2025年05月07日号
先週の為替相場
先週半ばからドル高円安やや優勢
先週(4月28日-5月2日)のドル円は、トランプ関税を受けた先行き不透明感もあって、先週前半はドル安円高が優勢となったが、その後反発した。
28日からの週は、29日にミシガン州でトランプ大統領の就任100日記念集会、30日に米第1四半期GDP速報値、1日に日銀金融政策決定会合結果発表、米ISM製造業景気指数、2日に米雇用統計など、日米の重要なイベント予定が並んでいることもあって、比較的落ち着いたスタートとなった。1ドル=143円台で週の取引をスタートすると、トランプ関税をめぐる先行き不透明感もあって、やや上値が重く28日海外市場で141円99銭を付けた。
29日は昭和の日で東京市場が休場。取引参加者がやや少ない中、少しドル買いが入る場面が見られたが、同日米国東部時間夕方(日本時間30日午前)に行われるトランプ大統領の就任100日記念集会での演説を前に警戒感が広がり、141円97銭と先週の安値を付けるなどドル安の流れが継続した。
注目されたトランプ大統領の就任100日記念集会での演説は無難なものとなり、安心感もあってドル買いが強まった。日本にとって大きな懸念材料となる自動車関税の除外条件などへの言及があったことがドル買い円売りにつながったと見られた。また、中国当局が米国からの輸入品について関税の除外リストを示したことも、米中関係改善期待からのドル買い円売りとなった。一時143円台を回復したが、米第1四半期GDPが予想を超えるマイナスの成長となったことで142円50銭台までドル安となるなど、一方向の動きにはならなかった。米GDPは個人消費の落ち込みが予想ほど大きくなかったものの、トランプ関税発動を前にした駆け込みでの輸入拡大が予想を超える規模となり、全体が押し下げられた。
30日、1日の日銀金融政策決定会合は市場予想通り政策金利の据え置きとなった。今回公表回に当たっていた経済・物価情勢の展望(日銀展望レポート)(用語説明1)では、2025年度、2026年度の経済成長見通し、物価見通しが引き下げられ、物価の2%目標達成時期が1年先送りされた。これを受けて1日東京市場午後に円は全面安となり、ドル円は143円00銭前後から144円30銭前後まで上昇。さらに植田日銀総裁が米関税をめぐる不確実性が極めて高いと慎重姿勢を示したことで円売りとなり144円70銭台を付けた。さらに同日の米ISM製造業景気指数が予想ほどの悪化を見せず、前回弱かった新規受注や雇用部門が改善を見せたこともドル買いにつながり、145円70銭台を付けている。
2日東京朝に中国商務省が米国との通商協議の可能性を現在検討中と報じたことで145円90銭台まで上昇。その後は米雇用統計を前にポジション整理からドル売りが強まると、雇用統計自体はかなり強く出たものの上値トライが限定的となったことで、ドルがもう一段安となり143円70銭台を付けた。その後は週末を前に調整が見られた。
ユーロドルは先週初めのドル安局面で1ユーロ=1.1420ドル台を付けた。その後はドル高が強まり、1.1260台を付けるも、米雇用統計後に1.1380前後をつけるなど、一方向の動きにならなかった。
ユーロ円は先週前半のドル円の重さもあり1ユーロ=161円台後半を中心とした推移も、日銀会合後の円売りもあって164円60銭台まで上昇した。その後はじりじりと下げている。
今週の見通し
日本時間8日午前3時に結果が発表される米連邦公開市場委員会(FOMC)は政策金利の据え置きが見込まれている。注目は声明とパウエル議長の会見となる。次回6月のFOMCについては1カ月ほど前まで利下げがほぼ完全に織り込まれおり、先週時点でも利下げ見通しが据え置き見通しをはっきりと上回っていた。しかし2日の米雇用統計の好結果などもあってここにきて据え置き見通しが強まっており、短期金利市場や金利先物市場では70%程度が据え置き、30%程度が利下げの織り込みと、据え置き見通しが利下げ見通しを上回ってきている。ただ、今後もまだ流動的な状況で、声明や会見の内容次第では再び利下げ期待が強まる可能性がある。この場合ドル売りが広がる可能性が高い。一方、従来通り利下げに慎重な姿勢を強調してくると、ドル買いが強まる見込みとなっている。
トランプ関税がらみも引き続き警戒が必要。中国商務省は何副首相(用語説明2)が9-12日に日程でスイスに向かい、ベッセント財務長官と協議を行うと発表した。米国側も10日にスイスでベッセント財務長官とグリアUSTR代表が中国高官と協議を行うと発表しており、ようやく米中協議が開始する見込み。市場は協議開始を好感してドル買いを進めたが、合意までにはかなりの時間がかかるとの見通しもあり、依然先行きは不透明。協議が物別れに終わり、対立が強調された場合ドル売り円買いとなる可能性もある。
これらの状況からドル円は上下ともに動きが出る可能性がある。142-144円台を中心に材料次第で大きな流れが出る可能性を意識する必要がありそう。
ユーロドルは1.15台からはいったん調整が入ったものの、流れはまだ上方向。下がると買いが出る流れか。
ユーロ円は比較的しっかりの展開も、ドル主導で不安定な動きが続いている。
その他通貨では8日に英中銀金融政策会合(MPC)が予定されている。昨年8月に利下げを開始した英MPCは、9月の据え置きを経て11月に利下げ、12月の据え置きを経て2月に利下げとなっており、前回3月が据え置きを経て、今回は利下げが見込まれている。注目は今回発表回に当たっている金融政策報告やベイリー総裁会見で今後の利下げ姿勢を強めるか。6月の連続利下げ見通しが強まるとポンド安となる可能性がある。
用語の解説
経済・物価情勢の展望(日銀展望レポート) | 日本銀行が年4回(通常1月、4月、7月、10月)に公表する経済見通しと金融政策の運営方針を示した報告書。日銀金融政策決定会合で審議され、政策金利などの結果発表と同時に公表される。2000年10月に導入された。 |
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何副首相 | 何立峰国務院副総理。中国福建省出身。廈門大学卒。1998年に同大学で経済学博士号取得。2014年に国家発展改革委員会副主任、2017年に同主任に就任。2022年に中央政治局委員に選出。2023年に国務院副総理に就任。 |
今週の注目指標
米連邦公開市場委員会(FOMC) 5月8日03:00 ☆☆☆ | 4月9日にトランプ政権が相互関税発動を発表した前後では今回のFOMCでの利下げ見通しが据え置き見通しを上回る場面が見られたが、その後据え置き見通しが強まり、4月後半以降は据え置き見通しでほぼ一致した状況が続いている。市場の注目は今後の金融政策運営姿勢。トランプ大統領がたびたび利下げを求める発言を行っているが、パウエル議長は慎重姿勢を崩していない。そうした中、6月のFOMCで利下げが行われるかどうかが焦点となっている。 1カ月前頃までは6月のFOMCまでの利下げをほぼ織り込む動きが広がっていた。その後利下げ期待がやや後退も、先週時点では利下げ見通しが据え置き見通しをはっきりと上回る状況となっていた。しかし、パウエル議長が慎重な姿勢を維持していることや、2日に発表された4月の米雇用統計が強めに出たことなどで、直近では据え置き見通しが利下げ見通しを上回ってきている。ただ、状況はまだ流動的で今回のFOMCでの声明や議長会見次第で見通しが変化する可能性がある。 声明は前回3月のFOMCでそれまでなかった「経済見通しを巡る不確実性は強まった」との文言が追加され、一方で「雇用とインフレの目標達成に対するリスクはほぼ均衡している」との文言が除かれた。今後により慎重な姿勢を強調した形となっている。今回も「経済見通しを巡る不確実性は強まった」の表現が継続し、議長が慎重姿勢を強調すると6月の据え置き期待が広がりドル高となる可能性が高い。ドル円は145円に向けた動きが見込まれる。 |
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英中銀金融政策会合(MPC) 5月8日20:00 ☆☆☆ | 英中銀は昨年8月のMPCで利下げを開始、以降9月が据え置き、11月が利下げ、12月が据え置き、今年1月が利下げ、3月が据え置きと、利下げと据え置きが交互となっている。今回は利下げの番に当たっており、市場は利下げの見通しで一致している。注目はこれまでのパターンでは据え置きとなる6月のMPCに対する見通し。ベイリー総裁は4月24日の講演で、トランプ関税と各国によるその報復措置が英経済に与える衝撃を注視していると発言。先行きへの警戒感を示している。英景気の冴えない状況もあり、市場は6月の連続利下げを60%程度見込んでいる。今回は四半期に一度公表される金融政策報告とベイリー総裁の会見が予定されるスーパーサーズデーにあたっており、金融政策報告や総裁会見次第では利下げ見通しがより強まる可能性が意識されている。その場合ポンドドルは1ポンド=1.3200ドルに向けた動きが見込まれる。 |
ウィリアムズNY連銀総裁、ウォラーFRB理事 パネルディスカッション 5月9日 ☆☆ | スタンフォード大学フーヴァー研究所主催のカンファレンスでウィリアムズNY連銀総裁とウォラーFRB理事が出席するパネルディスカッションが行われる。テイラールールがテーマとなっており、政策金利についての発言が見込まれる。また質疑応答も予定されており、今後の金融政策動向についてのコメントがあると期待されている。今後の利下げに慎重な姿勢が見られるとドル買いとなる。その場合、ドル円は145円台に向けた動きが期待される。 |
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