2025年06月23日号
先週の為替相場
中東情勢にらみ、ドル高強まる
先週(6月16日-6月20日)のドル円は、ドル高が優勢となり、週末に1ドル=146円台を付けた。日本時間13日朝に報じられたイスラエル軍によるイラン核施設空爆に始まる中東情勢緊迫化への警戒感が有事のドル買いとなってドルを支えた。
週明け16日は東京市場朝方にリスク警戒のドル買いが強まり144円75銭を付けた後、いったん調整の動きとなり143円65銭を付けるも、その後反発して東京朝の高値を超えるなど、上下の動きを交えつつもドル買い円売りが優勢。海外市場ではイランが停戦を促しているなどの報道が円売りを誘った。ユーロドルは1ユーロ=1.1520ドル高を付けた後、ドル高の調整に1.1615ドルまで上昇。その後ユーロ売りドル買いが入るも、円売りの流れから対円でのユーロ買いが入ったこともあり朝の水準には届かず。ユーロ円は基本的にしっかりで、早朝の1ユーロ=165円90銭台から167円46銭まで上昇。
17日に入って、米軍参戦の憶測が流れたことで有事のドル買いが強まり、ドル円は145円台に乗せた。日銀金融政策決定会合は市場予想通り政策金利を据え置いた。来年4月以降の国債買入計画については、四半期ごとの減額ペースをそれまでの4000億円程度から2000億円程度にペースを落とすことを決定。大方の予想通りではあったが、一部で3000億円程度に抑えるとの思惑が見られたことから、発表後は円債利回りがやや上昇し、円買いとなって144円41銭を付けた。もっとも会合後の植田総裁会見前には値を戻した。会見では次の方向性に関するヒントは得られず。ユーロドルは1.1550ドル前後での推移から1.1475ドルまでユーロ安ドル高となった。
18日に入ると、ドル円が145円44銭を付けるなど、ドル高の勢いが強まるも続かず。もっとも同日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に行き過ぎた動きにも警戒感が見られ、いったん調整が強まる展開となった。さらに市場予想通り政策金利を据え置いた米FOMCで今回発表回に当たっていたFOMCメンバーによる経済見通しにおいて、2025年末時点での政策金利見通しが、年内あと2回の利下げが中央値となった。市場は1回への修正を見込んでいたたため、いったんドル売りとなって、144円31銭と東京市場での高値から1円以上下げる展開となった。もっともFOMCメンバー19名中7名が年内据え置きを見込み、2名が年内1回を見込むなど、年内1回以下の見通しを示すメンバーが9名と過半数に迫ったこともあって、ドルの買い戻しが優勢。
19日に入ると、米国が数日以内にイランへの攻撃に参加を検討との報道もあって145円70銭台まで上昇。ユーロドルが1.1446ドルを付けるなど、ドルは全面高となった。リスク警戒の円買いも出ており、ユーロ円は166円00銭台を付けている。
20日に入ってもドル高の勢いが継続。ドル円は金曜日海外市場で146円22銭まで上値を伸ばしている。トランプ大統領は2週間以内にイランを攻撃するかどうかを決定と示し、今週末の軍事行動の可能性への警戒がやや後退。もっともこの警戒感後退が円売りにつながる形でドル円、ユーロ円はしっかりとなり、ユーロ円は168円40銭前後を付けた。
今週の見通し
週末に米軍はイラン本土の核施設への空爆を実施した。米本土からステルス爆撃機B2(用語説明1)を7機出動させ、最新型の地下貫通型大型爆弾バンカーバスター「GBU57」(用語説明2)によるイラン核施設への攻撃を行った。1機約20億ドルという高額さもあって米空軍も20機しか保有していないB2爆撃機を7機も投入したことで、今回の空爆に対する米軍の本気度が伺える。一方でイラン側からの激しい報復が行われる可能性が高く警戒感が広がっている。
金曜日にトランプ大統領が2週間以内にイランを攻撃するかどうかを決定と示したことで、米軍参加への警戒感がありつつも、この週末での空爆は見送られるのではとの思惑があった分、週明けはサプライズを伴い有事のドル買いとなっている。
また、イランの国会はホルムズ海峡封鎖を承認した。最終的な決定は今後の動向次第となっている。日本の原油輸入はかなりの部分が中東からとなっており、ホルムズ海峡経由のものが多いことから、日本への警戒感も出ており、円売りの動きも見られる。ドル円はドル高と円安の両面から上方向を目指す展開か。
もっとも相当に不安定な動きが見込まれる。1円以上の上下を交えつつの動きとなる可能性がある点に注意したい。原油高の状況にもよるが、150円をトライする可能性が十分にある。
ユーロドルでもドル高が優勢となりそう。ただ、対円でのユーロ高が支えとなり、動きがある程度抑えられるか。1.1400-1.1600レンジを中心とした推移を見込んでいる。
ユーロ円などクロス円は円売りが優勢となっている。リスク警戒局面では円買いとなることが多いが、日本の中東産原油への依存度の高さなどもあって、警戒感からの円売りとなっているとみられる。このまましっかりした動きを続けると、170円台にしっかり乗せ、172円トライもありそう。
用語の解説
B2爆撃機 | 米ノースロップグラマン社が製造するステルス戦略爆撃機。初飛行は1989年。当初132機の製造が予定されていたが、一機当たり約20億ドルという高価格もあり、試作機を含めて21機の製造に留まり、現在20機が運用されている。通常は米ミズーリ州ホワイトマン空軍基地に駐留している。最新型の地下貫通型大型爆弾バンカーバスターのGBU57を2発搭載可能。 |
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バンカーバスター「GBU57」 | 米空軍によって開発された最新型の地中貫通爆弾。重量は3万ポンド(約13.6トン)、全長は6Mと相当に大型になっており、地中61Mを貫通させることが出来る。B2爆撃機のペイロード(積載量)は17トンであるが、離陸直後の空中給油などを利用することで、B2爆撃機1機あたり2発のGBU57を搭載することが可能となっている。 |
今週の注目指標
パウエル議長議会証言 6月24日・25日 ☆☆☆ | パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が、半期に一度行われる議会での証言を24日に下院金融サービス委員会、25日に上院銀行・住宅・都市問題委員会で証言を行う。金曜日に議会へ提出された金融政策報告書に基づいた証言で、完全雇用・均衡成長法(通称ハンフリーホーキンス法)に基づいて半期に一度行われるものとなっている。今回提出された金融政策報告書では関税がインフレにもたらす影響について「極めて不確実」と表現した。また、現状の金融政策について好位置にあり、当局は見通しが一段と明確になることを待つことが出来るとしている。こうした状況を質疑応答などでしっかりと伝えるようだと、利下げ期待が後退する可能性があり、ドル高材料となる。ドル円は148円に向かう可能性がある。 |
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日本銀行金融政策会合主な意見 6月25日08:50 ☆☆☆ | 日本銀行は6月16日、17日に開催された金融政策会合の主な意見を25日に公表する。日銀金融政策決定会合は議事要旨の公表が次回会合の後とかなり遅く(6月会合の議事要旨公表は8月5日)、市場に対する情報配信の一環として2016年より会合後6営業日後を目途として公表している。今回の会合では来年4月以降の国債買入れ減額ペースについて、それまでの四半期ごとに4000億円程度から2000億円程度にペースを緩めた。この変更について、1名の委員はペースの維持を主張し反対している。こうした決定について、どのような意見が出ていたのかなどが注目される。またトランプ関税の影響などについての評価なども注目材料。年内追加利上げ期待が後退するような姿勢が見られると、円安材料となる。ドル円は150円に向けた動きが見込まれる。 |
米PCE価格指数(5月) 6月27日21:30 ☆☆☆ | 27日に米国のインフレターゲットの対象物価指標となる5月の米個人消費支出(PCE)価格指数が発表される。11日に発表済みの5月の米消費者物価指数(CPI)は前年比+2.4%と4月の+2.3%を上回ったものの、市場予想の+2.5%には届かなかった。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアは前年比+2.8%と4月と同水準の伸びとなり、こちらも市場予想の+2.9%には届かなかった。 今回の5月PCE価格指数は前年比+2.3%、コア前年比+2.6%と4月の+2.1%、+2.5%を共に上回る見込みとなっている。CPIが予想を下回る伸びとなった要因の一つである住居費は、指標全体に占める割合がCPIよりかなり小さく、影響は限定的と期待される。ただ、CPIよりも指標に占める割合がかなり大きい医療費も鈍化しており、ある程度伸びが抑えられる可能性がある。もっとも玩具やコンピュータなどの部門で関税が価格を押し上げる状況が見られている。こうした押し上げがどこまで出てくるかが注目される。CPI同様に予想を下回る伸びとなった場合はドル売りが見込まれる。ドル円は145円台に向けた動きが予想される。 |
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