2025年04月07日号
先週の為替相場
トランプ関税受けて大荒れ
先週(3月31日-4月4日)のドル円はトランプ政権による相互関税発動を受けて大荒れとなった。ドル円は4日に一時1ドル=144円50銭台を付けている。
4月2日のトランプ関税発動を前に週初30日から神経質な展開となった。週末にトランプ政権が「より広範囲の国に高い関税を適用」という方針を示したことで、リスク警戒のドル売り円買いが広がり、31日東京市場午前に148円73銭と3月21日以来のドル安円高となった。少し買い戻しが入り149円台を回復したが、午後には再びドル安円高となり148円70銭を付けた。株安などを受けたリスク警戒が続くものの、実際の発動前に行き過ぎた動きにも警戒感があり、少し戻したところで、シカゴ購買部協会景気指数(PMI)が予想を超える好結果となって150円20銭台までドル買い円売りが強まった。その後は少し落として149円台を中心とした推移。2日(日本時間3日午前5時)の発動直前は150円台の重さを意識して2日東京からロンドン市場に抱えて149円台前半へ下げた後、150円台前半まで上昇。150円00銭台で発動を迎えた。
トランプ関税発動後は一瞬のドル買いとなった後、ドル売り円買いが強まった。全輸入品に対する10%のヘッドラインにまず反応してドル買いも、日本への24%、EUへ20%、中国へ34%などの関税率が示されたことで警戒感が強まった。米株先物やNY原油先物などの売りが一気に強まり、リスク警戒の動きとなった。ドル円は3日海外市場までドル安円高が継続し、145円20銭前後をつけた。
その後少しドル買いが入るも146円台半ば前後が重く、145円台前半から146円台半ばのレンジとなった。4日海外市場でリスク警戒の動きがもう一段強まった。中国がすべての米国製品に34%の追加関税、複数のレアアース(用語説明1)関連製品に輸出制限などの報復措置を示したことが材料視された。3日の安値を割り込んで売りが強まり、昨年10月以来となる144円50銭台を付けた。
週末を前に安値から少しドル買いが入ると、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が講演の中で従来い通り追加利下げに慎重な姿勢を示したことを受けてドル買いとなり、147円40銭台までと安値から3円近いドル高円安となった。この関税を受けた株価の大幅安などもあって、市場では追加利下げにより前向きな姿勢が示されるとの期待が広がっていた。ドルが反発する中で米雇用統計の発表があり、市場予想を大きく上回る雇用の伸びが示されたが、市場の瞬間的な反応は限定的なものに留まった。トランプ関税による相場変動のインパクトが大きく、指標結果に反応しきれなかった。もっとも材料としてはドル買いで、雇用統計前からのドル高円安を支える形で大幅反発に寄与した。
ユーロ円はリスク警戒の円高も、トランプ関税前は1ユーロ=160円台ではユーロ買いが入る展開。発動直前にドル円が150円台へ上昇、対円以外ではドル安が広がりユーロドルが上昇しており、ユーロ高、円安両面から上昇し163円00銭前後をつけた。発表直後のドル円の上昇に164円18銭まで上値を伸ばすも、すぐに反落。161円10銭を付けた。その後ドル全面安となる中で、ユーロ高ドル安に支えられて163円00銭台まで上昇。その後の円高に4日に159円00銭台を付けるなど、荒れた展開が続いた。ポンド円が195円77銭から187円54銭、豪ドル円が95円31銭から87円41銭を付けるなど、クロス円は軒並み大荒れの展開を経ての円高進行。
ユーロドルは1ユーロ=1.0800ドルを挟んでの推移から、少し上昇して関税発動を迎え、1.0920ドル台まで上昇後、1.0800ドル台を付けた。その後は一転してドル安が進行。1.1140ドル台を付けている。週末にかけては対円での売りなどの押され、ポジション調整の動きもあって1.0920ドル台を付けた。
今週の見通し
今週もトランプ関税を受けての動向が注目される。EUは6日、対高関税第一弾を数日中に発表すると発表した。もっともフランスのロンバール財務相(用語説明2)が米国と同じ措置で対抗するべきではないと発言。イタリア、アイルランド、ポーランドなども慎重姿勢を示しており、EU内でも意見が一致していない。
先週対抗措置を発表した中国に関しては、株安や人民元安の動きが広がっている。相場にも大きな影響を与えるだけに、各国の動きに注目が集まるところ。
ドル円は下方向のリスクが継続か。逃避通貨とされる円とスイスの買いが優勢となっている。ドル円は一気の下げもあってドルの売り遅れも意識されており、反発する局面ではドル売り円買い注文が入る展開。
もっともここまで動きがかなり荒く、1円程度簡単に上下するため、積極的な下押しにも慎重。今後もかなり荒めの上下動を続けながら、大きな方向性はドル安円高といった展開が見込まれる。
クロス円も同様にトランプ関税がらみの動きを警戒。ユーロ円はEUの対抗措置の中身と、それを受けての米国の反応に要注意。
ユーロドルも不安定な動きが見込まれる。ドル安の動きも、米欧関係の悪化が見られると、ユーロにも重石となる。
用語の解説
レアアース | 産出量が少なく、抽出が困難な希少元素の一種。モーター用磁石に利用されるネオジム、ジスプロシウム、蛍光体のイットリウム、ユウロピウムなどがある。中国が算出のかなりの部分を占めている。 |
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ロンバール財務相 | エリック・ロンバール財務・経済・産業及びデジタル大臣。HECパリ卒業後、フランスの大手商業銀行BNPパリバを経て、大臣付き顧問など政府関連の職に従事、BNPパリバに戻り、系列の大手保険会社BNPパリバ・カーディフ社長などを経て、フランス預金供託金庫会長などを歴任。2024年12月から現職。 |
今週の注目指標
NZ中銀政策金利 4月9日23:00 ☆☆☆ | NZ中銀は昨年8月に利下げを開始、10月、11月、2月と直近3会合は0.5%の大幅利下げを実施している。前回会合での声明で「経済状況が予測通り推移した場合、委員会は2025年を通じて政策金利をさらに引き下げる余地」と追加緩和姿勢を示した。その後の会見でオア総裁(3月で退任)は4月、5月の会合で0.25%ずつ引き下げられるとの見通しを示している。トランプ関税の影響もあって、市場ではさらなる利下げの継続期待を強めており、短期金利市場では7月会合での利下げを91.2%、その後の追加利下げも含め今回含めて年内あと4回か5回の利下げを見込んでいる。こうした利下げ期待の高まりに対して、声明や会見でどのような姿勢を示すかが注目される。NZドル円は大きなポイントである1NZドル=75円に向けた動きが強まる可能性がある。 |
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グリアUSTR代表 下院歳入委員会で証言 4月9日23:00 ☆☆☆ | トランプ関税の影響で米株式、債券市場なども大きな影響が出ており、米経済全体に与える影響も大きなものになると見込まれる中、トランプ政権で関税実務を担当する米通商代表部(USTR)のグリア代表が下院歳入委員会で証言を行う。一律関税など積極的な関税政策を主導してきたメンバーである同氏だけに、世界的に注目を集めている。当面現状の関税が維持されるとの見通しが強まると、ドル売り円買いにつながる可能性がある。ドル円は143円台に向けた動きが見込まれる。 |
米消費者物価指数(3月) 4月10日21:30 ☆☆☆ | トランプ関税を受けた米景気の鈍化懸念を受け、短期金利市場や金利先物市場では年内4回から5回の利下げを見込む動きが広がっている。こうした積極的な利下げが実施されるかどうか、カギを握る重要な項目の一つとなる物価動向に注目が集まる中、10日に3月の米消費者物価指数(CPI)、11日に3月の米生産者物価指数(PPI)が発表される。より注目度の高いCPIは前回2月分が前年比+2.8%、コア前年比+3.1%とともに1月の+3.0%、+3.3%から伸びが鈍化。市場予想も下回る伸びに留まった。前年比の内訳をみると、ガソリン価格が-3.1%と1月の-0.2%から大きく低下した影響でエネルギー全体が-0.2%となった。6カ月ぶりにプラス圏を回復した1月の+1.0%からの落ち込みが見られた。食品は卵の価格高騰が継続し前年比+58.8%となったことを受けて+2.6%と1月の+2.5%から小幅に伸びが強まっている。食品とエネルギーを除いたコア部分は財部門が-0.1%と14カ月連続でマイナス圏となった。もっとも鈍化幅は1月と同じく小幅なものに留まった。サービス部門は+4.1%と1月の+4.3%から伸びが鈍化した。なかでもCPI全体を100としたとき36.2%、コアCPIを100とすると45.4%を占める最大の項目である住居費が+4.2%と1月の+4.4%から鈍化しており、CPI全体の押し下げに寄与した。その他、直近高い伸びが続いている輸送費が+6.0%と水準的には高めながら1月の+8.0%から鈍化している。一方、医療サービスは1月の+2.7%から+3.0%へ伸びが加速した。 今回の予想はCPIが前年比+2.6%、コア前年比+3.0%と共に2月から鈍化見込みとなっている。前月比は+0.1%、コア前月比は+0.3%で、前月比は前回の+0.2%から鈍化も、コア前月比は前回の+0.2%から伸びが強まる見込みとなった。2月から3月にかけて米国ではガソリン小売価格が低下。米EIA(エネルギー庁エネルギー情報局)調査での全米全種平均は2月の1ガロン当たり3.247ドルから3月は3.223ドルへの小幅低下となった。また、2024年は2月の3.328ドルから3月は3.542ドルまで上昇していた。前年比として見た場合、比較対象となる2024年の価格上昇の影響が大きく、EIAベースの前年比は2月の-2.4%から3月は-9.0%までマイナス幅が拡大した。CPIは都市部のみのデータとなり、EIAの数字とは一致しないが、傾向はほぼ同じと見られる。エネルギー価格の下落が全体を押し下げ、さらに低下傾向継続と見られる住居費の伸び鈍化が重石となって全体を抑えると見込まれている。さらに高騰を続けてきた米国の卵の価格が3月に入って急落している。米農務省によると米国の卵価格(白色・Lサイズ)は、3月3日に1ダースあたり8.168ドルを付けていたが、最新データで3.004ドルまで下げてきている。こうした動きが前回高く出た食品価格の鈍化につながり、CPI全体にも影響が出ると見込まれる。 予想を下回る伸びの鈍化を見せた場合、米利下げ期待を支え、ドル売りが強まる可能性がある。ドル円は143円台に向けた動きが期待される。 |
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