2025年02月25日号
先週の為替相場
ドル安円高を継続して警戒
先週(2月17日-21日)は円高が進行。17日朝に発表された日本の第4四半期GDPが予想を大きく上回る好結果となり、日銀の追加利上げ期待が広がった。ドル円は1ドル=152円30銭台で17日の取引をスタートすると、東京午前に151円50銭台までドル安円高となり、その後も円高が続いて、18日朝に151円20銭台を付けた。同日東京午前(現地米国東部時間では17日)にウォラー米連邦準備制度理事会(FRB)理事が「現時点では利下げを考えていない。インフレが落ち着くまで一時停止が望ましい」と発言したことで、米債利回りの上昇を伴ってドル高となり、152円20銭台を付けている。
注目された19日の高田日銀審議委員の発言は、ある程度利上げに前向きも想定を外れるものにはならず、いったん円売りとなって152円30銭台を付けた。しかし、上昇一服後は売りが出る展開。ウクライナ情勢などをにらんだリスク警戒もあって、海外市場で151円20銭台を付けた。同日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨は、FRBの利下げに慎重な姿勢を裏付ける結果も、想定内の内容にとどまり、相場への反応は限定的となった。
20日に入っても円高が継続。日銀の早期利上げ期待が円を押し上げた。東京午前に150円10銭台を付けると、海外勢が参加してきて円買いが強まり149円95銭を付けた。その後少し戻すも、ドル安円高の意識が継続。米小売り大手ウォルマートの決算がかなり弱く出たことで、米個人消費の減退懸念が広がる形となりドル安が強まると、149円40銭台を付けている。
注目された21日の1月日本全国消費者物価指数は市場予想通り前年比+4.0%と約2年ぶりの4%台。生鮮を除くコアは+3.2%と予想を超える伸びとなり、物価高警戒が強まった。その直前に年初来安値となる149円29銭を付けたが、その後同日の衆院予算委員会に出席した植田日銀総裁が長期債利回りの上昇に呈して機動的な買入れ増額を行う姿勢を示したことによる円債利回りの低下などもあって、安値から反発。いったん150円台前半を中心とした推移となった。しかし同日23時45分発表の2月米購買担当者景気指数(PMI)速報値で非製造業が前回から改善見通しに反して大きく低下。好悪判断の境となる50も下回ったことで、ドル売りが強まった。午前0時に出たミシガン大学消費者信頼感指数、米中古住宅販売の弱さもあって、ドル売りが強まりドル円は一時148円90銭台を付けている。
ユーロドルは上述のウォラー理事発言などを受けたドル高局面で1ユーロ=1.0450ドル台を付け、19日にはパネッタ・イタリア中銀総裁がユーロ圏の景気の弱さが予想以上に根強いと発言したことや、ウクライナ停戦をめぐるロシアと米国の協議への警戒感などもあって1.0400ドル台を付けた。同日のシュナーベルECB専務理事がECBは間もなく利下げの一時停止もしくは終了を議論するべきとの発言もあって、安値から反発。米ウォルマートの決算を受けたドル安に1.0500超えを付ける場面が見られた。その後1.0450前後に落として先週の取引を終えた。
ユーロ円はドル円同様に円高が優勢。対ドルで1.05台を付ける場面が見られたユーロの買いもあって、ドル円ほど下げていないが、上値が重い展開となった。日銀の早期利上げ期待が重石となっており、21日には一時1ユーロ=155円80銭台を付けている。
オーストラリア準備銀行(RBA/中央銀行)は18日、約4年ぶりとなる利下げを発表。市場予想通りとして利下げ自体への反応は鈍く、その後声明での今後の緩和について慎重という表現を受けて豪ドル買いとなる場面が見られた。
ニュージーランド準備銀行(RBNZ/中央銀行)は19日、市場予想通り0.5%(50BP)の利下げを発表。利下げは4会合連続、0.5%の利下げ幅は3会合連続となった。今後についてオアRBNZ総裁が利下げ継続を示したことで、いったんNZドル売りも、利下げ幅が次回、その次と0.25%となる見通しが示され、NZドル買いが出た。
今週の見通し
今週金曜日28日に発表される2月の東京都区部消費者物価指数が注目を集めている。市場予想は前年比+3.2%、生鮮を除くコア前年比は+2.3%と共に1月から鈍化見込みとなっている。市場は日銀の早期利上げを警戒しており、予想に反して1月並みもしくはそれよりも強い伸びが出てくると、円高が一気に進む可能性がある。
その他はそれほど目立った材料がなく、日米金利差の縮小期待などを受けたドル安円高の流れが継続しそう。ドル円は150円台での売りが意識されると、先週の安値を割り込む可能性がありそう。148円台半ばを割り込むと目立ったポイントがなく、ドル売り円買いが加速する可能性がある点に注意したい。
ユーロはドイツの総選挙(用語説明1)を受けた今後の影響を警戒。最大野党で2005年から2021年まで政権を担ったキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が第1党に返り咲いたことで、経済支援拡大期待などからいったん買いが出たが、極右AfDが第2党に躍進。旧東ドイツ政権の流れをくむ極左左翼党も議席を伸ばしたことで、CDU/CSUが現与党で第3党となった社会民党(SPD)と連立を組み、第4党の緑の党の協力を得ても債務ブレーキ(用語説明2)を外すための憲法改正に必要な三分の二の議席に届かず、大胆な改革は難しいとの見方が広がっている。こうした動きがユーロ売りにつながるとユーロ安の流れが強まる可能性がある。
ユーロ円をはじめクロス円は円高の勢いが強いか。行き過ぎた動きには警戒感があり、上下に振幅しながらの展開も、流れは外貨売り円買いの方向と見られる。
用語の解説
ドイツ総選挙 | 2025年2月23日に実施されたドイツ連邦議会選挙。2023年の法改正により、それまでの超過議席制度が廃止され、連邦議会の議員数は630人で固定された。小選挙区比例代表併用制。得票率は東西ドイツ統一後最高となっており、関心の高さがうかがえた。 選挙前まで第1党であった社会民主党(SPD)は比例代表での得票率が過去最低の16.4%に留まった。小選挙区と合わせ120議席の第3党となっている。最大野党であったキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が第1党。極右ドイツのための選択肢(AfD)が大きく議席を増やし第2党となった。緑の党が第4党、左翼党が第5党。前回選挙で92議席を獲得し第4党であった自由民主党(FDP)は比例代表で議席獲得に必要な5%をとれず、小選挙区でも敗北し議席数ゼロとなった。 |
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債務ブレーキ | ドイツが2009年の憲法改正で定めた財政規律のため規定で、連邦の歳入と歳出は、原則として借入なしに均衡しなければならないというもの。憲法の条項であるため、廃止や改正には憲法改正が必要となる。 |
今週の注目指標
日本銀行・基調的なインフレ率を捕捉するための指標 2月26日14:00 ☆☆ | 日本銀行調査統計局が、全国消費者物価指数から、様々な一時的要因の影響を取り除いた基調的なインフレ率を試算するもの。毎月の全国消費者物価指数から、上昇・下落品目比率、刈込平均値、最頻値、加重中央値を試算し、金融政策運営に利用している。最も注目度の高い刈込平均前年比は前回12月が+1.9%となっており、7月以降2%を下回っている。同指標が2%を超えると追加利上げの期待が高まり円高となる可能性がある。ドル円は148円台に向けた動きが期待される。 |
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2月東京都区部消費者物価指(2月) 2月28日08:50 ☆☆☆ | 全国消費者物価指数の先行指標となる東京都区部消費者物価指数が28日に発表される。前年比は+3.2%、生鮮を除くコアは+2.3%と1月の3.4%、2.5%から鈍化見込み。ともに前回まで3カ月連続で物価上昇が強まっており、今回鈍化に向かうと、物価高警戒が一服する。予想通りもしくはそれよりも弱かった場合、早期利上げ期待がやや後退し円売りとなる可能性がある。ドル円は150円台をしっかり回復する動きが期待される。 |
米個人消費支出(PCE)デフレータ(1月) 2月28日22:30 ☆☆☆ | 28日に1月の米個人所得、個人消費、個人消費支出(PCE)デフレータが発表される。米インフレターゲットの対象でもあるPCEデフレータは前年比+2.5%、同コアデフレータは+2.6%が見込まれており、ともに12月から鈍化見込み。12日に発表された米消費者物価指数(CPI)は予想を上回る伸びを見せた。13日の米生産者物価指数(PPI)も予想を上回る伸びとなったが、PPIのうちPCEデフレータの計測に利用される項目はやや弱めの数字となった。こうした先行指標の状況からPCEはやや鈍化見込みとなっている。ただ、CPI同様に予想以上の強さを見せる可能性は十分にある。この場合ドル高につながりドル円は151円台回復に向けた動きが期待される。 |
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