2025年04月14日号

(2025年04月07日~2025年04月11日)

先週の為替相場

不安定な動き続く、一時142円07銭

 先週(4月7日-11日)のドル円はトランプ関税を受けて不安定な上下となった後、週末に一時1ドル=142円07銭と昨年9月以来のドル安円高となった。

 トランプ関税を受けたドル安円高に先々週4日に144円50銭台を付けた後、週末を前にしたポジション整理の動きもあって147円台までドル買いが入って先々週の取引を終えたドル円。週末にベッセント米財務長官が関税に前向きな姿勢を見せたことや、中国が報復関税を発表し、貿易戦争への懸念が広がったことなどを材料に、週明けはドル安円高でスタート。144円80銭台を付ける場面が見られた。

 東京午前に146円80銭台まで上昇するなど、下値トライにも少し慎重姿勢が見られたが、ロンドン朝にかけて145円00銭台を付けるなど、ドル売り意欲も根強い展開。その後海外勢が本格参加すると、米債利回りの上昇などを受けていったんドルが反発。クーグラーFRB理事が物価が上昇しないようにすることが優先されるべきなどの発言を行い、利下げ再開に消極姿勢を見せたことなどを材料に148円10銭台を付けた。

 その後はじりじりとドル安円高。9日の相互関税発動などが重石となり、144円00銭前後をつけている。相互関税は米国が輸入する全品目に対する10%の関税と60カ国への追加関税が示された。EUが20%、日本が24%、韓国が25%などとなった。高関税となった国ではレソト(用語説明1)が最高税率となる50%、カンボジアが49%、マダガスカル47%、ベトナム46%などとなっている。これらの関税賦課方針を受けてドル安円高となり144円00銭台を付けた後、148円台へ急反発した。トランプ大統領が報復関税を実施せず交渉に回った国・地域に対して相互関税の追加分を90日間猶予する方針を示したことがドル買いにつながった。

 148円20銭台まで急騰した後は、一転してドル安円高が優勢となった。ほとんどの国に対して一時猶予となった相互関税の追加分であるが、報復関税を発表していた中国に対しては関税率の引き上げが実施され、計104%から125%となった。中国は米国に対して84%の報復関税を9日に発動、米国の関税率引き上げを受けて11日に125%への引き上げを発表した。こうした米中貿易戦争への警戒感がドル安円高につながり、ドル円は142円07銭を付けた。

 10日の米消費者物価指数(CPI)が予想を下回る伸びとなったこともドル安に寄与した。

 その後コリンズ・ボストン連銀総裁(用語説明2)が市場が混乱すればFRBは間違いなく安定化を支援する準備があるなどと発言したことをきっかけに安値からドル買いが入り、144円20銭前後までドル高円安となった。

 ユーロドルは1ユーロ=1.0900-1.1100ドルでのレンジ取引を経て、トランプ大統領による相互関税90日間停止後のドル買い一服後のドル全面安を受けて、1.1100ドルを超えて上昇。米中貿易戦争警戒でのドル売りが、取引量でドルに次ぐ世界2位であるユーロへの買いにつながり、1.1470ドル前後と2022年2月以来のユーロ高となった。週末を前に行き過ぎ感もあり、その後1.1270ドル台を付けている。

 ユーロ円は先週初めの円高進行で1ユーロ=158円30銭を付けた後、ドル円の上昇もあり反発。162円20銭台を付けた後、159円40銭台を付けるなど、不安定な動きが続いた。週末にかけては対ドルでのユーロ買いを支えに上昇し、163円13銭を付けている。

 9日のNZ準備銀行(RBNZ/中央銀行)金融政策会合は市場予想通り0.25%の利下げを実施した。利下げは5会合連続、利下げ幅は前回まで3回続いた0.5%から0.25%に縮小された。縮小も予想通りとなる。声明では追加利下げの可能性に言及。NZドルは米相互関税への警戒から発表前に1NZドル=0.5480ドル台と月初の0.5850ドル台から大きく下げていた。発表前に0.5560ドル台まで上昇も、追加利下げの可能性を強調する声明などを受けて、0.5510ドル台までNZドル売りが出た。その後は一転してNZドル高となり、11日に0.5840ドル台と3日に付けた4月の高値に迫った。

今週の見通し

 トランプ関税をめぐって不安定な動きが当面続くとみられる。米中貿易戦争を受けた警戒感がドル円の重石となっている。ただ、相当神経質な展開で、発言などをきっかけに数円の戻りが見られるだけに、積極的なドル売りも難しい。

 上下に不安定な振幅を見せつつ、心理的な節目である140円00銭。昨年9月16日に付けた直近安値139円58銭をトライする展開か。139円58銭を割り込むと2023年以来の安値圏となる。目立ったポイントがなく、一気にドル売りが加速する可能性がある点に注意したい。

 トランプ大統領は相互関税の対象から外した半導体関連(スマートフォン含む)について、14日の週に対象とした関税を発表すると示している。米国の家計・産業ともに大きな影響を与える項目だけに、厳しいものにはならないとの期待がある一方、対中国が中心となるだけに強気な姿勢を維持するとの思惑もあり、かなり不安定な状況となっている。

 半導体関税の中身次第ではドル買いが強まる可能性もある。その場合は148円前後まで大きく戻す可能性もあり、上下とも大きな動きに注意したい。

 ユーロドルは心理的節目である1.1500ドル超えが現実味を帯びてきた。超えると2021年以来となる。高値警戒感もあるが、ドルの代替通貨としてのユーロ買いの動きもあり、流れは上方向。ECB理事会は0.25%利下げで見通しがほぼ一致しており、波乱要素は少ない。今後の利下げ継続姿勢をどこまで強く示すかがポイントとなる。

 ドル主導の展開でユーロ円をはじめクロス円はやや不安定な動き。リスク警戒もあって戻りでは売りが出る展開も、一方向の動きにはなりにくい。

用語の解説

レソト 南アフリカに周囲を囲まれたアフリカ南部の内陸国。全国土がドラケンスバーグ山脈の中にあり、標高は1400Mを超える。米大手ジーンズメーカーであるリーバイスなど、米アパレル企業の工場があり、米国へ輸出していることで対米黒字となっている。
コリンズボストン連銀総裁 スーザン・コリンズ(Susan Collins)ボストン地区連銀総裁。ジャマイカ出身の両親の下で英スコットランドで生まれ、のちに米国に帰化。ハーバード大学を最優等位(summa cum laude)で卒業、MITで経済学博士号を取得。ハーバード大学、ジョージワシントン大学、ミシガン大学などで教鞭をとり、2020年から2022年までミシガン大学学長を務めている。2013年から2022年にかけてシカゴ連銀の理事も兼任。2022年より現職。

今週の注目指標

米小売売上高(3月) 4月16日21:30
☆☆☆
 前回2月分は前月比+0.2%と、市場予想の+0.6%を大きく下回った。1月分が-1.2%と速報時点での-0.9%から下方修正されるなど、厳しい結果となっている。前回2月分の変動の激しい自動車を除いた数字は+0.3%と市場予想通りの伸び。ただこちらも1月分が-0.6%と速報時点の-0.4%から下方修正となった。
 前回の内訳をみると、小売売上高の中でもっとも売上額が大きい自動車及び同部品が-0.4%となり、全体を押し下げた。同部門は12月に年末商戦もあって大きく伸びた反動で、1月が-3.7%と大きく減少、2月は回復が期待されていたが、小幅ながらマイナス圏と期待外れとなっている。その他部門も幅広く低迷、ガソリンスタンドや家電など弱い項目が並ぶ中、特に目立ったのが飲食店の-1.5%。小売売上高の中で唯一サービス部門での売上となる同部門は約1年ぶりの落ち込みとなった。関税などの影響を受けて家計が財布のひもを締めるなか、必需的な項目ではない外食などの落ち込みが見られた形で、家計の余裕のなさを示す数字として警戒された。一方強かったのが無店舗小売(アマゾンなどです)で、関税発動を前にした駆け込み需要があったとみられている。
 今回の予想は前月比+1.4%と力強い伸びが見込まれている。ただこれは自動車関税を前にした自動車の駆け込み需要の影響が大きいとみられている。4月3日に発動した自動車関税により、米国に輸入される自動車に一律25%の追加関税がかかる。日本車の場合は、元々乗用車に2.5%、トラックに最大25%の関税が付加されており、追加関税を受けて乗用車に27.5%、トラックに最大50%の関税となる。こうした関税発動を前に前倒しで自動車を購入するという動きが広がり、小売売上高に反映されているとみられる。
 自動車を除いた数字は前月比+0.4%と2月の+0.3%から小幅改善見込み。4日に発表された3月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比+22.8万人と、市場予想の+13.7万人及び2月の+11.7万人を大きく上回り、米雇用市場の底堅さを印象付けた。個人消費は雇用動向に強い影響を受けるため、市場予想程度の好結果は十分期待出来、予想を超える強さを見せる可能性も十分にある。この場合ドル高で反応するとみられ、ドル円は144円台回復が期待される。
カナダ中銀政策金利 4月16日22:45
☆☆☆
 16日にカナダ銀行(中央銀行)金融政策会合の結果が公表される。昨年6月の会合で利下げを開始したカナダ中銀は、前回3月12日の会合まで7会合連続で利下げを実施。利下げ開始前は5.00%あった政策金利は現在2.75%となっている。2022年には+8%台を付けていたカナダのインフレ率(CPI前年比)は、昨年9月時点で+1.6%まで鈍化。今年1月分でも+1.9%とインフレターゲットの2.0%を下回る伸びとなっており、利下げの継続につながっていた。しかし、前回の会合後となる3月18日に発表された最新2月のCPIは+2.6%まで一気に上昇。前月比も1月の+0.1%から+1.1%に跳ね上がった。日用品などを対象とする連邦物品サービス税(GST)と統一売上税(HST)の免除期間が2月半ばに終了したことが物価を一気に押し上げた。
 この物価上昇を受けて今回の会合では金利据え置きが見込まれている。今後の物価がトランプ関税の影響で上振れる可能性が高いことも据え置き期待につながっている。カナダは2月28日に発表された2024年第4四半期GDPが前期比年率+2.6%とかなり好調。第3四半期も+2.2%へ上方修正された。しかし、トランプ関税の影響で今後は厳しい状況もありうるとの警戒感が見られ、今回の中銀会合でも短期金利市場で約31%が利下げ継続を見込んでいる。エコノミストなど専門家による予想も据え置きが過半数を占めているとはいえ40%程度が0.25%の利下げ継続を見込んでおり、見方が分かれている。少数意見である利下げ実施の場合はカナダ売り、据え置きの場合は声明に注目で、今後の利下げ姿勢を強く示すようだと、据え置き決定でいったんは買われても、その後カナダ売りが強まる可能性がある。この場合ドルカナダは1ドル=1.4000カナダを目指す可能性がある。
ECB理事会
4月17日21:15 ☆☆☆
 カナダ中銀同様に昨年6月に利下げを開始した欧州中央銀行(ECB)。昨年7月の据え置きを挟み、その後は前回3月6日の会合まで5会合連続で利下げを実施した。市中金利に近い預金ファシリティ金利は合計6回の利下げで利下げ前の4.00%から2.50%となった。 
 前回の会合では声明で「金融政策は実質的に引き締め的でなくなりつつある」と、これまでの利下げ継続姿勢からの転換を示唆した。また、会合後のラガルドECB総裁会見では、それまでの会見で見られた「利下げに向けた方向は明確である」との表現が控えられた。これらを受けて前回会合の直後は4月の会合での金利据え置きを見込む動きが広がった。しかし、トランプ関税をめぐる混乱と景気鈍化懸念もあり、今回も利下げ継続との見方が広がった。直近で短期金利市場では今回の利下げを約95%を見込んでおり、ほぼ織り込み済みとなっている。
 市場の注目は今後の利下げ継続がどこまで進むか。短期金利市場では6月5日会合での連続利下げを約75%織り込む動きとなっている。2月のユーロ圏消費者物価指数が前年比+2.3%と1月の+2.5%から鈍化したことも利下げ期待につながっている。声明や総裁会見で今後の利下げ継続を示唆してくると、ユーロ売りにつながる。ユーロドルは1.12ドル台に向けた動きが見込まれる。

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