2025年03月31日号

(2025年03月24日~2025年03月28日)

先週の為替相場

一時ドル高も続かず

 先週(3月24日-28日)のドル円は1ドル=151円21銭を付けるなど、一時ドル高の場面も、続かなかった。

 149円台前半で先週24日月曜日の取引をスタートすると、いったんドル高円安となった。トランプ政権が4月2日発動予定の相互関税について一部の国・地域を除外する可能性を示唆したことで、リスク警戒の円買いが後退した。同日発表された3月の米購買担当者景気指数(PMI)速報値は、製造業が予想を大きく下回り、好悪判断の境となる50を割り込む弱い数字となったが、一方サービス業は予想を超える改善を見せた。弱く出た製造業でも物価関連は強い数字が見られ、物価高警戒とサービスPMIの強さからドル高となった。流れは25日東京市場まで続き、同日東京仲値に絡んだ外貨買い円売り注文もあり、150円94銭を付けた。

 151円00銭手前の売りが上値を抑えたこともあり、その後は利益確定のドル売りなどが優勢となった。目立った材料は見られなかったが、3月期末を前にしたポジション調整などが重石となり、149円50銭台を付けた。ドルの安値から少し反発して迎えた26日の市場では、衆議院財政金融委員会に出席した植田日銀総裁が「基調的な物価上昇率はまだ少し2%を下回っている」と発言したことなどが、日銀の早期利上げ期待の後退につながり、円売りとなった。植田総裁発言を受けた円売りに150円60銭台を付けた後、英消費者物価指数(CPI)の弱い伸びを受けたポンド円の売りなどに150円00銭台までドル安円高となった。

 その後いったん150円台での推移。トランプ大統領による米国産以外のすべての自動車に対する25%の関税賦課の方針などが材料となったが、リスク警戒の円買いと、物価高警戒のドル買いが交錯し、不安定な動き。米債利回りの上昇もあって151円台に上昇。

 28日の3月東京都区部消費者物価指数が予想を超える伸びとなり円買いとなった。さらに2月の米個人支出の弱い伸びや3月のミシガン大学消費者信頼感指数確報値の速報値からの下方修正などを受けたドル売りもあって149円台までドル安円高となって週の取引を終えた。

 ユーロドルは先週序盤のドル高に加え、24日のドイツやユーロ圏のサービスPMIの弱い結果などが重石となった。同日チポローネECB専務理事(用語説明1)が追加利下げに前向き姿勢を示したこともユーロ売りとなった。26日にはトランプ大統領が欧州に対する貿易面での不満を示し、関税賦課に言及したことでユーロ売りが広がり、27日東京朝に1ユーロ=1.0733ドルを付けた。

 その後はポジション調整のユーロ買いなどを支えに反発。週末にかけてのドル安もあって1.0840ドル台を付けた。

 ユーロ円は週前半はドル円の上昇を支えにしっかりとなり、1ユーロ=163円00銭台を付けた。その後対ドルでのユーロ安とドル円の高値からの調整を受けていったん161円30銭台を付けたが、ドル円が151円台へ上昇する中で163円30銭台まで上値を伸ばした。その後はリスク警戒の円買いなどに押されている。

 ポンドは24日のドイツおよびユーロ圏サービスPMIが弱く出る一方で、英サービスPMIが強かったこともあって、ユーロポンドでのユーロ売りポンド買いなどが出て先週序盤はドル高に中、比較的しっかりとなった。26日の2月の英消費者物価指数前年比が+2.8%と1月及び市場予想値を下回る伸びにとどまったことでポンド売りとなり、1ポンド=1.2870ドル台を付けた。その後は対円でのポンド買いなどもあって反発し、1.2990ドル台を付けた。

今週の見通し

 今週は2日に米相互関税の発動、3日に米自動車関税の発動が控えている。さらに1日の米ISM製造業景気指数、米雇用動態調査(JOLTS)、2日の米ADP雇用者数(用語説明2)、3日の米ISM非製造業景気指数、4日の米雇用統計と重要指標の発表が並んでいる。関税については、一部国や地域を除外する限定的なものになるという方針から、基本的にすべての国に対する関税賦課方針への変更が示されており、世界的な景気後退懸念につながっている。米金融機関などのエコノミストは米国の景気後退リスク拡大を示しており、米景気の不透明感を受けたドル売りとリスク回避の円買いが入りやすい地合いとなっている。

 リスク警戒感が高まる中で、米主要指標が弱く出ると、ドル売りが一気に加速する可能性がある点にも注意したい。ドル円はこれらの材料の動向をにらみながら、基本的にはやや上値が重いものの、金曜日の米雇用統計などをにらんで慎重な動きが見込まれる。ただ、株式、債券などの市場動向次第でかなり荒っぽい展開になる可能性を意識しておきたい。

 ドル安方向で目先のポイントは148円00銭前後。しっかり割り込むと11日に付けた146円50銭台が視野に入ってくる。

 ユーロ円やポンド円などクロス円も基本的にリスク警戒の円買いを警戒。ユーロ円は160円50銭をしっかり割り込むとユーロ売りが強まる可能性がありそう。

 ユーロドルは先週半ばまでの下げトレンドが一服し、難しい局面。対円での売りが重石となり、1.0900前後は重くなりそう。ポンドドルは1.3000台では売り注文が入る展開か。

用語の解説

チポローネECB専務理事 ピエロ・チポローネECB専務理事。スタンフォード大学で経済学修士号を取得、大学教員を経てイタリア銀行(中央銀行)エコノミスト、イタリア首相経済顧問などを経て、2020年から2023年までイタリア銀行副総裁。2023年11月より現職。専門は労働経済学。
ADP雇用者数 米国の給与計算代行大手ADP(Automatic Data Processing)傘下のADPリサーチインスティテュートが、スタンフォード大学デジタルエコノミーラボと共にADPの持つ2500万以上の雇用データを基に算出する月次雇用レポートの中で示される民間雇用者数の推移のこと。

今週の注目指標

ISM製造業景気指数(3月) 4月1日23:00
☆☆☆
 前回2月分は50.3と1月の50.9及び市場予想の50.6を下回ったものの、好悪判断の境となる50は1月に続いて上回った。なお、1月の50超えは2022年10月以来であった。ただ、内訳のうち先行指標として重要視される新規受注が1月の55.1から48.6に大きく低下。雇用も1月の50.3から47.6に低下し、ともに50を下回った。今回は49.5と全体の数字も50を下回る見込みとなっている。予想を超えて50超えを維持すると、同時に発表されるJOLTSにもよるが、ドル買いが期待される。ドル円は151円に向かう動きが見込まれる。
米雇用動態調査(JOLTS)求人件数(2月) 4月1日23:00
☆☆☆
 2月の米JOLTS求人件数の市場予想は768万件と、1月の774万件から小幅悪化見込み。2024年の月平均が809.1万件となっており、やや鈍化傾向が見られる。ある程度は織り込み済みであるが、予想からの乖離が比較的目立つ指標であり注意が必要。今後の米金融政策動向に向け、雇用情勢にやや神経質になっており、予想以上に鈍化が目立つようだと同時に発表される米ISM製造業の結果にもよるがドル売りとなる可能性がある。米ISMが弱く、JOLTS求人件数も弱く出た場合、ドル円は147円台トライもあり得そう。
米雇用統計(3月)
4月4日21:30 ☆☆☆
 前回2月の米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が前月比+15.1万人と1月の+12.5万人(速報時の+14.3万人から下方修正)より強い伸びとなったが、市場予想の+15.9万人には届かなった。水準的にも節目の+20万人、コロナ前5年間(2015-2019年)の平均月+19万人と比べてかなり低く、昨年の平均である月+16.8万人にも届いていない。失業率は4.1%と予想外に1月の4.0%から悪化。労働参加率が62.4%と1月の62.6%から0.2ポイント悪化した上での失業率悪化ということで弱い印象を与えた(一般的に労働参加率が低下すると失業率は改善する)。またU6失業率と呼ばれる正規雇用を望みながらパートタイムに従事している人や求職活動をあきらめた人、育児や家事の兼業で働く意思はあるが難しい状況の人などを加えた広義の失業率が8.0%と、1月の7.5%から一気に悪化したことで雇用市場の厳しさを意識させた。
 前回のNFPの内訳を確認すると、財部門が+3.4万人と好結果であった。直近2カ月連続マイナスとなった製造業が+1.0万人とプラス圏を回復。前回わずか+0.2万となった建設業も+1.9万人と雇用が伸びた。サービス部門は+10.6万人と水準的にはきびしいが、1月の+8.8万人から少し伸びた。目立ったのは小売業の弱さで3カ月ぶりのマイナスとなる-0.63万人となり、1月の+2.95万人、12月の+3.44万人から一気の悪化した。。前回-1.4万人となり、全体の弱さに寄与した娯楽・接客業が-1.6万人と弱い状況を継続。小売業、飲食業と景気動向に敏感で雇用の流動性の高い部門が厳しい数字となったことで、今後への警戒感を誘った。
 今回の市場予想はNFPが+13.8万人と前回から伸びが鈍化する見込みとなっている。失業率は4.1%と前回から横ばい見込みとなった。予想以上に雇用の鈍化がみられると、関税問題などで高まる米景気の鈍化懸念となり、ドル円は3月11日に付けた146円54銭を試す動きになる可能性がある。

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