2024年12月02日号

(2024年11月25日~2024年11月29日)

先週の為替相場

日銀の利上げ観測など背景にドル安円高優勢

 先週(11月25日-11月29日)は25日の1ドル=154円72銭から29日の149円47銭まで、5円強のドル安円高となった。28日の米感謝祭に続いて29日を連休とした米国勢が多く、週後半にかけて取引が閑散となる中、感謝祭前からポジション調整のドル売りが広がった。

 週初25日はドル買い円売り優勢で迎えた。次期財務長官に財政規律重視派とされるベッセント氏(用語説明1)を起用するとの報道を受けてドルが売られ、153円50銭台を付けた。しかし、ベッセント氏が米紙とのインタビューで「最優先事項はトランプ減税の実現」「ドルの基軸通貨としての維持に焦点」などと発言したことでドルが反発。先週の高値154円72銭を付けた。

 その後はドル売りが優勢に転じた。トランプ次期大統領は麻薬など違法薬物の米国流入を理由に中国からの輸入品に10%の追加関税を課すと自身のSNSに投稿。カナダとメキシコに25%の関税を課す方針も表明した。市場ではリスク警戒感から円買いドル買いとなった。ドル円は売り買いが一時交錯した後、円買いが優勢となった。

 感謝祭前のポジション調整の売りも加わり、27日にドルは150円46銭まで下落。ただ、行き過ぎたドル売りには警戒感が見られ、28日に151円90銭台までドルは値を戻した。

 29日東京朝に発表された11月の東京都区部消費者物価指数(生鮮食品除く前年比)は+2.2%と市場予想の+2.1%を超える伸びとなり、12月の日銀金融政策決定会合での利上げ観測が強まる形で円が買われた。

 ユーロドルはウクライナ情勢への警戒感から22日に1ユーロ=1.0335ドルまで下げた後、1.0410ドル台で22日の取引を終えた。週明け25日はベッセント氏を次期財務長官に起用することが決まったとの報道から1.04台後半へユーロ高ドル安となってスタート。1.0530ドルを付けたが、トランプ次期大統領の中国、カナダ、メキシコへの関税強化報道でのドル買いに1.0420ドル台を付けた。その後は一転してドル全面安に押されて27日に1.0588ドルまで上昇。週末までユーロ高ドル安の流れが続き、29日には1.0597ドルを付けている。

 ユーロ円はドル円の下げに押されて25日の1ユーロ=162円14銭から29日に158円04銭を付けた。対ドルでユーロが買われた分、ドル円に比べると値幅が抑えられた。

 27日のNZ準備銀行(中央銀行)金融政策会合は大方の予想通り、政策金利を4.75%から4.25%とした。一部で0.75%利下げ観測がくすぶっていたことから、0.5%利下げ発表後はNZドルが買われ、1NZドル=0.5830ドル前後から0.5882ドルを付けた。その後、ドル円の下げなどを受けた対円でのNZドル売りに0.5846ドルを付けたが、ドル全面安もあって反発し、29日に0.5929ドルを付けた。

今週の見通し

 12月18-19日の日銀金融政策決定会合での利上げ観測が強まっている。直近の予想は利上げ60%、金利据え置き40%。

 利上げ見送りの場合でも2025年1月会合で利上げするとの見方が大半のため、円買いが入りやすい地合いとなっている。12月17-18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では利下げ65%、金利据え置き35%となっており、日米金利差が急速に縮小するとの見方が強い。

 ただ、日米ともに金利据え置き見通し予想も一定の割合で残り、急激なドル安円高は考えにくい。トランプ次期大統領による関税強化方針がドル買い材料となる場面もあり、やや不安定な値動きとなっている。

 米FOMCでの利下げは12月6日発表の米雇用統計(11月)次第の見方もある。10月の米雇用統計はハリケーンや米航空大手ボーイングのストライキ(用語説明2)も影響し、予想を大きく下回る伸びにとどまった。雇用市場全体の流れは堅調という見方が強いが、11月の雇用統計も市場予想を下回ると、警戒感が広がりやすいだろう。

 ドル円は週末の雇用統計をにらみつつ150円00銭を中心とした推移が見込まれる。リスクはやや円高方向と見ており、148円台を試す可能性がありそうだ。

 ユーロドルもドル安方向を警戒。ユーロ売りに一服感が出ており、やや買いが入りやすい地合い。

 ユーロ円はドル円の影響が強く、上値が重い展開か。

用語の解説

ベッセント氏 ベッセント氏は米国の投資家。1962年ノースカロライナ州生まれ。イェール大学卒業後、ソロスファンドなどに勤務。2015年に自身のファンドであるキースクウェアキャピタルを創業。
ボーイングのストライキ 米航空機大手ボーイングのワシントン州の工場に勤務する従業員約3万3000人を代表する労働組合国際機械工・航空宇宙産業労働組合(IAM)との労使交渉が決裂し、9月13日に同社にとって約16年ぶりとなるストライキが始まった。10月23日に会社側の新提案が組合員投票が否決されるなど交渉は難航したが、11月4日に終結した。

今週の注目指標

米ISM製造業景気指数(11月)
12月2日00:00
☆☆☆
 前回10月の米ISM製造業景気指数は46.5と2023年7月以来の低水準となった。好悪判断の境となる50を7カ月連続で下回った。新規受注が9月の46.1から47.1に改善したが、生産が49.8から46.2に急低下した。雇用は9月の43.9から44.4に改善したが、依然として50割れの弱い水準となっている。
 今回は47.6への改善が予想されている。前回の生産の弱さはボーイングのストライキが影響したとみられる。予想前後か予想以上に強めなら、151円台に向けたドル買いが予想される。
米JOLTS求人件数(10月)
12月4日00:00
☆☆☆
 前回9月の米雇用動態調査(JOLTS)求人件数は744.3万件と、8月の786.1万件(速報の804万件から下方修正)から減少した。減少の大半は米南部に集中し、ハリケーンの影響が大きかったとみられている。
 今回の予想は747万件と、前回とほぼ同水準。予想前後か予想を下回った場合は、12月の米利下げ観測につながり、148円台に向けたドル売りが予想される。
米雇用統計(11月)
12月6日22:30
☆☆☆
 前回の雇用統計(10月)は非農業部門雇用者数が+1.2万人にとどまった。ハリケーンの影響などからある程度の伸び率縮小が予想されていたが、市場予想の+10.8万人を大幅に下回り、雇用者数が減少した2020年12月以来の弱い数字だった。9月は+25.4万人から+22.3万人、8月は+15.9万人から+7.8万人にそれぞれ下方修正された。9月末から10月にかけて米南東部を襲ったハリケーン「へリーン」「ミルトン」の影響や、ボーイングのストライキの影響が強く出たとみられている。失業率は市場予想通り9月と同じ4.1%だった。
 今回の予想は+20万人と、雇用の伸びが回復すると期待されている。失業率は前回と同じ4.1%が見込まれる。先週までに発表された関連指標をみると、週間ベースの新規失業保険申請件数は、雇用統計と調査期間の重なる12日を含む週のデータで、10月の24.2万件に対して11月は21.5万件と強い結果となった(失業保険のため、少ないほうが好結果)。コンファレンスボード消費者信頼感指数は10月の109.6から111.7まで改善した。内訳の中で、雇用の現状で職を見つけるのが困難であるとの回答が10月の17.6%から15.2%に低下し、5月以来の低水準となった。こうした状況から予想前後の雇用の回復は十分に期待できる。
 現時点で12月17-18日の米FOMCでの利下げ見通しは65%程度となっている。雇用の伸びが予想を下回った場合、利下げ見通しが強まり、147円台に向けてドルが売られる展開が予想される。

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