2025年01月27日号

(2025年01月20日~2025年01月24日)

先週の為替相場

トランプ政権スタートなどを受けて不安定な動き

 先週(1月20日-1月24日)は20日のトランプ大統領就任式や、23日、24日の日銀金融政策決定会合などのイベントを受けて、不安定な相場展開となった。全般的にはドル安円安の展開。ドル円はドル安と円安が交錯する中で不安定な上下動を見せた。ユーロドルやポンドドルなどが上昇。ユーロ円やポンド円なども円安が優勢。

 20日の市場は、米国時間のトランプ大統領就任式をにらむ展開。ポジション調整などを交えて1ドル=156円00銭を挟んで上下する展開となった。週末にトランプ大統領と中国の習近平国家主席が電話会談を行ったとの報道から、米中対立緩和への期待が広がったことで、やや円安が優勢となり、就任演説前に156円台半ばを付けたところで、就任初日の関税発動見送りの報道が出てドル売りとなった。就任演説では関税に関する言及が少なかったこともあり、ドルは全面安となった。

 流れは21日東京朝まで続き、ドル円は一時154円91銭を付けた。しかし、トランプ大統領が2月1日発動でメキシコとカナダへ25%の関税を賦課との報道が出て一気にドル高となった。ドル円は156円23銭前後まで急騰。しかし、対中関税についての言及がなかったことで、高値から大きく反落。東京朝の水準を割り込み154円78銭を付けた。

 154円台での売りに慎重姿勢が見られると、一転して156円付近まで上昇するなど、不安定な展開が続いた。その後いったんは155円台を中心とした推移。22日にトランプ大統領が中国に対して合成オピオイドであるフェンタニル(用語説明1)の米国流入に対する報復として10%の追加関税を行う意向を示し、155円40銭台から155円80銭台へ上昇するなどの動きが見られたが、もともと中国に対しては60%関税への言及があったため、インパクトは限定的にとどまった。

 その後トランプ大統領の関税政策が秩序だったものになるとの期待もあってリスク警戒が後退。株高に併せて円売りが強まり、ドル円は156円71銭を付けた。

 日銀金融政策決定会合は市場予想通り0.25%の利上げを決定。今回の会合が発表される回にあたっていた日銀経済・物価情勢の展望(展望レポート)で2025年の消費者物価見通しが引き上げられ、追加利上げ期待が高まって円高となった。会合声明では声明では「経済・物価見通しが実現していく確度が高まっている」「見通しが実現していけば引き続き政策金利を引き上げていく」と示され、こちらも円買いとなった。155円01銭まで下げた後、植田日銀総裁会見で、「経済・物価見通し実現なら引き続き利上げで緩和度合い調整」との発言があり、154円85銭前後まで売りが出た。

 しかし総裁会見では、「緩和度合い調整ペースやタイミングは経済・物価次第、予断は持っていない」と具体的な時期への言及が避けられたことでドル円は安値から反発。日銀会合前の水準を超え、156円58銭を付ける動きを見せた。23時45分の米購買担当者景気指数は、製造業が予想を上回り、節目の50を超える好結果となったが、非製造業及びコンポジットが予想及び前回値を大きく下回る弱さとなった。また午前0時のミシガン大学消費者信頼感指数確報値が速報値から下方修正されたことでドル高が一服、155円50銭近くまで下げている。少し戻して156円00銭前後で週の取引を終えた。

 ユーロドルは20日東京朝の1ユーロ=1.0266ドルを安値にユーロ高ドル安となった。米中首脳の電話会談を受けたリスク警戒感後退が円安ドル安となる中、就任式を前に1.0300ドル超えを付けると、就任初日の関税発動見送りの報道に1.0430ドル前後まで急騰。

 その後メキシコとカナダへの関税賦課方針を警戒し、ドル高が優勢となって1.0340ドル台を付けた。その後リスク警戒感が落ち着き1.0430ドル台へ上昇したが、10%の対中追加関税の報道や、貿易不均衡を是正のための対EUに向けた関税の報道などにユーロ売りとなり、1.0393ドルを付けた。もっとも1.04台をすぐに回復したことで下値しっかり感が出ると、直近高値を超えて1.0450ドル台へ上昇。その後再びユーロ売りとなり1.0370ドル台を付けたが、トランプ大統領がダボス会議での講演で米FRBに利下げを要求したことなどがドル売りとなり1.04ドル台前半を付けた。その後も週末にかけてドル安が優勢となり、1.0520ドル台を付けている。

 ユーロ円は、ユーロドルでのユーロ買いもあってしっかり。20日東京朝の1ユーロ=160円30銭台から162円30銭台まで上昇。その後はメキシコとカナダへの関税報道を受けたリスク警戒での円買いに160円90銭台まで売られたが、世界的な株高もあって反発。22日に163円20銭台を付けた。

 日銀会合及び植田総裁会見を受けた円買いに、一転して161円92銭を付けたが、対ドルでのユーロ高とドル円の買い戻しに163円00銭台を付けている。

今週の見通し

 トランプ大統領の動向に神経質に振り回される展開が続きそう。週末にトランプ大統領は不法移民の強制送還の受け入れを拒否したコロンビアに対する25%の関税賦課を発表。1週間後には50%に引き上げることや、ビザの発給停止などの姿勢を示した。いったんはリスク警戒のドル買い円買いとなったが、コロンビア政府は移民の受け入れを含むホワイトハウスの条件に合意することを示し、関税発動は保留されたことでドル売り円売りとなった。このようにトランプ政権の動きによって、不安定な動きを見せる展開が続くとみられる。

 今週予定されている米連邦公開市場委員会(FOMC)は金利据え置きで見通しがほぼ一致している。声明なども前回を踏襲するとみられており、波乱要素は少ないとみている。ただ、先週トランプ大統領はFRBに対して利下げを要求する発言を行っている。こうしたトランプ大統領の姿勢についての言及次第では動きが出る可能性がある。

 今週はその他、欧州中央銀行(ECB)、カナダ銀行(中央銀行)、南アフリカ準備銀行(中央銀行)、ブラジル中央銀行が政策金利を発表する。ECB、カナダ中銀、南ア中銀は0.25%の利下げ見込み。ブラジル中銀は1.0%の利上げ見込みとなっている。予ECBとカナダは今後の緩和姿勢をどこまで示すかが焦点となりそう。

 ドル円はトランプ大統領の姿勢に右往左往する展開の中、基本的には154円台後半から156円台後半の直近レンジの中での取引が見込まれる。リスクはやや円高方向と見ているが、かなり不安定な動きとなりそう。

 ユーロドルはややしっかりの動きとなっているが、1.0500ドル超えでのユーロ買いには少し慎重姿勢が見られそう。

 ユーロ円は堅調な動きとなっているが、今週さらに上昇するかどうかは微妙。ドル円の動きを確認しながらの展開となりそう。

用語の解説

合成オピオイドであるフェンタニルオピオイドとは、痛みを感じる中枢神経に存在するオピオイド受容体に作用することで、痛みの信号を抑制する強い鎮痛作用を持つ薬物の総称。けしから採取されるアヘンやその成分であるモルヒネに代表される天然オピオイド、オキシコドンなどの半合成オピオイド、フェンタニルなどの合成オピオイドがある。フェンタニルはモルヒネなどと比べて鎮痛作用がかなり高い。安価であることから、近年過剰摂取の問題などが大きくなっており、その中毒性と有害性から史上最悪の麻薬などと称されている。
ダボス会議スイスのジュネーブに本部を置く非営利財団世界経済フォーラムの年次総会のこと。スイス東部の保養地ダボスで行われることからダボス会議と呼ばれる。2025年は1月20日から24日にかけて開催され、ラガルドECB総裁、フォンデアライエン欧州委員会委員長などの講演が行われた。トランプ大統領は23日にオンライン形式で講演を行った。

今週の注目指標

カナダ中銀政策金利
1月29日23:45
☆☆☆
 カナダ中銀は昨年6月の利下げ開始から5会合連続で利下げを実施。直近2会合は0.5%の大幅利下げとなっている。今回は利下げ幅こそ0.25%に戻る見込みも、利下げの実施自体は確実視されており、政策金利は3.00%となる見込み。1月21日に発表された12月のカナダ消費者物価指数は前年比1.8%と11月の1.9%から伸びが鈍化。8月分以降5カ月連続で2.0%以下となっており、利下げ余地がまだあるとみられている。今後も3月もしくは4月の追加利下げが見込まれている。声明などでどこまで追加緩和姿勢が見られるかが注目される。米FOMCが据え置きに転じるとみられる中、米国との金利差拡大の動きが嫌気されると、ドル高カナダ売りが見込まれる。節目である1ドル=1.4500カナダが意識される展開となりそう。
米連邦公開市場委員会(FOMC)
1月30日04:00 ☆☆☆
 前回12月17日、18日のFOMCは市場予想通り0.25%の利下げとなった。利下げは3会合連続。同時に発表されたFOMC参加メンバーによる経済見通し(SEP)において、2025年中の利下げ見通しが9月SEPでの4回から2回に半減したことを受けて、今後の利下げペース鈍化が意識された。その後発表された1月の米雇用統計の好結果などもあって、今回のFOMCでの利下げ見送りはほぼ確実視されている、注目は声明やパウエル議長の会見内容となる。
 声明に関しては前回からの大きな変更点はないという見方が強い。前回の声明で特徴的とされた表現は「FF金利の目標誘導レンジに対するさらなる調整の程度と時期を検討するにあたり(In considering the extent and timing of additional adjustments to the target range for the federal funds rate)」。それまでのFOMCでの「FF金利の目標誘導レンジに対するさらなる調整を検討するにあたり(In considering additional adjustments to the target range for the federal funds rate)」からの変化は、利下げペースの鈍化を示すものと市場は認識した。今回も同様の表現が踏襲されるという見方が強い。
 パウエル議長は前回の会合後の会見で利下げについての姿勢を「(政策金利のさらなる調整の検討について)より慎重な姿勢で臨むことができる」、「不確実性が高いときにはペースを落とすことが常識的な対応である」などとした。また、政策金利が中立水準にかなり近づいていることにも言及した。今回も同様の表現を示すと見込まれている。
 総じてサプライズ感の低いFOMCが見込まれるところで、相場への影響は限定的か。ドル円は154円台後半から156円台後半にかけてのレンジを中心とした推移が続くと見込まれる。
ECB理事会
1月30日22:15 ☆☆☆
 ECB理事会は0.25%の利下げで見通しがほぼ一致している。3つの主要金利のうち、市中金利に近い預金ファシリティ金利は現行の3.00%から2.75%へ、リバースレポ金利が3.15%から2.90%へ、限界ファシリティ金利が3.4%から3.15%になる見込みとなっている。市場は3月にも追加利下げとの見通しを強めている。声明や同日22時45分からのラガルドECB総裁会見で、今後の緩和姿勢がどこまで示されるかが注目される。追加利下げ期待が強まるようだと、ユーロ売りが見込まれる。ユーロドルは1.0350ドルを試す展開が予想される。

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