2024年12月09日号
先週の為替相場
政治的混乱に警戒感も値動きは限定的
先週(12月2日-12月6日)はフランスと韓国の政治的混乱がリスク警戒につながる場面が見られたが、一方向の動きにならなかった。
フランスのアルマン経済・財務相が、極右政党国民連合の実質的指導者ルペン氏からの予算案に関する要求を拒否する姿勢を1日に示したことで、週明け2日の市場はユーロ売りドル買いが主導するドル全面高でスタートした。内閣不信任案成立の可能性が高まったとしてユーロが売られた(4日にフランス下院で不信任案可決)。また、トランプ大統領がBRICS諸国に対して、脱ドル化を進めると100%の関税をかけると警告したこともドル高につながった。
ドル円はドル全面高を受けて1ドル=150円70銭台まで上昇したが、その後円高が優勢となった。ユーロ円でのユーロ売り円買いなどがドル円の重石となった。149円00銭台までドル安円高となった後、149円台維持を好感して反発。3日東京市場で150円20銭を付ける場面が見られた。日経平均の上昇を受けた円売りや、米10年債利回りの上昇などもドル買い円売りに寄与した。
3日に韓国の尹大統領が非常戒厳を宣布したことで、一気に円買いとなった。150円00銭前後での推移から148円65銭を付けた。韓国議会が非常戒厳の解除要求を可決し、6時間半で非常戒厳が解除されたこと、3日夜の米雇用動態調査(JOLTS)求人件数が予想を上回る好結果となったことなどから、ドル買い円売りとなり、149円台を回復。4日の市場では12月の日銀金融政策決定会合での利上げが遠のいたとの通信社の観測記事をきっかけに円売りが強まり、151円20銭台を付けた。
高値から少しドル売りが出るも、150円00銭前後がしっかりの展開となった後、5日朝に「賃上げの持続性に確信を持てていない」などと発言していた中村審議委員が、午後に「利上げに反対しているわけではない」と発言。149円60銭台までの円買いとなった。
その後は150円00銭を挟んでの推移。注目された米雇用統計発表前に150円70銭前後を付けると、雇用統計の発表後に149円37銭前後まで売りが出た。米雇用統計は非農業部門雇用者数が予想を上回る伸びとなったが、失業率が予想通りとはいえ悪化。12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ決定見通しが強まる展開となっている。もっとも、米雇用統計前から利下げ見通しが大勢となっていたこともあり、下げ一服後は買い戻しが出て150円台を回復して週の取引を終えた。
ユーロドルはフランスの政情不安で先々週末終値の1ユーロ=1.0570ドル台から2日に1.0461ドルを付けた。下げ一服後は少し戻して1.0500ドル前後での推移となった後、5日に1.0590ドル前後まで上昇した。4日のバルニエ内閣に対する不信任案可決を受けた警戒感が一服。2日の安値を割り込めない状況を受けてユーロの買い戻しが広がった。6日の米雇用統計後のドル売り局面では1.0630ドル台まで上値を伸ばしたが、高値からは調整売りが入った。
ユーロ円もフランスの政情不安と週前半は軟調。2日東京市場の1ユーロ=158円60銭台から3日に156円10銭台を付けた。もっとも、その後はユーロドル同様にユーロ安の調整が入り、6日に159円50銭台を付けている。
今週の見通し
注目された12月6日の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が予想を上回ったものの、失業率が予想通り悪化するなど、サプライズ感のある結果とはならず。市場は12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ期待を強めている。前回11月の利下げの後、株高などを受けて12月のFOMCでの利下げ期待が後退。短期金利市場での織り込みは、一時は30%程度となり、据え置き見通しが大勢を占める状況が見られた。その後利下げ期待が強まる中で、先週末の米雇用統計前には70%程度の利下げを織り込む動きとなっていた。雇用統計後は85%程度まで利下げを織り込む展開となっている。
ただ、ドル円は比較的しっかりとしており、米利下げ期待にもかかわらずドル安は限定的。今月の日銀金融政策決定会合での利上げ期待が後退しており、円高一服の流れが強まっていることも、ドル円を支えている。
ドル円は150円00銭を中心に次の方向性を探る展開。円高リスクがやや高そうに見えるが、FOMCまではレンジ取引が続く可能性もある。
ユーロドルは一時のユーロ売りドル買いから反発も、1.06ドル台でのユーロ買いに慎重。方向性を探る展開となっている。
ユーロ円はドル円同様に円高リスクがやや高そうだが、対ドルでのユーロ買いもあって、動きが抑えられている。
用語の解説
バルニエ内閣 | 今年6月のフランス議会総選挙において、マクロン大統領が率いる再生を含む与党連合アンサンブルが95議席を減らして第2勢力となったことを受けて、当時のアタル内閣が辞職。第1勢力となった左派連合、第3勢力となった極右国民連合との間で首相指名の調整が難航した挙句、マクロン大統領は9月5日に主要3勢力ではない共和党のミシェル・バルニエを首相に指名。9月21日の閣僚指名でバルニエ内閣が発足した。12月4日に内閣不信任案がフランス下院で可決され、翌12月5日に総辞職してわずか3カ月の短命内閣となった。 |
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中村審議委員 | 中村豊明日本銀行政策委員会審議委員。日立製作所出身。同社代表執行役CFOなどを経て、令和2年7月1日より審議委員に就任。今年3月のマイナス金利解除や7月の追加利上げに際して反対票を投じており、審議委員の中で最もハト派と市場に認識されている。 |
今週の注目指標
豪中銀政策金利 12月10日12:30 ☆☆☆ | 10日12時半に豪準備銀行(中央銀行)金融政策会合の結果が公表される。政策金利(オフィシャルキャッシュレート:OCR)は現行の4.35%で維持される見込みとなっている。NZ中銀が11月27日に2会合連続の0.5%利下げ(利下げとしては3会合連続)を決定したこととは対照的に、豪中銀は昨年11月にOCRを4.35%まで引き上げた後、金利の据え置きを続けている。11月の会合で示されたステートメントでは来年6月までに1回の利下げが示唆されており、市場は6月会合での利下げを見込む動きとなっていた。しかし、4日に発表された豪第3四半期GDPが予想を大きく下回り、前期比+0.3%(予想+0.5%、第2四半期+0.2%)、前年比+0.8%(予想+1.1%、第2四半期+1.0%)に留まったことで、早期の利下げ期待が高まった。この結果を受けて来年2月の利下げ期待が広がっている。早期利下げに向けて声明などに変化が見られると、豪ドル売りとなりそう。対ドルで1豪ドル=0.6300ドルが目先のターゲット。 |
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米消費者物価指数(11月) 12月11日22:30 ☆☆☆ | 11日22時半に11月の米消費者物価指数(CPI)が発表される。米国のインフレターゲットの対象は個人消費支出(PCE)デフレータであるが、CPIに比べて発表が遅く11月分の発表は今月のFOMC後となる20日22時半となっているため、直前の物価状況の確認としてCPIが注目されている。 前回10月のCPIは前年比+2.6%と9月の+2.4%から伸びが強まった。食品とエネルギーを除いたコア指数は+3.3%で9月と同水準の伸びとなった。前回の内訳をみると、9月から10月にかけてガソリン小売価格が前月比-1.9%(季節調整前、調整後は-0.9%)と小幅低下したものの、2023年の9月から10月にかけて-5.3%と大きく低下していたため、前年同月比でのマイナス幅縮小が見られた。コア部門では9月に+1.8%と伸びた衣料品が+0.3%まで伸びが鈍化したものの、中古車価格が-5.1%から-3.4%まで下落幅が縮小しており、結果的に財部門は9月と同じ-1.0%となった。サービス部門では物価全体を100としたとき36.2%と三分の一以上のウェイトを占める住居費が9月と同水準となった。医療費の伸びなどもあって住居費を除いたサービスは9月の+4.7%から+4.8%となった。 今回の米CPIであるが、前月比+0.3%、前年比+2.7%と10月の+0.2%、+2.6%から共に伸びが少し強まる見込み。10月から11月にかけて米国のガソリン小売価格が低下したものの、2023年の10月から11月にかけて、より大きな下落があったため、前年比ではマイナス幅が縮小するとみられている。その分がCPI全体の伸び見通しにつながっている。ただ、こちらの影響は限定的となりそう。エネルギーと食品を除いたコアは前月比+0.3%、前年比+3.3%と共に10月と同水準の伸びが見込まれている。予想に反して伸びが強まるようだと、利下げ期待の後退につながる可能性がある。この場合はドル買いが見込まれる。ドル円は151円に向けた動きが見込まれる。 |
ECB理事会 12月12日22:15 ☆☆☆ | 12日のECB理事会は今年4回目の利下げが見込まれている。ECBは今年6月に利下げを開始、7月の据え置きを経て、9月、10月と利下げを実施。3つの政策金利のうち実勢に近い預金ファシリティ金利の利下げ幅はいずれも0.25%となっており、今回も0.25%の利下げが見込まれている。 ユーロ圏は景況感が悪化しており、一時は大幅利下げを期待する動きが見られた。11月22日に発表されたユーロ圏及びフランス、ドイツの11月購買担当者景気指数(PMI)速報値が軒並み弱く出た際には、短期金利市場での0.5%の利下げ見通しが50%を超える場面まで見られた。ただ、0.5%の利下げはやや行き過ぎとの思惑もあり、直近では0.25%利下げ見通しで市場はほぼ一致している。 注目はここにきてのユーロ圏主要国の政治的混乱受けてのECBの姿勢。ドイツ連立政権が11月に崩壊、早ければ年内に首相の不信任決議が見込まれている。フランスは12月5日にバルニエ内閣が総辞職。マクロン大統領は新首相の選定にかかっているが、難航が見込まれている。こうした状況がECBの姿勢にどこまでの影響を与えるか、ラガルドECB総裁の会見に注目が集まる。警戒感から今後の利下げ継続姿勢が強く示されるとユーロ売りにつながる可能性がある。ユーロドルは1.0500ドルに向けた動きが見込まれる。 |
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