2024年12月30日号
先週の為替相場
取引参加者が少ない中で、ドル高円安を意識
先週(12月23日-12月27日)はクリスマスウィークとあって海外勢を中心に参加者が極端に少ない週となった。ドル円は20日東京朝に7月17日以来のドル高円安となる1ドル=157円93銭を付けた後、一転してドル安円高となり155円96銭を付けた流れを受け、156円10銭台で週の取引をスタート。その後は取引参加者が少ない中で、ドル高円安が優勢となり26日に158円08銭まで上値を伸ばした。高値を付けた後は157円台での推移。27日にも157円99銭を付けるなど、ドル高円安の流れとなったが、介入警戒感などもあって158円台でのドル買いには慎重となった。
23日の市場は米債利回りの上昇などをきっかけとしたドル高が優勢となった。19日に節目の1ユーロ=1.0400ドルを下回り1.0340ドル台を付けた後、いったん1.0450ドル近くまで戻していたユーロドルが、1.0384ドルを付けるなど、ドルはほぼ全面高となった。ドル円は157円30銭前後まで上昇した。
その後はクリスマスムードがさらに強まり、主要通貨は基本的に膠着となった。ドル円は157円台前半を中心とした推移。下がると買いが出る展開も、上を積極的に試す勢いが見られず。注目された25日の植田日銀総裁による経団連審議員会での講演は、12月18日、19日の日銀金融政策決定会合後の総裁会見での内容を踏襲する形となった。利上げ姿勢の継続を示したものの、国内経済の重要事項として春闘(用語説明1)をあげ、海外経済ではトランプ次期政権の不透明感を示しており、1月の日銀金融政策決定会合での利上げ期待を後退させる形となったが、取引参加者が少ない中で、相場の反応は限定的なものに留まった。
欧州などが休場となった26日、クリスマス明けとなったNY市場でドル高円安が強まり、158円08銭を付けた。その後は157円台後半での推移が続く中、金曜日海外市場でいったんドル売り円買いをトライも157円35銭までにとどまり、その後いったんしてドル円は反発し157円99銭を付けている。
ユーロドルはドル高の流れを受けて上値が重い展開。もっともFOMC後に付けた1.0340ドル台が遠く、狭いレンジでの推移が続いた。
ユーロ円はドル円同様に円安が優勢。1ユーロ=163円台での推移が続いたあと、164円80銭台を付けている。
今週の見通し
日本勢は年末年始にかけて取引参加者が極端に少なくなる。株式市場が30日の大納会後、1月6日の大発会まで休場となることもあり、比較的落ち着いた流れが見込まれる。
ただ、流れはドル高円安方向。12月の日米金融政策会合を経て、円とドルの金利差縮小期待が後退しており、もう一段のドル高円安が見込まれるところとなっている。
行き過ぎた円買いには介入警戒感が出てくるが、円安の悪影響を受ける本邦輸入企業などが休暇に入る中で、今週は介入の実施が難しいとの思惑もあり、ドル高円安が強まる可能性がある。
とはいえ160円台をあっさり超えていくような動きになると、介入の可能性が高まる。積極的な上値追いには慎重で、ゆっくりとドル高円安が進行しそう。
ユーロドルは上値の重い展開が継続か。米景気の底堅さやインフレ鈍化があまり進んでいないことなどから米国の利下げペース鈍化が見込まれており、ユーロ安ドル高につながっている。今週の米ISM製造業景気指数(用語説明2)などの指標結果次第ではもう一段のドル高もあるうる。
ユーロ円などクロス円は基本的にドル円の動きに準拠しそう。下がると買いが出る流れが続くとみられ、流れ自体は上方向。
用語の解説
春闘 | 各企業などの労働組合やその全国中央組織産業別組織などが、毎年春に賃金をはじめとする労働条件に関する要求を行い、団体交渉を行うこと。労働組合の全国団体である連合(日本労働組合総連合会)では春季生活闘争を正式名称としている。その他、春季闘争、春季労働交渉などとも呼ばれる。 |
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ISM製造業景気指数 | 米供給管理協会(ISM)による企業アンケートを基にした指標。新規受注、生産、雇用、供給、在庫、顧客在庫、価格、受注残、新規輸出受注、輸入の10項目について調査、集計が行われ、このうち新規受注、生産、雇用、供給、在庫の季節調整後の平均が総合指数となる。50が基準値となっている。 |
今週の注目指標
米中古住宅販売成約指数(11月) 12月31日0:00 ☆ | 米国の住宅販売では、中古市場が新築市場を大きく上回る規模となっており、不動産市況を見るにあたっては中古住宅販売が中心となる。もっとも注目される中古住宅販売件数は、全米不動産協会(NAR:The National Association of REALTORS)が所有権が移転した時点での件数を集計して発表する。米国では販売成約から引き渡し、所有権が移転するまで1-2カ月のタイムラグがあることが一般的となるため、実際の販売成約と比べるとやや遅行する。同じくNARが販売成約時点での件数を集計した指標が販売成約指数で、販売件数の先行指標となる。ただ、実際に所有権移転まで進まないケースがあるため、ある程度の誤差がある。住宅販売は、住宅投資だけでなく家具など耐久消費財の消費につながることもあり、注目材料となっている。今回は10月に比べて前月比の伸びが鈍化する見込みとなっている。予想以上に鈍化が目立つとドル売りにつながる。ドル円は157円00銭に向けた動きとなる可能性がある。 |
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中国購買担当者景気指数(PMI/12月) 12月31日10:30 ☆☆ | 30日に中国国家統計局による12月の製造業・非製造業購買担当者景気指数(PMI)が発表され、1月2日に財新による製造業PMIが発表される。最も注目度の高い国家統計局による製造業PMIの市場予想は50.2と、11月の50.3から小幅鈍化見込みも、好悪判断の基準となる50を上回るとみられている。予想を下回り、50を割り込むと中国景気の先行き不透明感が広がり、対中輸出の大きい豪ドルやNZドルの売りにつながる可能性がある。豪ドルドルは1豪ドル=0.6200ドル割れが意識される。 |
米ISM製造業景気指数(12月) 1月4日00:00 ☆☆☆ | 米供給管理協会(ISM)による企業アンケートを基にした同指標。前回11月の米ISM製造業景気指数は2024年6月以来の高水準となる48.4となった。市場予想の47.5を大きく上回る改善。10月は2023年7月以来の低水準となる46.5に落ち込んでいた。もっとも8カ月連続で好悪判断の境となる50を下回っている。 前回の内訳をみると、今後の先行指標として注目される新規受注が50.4と10月の47.1から3.3ポイントの上昇。雇用も10月の44.4から48.1と3.7ポイントとなった。在庫も5.5ポイントの大幅改善で全体を支えた。 今回の予想は48.3と、11月とほぼ同水準が見込まれている。12月16日に発表されたマークイット社による12月の米製造業PMI(速報値)は48.3と、今回のISM製造業の予想とほぼ同水準となった。ただ、マークイット社のPMIは11月が49.7となっており、11月からは悪化していた。米ISM製造業景気指数も同様に前回からの悪化を見せると、米早期追加利下げ期待につながる可能性がある。ドル円は156円台トライを意識する展開となりそう。 |
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