2025年03月03日号
先週の為替相場
円高進行も一服
先週(2月24日-28日)は円高圏での推移から、週末にかけてドル高円安が強まった。20日の米小売り大手ウォルマートの決算が弱いものとなったことをきっかけとしたドル売り円買いの流れが、21日の米サービスPMI、中古住宅販売件数の弱さもあって継続。24日朝に1ドル=148円85銭を付けた。
23日のドイツ連邦議会総選挙で、与党社会民主党(SPD)が大きく議席を減らし、最大野党であったキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が第1党に返り咲いたことを好感したユーロ高が続かず、その後欧州通貨安ドル高が優勢となったこともあり、ドル円も安値から反発。25日東京午前には円債利回りの低下などから150円30銭前後を付けた。その後、トランプ米政権による対中半導体規制強化の方針が報じられたことで、リスク警戒の円高となり149円50銭を割り込むと、同日の米コンファレンスボード消費者信頼感指数が予想を大きく下回る弱い結果となってドル売りが加速、結果的に先週の安値となった148円57銭を付けている。
2月の米コンファレンスボード消費者信頼感指数(用語説明1)は98.3と1月の105.3から大きく低下し、市場予想の102.5と比べてもかなり弱い数字となった。内訳のうち雇用部門をみると、雇用が十分にあるとの回答から、職を見つけるのが困難であるとの回答を引いた数字が2月は17.1となり、1月の19.4、12月の22.2から低下して、3月7日の米雇用統計への警戒につながったこともドル売りとなった。
26日東京朝までドル売り円買いが続き148円60銭台を付けた。しかし、25日の米下院本会議でトランプ大統領の示す大幅減税への道を開く2025年会計年度(2024年10月から2025年9月)の予算決議案が可決されたことで、一気にドル高となった。149円89銭まで上昇も、トランプ大統領がEUの自動車、その他に25%の関税と発言したことで一転してドル売りとなり、148円70銭台を付けた
その後週末にかけてはドル高円安が優勢となった。注目された28日の2月東京都区部消費者物価指数(CPI)は予想を超える鈍化を見せた。東京CPIの鈍化は4カ月ぶり。この結果を受けて日銀の早期利上げ期待がやや後退し円売りとなった。28日海外市場で150円99銭を付けている。
ユーロドルは23日ドイツ連邦議会総選挙の結果、最大野党であったキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が勝利したことで財政拡大による景気支援への期待が広がり、いったんユーロ高となった。ユーロドルは21日終値の1ユーロ=1.0458ドルから上昇して始まり、1.0528ドルを付けた。しかし、極右政党AfD(用語説明2)が第2党に躍進、旧東ドイツ政権の流れをくむ左翼党も議席を伸ばし、両党合わせて三分の一を超える議席数となったことで、財政拡大に必要な債務ブレーキの修正や廃止のための憲法改正のための三分の二の議席数確保が難しくなったことなどを嫌気し、高値から売りが出た。
その後1.0500ドルを挟んでの推移が続いた後、27日にトランプ大統領がEUの自動車やその他に対して25%の関税を賦課する方針を示したことでユーロ売りとなった。さらに28日に行われたトランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領による首脳会談が口論による物別れに終わったこともユーロ売りとなり、1.0360ドルを付けた。
ポンドドルもユーロと同様の動き。21日発表の1月英公共部門の黒字が予想を下回ったことで、英財務相が歳出削減に動くとの見通しがポンドを抑える場面も、影響は限定的。26日に1ポンド=1.2716ドルを付けたが、週末にかけての欧州通貨売りドル高に1.2559を付けた。
ユーロ円は1ユーロ=156円00銭前後で買いが出るものの、157円台前半ではユーロ売りが優勢という展開が続いた。27日のトランプ大統領によるEUに対する関税への言及で154円80銭前後までユーロ安となったが、その後157円台を付けるなど、レンジ取引に復した。
今週の見通し
トランプ大統領の動向に注目する展開が続く。3月4日に発動予定となっているメキシコとカナダへの25%関税と中国への10%の追加関税の動向が気になるところ。直前での延期などが期待されているが、このまま関税賦課となった場合、リスク警戒の動きが広がる可能性がある。
今週金曜日7日の米雇用統計も大きな注目材料。14日の2月米小売売上高の弱い結果をきっかけに、弱めの米指標に反応するケースが目立っている。前回は非農業部門雇用者数の伸びが一気に鈍化したが、失業率が改善していたことや、前回から反映された年次改定の影響もあって、相場の反応は限定的なものとなった。ただ、今回も予想を下回る伸びになると、ここにきて広がる個人消費の減退懸念もあってリスク警戒の動きが広がる可能性がある。
ドル円は150円台を中心とした推移から、リスク動向次第では148円台トライなどの動きが見込まれる。ユーロドルは1.0400ドルを中心とした推移か。トランプ大統領の動向次第の面が大きい。
ユーロ円などクロス円はドル主導の展開が目立つ中でやや不安定。リスク警戒が広がると上値が重くなりそう。
用語の解説
コンファレンスボード消費者信頼感指数 | 米企業や労働組合などの業界団体を会員とする非営利団体であるコンファレンスボードが、毎月、現状の景気・雇用の状況、6か月後の景気、雇用、家計所得の見通しなどに関するアンケート調査を実施し、その結果を指数化した指標。調査対象が5000世帯と、同様の指標であるミシガン大学消費者信頼感指数による800世帯(速報時は420世帯)に比べて多く、その分信頼性が高いとみられている。 |
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AfD | AfD(ドイツのための選択肢/Alternative für Deutschland)は2013年に設立されたドイツの右派政党。EU懐疑主義、ドイツへの移民反対などを掲げており、急進右派政党とされている。連邦議会議員であるティノ・クルパラ氏とアリス・ワイデル氏が共同党首を務めている。 |
今週の注目指標
米ISM製造業景気指数(2月) 3月4日00:00 ☆☆☆ | 前回の同指標は50.9と12月の49.2から一気に上昇。2022年10月以来となる好悪判断の境とされる50超えとなった。市場予想は49.8と12月からは改善も、50には届かないと見らえていた。内訳をみると、今後の先行指標として重要視される新規受注が12月の52.1から55.1へ上昇。雇用は50.3と12月の45.4から一気に上昇し、昨年5月以来の50超えとなった。 今回は50.8と前回から小幅鈍化が見込まれているが、節目の50を超えており、水準的には強い数字。市場予想通りもしくはそれ以上の好結果が見られるとドル高となる可能性がある。ドル円は151円台に向けた動きが見込まれる。 |
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米ISM非製造業景気指数(2月) 3月6日00:00 ☆☆☆ | 前回は同製造業と違い、12月の54.0を下回る52.8となった。市場予想は54.0での横ばいであった。もっとも内訳のうち雇用は52.3と12月の51.3から改善。好悪判断の境となる50も4カ月連続で超えており強めの結果となった。今週7日の米雇用統計への期待につながり、ドルが支えられる可能性。ドル円は米雇用統計まで149円00銭前後がしっかりとなりそう。 |
米雇用統計(2月) 3月7日22:30 ☆☆☆ | 前回1月の雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が前月比+14.3万人と、市場予想の+16.9万人、12月の+30.7万人(+25.6万人から上方修正)を大きく下回った。ただ、1月の雇用統計は発表元である米労働省が行う年次改定の結果が反映されており、12月だけでなく11月が+21.2万人から+26.1万人に上昇修正、その前は逆に下方修正が目立ち、2024年1年を通じると+223.2万人から+199.6万人に下方修正されるなど、元々の数字にぶれが生じていることもあり、市場の反応は限定的なものに留まった。また、失業率が4.0%と市場予想及び12月の4.1%から低下する好結果となったことも、NFPの弱い伸びを打ち消す形となった。 NFPの内訳を確認すると、民間雇用は+11.1万人と12月の+27.3万人から大きく伸びが鈍化した。12月はマイナスとなった製造業は+0.3万人と小幅ながらプラス圏を回復。建設業は+0.4万人とこちらも小幅プラスとなったが、鉱業その他が-0.7万人となり、財部門全体では増減なしとなった。民間サービス部門は+11.1万人となった。小売業が+3.4万人と12月の+3.6万人に続いて好調さを維持したこと、介護など人手不足の部門を抱え、基本的にしっかりしたプラスが続いている教育・医療部門が+6.1万人と、12月の+8.2万人からは鈍化も堅調な伸びを維持したことなどが全体を支えた。一方、11月は+5.4万人、12月は+4.9万人と好調であった娯楽・接客部門が-0.3万人と昨年6月以来のマイナスとなった。とくに単体で1200万人以上の雇用を抱える飲食部門が-1.57万人と12月の+4.58万人から一気に悪化し、全体を押し下げている。雇用の流動性が高いことや、そもそも雇用者の数が多く人数ベースでの変化が大きくなりがちなことなどから、市場の大きな懸念にはつながっていないが、景気に敏感な部門ということもあり、今回も弱めに出るようだと警戒感が広がりそうな状況となっている。 今回の予想はNFPが前月比+16.0万人と1月の+14.3万人から小幅改善となっている。ただ、コロナ前10年の平均が+18万人台ということもあり、水準的にはやや弱めという印象。失業率は4.0%で維持される見込み。失業率の低さもあり、市場予想通りであれば相場の反応は限定的と見られる。ただ、予想に反して雇用の伸びが前回を下回ったり、失業率が悪化した場合などは、米国の追加利下げ期待が広がりドル売りとなる可能性がある。ドル円は148円台トライとなる可能性。 |
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