2025年01月20日号
先週の為替相場
ドル円は日銀の利上げ期待を受けて円高優勢
先週(1月13日-1月17日)は23日、24日に開催される日銀金融政策決定会合での利上げ期待などを背景に円買いが優勢となった。もっとも週末前には20日の米大統領就任式を前に持ち高調整の動きとなり、円売りが入った。
13日月曜日は日本市場が成人の日で休場となる中、10日の米雇用統計の好結果を受けたドル買いと、週末に報じられた米英によるロシア石油企業への追加制裁などを受けたリスク警戒の円買いが交錯。ドル円はアジア時間朝方に1ドル=157円90銭台を付けたが、その後は円買いに押され、NY市場朝方には一時156円台を付けた。安値一服後は反発。米株の堅調な動きを受けて円買いが収まり、対ユーロなどで継続していたドル高の流れがドル円の支えとなった。
14日に氷見野日銀副総裁が「見通しが実現すれば今後も金融緩和の度合いを調整」「1月の会合で政策委員の中で利上げを議論して適切に判断する」などと発言。短期金利市場での1月会合での利上げ確率が上昇するなどの影響があったが、円買いは限定的にとどまった。同日の米生産者物価指数(PPI)が予想を下回る伸びとなったことでドル売りが出る場面が見られたが、ドル円に関しては氷見野副総裁発言でも下がらなかったことで、下値しっかり感が意識されており、158円20銭前後を付ける展開となった。
15日に植田日銀総裁が前日の氷見野副総裁と同様の発言を行うと、今度は円買いが一気に広がった。短期金利市場での利上げ割合はさらに上昇。ドル円は158円00銭付近から155円70銭台を付けた。同日の米消費者物価指数(CPI)は食品とエネルギーを除いたコアの前年比が市場予想を下回る伸びとなったことで、ドル売りが強まった。
16日も円買いが優勢。タカ派として知られていたウォラーFRB理事が、15日の米CPIについてのコメントで、こうした数字が続くと上半期にも利下げとの見方を示したこともドル売りとなった。17日東京午前まで動きが続き、昨年12月19日以来の154円台となる154円98銭を付けている。その後は円高が一服。
20日のトランプ大統領就任式を前に行き過ぎた動きに警戒感が広がった。トランプ大統領は初日に100前後の大統領令に署名するとみられており、関税などを中心に相場に影響を与える項目も多数あるとみられている。円高の調整もあってドル円は156円30銭台を回復して週の取引を終えている。
ユーロドルは10日の米雇用統計を受けたドル買いに1ユーロ=1.0178ドルと、2022年11月以来のユーロ安圏を付けた。ECBは今月の理事会で利下げが見込まれる一方、米FRBは早期の追加利下げ期待が後退しており、ユーロ売りドル買いが出やすい地合いとなった。安値を付けた後はユーロが反発。中期的に1ユーロ=1ドルのパリティを目指すのではとの見方が強いが、行き過ぎた動きには警戒感が出ていた。14日の米PPIでユーロ買いドル売りが強まり、15日の米CPIでさらにドル売りとなって、1.0354ドルを付けた。高値を付けた後は動きが落ち着き、1.0300ドルを挟んでの推移となった。
ユーロ円は対ドルでのユーロ売りもあって13日に1ユーロ=160円04銭を付けた。160円の大台を何とか維持すると、その後は反発。対ドルでのユーロ買いと、堅調なドル円の動きに、15日朝に162円89銭を付けた。15日の植田日銀総裁発言を受けた円高に押され、16日に160円00銭のサポートを割りこんで159円75銭を付けた。その後160円00銭を挟んでの推移から、週末にかけて少し円売りが優勢となった。
今週の見通し
20日の米大統領就任式と23日、24日の日銀金融政策決定会合をにらむ展開。
米大統領就任式の日は、就任演説の内容に加え、同日署名されるとみられる大統領令の内容にも注目が集まる。市場の注目は関税について。メキシコ、カナダへの25%の関税、第1期トランプ政権で301条に基づいた関税の賦課を決定し、バイデン政権でも継続している対中関税の強化、すべての国に対する10-20%のユニバーサル関税などの方針がこれまで示されてきた。基本的にこうした関税強化の方針自体は確実とみられるが、実効までに期間を置くことで交渉の余地を示すなどの対応となる可能性がある。
関税強化方針が相当に厳しいようだとドル買い、ある程度交渉余地のあるものに留まるとドル売りが見込まれる。内容次第で上下ともにありうるだけに、発表までは動きにくさがある。
日銀金融政策決定会合については、前回の会合で春闘についての言及があったことで、少なくとも大勢が判明する3月までは利上げ見送りの期待が出ていた。しかし、先週の氷見野副総裁、植田総裁が相次いで利上げの可能性に言及したことで、利上げ期待が拡大。円買いを誘っている。今回は展望レポートが発表される回にあたっており、これまでの言及のあった「日本の景気が予想に沿っていた場合、利上げの余地がある」という状況を確認しやすいことも利上げの期待につながっている。
利上げ見送りで円売り、利上げ実施で円買いが見込まれるところ。
ユーロドルはドル円以上に大統領就任式の結果に左右されそう。
ユーロ円などクロス円はドル主導の展開で不安定な動きが見込まれる。
用語の解説
氷見野日銀副総裁 | 東京大学法学部を卒業後、大蔵省に入省。バーゼル銀行監督委員会事務局長などを経て、金融庁で長くキャリアを積み、金融庁長官も務めた。東京大学大学院客員教授、ニッセイ基礎研究所エグゼクティブフェローを経て、2023年3月20日から現職。 |
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FRB理事 | 米国の中央銀行制度である連邦準備制度(Fed)を統括する連邦準備制度理事会(FRB)の理事。任期は14年で7名の理事によって理事会が構成され、その中に議長、副議長、金融政策安定担当副議長が含まれる。理事は大統領が任命し、上院の承認を得て就任する。 |
今週の注目指標
米大統領就任式 1月20日 ☆☆☆ | 20日の米大統領就任式での就任宣誓をもってトランプ氏が第47代米大統領となる。現地の午前中にバイデン氏と恒例のお茶会を行い、現地時間11時半(日本時間21日1時半)から就任式が開始される。ヴァンス氏の副大統領就任宣誓を経て、トランプ氏が宣誓を行い、その後就任演説を行う。その後パレードを実施。夜には晩さん会が予定されている。その間、トランプ氏は多くの大統領令に署名する見込み。就任初日に大統領令に署名して今後の方針を示すことは恒例で、バイデン大統領は初日に15の大統領令に署名した。トランプ氏はそれを大きく超える100近い大統領令に署名するとみられている 市場の注目は関税に向けた姿勢とその実効性。関税賦課自体は行われるとみられるが、実効までの期間に猶予を与えるなどの姿勢が見られると、市場の安心感につながる。対中関税についてはかなり厳しいものになる可能性があるが、週末にトランプ氏と中国の習近平国家主席が電話で対談したこともあり、ある程度交渉の余地を残したものとなる可能性がある。この場合、対中輸出の大きい豪ドルやNZドルの買い材料となる。豪ドル円は100円を意識する展開となりそう。 |
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トランプ大統領 ダボス会議で講演 1月24日01:00 ☆☆☆ | 20日から24日の日程で世界経済フォーラム(WEF)年次総会(通称:ダボス会議)が開催される。トランプ大統領は23日(日本時間24日午前1時)にオンラインで特別講演を行う予定となっている。その他ラガルドECB総裁が22日と24日に講演を行うなど、欧米の中銀関係者発言予定が複数予定されている。 大統領就任後初の国際舞台での講演だけに注目を集めている。就任演説や大統領令で示された姿勢について、どこまで説明してくるかが注目される。ユニバーサル関税への強い意志を示すようだとドル買いが見込まれる。ドル円は158円に向けた動きが見込まれる。 |
日銀金融政策決定会合 1月24日昼前後 ☆☆☆ | 23日、24日に日銀金融政策決定会合が開催される。今回は四半期に一度の経済・物価情勢の展望(通称:展望レポート)の公表が予定されている。トランプ政権発足での混乱が想定内に収まった場合、今回の日銀会合での追加利上げが見込まれている。前回の会合で賃金動向についての言及があり、春闘についての言及が見られたことで、今回は利上げを見送るのではとの見方が一時広がっていた。しかし、先週氷見野日銀副総裁、植田日銀総裁が相次いで利上げの可能性に言及したことで、今回の利上げを見込む動きが広がっている。 短期金利市場では85%程度の利上げ織り込みとなっている。金融機関のエコノミストなど専門家の予想は据え置き期待がもう少し強く、利上げを見込む動きは70%弱となっている。 据え置きとなった場合、サプライズの円安が見込まれる。ドル円は160円に向けた動きが一気に強まる可能性がある。 |
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