2024年12月23日号
先週の為替相場
日米の金融政策会合を受けてドル高円安
先週(12月16日-12月20日)は日米の金融政策会合を受けて、ドル高円安が優勢となった。
17日、18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)と18日、19日の日銀金融政策決定会合をにらみ、発表までは落ち着いた動きとなった。ドル円は1ドル=153円00銭から154円50銭のレンジ内での推移。
市場予想通り0.25%の利下げとなった米FOMC後にドル高となった。FOMCメンバーによる経済見通し(SEP)では、2025年の経済成長率見通しが9月時点から引き上げられ、失業率見通しが引き下げられ、物価見通しが引き上げられた。特に物価見通しはPCEデフレータ(用語説明1)が9月時点での前年比+2.1%から+2.5%、コアPCEデフレータが前年比+2.2%から2.5%に大きく上方修正された。こうした見通しの変化もあり、2025年末時点での政策金利見通しが9月時点での3.25-3.50%から3.75-4.00%へ上方修正された。2025年中に2回の利下げを見込む形。市場は来年中2回か3回で見通しが分かれていたこともあり、このSEPでの変化を受けたドル買いが広がった。
さらにその後のパウエル議長の会見で、声明で示された金利調整の「規模と時期」との表現について利下げペースの減速が迫っている、もしくはその時期に到達したことを示していると説明。短期金利市場では来年中1回の可能性も十分にあるとの見方が広がり、ドル高となった。
日銀金融政策決定会合では大方の予想通り政策金利を据え置いた。一部で利上げ期待が残っていたため、発表直後は円安に反応。さらにその後の植田日銀総裁の会見で利上げの判断まで「あとワンノッチほしい」などと発言。来年の春闘の状況や来年からのトランプ政権の動向にも言及したことで、1月も利上げが見送られるのではとの見方が広がった。春闘の状況が確認できるのは4月。大勢判明の状況でも3月であることや、トランプ氏の大統領就任が1月20日であることから、1月会合の段階では情報がそろわないとの見方が広がった。ドル円は会合後の円売りが20日東京朝まで続き、157円93銭と7月17日以来のドル高円安となった。
高値を付けた後は一転してドル売り円買いとなった。加藤財務相、三村財務官が円安けん制発言を行ったことや、クリスマスウィークを前に持ち高調整の動きが広がったことなどがドル売り円買いにつながった。ドル円は155円90銭台と2円弱の下げとなった。その後少し戻して156円台で週の取引を終えた。
ユーロドルは1ユーロ=1.0500ドル前後を挟んでの推移から、米FOMC後のドル高に1.0340ドル台を付けた。その後1.0420ドル台まで回復も、金曜日のドル高に1.0340ドル台を再びつけた。もっともその後はドル円同様に持ち高調整などが広がり、1.04台を回復して週の取引を終えた。
ユーロ円は1ユーロ=161円台を中心とした推移から、米FOMC後のユーロドルでのユーロ売りに159円80銭台を付けた。その後日銀会合を受けた円安に163円80銭前後を付けている。
今週の見通し
今週はクリスマスウィークとなり、海外勢を中心に取引参加者がかなり少なくなる。25日は日本、中国などごく一部を除いて世界的に休場。26日は米国市場が開いているものの、例年通りであれば取引は閑散としたものとなる。週の初めから休暇を取っている参加者も多く、週を通じて落ち着いた動きとなることが多い。
大口の売買が入ると、市場が閑散としている分、動きが荒くなることがある点には注意が必要。仕掛け的な大口の注文が入るケースはあまりないが、地政学的な要因などリスク材料の動向を受けた動きが見られることがある。
ドル円は155円台半ばから156円にかけての動きが中心か。先週の米FOMCと日銀会合を受けてドル高円安の流れが強まる可能性があるが、今週はいったん小休止。来週から動きが再開する可能性が高そう。
ユーロドルは1.04ドル台を中心とした推移か。1.0500ドル前後が重くなりそうだが、積極的に下値をトライする勢いはないとみている。
ユーロ円などクロス円も基本的に落ち着いた動き。ただ、ドル円、クロス円共に日本発の材料には注意したい。25日に植田日銀総裁が経団連で講演、27日には先週の日銀会合の主な意見(用語説明2)の公表と12月の東京消費者物価指数の発表と、日本の予定が並んでいる。植田総裁が市場の利上げ期待先送りの流れの強さを受けて、修正発言をしてくるようだと、いったん円買いとなる可能性がある。
用語の解説
PCEデフレータ | PCEとは米商務省経済分析局(BEA)が公表する個人消費支出(Personal Consumption Expenditures)のこと。PCEデフレータは名目PCEを実質PCEで割ったものとなる。米国のインフレターゲットの対象指標となっている。多くの国でインフレターゲットの対象となっている消費者物価指数(CPI)に比べると、計算方法の違いなどからやや低く出る傾向がある。調査範囲(PCEは全米、米CPIは都市部のみ) 、調査方法(PCEは個人が使ったお金ベース、CPIは対象とした約200項目の価格変化ベース)などの違いもあるが、変化傾向はほぼ一致することから、市場は発表の早いCPIを重要視する傾向がある。 |
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日銀主な意見 | 2016年に日銀金融政策決定会合の運営の見直しの一環として発表が始まったもので、原則として会合の6営業日後に公表される。各政策委員及び政府出席者が、会合で表明した意見について自身でまとめ、総裁に提出。総裁が自身の責任の下で各項目ごとに編集し、公表するものとなっている。 |
今週の注目指標
植田日銀総裁講演 12月25日 ☆☆☆ | 植田日銀総裁が日本経済団体連合会審議員会で講演を行う。例年行われているもので、昨年も12月25日に実施されている。本来はそれほど注目ざれる材料ではないが、先週の日銀会合において利上げの判断にはワンノッチが欲しいと発言しており、春闘や次期トランプ政権の運営に言及したことで、市場の利上げ期待が先送りされているところだけに注目が集まる。先週の発言の修正が入り、1月利上げの可能性を意識させるものになると円買いになる可能性がある。ドル円は155円00銭に向けた動きが期待される。 |
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東京消費者物価指数(12月) 12月27日08:30 ☆☆ | 今後の利上げ判断に大きな影響を与える物価動向。インフレターゲットの対象である全国消費者物価指数(生鮮除く前年比)の先行指標として注目される12月の東京都区部消費者物価指数が発表される。生鮮除く前年比の予想は+2.5%。前回11月分は+2.2%と市場予想の+2.0%、10月の+1.8%を超える伸びとなった、今回は電気、ガス料金の上昇などの影響もあり、さらなる伸びが期待されている。予想通りもしくはそれ以上の強さを見せると、利上げ期待の再開につながり、円安に調整が入る可能性があり、弱く出た場合は円売りになる可能性がある。すぐ後に出る日銀会合における主な意見次第であるが、直近のレンジを超える動きのきっかけとなる可能性がある。 |
日銀金融政策決定会合における主な意見 12月27日08:50 ☆☆ | 大きな円安につながった18日、19日開催の日銀金融政策決定会合。一部で期待されていた利上げが見送られただけでなく、その後の植田総裁会見などを通じて、1月の利上げも見送りになるのではとの見方が広がっている。そうした中、各委員がどのような主張をしていたのかが確認できる会合の主な意見が27日に公表される。日銀会合は議事要旨の公表が次の会合の開催後(今月の会合であれば議事要旨の公表は2025年1月29日で、次回会合の1月23日、24日の後)となるため、会合での議論の様子を探る重要な材料とされている。ハト派の印象が強かった総裁の姿勢に沿った意見が多いようだと、円売りが強まる可能性がある。ドル円は160円に向けた動きが見込まれる。 |
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