2025年05月19日号
先週の為替相場
ドル円は一気のドル高も続かず
先週(5月12日-5月16日)のドル円は、週明けに一気にドル高円安が進んだが、その後上昇分を打ち消す展開となった。週前半はドル安円高が優勢も、その後ドル高円安となった。米連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエル議長会見で追加利下げに慎重な姿勢が改めて示されたことや、米英通商協議の合意などがドル高につながった。
週明け12日の市場は9日米国市場終値からドル高円安方向に窓を開けてスタートとなった。週末に行われた米中貿易協議について、米中双方から重要な進展があったことが伝えられ、ドル円は東京朝に約1カ月ぶりのドル高圏となる1ドル=146円28銭を付けた。日本時間午後4時に共同声明が発表されると報じられたことで、その後は声明までいったん様子見ムードとなり145円70銭前後をつける動き。もっとも9日終値の145円37銭までのギャップを埋めに行く動きは見られず、ドル高基調が継続した。
共同声明では米中両国が関税を115%引き下げることなどで合意したことが示された。市場は今後の引き下げに向けた枠組み合意などに留まっていると予想していたこともあり、大幅な関税引き下げの合意がサプライズとなって一気に148円台へ急騰。その後もドル高圏推移が続き、海外市場で148円65銭まで上値を伸ばした。
13日に入ると、加藤財務相がベッセント米財務長官と為替協議を行う予定を示したことなどを受けてドル高円安の調整が入り、東京午後に147円65銭前後を付けた。海外市場に入ると再びのドル高に148円20銭台を付けるなど、ドル高基調が継続。
その後はドル高の調整が目立つ展開で、ドル円は頭が重くなった。14日に入って147円00銭前後まで下げた後、米韓高官が為替政策を協議との報道をきっかけにドル売りウォン買いが一気に進んだことをきっかけにドルが全面安となり、ドル円は145円60銭台を付けた。その後米国が貿易合意の一部としてドル安を模索していないと報じられたことでドル買いとなり147円10銭前後を付けたが、ドル買い一服後は再び重くなり、15日には14日の安値を割り込むと、16日に144円台を付けている。その後週末を挟んだポジション調整や、ミシガン大学消費者信頼感調査(用語説明1)の中での1年インフレ見通しが引き上げられたこともあって、ドル買いとなり、一時146円台を回復した。
ユーロドルもドル円同様に先週の週明けにドル高となった。9日に1ユーロ=1.1200ドル割れを付けた後、少し戻して1.1250ドル前後で先々週の取引を終えると、1.1240ドル台で週の取引をスタートも、すぐにドル高が強まり、一時1.1065ドルまでユーロ安ドル高となった。14日に1.1250ドル台を付けて線先週末の終値水準まで戻したものの、その後は少し重くなって16日には1.1130ドル台を付けている。
ドル主導の中で、ユーロ円はやや不安定も、週前半はしっかり。米中合意を受けたリスク警戒後退の動きが円売りに繋がり、13日に1ユーロ=165円21銭を付けている。その後は一転してユーロ売り円買いとなった。ドル円の下げに加え、米景気の先行き不透明感が継続する中でリスク警戒が再び強まっている。
今週の見通し
米格付け会社ムーディーズ・レーティングス(用語説明2)が16日米国東部時間夕方に米国の格付けを従来のAaa(AAAに相当)からAa1(AA+に相当)への引き下げを発表した。大手格付け3社のうち、S&Pグローバル・レーティングが2011年8月に、フィッチレーティングスが2023年8月にともにAAAからAA+に引き下げており、これで米国の格付けは3社がAA+格で一致する形となった。
安全資産とされる米国債の格付け低下は、市場の警戒感を誘っている。ただ、投資資金が米国から一気に離れるという状況は想定し難く、影響は限定的なものに留まる可能性が高い。米国株や米債利回りなどの状況を確認しつつ、方向性を探る展開になるとみられる。今週はそれほど目立った米指標発表予定もなく、市場はじっくりと流れを見極める展開となりそう。
リスクはやや下方向と見られる。先週初めの148円60銭台までのドル高円安で、上値に一服感が出ている。146円前後が重くなると、下トライの勢いが強まるか。
ユーロドルは1.11台から1.12台前半を中心としたレンジ取引が見込まれる。上下ともにやや動きにくいか。
ユーロ円などクロス円は円高優勢。リスク警戒の根強さが意識される展開。米株式市場動向などをにらみつつとなるが、ユーロ円は165円台が重くなった印象で、戻りではユーロ売りが出る展開と見ている。
用語の解説
ミシガン大学消費者信頼感調査 | ミシガン大学のSurveys of Consumersが全米から無作為抽出した家計に対するアンケート調査を実施し、景況感やインフレ見通しについて集計したもの。速報は420サンプル、確報は800超のサンプルによる集計。 |
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ムーディーズレーティングス | ムーディーズレーティングスは米NY市に本社を構える債券信用格付け会社。持ち株会社ムーディーズコーポレーションの下で事業を行っている。昨年3月にムーディーズインベスターズサービスから社名を変更した。同業のS&Pグローバル・レーティングとフィッチレーティングスと合わせ、世界3大格付け会社と呼ばれている。同社の格付けは最高格付けとなるAaaから最低格付けのCまでとなり、AaaとC、およびCの一つ上のCaを除いて1-3までのランクがある。Aaaが大手残り2社でのAAA、Aa1が同AA+、Aa2がAAという形になる。 |
今週の注目指標
豪中銀金融政策会合 5月20日13:30 ☆☆☆ | オーストラリア準備銀行(RBA/中央銀行)は20日の金融政策会合で政策金利を現行の4.10%から3.85%に引き下げる見込みとなっている。アフターコロナでのインフレ進行を受けて4.35%まで金利を引き上げた後、今年2月の会合で0.25%の利下げを実施。前回4月の会合は据え置きとなったが、20日に追加利下げを実施する見込みとなっている。 2月の利下げ時の声明では、「インフレ圧力が予想よりもやや早く緩和していることを示唆」などの表現があるものの、「物価の上振れリスクは残っている」「労働市場の一部は予想外に堅調」「労働市場が引き続き逼迫していることを示唆」などの表現があり、今後についても、「豪金融政策はこれまで引き締め的であり、今回の利下げ後も引き締め的であり続ける」と、タカ派姿勢を維持した。 今回は利下げ自体は確実視されており、注目は声明や会見、四半期報告で同様のタカ派姿勢を維持するか。 4月30日発表の豪第1四半期消費者物価指数(CPI)は、前期比+0.9%、前年比+2.4%と共に市場予想を上回る伸びとなっている。さらに今月15日に発表された4月の豪雇用統計は就業者数が前月比+8.9万人と、市場予想の+2.0万人、3月の+3.64万人を大きく上回っており、直近豪指標に強さが目立っている。そのため、今回はタカ派姿勢を維持する可能性が高いと見られる。市場では今回を含めて年内3回の利下げを織り込んでいるが、その利下げ期待が後退するようだと、豪ドル売りとなる可能性がある。豪ドルドルは1豪ドル=0.6300ドルを目指す動きが見込まれる。 |
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G7財務相・中央銀行総裁会議 5月21日/22日 ☆☆☆ | 21日、22日にカナダ西部バンフでG7財務相・中央銀行総裁会議が開催される。加藤財務相はベッセント米財務長官と為替などについての個別協議を行う方向で調整している。米関税政策については、英国が自動車関税の引き下げの代わりに牛肉など一部商品の市場開放を行う形で合意。一方EUは報復関税を課す姿勢を示すなど、各国・地域で対応が異なる。こうした状況においてG7としてどのような姿勢を示すのかが注目される。米国との個別協議でこれまで避けられていたドル高円安是正についての言及があるとサプライズで一気の円高となる可能性がある。ドル円は142円を目指す動きとなりそう。 |
ユーロ圏購買担当者景気指数(PMI) 5月22日17:00 ☆☆☆ | 22日にユーロ圏及び加盟主要国、英国、米国の購買担当者景気指数(PMI)が発表される。ユーロ圏はドイツ、フランスおよびユーロ圏の製造業・サービス業はいずれも前回から改善見込み。トランプ関税の影響に対する警戒感が残るものの、悲観的な姿勢が後退しており、景況感の改善につながっている。もっともユーロ圏、ドイツ、フランスの製造業PMIは改善後も好悪判断の境となる50以下が見込まれているなど、厳しさも残っている。予想ほどの改善を見せない場合、ユーロ売りとなる可能性がある。ユーロドルは1.1100ドルを目指す動きとなりそう。 |
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