2025年04月28日号

(2025年04月21日~2025年04月25日)

先週の為替相場

ドル円一時139円台も、その後反発

 先週(4月21-25日)のドル円は一時昨年9月以来のドル安円高となる1ドル=139円89銭を付けたが、その後反発した。

 トランプ米大統領がパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の解任を検討と報じられたことなどを嫌気して、週明け21日はドル安が優勢となった。イースターマンデーでユーロ圏、英国などが休場、アジア・オセアニア市場でも豪州、NZ、香港などの市場が休場となり、取引参加者が少ない中でドル売りが広がった。ドル円は直近安値を割り込んで売りが出た。ユーロドルが2021年11月以来のユーロ高ドル安、ポンドドルが昨年9月以来のポンド高ドル安になるなど、ドルは全面安となった。

 22日に入ってもドル安の動きが目立つ中、東京朝に関係者筋情報として日銀が利上げ姿勢を継続と報じられたことで円買いが加わり、心理的に大きな節目となる140円00銭を割り込んで、昨年9月16日以来となる139円89銭を付けている。

 139円台には行き過ぎ感もあってすぐに戻すと、安値圏もみ合いを経て22日海外市場から23日東京朝にかけて一気にドル高円安となった。ベッセント米財務長官(用語説明1)が関税をめぐる中国との対立について、長くは続かず、緩和していく見通しと発言したことなどがドル買いにつながった。米株の大幅反発など、リスク警戒後退の動きによるドル買い円売りに加え、22日米国市場夕方にはトランプ大統領が報じられていたパウエル米FRB議長の解任について、そのつもりはないと否定したこともあり、ドル円は143円22銭を付けた。

 その後再びドル安円高となった。米国売りの動きが一服する中で、米国債の買い戻し(債券価格上昇=利回り低下)が見られ、ドル売りにつながった。24日の日米財務相会合を前にした警戒感なども見られ、141円50銭台を付けた。

 その後トランプ政権が対中関税を緩和するとの観測が流れ、ドル買いが強まった。143円50銭台まで反発も、日米財務相会合やG20財務相/中央銀行総裁会議を前に、行き過ぎた動きには警戒感があり、少し戻して142円台中心の推移となった。25日東京市場に入って24日日米財務相会談で為替水準や目標について、米国側からの言及はなかったという加藤財務相発言にドル高円安となり、一時144円台を付けている。

 ユーロドルは先週序盤のドル安に1.1573ドルを付けた。心理的節目である1.1500を超えてストップロス注文を巻き込んで一気に上昇となった。その後少し落として1.1500ドルを挟んでの推移となった後、22日海外市場での米中関係改善期待などを受けたドル買いに1.1300ドル台を付けた。その後1.1450前後が重くなり、再びユーロ安トライの場面も1.1300手前のユーロ買いが支えとなった。週後半は1.1400ドル前後が重く、1.13ドル台中心の推移となった。

 ユーロ円はドル主導で方向感がはっきりしない展開。4月半ばから続く1ユーロ=161円00銭から162円70銭前後のレンジ取引が続いた。ユーロドルでユーロ売りが進んだ22日に160円99銭と161円割れを付けたがすぐに戻している。週末にかけてドル円が上昇すると、ダウ平均株価の4日続伸に見られるリスク警戒後退からの円売りもあって163円70銭台まで上昇した。

今週の見通し

 トランプ関税をめぐる先行き不透明感が継続。先週調査開始が報じられたスマホやPCなどを含む半導体関連関税や医薬品関連関税の動向が注目される。ただ、ともに米国にとって絶対的に必要であり、一方で米国での生産がすぐにできるものでもないため、積極的な関税賦課にはならないとの期待がある。関税についての日米協議の進展期待などと合わせ、ドル高円安がやや進みやすい地合いか。

 一方で中長期的なドル安進行の意識もあり、戻りでは売りが出そう。日米金利差縮小への期待もあり、145円前後ではドル売りが出てくる可能性が高い。ドル円はごく短期的には先週の安値からの買い戻しが優勢も、上値は限定的なものに留まりそう。

 ユーロドルは1.13台を中心とした推移となりそう。上下ともにやや動きにくい展開。リスクは依然上方向と見られるが、1.15台後半までいったん上昇したことで、上値一服感が出ている。

 ユーロ円は方向感のはっきりしない展開が続くか。ドル円が145円を超える上昇を見せた場合、ユーロ円も上をトライする展開が見込まれる。

 その他、28日にカナダで連邦議会の総選挙が行われることに要注意。カーニー首相(用語説明2)率いる与党自由党が支持率でリードを維持していると見込まれており、政権交代などのリスクは限定的と予想されている。ただ、直前での最大野党保守党の巻き返しも報じられており、結果を確認したいところ。自由党、保守党共に選挙戦の中でトランプ関税について厳しい姿勢を示しており、結果判明後の演説などにも注意。米加関係悪化の警戒感が出るようだと、ドル高カナダ安となりそう。1ドル=1.4000カナダに向けた動きが見込まれる。

用語の解説

ベッセント財務長官 スコット・ベッセント(Scott Bessent)米財務長官。サウスカロライナ州コンウェイ出身、イェール大学卒。ソロスファンドでロンドンオフィスのトップとなった後、2000年にいったん自身のファンドを立ち上げるも、2005年に閉鎖。その後ソロスファンドに復帰。2015年にヘッジファンドであるキースクウェアグループを立ち上げた。2024年の米大統領選で選挙活動募金イベントなどを主宰し、トランプ大統領の選挙資金を支援。同年7月に経済アドバイザーに就任。トランプ氏が大統領選に勝利した同年11月に次期財務長官として指名され、2025年1月27日に議会での承認を受けて就任している。
カーニー首相 マーク・カーニー(Mark Carney)カナダ首相。ノースウェスト準州フォートスミス出身。ハーバード大学卒、オックスフォード大学で経済学修士及び博士号取得。ゴールドマンサックス勤務を経て、2003年にカナダ銀行(中央銀行)副総裁に就任。2004年にカナダ財務省上級副大臣就任。2008年2月にカナダ銀行総裁に就任。任期は2015年までであったが、2013年7月のイングランド銀行(中央銀行)総裁就任に伴い、2013年6月にカナダ銀行総裁を退任。英中銀として初めての外国人の総裁となった。2019年12月国連環境問題担当特使就任。2020年3月英中銀総裁を退任。2025年1月にトルドー首相(当時)が支持率低下などを背景に首相及び与党自由党党首の辞任を表明すると、後継者として名乗りを上げ、3月9日の党首選に勝利、同月15日に第30代カナダ首相に就任。

今週の注目指標

大統領就任100日記念集会
4月29日
☆☆☆
 トランプ大統領は就任100日目となる4月29日にミシガン州で記念集会を開催する。支持率が低下する中、選挙戦の中でかなりの激戦区となった同州でこれまでの成果などをアピールし、支持率回復を図るとみられる。自動車産業の強い同州だけに、自動車関税の動向への言及があるとみられる。相互関税にも言及すると予想されるだけに、発言内容に注意。関税に対する強い姿勢を維持するとドル売りとなる。ドル円は142円台トライの動きとなりそう。
米第1四半期GDP速報値
4月30日21:30
☆☆☆
 米第1四半期GDPは前期比年率+0.4%と昨年第4四半期の+2.4%から一気の鈍化見込みとなっている。トランプ関税などが市場の注目材料となる中、米経済への影響がどこまで始まっているのか警戒される中での弱い数字となる見込み。GDP全体の約70%を占める個人消費が昨4四半期の+4.0%から+1.2%に大きく落ち込む見通しとなっている。もっともこの鈍化の最大の理由は寒波で、元々ある程度の鈍化が見込まれていました。ただ、トランプ関税による影響がある程度入っているとみられ、以前の予想よりやや弱い数字が見込まれている。2月からスタートした対中関税引き上げの影響などで個人消費の押し下げが予想以上に大きなものとなり、予想よりもさらに弱い伸びとなった場合、ドル売りが進む可能性がある。ドル円は141円台に向けた動きが見込まれる。
米雇用統計(4月)
5月2日21:30
☆☆☆
 前回3月の米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が前月比+22.7万人と、2月の+11.7万人から一気に伸び、市場予想の+13.7万人も大きく超える力強い伸びとなった。失業率は4.2%と2月及び市場予想の4.1%から悪化したが、労働参加率の上昇(労働参加率の上昇は短期的に失業率を悪化させることが多い)や、正社員雇用を望みながら非正規雇用に甘んじている人などを含めた広義の失業率(U6失業率)の低下などが見られたため問題視されず、全般に強いという印象を与えた。
 NFPの内訳をみると、製造業が前月比+0.1万人と小幅ながら2カ月連続のプラス圏、建設業が+1.3万人となって、その他を含めた財部門全体では+1.2万人となった。2月の+2.6万人から増加幅は縮小したが、好調さを維持という印象となった。全体が市場予想を超える伸びとなった要因はサービス部門の力強い伸び。ヘルスケアを中心とした教育・医療部門が+7.7万人と2月の+6.0万人を超え、好調さを維持。レストラン部門を中心とした娯楽・接客業が+4.3万人、小売業が+2.4万人、運輸・倉庫業が+2.3万人と2月から大きく伸びており、全体を支えた。これらの部門は雇用の流動性が高く、景気動向にも敏感な部門だけに市場に好印象を与えた。なお、トランプ政権により連邦政府の職員削減が急速に進んでいるが、3月の数字としては-0.4万人に留まった。これは雇用統計の規定上、退職金を継続的に受け取ると雇用者扱いとなるためで、実態を反映していない可能性がある。
 こうした状況を受けて今回4月分の雇用統計の市場予想はNFPが+13万人となっている。前回から一気に伸びの鈍化が見込まれている。1月の+11.1万人、2月の+11.7万人といったこれまでの流れに戻るという面があるが、トランプ関税の影響が警戒される中、やや厳しい水準となっている。かなり強かった前回の内訳のうち、小売業は大手スーパーのクローガーでのストライキが解消したことによる増加分があったとみられている。運輸・倉庫業の雇用増はトランプ関税前の駆け込み需要への対応という面が指摘されている。今回はこうした特殊事情による押し上げの影響が減少するため、伸びが鈍化するとみられている。予想前後もしくはそれよりも弱い伸びに留まると、関税の影響が強く意識され、ドル円は140円トライとなる可能性がある。

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