2025年07月22日号
先週の為替相場
ドル高円安優勢、ドル円は一時149円台
先週(7月14日-7月18日)のドル円は、一時1ドル=149円18銭を付けるなど、ドル高円安が優勢となった。一時ドル売り円買いが強まる場面が見られたが、147円80銭台で先週の取引を終えるなど、基本的にはドル高の流れとなっている。
週明け14日朝に先週の安値となる146円86銭を付けるなど、ややドル安円高が優勢でスタート。トランプ大統領がEUやメキシコに対して8月1日から30%の関税を課す方針を示したことで、リスク警戒の円買いが入った。すぐに反発も、日銀が今月の日銀金融政策決定会合で示される経済・物価情勢の展望(展望レポート)(用語説明1)において物価見通しを引き上げるとの観測報道や、週末の世論調査で与党勢力の情勢悪化が示されたことなどを受けて、上値が重くなった。もっとも今月1日に付けた142円60銭台を底とするドル高の流れが続く中、147円台後半まで上昇。
15日の6月米消費者物価指数(CPI)発表まで147円台後半中心の推移となった後、CPIを受けてドルが急騰した。CPIは前年比+2.7%と5月の+2.4%から伸びが加速。市場予想の+2.5%も上回った。変動の激しい食品とエネルギーを除くコアの前年比は市場予想と一致も5月より伸びている。コアの前月比が5月よりも伸びたものの市場予想に届かなかったことで、発表直後に少しドル売りもすぐに反発。前年比の伸び加速を受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)による早期利下げの期待がほぼ払しょくされたとの観測がドル買いにつながった。ドル円は148円台後半まで急騰。16日東京市場まで勢いが続き149円18銭まで上値を伸ばした。
米債利回り低下などを材料に148円台へ落とした後、トランプ大統領がパウエル米FRB議長解任の可能性を示唆したとの報道を受けてドルが急落した。複数の共和党議員に解任への賛否を確認したと報じられていた。ドル円は146円92銭まで急落。もっとも14日の安値に届かずに反発。トランプ大統領が会見で解任を否定したことなどがドル買いにつながり、148円台を回復。
17日もドル買いの流れが継続。日経平均の上昇を好感したリスク選好の円売りなどが支えとなった。同日の6月米小売売上高や米新規失業保険申請件数の好結果もあり、一時149円台を回復。もっとも16日の149円18銭には届かず。その後週末にかけて148円台での推移が続いた。
ユーロドルは1ユーロ=1.1680前後を中心とした推移から、15日の米CPIを受けたドル高に1.15台へ下落。その後1.1550ドル台までユーロ安ドル高が進むも、16日にパウエル議長の解任観測報道で一気にドル売りが進むと、1.1721ドルと先週の高値を付けた。
トランプ大統領が解任を否定しすぐに反落。英雇用統計で失業率が予想外に悪化したことによるポンド安にユーロが連れ安となったことや、米小売売上高の好結果を受けたドル高などに1.1550台を付けた。その後少し戻している。
ユーロ円は1ユーロ=172円台を中心とした推移。ドル円の上昇を受けて173円台を付ける局面が見られたが、対ドルでのユーロ売りもあり、上値が抑えられた。
今週の見通し
ドル円は基本的に堅調も、上値トライにも慎重。与党が敗北した20日の参議院選挙を受けた相場の動きについても、もう少し確認したいところ。
今週はそれほど大きな米指標発表がなく、先週土曜日から米FRB関係者が金融政策についての発言を制限されるブラックアウト期間(用語説明2)に入っているため、今週はやや材料不足の感がある。トランプ大統領が今月各国に示した関税の期限が8月1日に迫っており、大詰めを迎える各国の交渉の動向などをにらみながらの展開となりそう。
ユーロドルもはっきりした方向性が出ていない。一時のユーロ買いが一服も、下がると買いが出る展開。今週のECB理事会は政策金利の据え置きがほぼ確定的。声明などでの今後の姿勢に注目も、波乱要素は少ない。
ユーロ円などクロス円はドル円の上昇基調もあり、基本的にしっかりとした動きも、積極的に上値をトライするほどの勢いは見られず。
用語の解説
| 経済・物価情勢の展望(展望レポート) | 日本銀行が年8回行われる金融政策決定会合のうち、1月、4月、7月、10月の会合において公表するレポート。先行きの経済・物価見通しや上振れ・下振れ要因を詳しく点検し、そのもとでの金融政策運営の考え方を整理したもの。 |
|---|---|
| ブラックアウト期間 | 中央銀行の金融政策会合関係者が金融政策会合前後の一定の期間、金融政策に関する発言を制限されること。日本銀行の場合、会合開始日のに2営業日前から会合終了当日の総裁会見終了時まで、国会で発言する場合を除き発言が制限される。米FRBの場合、FOMCの開催される2週間前の土曜日からFOMC終了後の議長会見までとなっており、他の中央銀行に比べて制限される期間が長い。 |
今週の注目指標
| ユーロ圏PMI(7月) 7月24日17:00 ☆☆☆ | 24日に7月のユーロ圏及び加盟主要国、英国、米国の購買担当者景気指数(PMI)速報値が発表される。ユーロ圏は製造業が前回からやや改善の49.7が見込まれているが、好悪判断の境となる50には届かない見込み。ユーロ圏製造業PMIは2022年7月分から50割れが続いている。サービス業PMIは前回と同水準の50.5が見込まれている。ドイツは製造業が49.3と前回の49.0から改善、サービス業が50.0と前回の49.7から改善の上、50を回復の見込みとなっている。予想通りもしくはそれ以上の回復を見せるとユーロ買いの材料となる、特にユーロ圏製造業が50を回復するような動きを見せると、ユーロドルは1.1800に向けた動きが期待される。 |
|---|---|
| ECB理事会 7月24日21:15 ☆☆☆ | 24日の欧州中央銀行(ECB)理事会は、主要3政策金利の据え置き(リバースレポ金利2.15%、預金ファシリティ金利2.00%、限界貸出金利2.40%)で見通しがほぼ一致している。昨年6月に利下げを開始したECBは、昨年7月の据え置きを経て、昨年9月から先月まで7会合連続、合計で8回の利下げを実施した。3つの政策金利のうち市場金利に近い預金ファシリティ金利は、ピークの4.00%から2.00%まで引き下げられた。 ここにきてユーロ圏景気への期待などが広がる中で、前回の理事会での声明では、現状のような不確実性が高い状況では、経済・金融データ、基調的なインフレ動向や見通しの評価などに基づいて金利を決定するという姿勢を強調。事前のコミットをせずにデータ次第で判断するとの姿勢を示した。また前回理事会後のラガルド総裁会見では、ECBは良好な状況にあると確信しているとの発言があった。これまでの緩和的な金融姿勢について、金融政策サイクルは終わりに近づいているとの認識も示している。これらの状況から今回は据え置きに回るとの見方が広がった。 政策金利の据え置きが見込まれる中で、市場の注目は今後に向けた姿勢。次回9月の理事会の見通しは据え置きと利下げが拮抗している。声明や会見の内容により、利下げ見通しが強まるようだとユーロ売り、据え置き見通しが広がるとユーロ買いとなる。このところのユーロ圏経済データからは強めの姿勢が見られる可能性が高い。この場合ユーロ円は174円を目指す動きが期待される。 |
| 東京都区部消費者物価指数(CPI)(7月) 7月25日08:30 ☆☆☆ | 日本の全国消費者物価指数(CPI)の先行指標として知られる同指標。先週18日に発表された6月の全国CPIは、生鮮食品除くコア前年比が+3.3%と5月の+3.7%から鈍化。市場予想の+3.4%も下回った。エネルギーの伸び鈍化が目立っており、生鮮食品とエネルギーを除くコアコアは+3.4%と5月の+3.3%を上回り、6カ月連続で伸びが拡大している。 東京CPI(生鮮除く)も5月の+3.6%から6月は+3.1%に伸びが鈍化した。今回7月分の予想は+3.0%とさらに鈍化見込みとなっている。予想を超えて鈍化が進むようだと、今後の全国CPIの鈍化見込みに繋がり、利上げ期待が後退する可能性がある。この場合円売りが強まりドル円は149円台トライに向けた動きが見込まれる。 |
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