2025年02月17日号

(2025年02月10日~2025年02月14日)

先週の為替相場

ドル安円高警戒

 先週(2月10日ー14日)はドルが全般に軟調。ドル円は週前半円安の勢いがドル安を上回ったが、週後半はドル安に押された。

 米トランプ大統領は10日に鉄鋼とアルミニウムに25%の関税を賦課する大統領令に署名した。米国東部時間9日(日本時間10日朝)に同関税への署名方針が示されたことで、10日の市場は朝から不安定な動きを見せた。リスク警戒のドル買いとなり、ドル円は朝の1ドル151円10銭台から152円50銭台を付けた後、円買いで151円50銭台へ落とした。

 その後152円00銭を中心とした推移となったが、11日NY市場でパウエル米FRB議長が上院銀行委員会で行われた半期議会証言(用語説明1)において、金融政策の調整を急がない姿勢を改めて示したことでドル高円安となり、12日の東京市場で153円70銭台まで上昇。さらに同日の1月米消費者物価指数(CPI)が予想を上回ったことで、154円80銭前後まで上値を伸ばした。

 米CPIは前年比+3.0%と予想及び12月の+2.9%を上回る伸び。変動の激しい食品とエネルギーを除くコア指数は12月の+3.2%から+3.1%に鈍化する見込みに反して+3.3%と伸びが強まった。この結果を受けて米国の早期利下げ期待が後退。年内据え置きの期待も浮上してきた。

 その後は一転してドル安となった。トランプ米大統領は12日にロシアのプーチン大統領と電話会談を行い、ウクライナ戦争終結に向けた交渉開始で合意した。13日に入って中国がウクライナ戦争の停戦に向けてトランプ米大統領を支援する提案をしたとの一部報道があり、リスク警戒後退のドル安となった。同日の米生産者物価指数(PPI)は予想を上回る伸びを見せる好結果となったが、CPIが強かった分、サプライズ感はなく、ドル買いは限定的にとどまった。

 13日午後に入ってトランプ大統領が相互関税に関する措置に署名した。今回の措置では国ごとに新たな課税を提案するように指示されており、関税発動完了までに数カ月かかる可能性があると報じられた。市場は即時発動を警戒していたこともあり、発表後はドル売りが強まった。

 14日の米小売売上高は前月比-0.9%と予想を大きく超える落ち込みを見せた。自動車を除くコアの前月比は+0.3%予想に反し-0.4%となった。米GDPの約7割を占める個人消費の減退が警戒され、米国の追加利下げ期待が復活。ドル売りが広がり152円03銭を付けている。

 ユーロドルは10日に1ユーロ=1.0280ドルを付けるなど、週前半はドル高もあってユーロドルは下を何度か試す展開。もっとも1.02ドル台後半ではユーロ買いが出る展開となり、米CPI発表を前に1.0380ドル台まで持ち高調整のユーロ買いが出る場面が見られた。米CPI後のドル高に1.0310ドル台を付けたがすぐに反発。その後はドル安が優勢となり、14日の米小売売上高後のドル安もあって1.0510ドル台を付けた。

 ユーロ円は鉄鋼・アルミニウム関税への警戒もあって10日朝に1ユーロ=155円61銭と昨年9月以来のユーロ安円高を付けた。その後少しユーロ安圏でもみ合うも、対ドルでのユーロ買いもあって13日に161円19銭まで上昇。その後ドル円の下げに159円40銭台を付けた。

今週の見通し

 今週はそれほど目立った米指標発表がない。トランプ大統領の動向への警戒は継続。先週の米小売売上高を受けて、それまで先送り期待が広がっていた利下げについて、再開の期待が広がっている。月曜日は米国市場が休場(プレジデントデー)となっており、休場明けの火曜日以降、米株式、債券市場がどのような反応を見せるのかなどが注目される。

 日本の早期利上げ期待も強まっており、ドル円は150円00銭トライが視野に入ってきている。大台割れを示現できると、これまでの円安警戒が一服し、ドル安円高に弾みがつく可能性がある点に注意したい。1月の日銀会合後、一時17%台まで落ちていた金利市場での6月までの追加利上げ期待は、57%と過半数超えまで強まってきている。こうした動きが円買いを誘いやすい地合いにつながっている。

 ユーロ円などクロス円も同様に、やや円買いが優勢か。米指標の弱さと利下げ再開期待を受けた対ドルでのユーロやポンドの買いが下値を支えてくる可能性には注意したい。

 ユーロドルは先週末から17日にかけて1.05台を付ける場面が見られている。大台超えでのユーロ買いには一前慎重となっているが、流れは上方向と見られる。

 その他、今週利下げが見込まれる豪ドルとNZドルは、利下げ自体はすでに織り込まれており、ともに声明などでの今後の見通しの変化を警戒したい。利下げがまだまだ続くとの思惑が広がると売りが出る可能性がある。

用語の解説

半期議会証言米FRB議長は半年に一度、連邦議会に金融政策報告書を提出し、両院で議会証言を行う。1978年の「完全雇用均衡成長法」(通称:ハンフリー・ホーキンス法)によって定められたもので、同法案が2000年に失効した後も慣例として継続している。今年2月は11日に上院銀行・住宅・都市計画委員会、12日に下院金融サービス委員会で証言及び質疑応答を行った。
米小売売上高米商務省センサス局が米国内の小売店の売上のサンプル調査を基に毎月発表する指標。1953年に調査が開始された。米GDPの約70%を占める個人消費のトレンドを把握する重要な指標とされている。

今週の注目指標

豪中銀政策金利
2月18日12:30
☆☆☆
 オーストラリア準備銀行(RBA:中央銀行)が金融政策会合の結果を18日12時半に発表する。2020年以来の利下げ実施が見込まれている。豪中銀は新型コロナのパンデミックを受けて2020年11月に0.10%まで政策金利を引き下げた後、アフターコロナでの物価上昇に対応し2022年5月から利上げを実施。据え置きを交えて2023年11月に現行の4.35%まで金利を引き上げた。物価の鈍化と景気支援のため、多くの国で2024年夏前後から利下げを開始。NZでも2024年8月から利下げを開始する中、豪中銀は据え置きを続けてきた。
 金利を据え置いた前回12月10日の会合での声明では、それまでの会合声明で見られた「政策は十分に制限的である必要がある」との表現を削除。基調的なインフレはまだ高すぎるとしたものの、インフレが持続的に目標に向かっているという「ある程度の確信を得つつある」と示したことで、今回の会合での利下げ期待が高まった。さらに1月29日に発表された2024年第4四半期の豪消費者物価指数(CPI)が前年比+2.4%、基調的なインフレを示す刈込平均が前年比+3.2%と、ともに市場予想及び第3四半期の水準を下回る伸びとなったことで、利下げ期待がもう一段広がっている。
 もっとも金利先物市場での利下げ確率は86%に留まっており、14%は据え置きを見込んでいる。専門家予想でも大方は利下げ見通しを示しているが、一部で据え置き予想が残っている。大方の予想に反し据え置きとなった場合、豪ドル買いとなりそう。豪ドル円は1豪ドル=98円に向けた動きが期待される。
NZ中銀政策金利
2月19日10:00 ☆☆☆
 ニュージーランド準備銀行(RBNZ:中央銀行)が金融政策会合の結果を19日午前10時に発表する。NZ中銀は昨年8月に利下げを開始。5.50%から5.25%に引き下げた後、10月と11月にそれぞれ0.5%の利下げを行った。今回も0.5%の大幅利下げ見通しとなっている。短期金利市場では一部で0.25%利下げ見通しが見られるが、専門家予想は0.50%利下げで一致している。注目は声明などを受けた今後の見通しの変化。次回4月も追加利下げが見込まれているが、利下げ幅は0.25%に縮まるとの見方が大勢。ただ一部で0.50%利下げ継続の見通しが出ている。声明などの結果、大幅利下げ見通しが高まるようだとNZドル売りとなりそう。NZドル円は1NZドル=85円を試す可能性がある。
日銀高田審議委員 講演
2月19日10:30 ☆☆☆
 6日に日銀の田村審議委員が25年度後半には少なくとも1%まで政策金利を引き上げる必要と発言。日銀の追加利上げ期待が高まり、円高を誘った。19日には田村審議委員同様にタカ派姿勢が目立つ高田審議委員が宮城県経済懇談会に出席し講演を行う。日本の第4四半期GDPの好結果もあり、早期利上げ期待が高まる中、タカ派の委員の発言に注目が集まる。田村審議委員同様に利上げに積極的な発言が出てくると円高を誘い、ドル円は150円台トライとなる可能性。

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