2025年04月21日号

(2025年04月14日~2025年04月18日)

先週の為替相場

トランプ関税受けてのリスク警戒継続

 先週(4月14-18日)のドル円はトランプ関税の影響などを警戒したドル安が継続、11日に付けた直近安値1ドル=142円07銭を下回って141円62銭を付け、昨年9月以来のドル安円高となった。

 トランプ大統領は11日にスマートフォンやパソコンを含む半導体関連製品や医薬品、エネルギーなどが相互関税の対象とはならないことを明らかにした。これを受けて11日海外市場でドル高となる場面が見られたが、13日になって大統領は半導体製品や医薬品について別枠での関税を賦課する方針を発表。14日の週にも明らかにする方針を示したことで、週明け14日の市場はドル安円高でスタートした。赤沢再生相が為替について加藤財務相とベッセント財務長官とで協議していくと発言したこともドル安円高材料となって、14日の東京市場で142円24銭を付けた。もっとも11日のドル安圏には届かず、142円00銭手前のドル買いが意識される展開となった。

 その後、米株先物時間外取引や欧州株の上昇をきっかけに、いったんドルが反発し144円00銭台を付けた。上昇一服後は、トランプ関税への警戒感を意識してドル売りが優勢となった。米中対立への警戒感も強まる中、米国が中国に対する半導体規制を強化とのニュースに16日に142円00銭台を付けた。同日、中国当局が「米国との交渉にオープン、リスペクトをもって交渉担当者を指名なら」と示したことで142円90銭台まで急騰するなど、不安定な動きとなった。その後パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長がシカゴで行った講演において、「当面は透明性向上を待つ状況が整っている」「関税が経済に与える影響は予想より大きい可能性が高く、インフレに及ぼす影響も比較的長期化する可能性」などと発言。先行き警戒感を強く示したことでドル売りとなり、サポートとなっていた142円00銭を割り込んでストップロス注文を巻き込む形で141円65銭を付けた。

 17日朝にかけていったん142円20銭を付けるも、141円62銭まで下落と、ドル安円高が優勢となった。もっとも、訪米した赤沢経済再生担当大臣が為替については協議しなかったと発言したことなどをきっかけにドルは買い戻しが強まり、143円00銭台を付けた。

 18日金曜日はグッドフライデーで世界中のほとんどの国・地域が休場。日本と中国が開いていたアジア・オセアニア市場も、豪州、NZ、香港、シンガポールが休場で取引参加者が少ない中、やや上値が重い展開。142円10銭台で週の取引を終えた。

 11日に1ユーロ=1.1470ドルを付けたユーロドルは、14日にも1.1425ドルを付けるなど、ユーロ高圏推移となった。もっとも1.1500手前の売りが意識される中、ポジション整理のユーロ売りが入り14日海外市場で1.1290ドル台を付けた。その後少し戻すも、ドル全般の反発が見られたことで15日に1.1260ドル台を付けている。もっとも、その後はユーロ高ドル安が優勢となり、16日海外市場で1.14台を付けるなど堅調。週後半は1.13台後半を中心とした推移。

 ドル主導の展開でユーロ円などクロス円は方向性のはっきりしない展開。ドル円の下げもあり、先週初めの1ユーロ=163円台から15日に161円30銭台を付けるも、対ドルでユーロ買いが入る場面で162円60銭台を付ける場面が見られた。

今週の見通し

 トランプ関税をめぐって不安定な動きがドル安につながっている。また、トランプ大統領が利下げに消極的なパウエル米FRB議長に不満を抱いており、解任圧力を強めていることも、ドル売りにつながっている。実際に解任が可能かどうかは見方が分かれており、多くの法学者が困難との見方を示す一方、FRBに関わる連邦準備法は解任について具体的な言及がなく、法的見解が確立されていない。ただ、実際に可能かどうかはともかく、ベッセント財務長官やパウエル議長の後任候補とされるウォーシュ元FRB理事らが解任に反対する中、トランプ氏がパウエル議長解任に向けた動きを強めると、米国に対する信用度の低下からドル安が強まる可能性がある。

 今週予定されているG20財務相・中央銀行総裁会議やG7財務相・中央銀行総裁会議でのベッセント財務長官の姿勢も注目される。ベッセント財務長官は就任後初のG20出席となる。関税に対する批判を浴びる可能性があるが、強硬姿勢を崩すことはないとみられている。

 ドル円はリスク警戒の円買いも含めてドル安円高の進行が見込まれる。心理的に大きな節目となる140円00銭、昨年9月16日に付けた2024年の安値139円58銭がターゲットとなる。139円50銭を割り込むと、ドル売りが加速する可能性がある。

 ユーロドルは1.1500ドルを超えてどこまで買いが進むか。主要ポイントを超えてきていること、資金のドル離れが進む中、銀行間の外国為替市場でドルに次ぐ取引量のあるユーロは、ドルの代替通貨としての立ち位置もあり、しっかりした展開が見込まれる。1.1700ドルに向けた動きとなる可能性がある。

 ユーロ円などクロス円ははっきりしない展開が続きそう。ドル円が139円58銭を割り込んで売られるようだと、上値が重くなる可能性がある。

用語の解説

赤沢再生相 赤沢亮正経済再生相(経済財政政策など兼任)。東大法学部卒、運輸省に入省。米コーネル大学で経営学修士(MBA)取得。平成17年に衆議院銀初当選、現在6期目(鳥取2区)。内閣府副大臣、財務副大臣などを経て現職。
ウォーシュ元FRB理事 ケビン・ウォーフ元FRB理事。スタンフォード大学卒、ハーバード大学で法務博士取得後、米モルガンスタンレーに勤務。2002年から2006年までブッシュ政権で大統領特別補佐官(経済政策担当)、国家経済会議(NEC)事務局長などを務めた後、2006年から2011年までFRB理事。2006年時点では35歳で最年少のFRB理事であった。

今週の注目指標

IMF・世界銀行春季会合、G7、G20財務相・中央銀行総裁会議など 4月21日から26日
☆☆☆
 21日から国際通貨基金(IMF)及び世界銀行の春季会合が米ワシントンD.C.で開催される。それに合わせ23日からG20財務相・中央銀行総裁会議及びG7財務相・中央銀行総裁会議が開催される。また日米財務相会合も開催の方向で調整されている。
 ベッセント財務長官は就任後初のG20となる。トランプ関税についての批判なども出てくるとみられるが、姿勢を崩す可能性は低いとみられる。強硬姿勢が目立つようだとドル売りとなるが、ある程度譲歩を示す機会でもあり、その場合ドル買いとなる可能性がある。強硬姿勢を示す可能性のほうが高いとみており、その場合ドル円は138円台に向けた動きとなりそう。
ユーロ圏PMI(4月速報値)4月23日17:00
☆☆☆
 23日に4月のユーロ圏及び加盟主要国、英国、米国の購買担当者景気指数(PMI)速報値が発表される。トランプ関税への警戒感が強まる中、企業景況感がどこまで影響を受けているのかが注目される。
 16時15分のフランス製造業PMIの予想は47.7、同サービス業PMIは47.5と、3月の48.5及び47.9からともに悪化の見込み。16時半のドイツ製造業PMIの予想は47.6,同サービス業PMIは50.3とこちらも3月の48.3及び50.9からともに悪化の見込み。これらを受けて17時のユーロ圏製造業PMIは47.5、サービス業PMIは50.5と、3月の48.6及び51.0から悪化見込みとなっている。
 ユーロ圏経済は7日発表の2月ユーロ圏小売売上高や15日発表の2月ユーロ圏鉱工業生産が予想を超える伸びとなったが、一方で15日発表の4月ドイツおよびユーロ圏ZEW景況感指数がともに一気に落ち込み、予想外のマイナス圏となった。トランプ関税の影響でPMIも予想以上の弱さを見せる可能性がある。ユーロは対ドル、対円で売りが出る可能性がある。もっとも米国売りの動きが強まりドル売りとなる可能性があり、ユーロドルは思ったほど下げない可能性もありそう。対円では売りが強まる可能性が高い。1ユーロ=161円00銭に向けた動きが見込まれる。
米PMI(4月速報値)4月23日22:45
☆☆☆
22時45分の4月米製造業PMIは49.3、同サービス業PMIは53.0と、ともに3月の50.2及び54.4から悪化見込み。同指標は5月1日に発表される4月米ISM製造業PMIの先行指標となり、2日に発表される米雇用統計の見通しにも影響を与える。製造業が好悪判断の境となる50を下回る見通しとなるなどトランプ関税の影響とみられる景況感悪化が目立っている。予想を超えて弱くなった場合、ドル売りが加速する可能性がある。ドル円は137円台に向けた動きが見込まれる。

auじぶん銀行外貨預金口座をお持ちのお客さま

ログイン後、外貨預金メニューからお取引いただけます

免責事項

本レポートは株式会社時事通信社が提供しています。また本レポートの内容は、株式会社時事通信社が提供する情報をもとに、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが執筆しています。本レポートは、情報提供のみを目的にしたもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。投資決定に当たっては、投資家ご自身のご判断でなされますようお願いいたします。株式会社時事通信社、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドおよび情報提供元は、本レポートに記載されているいずれの情報についても、その信頼性、正確性または完全性について保証するものではありません。また本レポートに基づいて被った損害・損失についても何ら責任を負いません。本レポートに掲載されている情報の著作権は、株式会社時事通信社および株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに帰属します。本レポートに掲載されている情報を株式会社時事通信社の許諾なしに転用、複製、複写等することはできません。

Copyright(C) JIJI Press Ltd. All rights reserved.

auじぶん銀行からのご注意

  • 本画面に掲載されている情報は、auじぶん銀行の見解を代弁したものではなく、auじぶん銀行がその正確性、完全性を保証するものではありません。

以上の点をご了承のうえ、ご利用ください。