2025年07月07日号

(2025年06月30日~2025年07月04日)

先週の為替相場

先週前半のドル安から反発

 先週(6月30日-7月4日)のドル円は、先々週後半のドル安基調が週明けも継続し、1日に1ドル=142円68銭と6月5日以来のドル安圏を付けた。中東情勢警戒のドル高が一服したことなどがドル売りを誘った。

 その後は木曜日の米雇用統計を前に神経質な動きを見せた。トランプ大統領がパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長に対する利下げ圧力を強める中、利下げ決定の材料の一つとなる雇用動向に注目が集まっており、発表前から警戒感が広がった。

 週明け30日はドル安円高が優勢となった。中国人民銀行(中央銀行)が対ドル基準値(用語説明1)を昨年11月以来の元高に設定したことでドル安元高が進行。ドル全面安につながった。トランプ大統領が日本の自動車への25%関税の可能性に言及したことなどもドル安円高につながった。ユーロドルはドル安傾向に加え、デギンドスECB副総裁が現在の金利水準は適切と、追加利下げに慎重な姿勢を示したこともユーロ高ドル安につながった。

 1日朝に日銀が発表した6月の全国企業短期経済観測調査(日銀短観)で大企業製造業が3月の12から10への悪化予想に反して13と2四半期ぶりに改善。市場はこの好結果を受けて早期利上げ期待を強め、円買いとなった。もっとも143円40銭台まで下げた後、いったん反発。財務省による10年利付国債入札での応札倍率が直近12カ月平均と比べて高い好調なものとなったことで、円債価格が上昇(利回りが低下)したことも円売りに繋がり、一時143円90銭台を付けた。もっとも144円を付けきれずに反落、米債利回り低下を受けたドル売りなどもあって、一転して142円68銭までドル安円高となった。1日に新しく日銀審議委員に就任した増一行氏が前任の中村委員よりもタカ派ではとの思惑も円買いにつながっている。もっとも同日のNY市場でドルが大きく反発した。23時に発表された米雇用動態調査(JOLTS)求人件数が予想外に力強い数字となったことがきっかけ。さらにECBフォーラムでのパネルディスカッションに出席したパウエルFRB議長が関税がインフレに与える影響について言及し、利下げへの慎重な姿勢が意識されたこともドル買いとなった。ドル円は143円80銭前後まで買い戻され、同日のドル安局面で1ユーロ=1.1829ドルを付けていたユーロドルも1.1760ドル台を付けた。

 2日に入っても3日の米雇用統計の好結果期待などからドル高が続き、ドル円は一時144円20銭台まで上昇。しかし、21時15分に発表された6月のADP全米雇用レポート(用語説明2)で、雇用者の伸びが予想外にマイナスとなり、一気にドル売りとなった。5月が2年超ぶりの低い伸びに留まったADP雇用者数は、6月分での改善見込みに反して2023年3月以来の前月比マイナスとなった。3日の米雇用統計への期待感が後退したこともドル売りにつながった。ユーロドルもADP雇用者数を受けたドル売りに一時買われたが、ポンドが対ドルで売られたことで、上値が抑えられた。ポンドは英スターマー政権での社会保障改革をめぐってリーブス財務相の解任観測が流れていることなどの政治的混乱が売りを誘っていた。

 その後米雇用統計発表までは落ち着いた動きとなった。注目された6月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が予想を超える伸びとなり、5月から悪化すると予想されていた失業率も改善するという好結果。一気にドル高となった。前日のADPを受けて短期金利市場で25%を超えるところまで上昇していた7月の米利下げ期待が、一気に後退する中でドル円は145円台を付けた。ユーロドルは1.1718ドルまで一時ユーロ安ドル高となったが、すぐに反発するなど堅調さを見せた。

 4日は米国が独立記念日の祝日となり参加者が少ないこともあって比較的落ち着いた動き。ドル円は週末越しのポジション維持に慎重で、前日のドル高に対する調整売りが入ったが、値幅自体は落ち着いていた。

 

今週の見通し

 今週は先週に比べて目立った米指標の発表予定がなく、比較的落ち着いた動きが見込まれる。米ADP全米雇用レポートの弱い結果を受けて、一時強まった7月の米利下げ期待と、年内3回の利下げ期待がともに後退。7月は据え置きをほぼ完全に織り込みつつある状況となっている。この結果、ドル円は比較的しっかりした動きが見込まれている。

 7日にもトランプ大統領が関税に関する書簡を複数国に送付する見込みで、トランプ関税に関する動向も市場の注目材料となっている。書簡による関税率発動は8月の見込みで少し猶予があるものの、厳しい条件が示される可能性が高く、自動車関税などが警戒される日本売りにつながる可能性がある。この点でもドル円は買いが出やすい地合いか。

 もっともユーロドルなどでのドル売りが続いており、上値追いにも慎重。じっくりと次の方向性を見極めたいとの思惑も見られる。上方向のリスクを意識しながら、基本的には143円台半ばから145円台半ばにかけてのレンジを中心とした推移が見込まれる。

 ユーロドルは米雇用統計後のドル買いが重石も、下がると買いが出るなど、比較的しっかり。中期的に1.2000ドルを目指す流れが続いているとみている。政治的な混乱を警戒したポンドの売りが続くようだと、ユーロの上値が抑えらえる可能性がありそう。

 ユーロ円などクロス円はドル主導の展開でやや不安定な動き。対ドルでのユーロ買いもあって、流れはまだ上方向と見ているが、ドル円次第の面も強い。

用語の解説

中国人民銀行対ドル基準値 中国人民銀行は大手行数十行に対して相場の実勢値の報告を求め、極端な報告値を排除した上で加重平均をかけて、毎朝基準値を発表する。同基準値から上下2%の幅で取引が行われる。
ADP全米雇用レポート 米国の給与計算代行大手ADP(Automatic Data Processing)のデータを基に、傘下のADPリサーチが毎月発表している雇用に関するレポート。米労働省による雇用統計の2営業日前(祝日などが入る場合は前日)に公表される。同レポートの中の雇用者数は労働省による雇用統計の民間部門の数字の参考値として注目されている。

今週の注目指標

豪中銀政策金利
7月8日13:30
☆☆☆
 オーストラリア準備銀行(RBA/中央銀行)は政策金利であるオフィシャルキャッシュレート(OCR)を2023年11月に4.35%まで金利を引き上げた後、米、欧州、NZなどが2024年夏ごろから利下げに回る中で昨年中は同水準を維持。今年2月に0.25%の利下げを実施すると、4月の据え置きを経て、前回5月19日、20日の会合で今年2回目の利下げを実施し、現在3.85%となっている。前回の利下げ自体は想定通りであったが、6月3日に公表された会合議事要旨で実施された0.25%利下げだけでなく、0.50%の利下げを議論していたことが示され、追加利下げへの期待が広がった。
 さらに前回会合後の豪主要指標は、6月4日発表の豪第1四半期GDPが市場予想及び前回昨年第4四半期を下回る前期比+0.2%、6月19日発表の5月豪雇用統計は雇用者数が予想外のマイナス0.25万人、25日発表の5月月次消費者物価指数(CPI)は市場予想及び4月の+2.4%を下回る+2.1%と、いずれも厳しい数字が並んでおり、今回の会合での利下げがほぼ織り込まれている。
 ごく一部で据え置き見通しが残っており、その場合はサプライズで豪ドル買いとなりそう。
 市場予想通り0.25%利下げとなった場合は、声明などで今後の姿勢が注目される。8月の会合での追加利下げは直近65%程度の織り込みとなっている。緩和姿勢継続が強調され、追加利下げ期待が強まると豪ドル売り、ある程度前向きな姿勢が示され、追加利下げ期待が後退すると豪ドル買い。緩和姿勢継続見通しがやや強く、豪ドル円は1豪ドル=93円50銭をターゲットとした動きが見込まれる。
NZ中銀金融政策会合
7月9日11:00
☆☆☆
 ニュージーランド準備銀行(RBNZ/中央銀行)は、政策金利であるオフィシャルキャッシュレート(OCR)を2023年5月に5.50%まで引き上げた後、昨年8月の会合で利下げを実施。2回の大幅利下げも含めて前回5月28日の会合までに6会合連続での利下げを実施し、現在3.25%となっている。前回の会合では6名の委員の票が割れ、5名が利下げ、1名が据え置きに投票した。すでにピークの5.50%から計2.25%の利下げを実施していることもあって、利下げに慎重な動きが出てきている。前回示された四半期に一度公表されるNZ中銀フォワードガイダンスでは、今年年末の政策金利を2.92%としており、今年後1回の追加利下げが見込まれている。2月公表のフォワードガイダンスでは3.14%となっており、追加利下げ期待がやや強まっている状況。ただ、追加利下げがあるとしても今回ではないという見方が大勢。短期金利市場では約87%が今回の据え置きを見込んでいる。少数意見である利下げを実施した場合は一気のNZドル売りとなりそう。市場予想通り据え置きとなった場合は、声明などで今後の追加利下げにどこまで言及するかがポイントとなる。秋までの追加利下げ期待が強まるようだと、NZドル売りが見込まれる。NZドル円は1NZドル=86円50銭をターゲットとした動きが見込まれる。
米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨
7月10日03:00
☆☆☆
 9日(日本時間10日午前3時)に6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が公表される。前回5月FOMCでの議事要旨では参加メンバーのほとんどが関税由来の不確実性から物価の上振れを警戒していることが示され、慎重姿勢が適切であると示した。4会合連続で政策金利の据え置きを決めた6月のFOMCでも、同様に不確実性への警戒が示される可能性が高いが、物価の上昇に関しては予想ほど深刻化しておらず、市場では一部で7月の利下げ期待が出てきている状況。トランプ大統領による利下げ圧力に関しては、中銀の独立性を重視する立場から目立った反応を示す可能性は低いが、物価上昇が目立っていない中で、パウエル議長自体は慎重姿勢を示したとしても、メンバーからより積極的な緩和への姿勢が出てくる可能性がある。この場合ドル売りが強まる可能性がある。ドル円は143円00銭をターゲットとした動きが見込まれる。

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