%とこちらも9月の+2.7%から小幅伸びが強まる見込み。コアの反発は利下げ期待の後退につながる。12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)は利下げと据え置きで見方が分かれており、予想以上に強めの伸びを見せると、据え置き期待が広がる形でドル高となる可能性がある。ドル円は155円に向けた動きが期待される。
東京都区部消費者物価指数(11月)
11月29日08:30
☆☆
 22日に発表された日本の10月全国消費者物価指数は生鮮除くコア前年比が+2.3%と、2カ月連続で伸びが鈍化も市場予想の+2.2%を上回る伸びとなった。これを受けて12月の日銀金融政策決定会合での利上げ見通しがやや強まった。植田日銀総裁は利上げについてデータ次第との姿勢を示している。12月の会合については前回10月30日、31日開催の会合で据え置きが発表された時点での見通しは、12月も据え置きが大勢となっていた。短期金利市場での織り込みをみると、0.25%利上げが24%、据え置きが76%となっていた。その後利上げ期待が拡大し、利上げと据え置きの期待がほぼ拮抗。10月全国消費者物価指数の強い結果を受けて利上げが65%、据え置きが35%まで一時期待が強まった。その後利上げ期待が少し落ち着いたが50%を超える水準となっており、据え置き期待を上回っている。こうした中、全国消費者物価指数の先行指標となる11月東京都区部消費者物価指数が強めに出た場合、利上げ期待がさらに高まる可能性がある。市場予想は生鮮除くコア前年比が+2.0%と10月の+1.8%より伸びが強まるとなっている。酷暑対策として8月から10月まで実施された電気・ガスの補助金がなくなり、料金が上がるため物価全体を押し上げる見通し。理由がはっきりしているため、伸びが強まったとしても、相場にどこまでの影響があるのかは不透明であるが、市場は12月の会合に向けて物価にかなり注目しており、予想よりも強い伸びを示した場合、円高となる可能性がある。ドル円は153円台前半に向けた動きが予想される。

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