2025年03月24日号
先週の為替相場
日米金融政策会合こなすも、一方向の動きにならず
先週(3月17日-21日)のドル円は週の前半にドル高円安も、その後いったんドル売りが強まるなど、一方向の動きにならなかった。
先々週後半の流れが継続し、先週初めからややドル高円安。ドル円は17日東京市場で1ドル=149円10銭前後を付ける場面が見られた。米トランプ大統領とロシアのプーチン大統領の協議が18日に実施されると報じられ、ウクライナ情勢への警戒感が後退する形でドル高円安となった。その後米債利回りの低下などで少しドル売りが出たが、流れはドル高円安。18日、19日開催の日銀金融政策決定会合と米連邦公開市場委員会(FOMC)を前にポジション整理の動きなどがドル買い円売りにつながった。
トルコでエルドアン大統領の最大の政敵とされるイマモール・イスタンブール市長(用語説明1)の学位をはく奪(トルコは大学の学位が大統領選出馬の要件となっている)、さらにトルコ警察が同氏を拘束と報じられたことで、トルコ政府に対する信認が大きく低下。トルコリラの急落が見られたことで、リスク警戒のドル買いとなった。
日銀金融政策決定会合は市場予想通り政策金利を据え置いた。声明や植田日銀総裁の会見では従来の姿勢を基本的に維持。植田総裁は春闘の好調な途中経過を受けて利上げに前向きな姿勢が少し見られたが、一方でトランプ政権による不確実性拡大にも言及しており、市場の反応は上下に不安定なものとなった。
米FOMC発表前には150円10銭台と先週の高値を付ける展開となったが、FOMC後はドルが急落した。FOMCでは市場予想通り政策金利が据え置かれた。FOMCメンバーによる経済見通し(SEP)では、最も注目された2025年末時点での政策金利見通しが、前回と同じ年内2回の利下げ示唆となったが、経済成長率見通しが大きく下方修正、一方物価見通しが上方修正となった。物価高での景気鈍化というスタグフレーション警戒がドル売りとなり、ドル円は148円10銭台まで下げている。
その後週末にかけてドル高円安となった。欧州通貨主導でドル売りが入った。ECBのラガルド総裁は欧州議会での議会証言で通商をめぐる不確実性が高まったと示し、ユーロ売りを誘った。ビルロアドガロー・フランス銀行(中央銀行)総裁がECBは利下げ余地と発言したこともユーロ売りドル買いに寄与した。
21日に入って149円60銭台までドル高円安となったが、欧州株や米株先物の売りなどを受けたリスク警戒の円買いが強まり、148円60銭近くまでと約1円の下げを見せた。もっとも地合いはドル高円安で安値から反発を見せると149円台をしっかり回復して先週の取引を終えた。
ユーロドルは18日にドイツ連邦議会(下院)で財政支出拡大を可能とする基本法(憲法)改正案を可決(その後21日に上院=用語説明2=で承認・成立)。これにより財政赤字をGDP比0.35%未満に抑える基本法による債務ブレーキについて、国防費への適用などが緩和された。財政支出拡大による景気支援への期待などもあって、1ユーロ=1.0950台を付けている。
その後はユーロ安ドル高となった。トルコの情勢を受けたドル買いリラ売りがユーロドルでのドル高につながったほか、ロシアがウクライナのインフラへの攻撃を行ったことなどがウクライナ情勢への警戒感拡大につながった。米FOMC後のドル売りに1.0860台から1.0910台を付ける場面も、ラガルドECB総裁やビルロアドガロー仏中銀総裁発言などが重石となり、1.0800ドル台までユーロ安となった。
ユーロ円はドル円の上昇に加え、対ドルでのユーロ買いに先週前半はユーロ高円安が優勢。18日に1ユーロ=164円19銭と1月24日以来のユーロ高となった。その後は対ドルでのユーロ売りもあって160円70銭台まで下げている。
トルコリラはイマモール・イスタンブール市長拘束の報道を受けて19日トルコ市場でリラが急落。1ドル=36.70リラ前後での推移から、一気に41.30リラ前後と約12.5%のリラ安となった。対ドルでのリラの最安値を大きく更新。トルコ中央銀行の介入と見られる動きに最安値から38.00リラ前後まで戻してもみ合い。対円でも1リラ=4円06銭前後から3円61銭を付け、3円90銭前後での推移となった。
今週の見通し
今週はそれほど目立った材料がなく、市場は方向性を探る展開となりそう。ドル円は米国の早期利下げ期待がやや後退したこともあって、ドル買い円売りが出やすい地合いも、150円台でドルを積極的に買うほどの材料が見られない。149円台から150円50銭前後までのレンジを中心に次の方向性を探る展開を見込んでいる。
ユーロドルは先週の動きで1.1000ドル手前のユーロ売り意欲が確認されたこともあって、少し上値が重くなる可能性。1.0800ドルをしっかり割り込むともう一段のユーロ売りとなる可能性がありそう。
ユーロ円は米株・債券などの市場動向を確認しながらの展開か。ドル円が151円台を目指すような動きを見せると流れが変わる可能性。
ポンドドルは先週1ポンド=1.3000ドルの節目を超える場面が見られた。大台を維持出来なかったことで、少し調整が入っているが、流れは上方向か。1ユーロ=0.8350ポンド台を付けるなど、ややユーロ安ポンド高が優勢となっているユーロポンドの動きにも警戒したい。
用語の解説
イマモール・イスタンブール市長 | トルコ最大野党である共和人民党(CHP)に所属する政治家。エルドアン大統領への批判的な市民が多い都市部で人気を集めており、2019年のイスタンブール市長選挙ではエルドアン大統領の推す与党公正発展党の候補を破って当選した。トルコ当局は大統領選出馬の要件となっている大学の学位をはく奪。同氏を拘束の上、23日に正式に逮捕、市長職を罷免した。共和人民党は23日の予備選挙で同氏を正式に次期大統領候補に選出している。 |
---|---|
ドイツ上院 | ドイツは二院制をとっているが、上院議員は選挙によって選ばれるわけではなく、人口比によって各州に割り当てられた議席数に応じて、州が代表者を送り込む。権限は連邦基本法(憲法)改正や州に関連する連邦法案の審議に限定される。 |
今週の注目指標
東京都区部消費者物価指数(東京CPI/3月) 3月28日08:30 ☆☆☆ | 今月21日に2月分が発表された全国消費者物価指数(CPI)の先行指標となる同指標。2月全国CPIはインフレターゲットの対象となる変動の激しい生鮮食品を除いたコア前年比が+3.0%と、1月の+3.2%から伸びが鈍化も、市場予想の+2.9%ほどの鈍化とはならなかった。3カ月連続での+3%台となる。政府による電気・ガス価格支援が再開されたことで、エネルギー価格の伸び率が鈍化したものの、補助金が縮小したガソリン価格上昇がある程度相殺。さらに、政府備蓄米放出を受けても上昇が止まらないコメ価格の影響などから生鮮を除く食料品が前年比+5.6%と7カ月連続で伸びが加速して全体を押し上げている。 2月の東京CPIも全国同様に1月から鈍化しており、生鮮除くコア前年比は1月の+2.5%から+2.2%となっていた。今回3月分の予想はコア前年比+2.2%と横ばいの見込み。今月17日に発表された全国のスーパーにおけるコメの平均販売価格は3月3日から9日までの週で4077円と前週比+125円となり、最高値を更新。前年比では+99.3%となった。前回同様に生鮮を除く食品価格の上昇が予想され、2月から横ばいという市場予想につながっている。 先週の日銀会合では市場予想通りとはいえこれまでと同様の「オントラック(展望レポートに沿った経済・物価の見通し)が実現していくとすれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」という姿勢を示た。また、24日に参議院財政金融委員会に出席した内田日銀副総裁も同様の発言を行っている。この姿勢に沿って市場では6月もしくは7月の利上げが期待されている。今回の東京CPIが予想を超える伸びを示すと、全国CPIの伸びへの期待につながり、6月利上げ見通しが広がって円買いとなる可能性がある。すぐ後に発表される日銀会合主な意見次第ではあるが、ドル円は147円台に向けた動きとなる可能性がある。 |
---|---|
日銀金融政策決定会合主な意見 3月28日08:50 ☆☆ | 3月18日、19日に開催された日銀金融政策決定会合の主な意見。日銀会合は議事要旨の公表タイミングが他の主要国の議事要旨に比べて遅く、3月の議事要旨の公表は5月8日と4月30日、5月1日開催の次回会合後となるため、会合での各委員の意見の動向を確認する材料として。会合の6営業日後に公表される主な意見が注目される。基本的にこれまでと同様の姿勢を示した3月の会合であるが、春闘の状況から賃金の昨年以上の上昇が見込まれる中、利上げにより積極的になっている委員が出ていないかなどが注目される。東京CPIが強めに出たうえで、利上げに積極的な姿勢が見られると円買いが強まり、147円台に向けた動きとなる可能性がある。 |
米PCE価格指数(2月) 3月28日21:30 ☆☆☆ | 米物価統計の中では、消費者物価指数(CPI)に注目度が最も高いが、米国のインフレターゲットの対象はPCE価格指数であり、米FOMCで年4回示される経済見通し(SEP)での物価見通しの対象指標もPCE価格指数となっている。3月の米FOMCで示された2025年末時点でのPCE価格指数の見通しは、前年比+2.7%と前回12月の+2.5%から上方修正された。食品とエネルギーを除いたコアPCEは前年比+2.8%とこちらも12月の+2.5%から上方修正されている。 こうした中、今月12日に発表された2月の米CPIは前年比+2.8%、コア前年比+3.1%と共に1月の+3.0%、+3.3%から鈍化し、市場予想の+2.9%、+3.2%も下回る伸びとなった。13日に発表された生産者物価指数(PPI)も同様に市場予想及び1月の数字よりも弱い伸びとなった。2月4日に中国からの輸入品への10%の追加関税が発動しており、その影響が警戒されていたが、今回の指標時点では大きな影響が見られなかった。 ただ、今回2月のPCE価格指数の市場予想は1月から鈍化したCPIやPPIと違い、前年比+2.5%と1月と同水準、コアPCE前年比は+2.7%と1月の+2.6%から伸びが強まる見込みとなっている。2月の米CPIの伸びの最大の要因は、CPI全体を100としたとき36.2%を占める最大の項目である住居費が前年比+4.2%と1月の+4.4%からの鈍化したことがある。PCEでも住居費は重要な項目であるが、指標全体に占めるウェイトがCPIに比べるとかなり小さくなっており、影響が抑えられる。CPI同様に鈍化を見せたPPIであるが、PPIの構成要素の中で、PCE算出に利用される項目、入院費などのヘルスケアやポートフォリオ運用管理費などについては上昇が見られており、PCEの伸びにつながるとみられている。 強めの予想以上の伸びを見せてくると、早期の利下げ期待がかなり後退する可能性がある。米国は6月までの利下げを80%以上見込んでいるが、この見通しが後退すると、年内あと2回か3回という利下げ見通しが、年3回は難しいという見通しとなり、ドル買いにつながる可能性がある。ドル円は151円に向けた動きが見込まれる。 |
免責事項
本レポートは株式会社時事通信社が提供しています。また本レポートの内容は、株式会社時事通信社が提供する情報をもとに、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが執筆しています。本レポートは、情報提供のみを目的にしたもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。投資決定に当たっては、投資家ご自身のご判断でなされますようお願いいたします。株式会社時事通信社、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドおよび情報提供元は、本レポートに記載されているいずれの情報についても、その信頼性、正確性または完全性について保証するものではありません。また本レポートに基づいて被った損害・損失についても何ら責任を負いません。本レポートに掲載されている情報の著作権は、株式会社時事通信社および株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに帰属します。本レポートに掲載されている情報を株式会社時事通信社の許諾なしに転用、複製、複写等することはできません。
Copyright(C) JIJI Press Ltd. All rights reserved.
auじぶん銀行からのご注意
- 本画面に掲載されている情報は、auじぶん銀行の見解を代弁したものではなく、auじぶん銀行がその正確性、完全性を保証するものではありません。
以上の点をご了承のうえ、ご利用ください。