2025年07月14日号
先週の為替相場
トランプ関税受けてドル高円安進む
先週(7月7日-7月11日)のドル円は、ドル高円安が優勢となった。トランプ大統領による関税に関する報道に反応する場面が見られた。3日の米雇用統計が好結果となったことで、7月の米利下げ期待が後退、年内の利下げ回数の見通しも低下したことを受けたドル買いの流れも、ドル円の支えとなった。
週明け7日は東京市場午前に一時1ドル=144円23銭を付けたが、トランプ大統領が関税に関する手紙を最大15か国に送ると発表したことや、BRICSに協調する国は10%の追加関税に直面すると示したことなどを受けてドル高となった。日米貿易合意の不透明感などが日本売りにつながったほか、米国の関税強化方針で米物価高警戒が強まり、利下げ期待が後退したことなどがドル買いとなった。
日本に対して8月1日から25%の追加関税を課すとしたことなどからその後もドル高円安が継続。関税を受けた日本経済の鈍化懸念や、参議院選に関する世論調査での与党勢力の苦戦報道なども円売りにつながった。
9日東京市場まで流れが続き、一時147円18銭と6月23日以来のドル高円安となった。その後はいったん利益確定の売りが入った。同日米国時間午後の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(6月開催分)において、追加利下げに慎重な姿勢を示しつつ、景気減速や労働市場の緩やかな悪化を受けた9月利下げの可能性についての議論されたことなどが示され、ドル売りが強まった。
10日東京市場までドル安円高が続き145円76銭を付けた。その後米債利回りの上昇などをきっかけに反発。11日にはトランプ大統領がほとんどの国に対して15%から20%の包括関税を課す方針やカナダに35%の関税を課す方針を示したことでドル高が強まり、一時147円52銭と9日の高値を超えた。
ユーロドルでもドル高が優勢となった。トランプ関税を受けたドル高に加え、1日に2021年9月来のユーロ高となる1ユーロ=1.1829ドルを付けた後のユーロ高の調整などもあり、週明け7日の海外市場で1.1687ドルを付けた。その後、日本への25%関税報道や参院選での与党の苦戦を受けた円売りによるユーロ円の上昇などからユーロドルも下げが一服。8日に1.1760ドル台まで反発も、同日のうちに1.1683ドルと7日の安値を下回るところまでユーロ売りが出るなど、上値の重い展開。
EUと米国との貿易交渉が順調との期待感などから10日に1.1750ドル前後を付ける場面も、ユーロ買いは続かず1.1660ドル台を付けている。
ユーロ円は先週前半はドル円の上昇などを受けて円安となり、7日朝の1ユーロ=169円70銭台から、9日に172円28銭まで上昇した。その後、ドル円の145円70銭台までの売りなどを受けてユーロ安円高になると、EUに対する関税への警戒などからのユーロ売りに11日に170円81銭を付けている。その後ドル円での円安などを受けて一気に反発し、172円42銭までと直近高値を更新し、昨年7月以来のユーロ高円安圏まで上昇。ほぼ高値圏で先週の取引を終えた。
8日のオーストラリア準備銀行(中央銀行)金融政策会合は、大方の予想に反して政策金利を据え置いた。0.25%利下げがほぼ織り込まれていたこともあり、豪ドル高となった。ドル全面高もあって7日に1豪ドル=0.6489ドルを付けていた豪ドルドルは、0.6550ドル台まで急騰。その後いったん0.6500ドル台まで売りが出た。先週後半にかけて円売りが進み、豪ドル円が週初めの1豪ドル=94円24銭から、会合後の急騰などを経て、11日に97円06銭まで上昇する中で、対ドルでも豪ドル高となり、0.6590ドル台を付けた。9日のニュージーランド準備銀行(中央銀行)金融政策会合も政策金利が据え置かれたが、こちらは市場予想通りで反応は限定的となった。
今週の見通し
トランプ大統領は先週、日本や韓国、東南アジア諸国などへの8月1日発動の関税を発表すると、その後もブラジル、カナダ、EU、メキシコなどに対する関税も発表。市場はその影響を見極めようとする展開となっている。米国の関税強化方針による物価高警戒からの利下げ期待後退がドル高となる一方、米景気の鈍化懸念などがドルの重石となる。またリスク警戒による円買いと、日本経済への警戒感による日本売りからの円売りもあり、売り買いが交錯している。全般としてはドル高円安の影響が大きいとみられており、ドル円は上方向のリスクがやや高いとみられる。148円に向けた動きが見込まれ、中期的には150円を試す可能性が十分にある。
参議院選挙への警戒感も円売り材料となっている。直近世論調査では与党勢力の苦戦が報じられている。一般的に現政権勢力の敗北は、当該通貨の売り材料となるだけに、円売りの動きが広がる可能性がある。ここにきて利回りの上昇傾向が見られる日本の長期債、超長期債の動向も、利回り上昇の円買いよりも、日本売りを意識した円売りが優勢になる場面が見られる。
こうした状況からクロス円も基本的にしっかり。ユーロ円は先週172円台から170円台への調整局面が見られたが、すぐに反発するなど、しっかり感が継続。中期的には175円を試す展開か。
ユーロドルは一時の上昇が一服。ドル高基調の中でやや上値が重い展開となりそう。1.1500/50が大きなサポート。
用語の解説
BRICS | ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5か国の頭文字を並べたもの。もともと米証券会社が2001年のレポートで今後の成長が期待される国として南アフリカを除く4か国をBRICsと称したことから始まり、2009年には同4か国によるBRICs首脳会談が実施された。2011年に南アフリカが同会議加わりBRICSとなった。その後、5か国に加えてサウジアラビア、エジプト、アラブ首長国連邦、エチオピア、インドネシア、イランの11か国がBRICS加盟国となり、さらにベトナムなど10か国が準加盟国扱いのパートナー国となっている。 |
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参議院選挙 | 第27回参議院議員通常選挙が20日に行われる。参議院は定数が248議席、任期が6年で3年ごとに半数が改選される。今回は124議席に加え、東京都選挙区の欠員補充1を加えた125議席が争われる。このうち50議席が非拘束名簿式比例代表制で選出され、75議席(74議席と欠員補充1議席)が選挙区制で選出される。 |
今週の注目指標
米消費者物価指数(CPI/6月) 7月15日21:30 ☆☆☆ | 今月3日に発表された米雇用統計の好結果を受けて、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ期待が後退。短期金利市場で一時は60%まで上昇していた「年内3回利下げ」の見通しも後退し、いまは「年2回」が最も有力と見られている。もっとも見通しはまだ揺れており、今後の金融政策の行方を左右する雇用と物価に関する指標への注目が高まっている。 15日に米物価統計の中で、市場の注目度が最も高い消費者物価指数(CPI/6月)が発表される。米国のインフレターゲットの対象指標はPCE(個人消費支出)価格指数であるが、PCEは計算が複雑で対象地域も広いため、CPIよりも発表が遅く、6月分は7月31日に公表予定。CPIとPCEは数値に違いはあるものの、動きの傾向はだいたい似ているため。市場は発表の早いCPIに注目することが多い。 前回の5月CPIは前年比で+2.4%となり、4月の+2.3%より伸びが強まったものの、市場予想の+2.5%には届かなかった。変動が激しい食品とエネルギーを除いたコア指数は+2.8%で4月と同じ水準の伸びとなったが、こちらも予想の+2.9%には及んでいない。前月比ではどちらも+0.1%で、4月の+0.2%からはやや伸びが鈍化した。前年比の内訳をみると、食品が+2.9%と4月の+2.8%より少し伸びが加速した。価格高騰が続く卵は2カ月連続で前月比マイナスとなったが、前年比では+41.5%と依然としてかなり高い伸びとなっており、全体を押し上げた。一方、エネルギーは-3.5%と4カ月連続でマイナス圏となった。ガソリン価格が12カ月連続のマイナスとなり、マイナス幅も-12.0%まで広がったことで、全体を抑える方向に働いた。コア部門では、食品とエネルギーを除いた財の価格が+0.3%となった。前回は1年4カ月ぶりのプラス圏となる+0.1%となったが、そこからもう一段伸びが強まった。関税の影響で注意が必要な衣料品は2カ月連続でマイナスで、今回は-0.9%と前回の-0.7%より下げ幅が広がった。ただ新車(+0.4%)や中古車(+1.8%)は、4月から伸びていて、関税強化への警戒から駆け込み需要が出た可能性がある。その他、コンピュータやおもちゃなど輸入に頼っている商品は前月比で伸びているが、前年比はそれほど目立った水準ではない。コアサービス部門は+2.8%と、3月・4月と同じ水準の伸びとなった。CPI全体の36.2%を占める住居費は+3.9%と、4月の+4.0%より伸びが小幅鈍化した。医療サービスも+3.0%と、4月の+3.1%から伸びが鈍化した。輸送サービスが+2.8%と4月の+2.5%から伸びた。 今回の6月分の予想は前年比+2.6%、コア前年比+2.9%と共に5月から伸びが強まる見込み。前月比はともに+0.3%の予想で、こちらも5月から伸びが強まる見込みとなった。米国のガソリン価格は、米エネルギー情報局調査ベースの全米全種平均で5月の1ガロン=3.278ドルから6月は3.276ドルとほぼ同水準で推移した。ただ昨年のガソリン価格が5月の3.725ドルから6月の3.576ドルへ低下しており、前年比で見ると-12.0%から-8.4%へマイナス幅が縮小している。CPIは都市部のみの平均で、全く同じではないが、傾向は変わらないため。マイナス幅縮小の分、総合指数の押し上げが見込まれている。コアの伸びについては、関税の影響が強いとみられる。関税の影響が予想を超えて強く、伸びが予想をはっきり上回っていた場合、年内の利下げ回数の見通しなどにも影響を与え、ドル買い円売りからドル円は148円を試す動きが見込まれる。 |
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米小売売上高(6月) 7月17日21:30 ☆☆☆ | トランプ政権による関税強化の影響が注目される中、家計の消費動向を計る米小売売上高の注目度が高まっている。 前回5月の小売売上高は、前月比-0.9%と1月以来の弱さとなった。市場予想の-0.6%も下回る弱い伸びとなっている。4月も速報時の+0.1%から-0.1%に下方修正される厳しい結果となった。前回の結果を部門別でみると自動車が前月比-3.5%と大きく減少。3月に関税前の駆け込み需要から一気に拡大した自動車販売は、4月、5月とその反動から弱い数字となっている。ガソリン価格の低下を受けてガソリンスタンド売り上げが-2.0%となった。また住宅関連需要の減退と4月がやや強めに出た反動を受けた建材・園芸用品が-2.7%となっている。 今回6月の予想は前月比+0.2%とプラス圏を回復する見込み、自動車を除いた数字は+0.3%とこちらもプラス圏回復見込みとなっている。前月比のため前回が弱く出ると反動で強く出がちなこと、これまでの関税について、小売価格への転嫁が思ったほど進んでおらず、消費の減退がそれほど見られないとの見通しがひろがっていることなどが、プラス圏回復予想につながっている。個人消費に密接に結びつく米雇用が力強さを見せていることも小売売上高の好結果予想につながった。予想に反して前回同様にマイナス圏に落ち込むと、反動もありドル売りが見込まれる。ドル円145円台に向けた動きが見込まれる。 |
日本参議院選挙 7月20日 ☆☆☆ | 第27回参議院選挙が20日に投開票される。与党勢力である自民党と公明党は世論調査で直近の各社世論調査で、1週間前よりも情勢が厳しくなっており、過半数を割り込む可能性があると報じられている。3年前の選挙で自民党が票を伸ばしたことで、与党勢力は非改選議席が75議席あり、今回の選挙で50議席を取ると過半数確保となるため、当初は過半数確保の期待が強かったが、その後情勢が厳しくなった。一般的に与党勢力が敗北すると当該通貨が売られる傾向があること、複数の野党勢力が表明する減税や社会保障費の削減などの圧力が強まることで、財政赤字警戒が広がる可能性があることなどから、選挙後に円売りが進む可能性がある。ドル円は148円台に向けた動きが見込まれる。 |
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