2025年01月06日号
先週の為替相場
ドル高の流れ継続
先週(12月30日-1月3日)は年末年始で日本勢の参加者がかなり少ない中、ドル高の流れが継続した。ドル円に関しては年末にかけて一時円高が優勢となったが、その後ドル全般の上昇もあってドル高円安の流れに復した。
12月30日の市場は、東京勢が年末年始を前に様子見ムードとなる中、海外市場でリスク警戒のドル売り円買いとなった。ダウ平均株価指数が一時700ドル超の下げとなるなど、リスク警戒の動きが市場全体に広がった。ユーロドルが1ユーロ=1.04ドル台半ばから1.03ドル台へユーロ安ドル高となるなど、ドルは対円を除いて全般に堅調。ドル円はロンドン市場朝の1ドル=158円07銭から156円67銭までドル安円高となった。
大晦日で日本が休場となった31日もドル買いが優勢。日本勢不在で円単独の動きが鈍く、ドル円もロンドン市場朝の156円02銭から157円台に乗せるなど、ドル高が優勢となった。ユーロドルは1.0340ドル台までユーロ安ドル高。フランスやドイツの政局混乱警戒もユーロ売りにつながった。
1日は世界的に市場が休場。休場明け2日になってもドル高が継続。財新中国製造業PMI(用語説明1)が予想外の悪化を見せたことで、日本勢不在のアジア市場でリスク警戒の動きが広がり、2日アジア市場朝方の157円70銭台から156円40銭台までドル売り円買いとなった。ドル円を除くとリスク警戒のドル買いが優勢でユーロドルは1.0370ドル台から1.0226ドルを付けている。ユーロドルは2024年の安値11月の1.0335ドルを割り込むと、ストップロス注文に絡んだユーロ売りが出て、下げが加速した。2022年10月以来の安値を付けている。
3日は2日の動きに対する持ち高調整などが目立ち、大きな動きにはならなかった。ドル円は157円台を中心とした推移。156円台を付ける場面もすぐに157円台を回復するなど、底堅さが目立った。ユーロドルは少しユーロの買いが入るも1.0310ドルまでの上昇に留まり、上値の重さが目立った。
対ドルでのユーロ売りもあり、2日に1ユーロ=160円91銭を付けたユーロ円は、ドル円の堅調地合いを支えにすぐに161円50銭前後までユーロ買い円売りが入ると、3日の海外市場では162円台を回復して週の取引を終えた。
今週の見通し
日米金利差を意識した取引などから、ドル高円安の流れが継続しそう。欧州の政治情勢への警戒感もあって、ユーロ売りドル買いが出やすくなっていることも、ドル全体の買いにつながりやすい地合いとなっている。
158円台から160円にかけては日本の通貨当局によるドル売り介入が入りやすい水準と意識されており、上値追いにはやや慎重。ただ、12月の日米金融政策会合を経て、米国の利下げペース鈍化見込みが高まり、日本の早期利上げ期待が後退する形で、金利差が当面維持されるとの見方が広がっており、流れはまだドル高円安方向。
ただ、米景気の不透明感などもあり、動きはゆっくりとしたものとなりそう。3日に発表された12月の米ISM製造業景気指数は予想を超える改善を見せたが、内訳のうち雇用部門に関しては厳しい結果となった。今週発表される米雇用動態調査(JOLTS)求人件数の減少見込みなどと合わせ、10日の米雇用統計が弱いものになるとの思惑が広がっている。予想以上に雇用の伸び鈍化が見られると、ドル高の流れが一服する可能性がある。
介入に関してはいつ入ってきてもおかしくない水準である。12月以降のドル高円安の勢いもあり、実施される可能性を否定できない。ただ、12月半ばに152円10銭台から158円00銭手前までドル買い円売りが入った後は、上値追いの勢いが抑えられており、値動き的には実施が難しいという印象。可能性を考慮して、警戒しつつも、流れはドル高円安という意識。12月26日に付けた158円08銭を超え、158円50銭をトライする展開が見込まれる。
ユーロドルはフランスなどの政局の混乱がユーロ買いへの警戒感につながっており、上値が重い展開が続きそう。状況によっては1ユーロ=1ドルのパリティをトライする可能性があるが、その手前にはユーロ買い注文が入っており、ユーロ安はじっくりしたものとなりそう。
ユーロ円はユーロドルでのユーロ安と円安が交錯。三が日明けで本格復帰してきた日本勢の出方待ち。流れはやや上方向か。164円トライのタイミングをうかがう展開。
なお、1月9日の米国市場は、カーター元大統領の死去に伴う国民追悼の日となったことで、株式市場が休場、債券市場が短縮取引となっており、取引参加者が少なくなることに注意。
用語の解説
財新製造業PMI | 中国の大手経済メディア財新伝媒(Caixin Media)とS&Pグローバル社が中国国内の製造業500社以上の購買担当者に対するアンケート調査を行った結果を基にした景況感指数。他のPMI同様に50を基準として、50を超えると景気拡大、50を下回ると景気縮小となる。中国のPMIは国家統計局によるものと財新の二種類があり、国家統計局によるものは調査対象が約3000社と多いが、国有企業をはじめ大企業が中心となっているのに対し、財新PMIは沿岸部の中小企業が多く含まれていることが特徴となる。 |
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カーター元大統領 | ジミー・カーター(本名ジェームズ・アール・カーター Jr.)は米国の第39代大統領。ジョージア州の上院議員、同州知事を経て1976年の大統領選に民主党候補として挑み、共和党の現職フォード大統領を破って当選した。在任中のイラン米大使館人質事件への対応などに対する国民の批判などから支持率が低迷。現職大統領として挑んだ1980年の大統領選では共和党候補のレーガン元カリフォルニア州知事に489対49の大差で敗れている。大統領退任後は国際紛争の平和的解決に向けた積極的な外交を行い、2002年にノーベル平和賞を受賞している。 |
今週の注目指標
米ISM非製造業景気指数(12月) 1月8日0:00 ☆☆☆ | 3日に発表された米ISM製造業景気指数は11月の48.4に対して49.3となった。市場予想は48.2と11月からの鈍化となっていた。49.3は2024年3月以来の高水準。新規受注が52.5と11月の50.4から2.1ポイントの上昇。ここ2年で最も高かった2024年1月の水準に並んだ。生産は3.5ポイントの改善で50.3となり、2024年5月以来となる好悪判断の境である50超えとなった。総合指数を構成する5項目のうち新規受注、生産に加え供給指数と在庫も改善を見せた。弱かったのが雇用部門で45.3と前回の48.1から2.8ポイントの悪化となっている。 7日に発表される同非製造業景気指数の市場予想は53.5と11月の52.1からさらに強まる見込みとなっている。製造業同様に予想を超える強さを見せるとドル買いの材料となるが、雇用部門が製造業同様に弱かった場合は要注意。前回の51.5から50.0を割り込むところまで悪化しているようだと、全体が強く出た場合でもドル売りとなる可能性がある。同時刻に発表される米雇用動態調査(JOLTS)求人件数次第でもあるが、ドル円は156円台を付ける可能性がある。 |
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米雇用動態調査(JOLTS/11月) 1月8日00:00 ☆☆☆ | 米ISM非製造業景気指数と同時刻に米雇用動態調査(JOLTS)の結果が公表される。11月の数字であるが11月末時点での数字であり、12月8日から14日のデータである今回の雇用統計と大きな時期のずれはない。最も注目度の高い求人件数は前回774.4万件とハリケーンの影響から低く出た9月の737.2万件から回復も水準的には厳しい数字となった。今回は774.5万件と前回とほぼ同水準が見込まれている。予想を超えて求人件数の回復が見られるとドル買い材料となる。ドル円は158円トライに向けたきっかけとなる可能性がある。 |
米雇用統計(12月) 1月10日22:30 ☆☆☆ | 前回11月の雇用統計はハリケーンの影響で厳しい数字となった10月から一気に伸びが強まり、前月比+22.7万人となった。市場予想の+20.2万人も上回る伸びとなっている。10月が+1.2万人から+3.6万人、9月が+22.3万人から+25.5万人へ、ともに上方修正されるなど全般に強い結果となっている。ただ、3カ月平均で見ると+17.3万人と水準的にはコロナ前10年の平均値に届いておらず、やや弱いという印象。なお、失業率は市場予想通りながら4.2%と10月の4.1%から悪化、U6失業率と呼ばれる本当は正規の職を望んでいながら、職が見つからずパートタイムに従事している人などを含めた広義の失業率は7.8%とこちらも10月の7.7%から悪化した。 前回の非農業部門雇用者数の内訳をみると、10月は-4.4万人と大きくマイナスとなった財部門は+3.3万人と回復した。建設業が+1.0万人と7カ月連続でプラス圏を維持。前回ボーイングのストライキの影響で-4.8万人となった製造業は、前回の反動もあって+2.2万人とプラス圏を回復している。ただ、ボーイングを含む輸送機器部門が+3.2万人となっており、輸送機器部門を除くとマイナス圏となっている。 サービス部門は+16.0万人と10月の+4.2万人から伸びが強まった。介護職など万年人手不足の業界もあって、リーマンショック時ですらプラス圏を維持していた教育・医療部門が+7.9万人と好調を維持した。同部門は34カ月連続でプラス圏を継続している。娯楽・接客業が+5.3万人と好結果、事業者サービス、金融業などもしっかりした伸びとなった。弱さが目立ったのは小売業で-2.8万人。2カ月連続のマイナス圏となった。前回小幅マイナスとなった運輸・倉庫業はプラス圏回復も+0.3万人と冴えない数字に留まっている。 非農業部門雇用者数の伸びだけをみると前回は好結果であったが、景気動向に敏感な小売業、運輸・倉庫業の弱さがやや気になるところ。また、失業率の悪化に加え、平均労働時間の減少傾向などもあり、労働市場の厳しさが意識されている。今回の予想は非農業部門雇用者数が+16.0万人とやや厳しい伸びが見込まれている。失業率は前回と同じ4.2%が見込まれている。市場予想通りもしくはそれ以上に雇用者数の伸び鈍化がみられるようだと、追加利下げ期待が強まることでドル売りにつながる可能性がある。ドル円は155円台トライがありそう。 |
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