2025年01月14日号

(2025年01月06日~2025年01月10日)

先週の為替相場

ドル円は上値追いに少し慎重も、流れはドル高

 先週(1月6日-1月10日)はドル高基調が継続も、トランプ次期大統領の動向を警戒しつつ、神経質な動きとなった。

 6日月曜日は1ドル=157円00銭前後でスタート。156円台を付ける場面もすぐにドル高円安が優勢となり、157円90銭台まで上値を伸ばした。米紙ワシントンポストがトランプ新政権関係者筋情報として、関税について重要な品目のみを対象とする方針を検討と報じると、一気にドル売りが進み、156円20銭を付けた。6日東京市場で1ユーロ=1.0290ドル台を付けるなど、ドル高が優勢となっていたユーロドルが1.0437ドルを付けるなど、ドルは全面安となった。しかし、同報道についてトランプ氏自身が否定したことでドルが反発。ドル円は6日米国市場で157円60銭台まで買われた。

 ドル高の流れが意識される中、関税に絡んだ報道でいったんドル売りが入ったことで、ごく短期的なドル買いポジションが整理されたこともあり、7日の市場で円売りに勢いが出た。ドル円は上値を抑えていた158円00銭-10銭の上値抵抗水準を超えてドル高円安となり、158円42銭と昨年7月以来のドル高円安圏を付けた。円主導の展開でユーロ円やポンド円などクロス円も軒並みの外貨高円安。ユーロ円が1ユーロ=164円40銭台を付けた。

 ドル円、クロス円が高値を付けた後はいったん調整の動き。ドル円が157円30銭台を付けるなどの動きを見せた。介入警戒感もあり、円安進行に慎重な姿勢が見られた。その後7日NY市場でドル高が進んだ。日本時間8日午前0時に発表された米ISM非製造業景気指数(用語説明1)と米雇用動態調査(JOLTS)求人件数(用語説明2)がともに予想を超える好結果となった。とくにJOLTS求人件数は809.8万件と800万の大台を回復する力強い結果となり、10日に発表される米雇用統計の好結果期待につながる形でドル高となった。

 その後ドル円は158円00銭を挟んでの推移となった。9日の市場が昨年末に死去したカーター元米大統領の国民追悼の日で株式市場などが休場となる中で、取引が手控えられた。10日の米雇用統計を前にした持ち高調整での利益確定売りが上値を抑える一方、下がると買いが出る流れが継続し、上下ともに動きが抑えられた。

 12月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比+25.6万人と、市場予想の16万人前後を大きく上回る好結果となった。失業率も11月の4.2%から横ばいという予想に対して4.1%に低下した。

 この結果を受けてドル円は158円87銭と直近高値を更新し、昨年7月以来のドル高円安となった。ユーロドルが1.0215ドルを付けるなど、ドルは全面高となった。週末前ということもあり、高値を付けた後はドル安が優勢となった。ドル円は157円台前半までドル安円高となる場面が見られ、157円70銭台で週の取引を終えた。

今週の見通し

 米雇用統計の力強い結果、米ISM製造業、非製造業の予想を超える好結果などから、米国の利下げ期待が後退している。CMEFedWatchで示される金利先物市場動向からの政策金利見通しを確認すると、先週初めの時点で6月までに利下げが行われるとの期待が70%強となっていたが、直近では55%程度まで低下し、据え置き期待と拮抗する状況となっている。また、年内据え置きを見込む動きも30%程度まで上昇してきている。大手金融機関の中にも、年内据え置きに見通しを変更する動きが出てきている。

 こうした米金融政策見通しの変化がドル買いにつながっている。ただドル円に関しては160円に近づくと介入警戒感が高まってくる。一気の上昇には慎重姿勢が見られ、じっくりとした上昇が見込まれる。

 流れ的には上方向と見られ、下がると買いが出る流れとみている。注目は14日の米生産者物価指数(PPI)、15日の米消費者物価指数(CPI)。比較的強めの数字が見込まれており、予想通りもしくはそれ以上に 物価の伸びが示されるようだと、利下げ期待後退がもう一段広がり、ドル買いにつながる可能性がある。

 ユーロドルもドル高の流れが意識されている。米国の利下げ期待が後退する一方、ECBは今月の理事会での利下げが見込まれており、金利面でもユーロ売りドル買いが出やすい。3月の理事会でも連続利下げが見込まれているほか、年内計4回の利下げを見込む動きが広がっており、年内据え置きか1回という見通しが強まる米FRBとの姿勢の差が目立っている。1ユーロ=1ドル、いわゆるパリティを目指す動きが見込まれる。

 ユーロ円などクロス円はドル主導の中で方向感のはっきりしない展開が続く。ドル円の堅調地合いを受けて、下がると買いが出る展開か。

用語の解説

米ISM非製造業景気指数全米供給管理協会(ISM:Institute for Supply Management)による非製造業の景況感調査を基にした指数。事業活動、新規受注、受注残、新規輸出受注、在庫変化、在庫センチメント、輸入、価格、雇用、供給遅延の各項目について調査を行い、このうち季節調整された事業活動、新規受注、雇用及び供給遅延の4項目についての平均値が総合指数となる。製造業景気指数が第1営業日に発表されるのに対し、第3営業日の発表となる。
米雇用動態調査(JOLTS)米雇用動態調査(JOLTS::Job Openings and Labor Turnover Survey)は、米雇用統計の調査なども実施する米労働省労働統計局による雇用に関する統計。米雇用統計が雇用者側からとらえたデータであることに対し、JOLTSは採用する企業側からのデータとなる。求人件数、求人率、採用件数、採用率、自発的離職率、解雇率などについて調査される。求人件数が最も注目を集めるが、自発的離職率なども、雇用市場の雰囲気を表すもの(雇用市場が活発で次の仕事が豊富にある場合、離職率が高くなる)ものとして注目される。

今週の注目指標

米生産者物価指数(PPI/12月)
1月14日22:30
☆☆
 10日に発表された12月米雇用統計で非農業部門雇用者数が予想を大きく上回る伸びとなった。また同日の1月ミシガン大学消費者信頼感指数の中で示された1年先期待インフレ率が+3.3%と12月の+2.8%から一気に伸びた。これらの状況から米国の物価高再燃が警戒されている。前回11月の米PPIは前年比+3.0%と予想及び10月の+2.6%を大きく上回る伸びとなった。今回は+3.5%とさらなる伸びが見込まれている。予想通りもしくはそれ以上の伸びが示されると15日の米消費者物価指数(CPI)への期待につながる形でドル高となりそう。米CPI待ちで上値追いに少し慎重な姿勢が見られる可能性があるが、ドル円は159円台でへの上昇が見込まれる。
米消費者物価指数(CPI/12月)
1月15日22:30 ☆☆☆
 米CPIは前回11月分が前年比+2.7%と10月の+2.6%から小幅ながら伸びが加速した。食品とエネルギーを除いたコア指数の前年比は+3.3%と10月と同水準の伸びとなった。前月比はともに+0.3%となった。いずれも市場予想と一致している。
 前年比の内訳をみると、ガソリン価格の低下が続いているものの、10月の-12.2%から-8.1%まで落ち着き、それに伴ってエネルギー価格も10月の-4.9%から-3.2%となった。この結果が総合指数の押し上げに寄与している。コア指数では財部門が11カ月連続でのマイナス圏となった。ただこちらも下げ幅は-0.6%と10月の-1.0%から落ち着いている。自動車関連が依然弱く、新車が-0.7%と下げ幅は10月の-1.3%から鈍化も9カ月連続のマイナス圏。中古車は-3.4%と10月と同水準で25カ月連続のマイナス圏となった。サービス部門はCPI全体を100としたとき36.2%と3分の1以上を占める大きな項目である住居費が+4.7%と10月の+4.9%から伸びが鈍化したことから、コアサービス全体が+4.6%と10月の+4.8%からやや鈍化した。
 こうした状況を踏まえて今回12月分は前年比+2.9%と前回から伸びが加速する見込み。コア前年比は+3.3%と前回並みの伸びが見込まれている。11月から12月にかけて米国のガソリン価格は1ガロン当たり3.175ドルから3.139ドルへ小幅低下(全米全種平均/米エネルギー情報局調査)したが、比較対象元の2023年の数字が11月から12月にかけて3.443ドルから3.257ドルへ5.4%の下げ、前年比でのマイナス幅が縮小し、指数全体の押し上げに作用するとみられる。理由がはっきりしていること、コア前年比の伸びが11月と同水準見込みとなっていることから、予想前後であれば影響は限定的とみられるが、予想を超える伸びを見せると、年内政策金利据え置きの期待が広がり、ドル高が見込まれる。ドル円が160円をトライするきっかけとなりそう。
米小売売上高(12月)
1月16日22:30 ☆☆☆
 11月は前月比+0.7%と市場予想の+0.6%を上回る伸びとなった。10月、9月の数字もそれぞれ上方修正されており、米個人消費の力強さが示された。中でも強かったのが自動車で、前月比+2.6%となり、小売売上全体を0.5%ポイント押し上げた。9月末から10月にかけての大型ハリケーンの被害を受けて自動車の買い替え需要が高まったことが背景にあるとみられる。自動車を除いた小売売上高は+0.2%に留まっている。セールによる消費拡大の影響を受けた無担保小売りが+1.8%、スポーツ・娯楽・書籍が+0.9%と好調さを示した。一方、やや弱かったのが外食、食品・飲料、衣料などとなっている。
 今回は自動車の伸びが少し落ち着くとみられ、市場予想は+0.6%と小幅に伸びが鈍化する見込みとなっている。ただ、水準的にはかなり強い。個人消費に大きな影響を与える雇用の力強さから、予想以上に伸びた場合、ドル高が見込まれる。ユーロドルは1.0150ドルを試す可能性がある。

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