2025年06月16日号

(2025年06月09日~2025年06月13日)

先週の為替相場

週後半にかけてリスク警戒強まる

 先週(6月9日-6月13日)のドル円は、週の半ばにかけていったん上昇も、その後リスク警戒の動きから一時円買いが強まり、その後ドル買いが強まる展開となった。

 週明け9日の市場は米中貿易協議をにらみつつ、先々週後半のドル高円安に対するポジション調整が優勢となり、1ドル=145円00銭近くから143円98銭を付けた。もっとも144円割れをいったん付けたことで、調整が一服、米中協議が10日も継続すると報じられる中、144円台後半までドル買いとなった。

 10日午前に参議院財政金融委員会に出席した植田日銀総裁が「基調的な物価上昇率は物価目標の2%まで少し距離がある」との認識を示し、早期利上げ期待が後退したことをきっかけに円売りとなり、145円29銭を付けた。もっとも米中協議二日目を睨んで行き過ぎたドル買い円売りにも慎重姿勢が見られ、すぐに144円台へ落としている。

 注目された米中協議は日本時間11日午前8時過ぎに枠組み合意が報じられた。5月の米中によるジュネーブ合意の実行に向けた枠組みで合意したとして、発表直後は144円90銭前後から145円10銭台まで上昇。もっとも具体的な施策に乏しいとの見方もあり、144円台を付けるなど、少し振幅が見られた。もっとも決裂とならなかったことはプラスという見方が広がり、海外市場にかけて145円46銭までドル高円安となった。

 同日の米消費者物価指数(CPI)は、変動の激しい食品とエネルギーを除くコアの前年比が市場予想を下回る伸びとなり、ドル円は高値からドル売りが出た。一時後退していた米国の年内複数回利下げ期待が強まった。144円30銭台まで急落した後、一時145円台を回復する場面が見られたものの、ドル売りの流れが強く、上値では売りが出る展開となった。

 さらにトランプ大統領が2週間以内に貿易相手国に書簡を送り、一方的に関税率を設定するとの方針を示し、ドル売りが強まった。その前にベッセント財務長官が相互関税の猶予措置延長の可能性に言及していただけにサプライズ感が強くなり、ドル円は143円70銭台を付けると、その後も戻りではドル売りが出る展開となった。米国務省と国防総省が中東情勢緊迫化を理由に一部外交官と国防関係者家族の出国手配に乗り出したとの報道も、ドル売りにつながった。

 日本時間13日朝方にイスラエルによるイラン空爆が報じられると、ドル売り円買いがさらに強まり、142円80銭台を付けた。イスラエル軍はイランの核関連施設など数十の軍事目標を攻撃と発表。またイランから100機以上の無人機がイスラエルに向けて発射されたとも報じられた。情勢が深刻として、リスク警戒の動きがドル全面高に変化。ドル円は安値から買い戻しとなり、144円48銭を付けている。

 ユーロドルは1ユーロ=1.1400ドルを挟んでの推移が続いた後、11日の米CPI後のドル売りに5日に付けたそれまでの6月の高値1.1495ドルを超え、さらにトランプ大統領の2週間以内に関税率提示報道を受けたドル売りもあって、1.1631ドルと2021年10月以来の高値を付けた。今月のECB理事会での追加利下げに慎重な姿勢を受けた利下げ打ち止め見通しの高まりもユーロ高に寄与している。その後、中東情勢緊迫化を受けたドル高に1.1480ドル台を付けている。

 ユーロ円は先週前半はドル円の堅調な動きなどを支えにしっかり。その後対ドルでのユーロ買いなどにドル円が下げる中、堅調な地合いを維持して12日に1ユーロ=166円74銭を付けた。中東情勢緊迫化を受けた円買いに164円95銭まで急落も、その後ドル全面高を受けてドル円が安値から反発したこともあって、166円50銭台まで上昇した。

 

今週の見通し

 今週は日本、米国、英国、スイスなどの政策金利発表、16日、17日のG7サミット(用語説明1)、さらにサミットの場を利用しての日米首脳会合をはじめとする各国間の首脳協議、米小売売上高、日本全国消費者物価指数など、注目材料が並んでいることに加え、イスラエルとイランの応酬継続などもあって、不安定な動きが見込まれる。

 なかなか進展が見られない日米の関税に関する協議について、これまで避けられていた米国からの円安是正圧力などが強まる可能性もあり、不安定な状況。中東情勢緊迫化を受けたドル高を意識も、高値追いには慎重か。

 日銀金融政策決定会合、米連邦公開市場委員会(FOMC)、英中銀金融政策会合(MPC)はいずれも政策金利の据え置きが濃厚。スイス中銀は利下げがほぼ確定的で、一部では大幅利下げによって2022年以来のマイナス金利(用語説明2)になるとの見方も出ており、注目を集めている。

 据え置き見込みの日、米、英も声明などの姿勢次第で相場に影響が出るとみられるだけにかなり不安定な動きとなりそう。

 ドル円は中東情勢を受けたドル全面高を受けて、基本的にはしっかりの展開を見込むも、クロス円でリスク警戒の動きが円買いに繋がり、ドル円の重石となる可能性もあり、不安定な動きとなりそう。143円台から145円台半ばを中心としたレンジ取引を基本に、上下ともにリスクという展開を見込んでいる。

 ユーロドルは今月のECB理事会後の利下げ打ち止め期待もあって、下がると買いが出る展開。再びの1.16ドル台に向けた動きが期待される。

 ユーロ円はユーロ自体の買い意欲や、ドル円の堅調さもあって比較的しっかりした動きとなりそうで、168円台トライもありそう。ただ、リスク警戒の円買いが強まると、一気の調整となる可能性もあり、不安定な動きが見込まれる。

用語の解説

G7サミット カナダのアルバート州カナナスキスで第51回主要7か国首脳会議(G7サミット)が開催される。現地時間16日午前の世界経済見通しをテーマとしたセッションを皮切りに、安全保障、ウクライナ問題、エネルギー問題などをテーマに17日まで実施される。その間、日米首脳協議などの個別協議も行われる予定となっている。
スイス中銀マイナス金利 スイス中銀は2014年12月に当時の政策金利であった3カ月Libor誘導目標レートをそれまでの0.0%から-0.25%に引き下げ、マイナス金利を導入。2015年1月には-0.75%までマイナス幅を拡大した。その後Libor誘導目標については-0.75%を中心とした1%のレンジ設定とし、要求払い預金金利を-0.75%に設定。2019年6月には現在の政策金利であるPolicyRateに対象を変更し-0.75%を維持。2022年6月に-0.25%までマイナス幅を縮小、同年9月に+0.5%とマイナス金利を解消してプラス圏とした。

今週の注目指標

日本銀行金融政策決定会合
6月17日
☆☆☆
 日本銀行は16日、17日に金融政策決定会合を開催する。今年の1月24日に政策金利を0.50%まで引き上げた日本銀行は、3月19日、5月1日と据え置きを決定。今回も据え置きがほぼ確実となっている。今回の注目材料は国債買入れ減額方針についての議論。日銀は2024年7月に決定した方針に基づいて2026年3月まで原則四半期ごとに4000億円程度の国債買入れ減額を決定してしている。今回はこの減額計画の中間評価を行い、2026年4月以降の買い入れ方針を発表する予定となっている。来年4月以降に関しては買入れ減額のペースを2000億円程度に緩めるとの見通しが広がっている。減額幅については3000億円程度までに留めるとの見方もある。大方の予想通り2000億円程度への減額であれば相場への影響は限定的となりそう。
 もう一つの注目材料である植田総裁の会見については、3日の内外情勢調査会での講演でも見られた「中心的な見方に沿って、基調的な物価上昇率が2%に向けて高まっていくという姿が実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」との従来姿勢を踏襲するとみられる。こちらも想定通りであれば相場への影響は限定的と見られ、ドル円は143円から145円にかけてのレンジを中心とした推移が見込まれる。
米連邦公開市場委員会(FOMC)
6月19日03:00
☆☆☆
 政策金利は据え置きの見込み。注目は年4回公表されるFOMCメンバーによる経済見通し(SEP)となっている。中でも年末時点での政策金利見通しをドットで示したドットプロットが注目されている。前回3月のSEPでのドットプロットでは2025年末時点で9名が3.75-4.00%を見込み、中央値となっていた、3.50-3.75%が2名、4.00-4.25%と4.25-4.50%が2名ずつという分布となっていた。
 今回のドットプロットでこの状況がどのように変化するかがポイントとなる。短期金利市場や金利先物市場の動向をみると、年内2回の利下げで3.75-4.00%になるとの見通しが大勢となっている。ドットプロットの中央値が前回からどちらかに変化すると、市場の見通しも変化する可能性がある。利下げに慎重な現在のFOMCの状況から3回以上の利下げ見通しが強まる可能性はそれほど高くない。前回同様に2回が中央値となる可能性が高いが、1回以下の見通しが強まった場合、ドル高になると見込まれる。ドル円は145円台への上昇が見込まれる。前回のSEPで1.7%まで下方修正されたGDP成長率見通し、総合2.7%、コア2.8%と共に上方修正されたPCE価格指数の見通しの変化も要注意。
スイス中銀政策金利
6月19日16:30
☆☆☆
 スイス国立銀行(中央銀行)は19日の会合で利下げを決定する見込みとなっている。2022年9月にマイナス金利を解消したスイス中銀は、アフターコロナでのインフレ進行もあり、1.75%まで政策金利を引き上げた後、昨年3月に利下げを開始。前回今年3月の会合まで5会合連続で0.25%の利下げを実施している。今回も0.25%の利下げを行い政策金利を0.0%とする見込み。一部では今回大幅利下げを実施し、マイナス金利を再開する可能性が指摘されている。先月シュレーゲル総裁は講演の中でマイナス金利再開の可能性を排除できないと表明。今月に入ってもテュディン理事がマイナス金利を喜ばしく思わないが、物価安定に必要な場合は役に立つ手段であると発言している。また今月3日に発表された5月のスイス消費者物価指数は前年比-0.1%とマイナス圏まで低迷。一方スイスフランは対ユーロで昨年以来の高値を付けるなど、通貨高にも悩まされており、マイナス金利再開の見通しにつながっている。現時点ではゼロ金利への引き下げが大勢の見方となっており、マイナス金利を再開した場合スイス安が見込まれる。ドルスイスは1ドル=0.8300スイストライの可能性がある。

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