2025年07月28日号

(2025年07月21日~2025年07月25日)

先週の為替相場

日本の政治状況や日米貿易交渉など受けて上下

 先週(7月21日-7月25日)のドル円は、週の半ばまでドル安円高が優勢となったが、週後半にかけて反発した。

 週明け21日のドル円は20日に投開票された参議院選挙で与党勢力が敗北し、過半数割れとなったことに対して円買いで反応して始まった。1ドル=149円台を付ける場面が見られた先々週の流れもあり、148円台後半とドル高円安圏で週の取引をスタートも、すぐにドル安円高に転じ147円00銭台を付けた。減税や社会保障費の減額を掲げる野党勢力の勝利を受けて日本国債利回りが上昇(債券価格が下落)したことが円高材料となった。ユーロ円が1ユーロ=172円台後半から171円90銭台、ポンド円が1ポンド=199円40銭台から198円20銭台を付けるなど、クロス円も軒並みの円高となった。ユーロドルやポンドドルではドル安が優勢。米債利回りの低下を受けたドル安となり、ユーロドルは朝の1ユーロ=1.16ドル台前半から1.1717ドルを付けた。

 22日に入って円債利回りが反落したことで、円高が一服。ドル円が147円95銭を付けた。もっとも148円台まで回復出来ず反落。大きな材料が出たわけではないが、FRBの独立性への懸念や、7月29日、30日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でハト派シグナルが出るのではとの期待などがドルの重石となり、ドル円は146円31銭を付けた。ユーロドルが1.1760ドル台を付けるなど、ドルはほぼ全面安。

 23日は東京朝に報じられた日米関税交渉の合意と石破首相の退陣観測報道を受けて不安定な動きとなった。関税交渉の合意については、市場で期限までの合意を危ぶむ見方があっただけにサプライズとなった。発表直後に146円25銭前後まで急落。すぐに146円90銭台まで急騰もすぐに反落して146円20銭前後受けるなど、不安定な振幅を見せた。その後複数の日本の新聞社が石破首相の退陣観測を報じたことで147円21銭まで下落。その後石破首相が退陣観測を否定したことで動きが少し落ち着き146円台推移となった。

 24日に入ると、ラトニック商務長官によるパウエルFRB議長への辞任要求や、関税交渉という不確実要素が収まったことによる日銀の早期利上げへの期待などから145円86銭前後を付けている。その後安値圏で少しもみ合った後に反発。米新規失業保険申請件数の改善や米債利回りの上昇などが支えとなった。同日のECB理事会は大方の予想通り政策金利を据え置いた声明やラガルド総裁会見では、9月会合にむけたメッセージが見られなかった。ECBによる早期の利下げ期待が後退する中で、ややユーロ買いとなり1.1789ドルを付けた。

 週末25日にかけてドル円はやや神経質な上下を経て、もう一段の上昇で147円95銭を付けた、25日朝の東京消費者物価指数が予想を下回る伸びとなり、まずは円売りが優勢となった。その後日銀関係者からの情報として年内に利上げできる環境が整うと報じられたことで、いったん円買いとなって146円82銭を付けたが、すぐに反発。7月の日銀会合で公表される展望レポートで 物価上昇率見通しを上方修正との報道もあり、ドル高円安となった。

 ドル円の上昇もあり、ユーロ円も173円61銭まで上昇。ユーロドルはドル高に押され一時1.1703ドルを付けたが、1.17の大台を維持したことや、対円でのユーロ買いもあって1.1740台まで反発した。

今週の見通し

 ドル円は基本的に堅調と見られるが、今週は日米の金融政策会合に加え、米国の第2四半期GDP速報値、雇用統計、ISM製造業景気指数などの重要指標の発表予定が並んでおり、結果次第で流れが変わる可能性がある。

 27日に英スコットランドで行われたトランプ大統領とフォンデアライエン欧州委員長(用語説明1)との会談で、両者の関税交渉が大筋で合意(用語説明2)となった。28日からの米中閣僚級協議で8月12日に迫る相互関税の期限を3カ月延長する見込みが報じられており、大きなリスク要因であったトランプ関税の問題は落ち着きが期待されている。こうした流れは米国売りのリスク後退に繋がり、ドル高に働くとみられる。

 EUとの合意は日本と同じく関税率を15%としている。こうした流れは米物価の上昇につながると見られ、追加利下げ期待の後退が見込まれる点でもドル高となりそう。

 ただ、上記通り重要イベントが並ぶ中で、上値追いにも慎重か。米FOMCでの今後に向けての姿勢などを確認しながらの展開が見込まれる。ドル円は下がると買いが出る展開が継続も、150円に向けた動きがどこまで強まるかは微妙なところと見ている。

 ユーロドルはドル高基調が重石も、先週のECB理事会で追加利下げに向けた姿勢が目立たなかったことが大きく、しっかりした動きが期待される。1.2000ドルは近くて遠いという印象も、1.18台にしっかり乗せる展開が期待される。

 ユーロ円などクロス円はドル円の堅調地合いもあり、基本的にはしっかりとした動きが期待される。もっとも日本の政局の状況など日本の材料もあり、やや不安定な動きとなりそう。ユーロ円は175円に向けた動きを期待も、一気の上昇ではなく、ある程度の上下を交えながらの展開か。

用語の解説

フォンデアライエン欧州委員長 ウルスラ・ゲルトルート・フォン・デア・ライエン(Ursula Gertrud von der Leyen)は、欧州連合(EU)の行政機関である欧州委員会の委員長。ベルギーの首都ブリュッセル郊外のイクセル生まれ、ドイツ国籍。ハノーファー医科大学を出て医師として勤めた後、ゼーンテ市議会議員、ハノーファー群議会議員を経て、ニーダーザクセン州議会議員となり同州政府の閣僚に就任。2005年の第1次メルケル政権で家族・高齢者・女性・青少年担当相として入閣。2009年にドイツ連邦議会議員となり、同年の第2次メルケル政権で家族相として留任、その後労働・社会相に転じた。2013年の第3次メルケル政権で国防相に就任。第4次メルケル政権でも国防相として留任した後、2019年に女性初となる欧州委員会委員長に就任した。
米・EU関税交渉大筋合意 米国とEUは7月27日の首脳会談で関税交渉について大筋で合意した。米国が関税交渉で合意したのは、日本や英国などに続いて6番目となる。報じられている合意内容は米国がEUに課す相互関税税率を、当初通告していた30%から15%に引き下げる、EUは米国から7500億ドルのエネルギーを購入する、EUは米国に6000億ドルの投資を行うとなっている。日米の関税合意は25%から15%への引き下げ、5500億ドルの投資などとなっており、似通った内容となっている。

今週の注目指標

米連邦公開市場委員会(FOMC)
7月31日03:00
☆☆☆
 29日、30日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。結果発表は日本時間31日午前3時、パウエルFRB議長の会見は同3時半からとなっている。政策金利は現状の4.25-4.50%で維持される見込み。米FRBは昨年12月の利下げの後、今年に入って現状維持を続けている。
 注目は今後に向けての声明や議長会見での姿勢。トランプ大統領はパウエル議長に対して利下げを強く求めており、不満をたびたび表明している。ラトニック商務長官など経済関係閣僚なども同調する動きを見せている。もっともパウエル議長は利下げに慎重な姿勢を崩さないとみられている。今月16日に発表された地区連銀経済報告(ベージュブック)では、5月下旬からの米経済が「小幅に拡大した」と評価しており、前回5月のベージュブックでの「若干鈍化した」との表現から上方修正が見られた。一方、物価について12地区のすべてで上昇が報告されており、利下げは難しいという見方が強い。
 ただ、短期金利市場では次回9月のFOMCでの利下げを約60%織り込んでいる。次回会合で利下げに向かう場合、今回の声明や会見で何らかの示唆がある可能性がある。前回まで同様に利下げに慎重な姿勢を崩さなければ、9月の利下げ期待が後退し、ドル買いとなる可能性がある。ドル円は149円台に向けた動きが期待される。
日本銀行金融政策決定会合
7月30日・31日
☆☆☆
 30日、31日に日本銀行金融政策決定会合が開催される。政策金利は現状の0.5%で維持される見込み。日米関税交渉が合意したことで今後の不確実性が後退しており、利上げ再開に向けた期待が広がっている。短期金利市場では次回9月の会合での利上げを25%程度、年内の利上げを75%程度織り込んでいる。
 注目は今回の会合で公表される経済・物価情勢の展望(展望レポート)。前回5月1日に公表された4月の展望レポートは、見通しが実現していくとすれば引き続き政策金利を引き上げる方針を維持したものの、トランプ関税の影響もあり成長率と物価見通しを引き上げ、基調的な物価上昇率が2%に到達する時期を後ずれさせる慎重なものとなった。今回は物価見通しを上方修正するとの観測が広がっており、その場合、利上げ期待の上昇から円買いとなる可能性がある。ドル円は146円に向けた動きが期待される。
米雇用統計(7月)
8月1日21:30
☆☆☆
 前回6月の雇用統計は非農業部門雇用者数が市場予想の+11.1万人を超える+14.7万人となった。もっとも政府部門が+7.3万人と伸びの約半分を占めており、民間部門の雇用者数は+7.4万人と昨年10月以来の低い伸びに留まった。政府部門の伸びは地方の教育関連の伸びがほとんどで、特殊要因によるものと見られている。トランプ大統領が人員整理を進める連邦政府部門に関しては、-0.7万人と3カ月連続での雇用減となった。失業率は4.1%と5月の4.2%から改善。市場予想は4.3%への悪化となっていた。もっとも労働参加率が2カ月連続の低下で62.3%となったことが失業率改善の要因と見られている。雇用統計の対象となる16歳以上の人口自体は増えているが、労働力人口の減少(6月は-13万人)が目立ち、労働参加率が低下した。こうした状況は雇用市場があまり活発でなく、求職意欲の低下や、早期引退、専業主婦の増加などが見られるときに起きる事象で、雇用市場の減速を示すものと警戒されている。
 前回+7.4万人となった民間部門の非農業部門雇用者数の内訳は、財部門が+0.6万人。5月は-0.4万人でしたので少し回復しているが、製造業は-0.7万人と2カ月連続の雇用減となった。民間サービス部門は+6.8万人と5月の+14.1万人から伸びが鈍化した。これまでの伸びを支えてきた教育・ヘルスケア部門、娯楽・接客部門は+5.1万人、+2.0万人とともに伸びているが、5月の+8.3万人、+2.9万人から伸びが鈍化。その他の業種も目立って弱いところは見られないが、全般に冴えない伸びとなっている。平均時給は前月比+0.2%、前年比+3.7%と5月の+0.4%、+3.8%から伸びが鈍化。市場予想の+0.3%、+3.9%を下回っており、総じて労働市場が厳しいという印象を与えた。
 今回は+10.8万人と伸びの鈍化が見込まれている。もっとも民間雇用については+10.0万人と前回からの改善が見込まれている。失業率は4.2%への悪化が見込まれている。
 市場予想通り民間雇用の改善が見られると、全体の数字が弱くてもドル売りは進まず、ドル買いが入る可能性が高い。ドル円は150円に向けた動きが期待される。29日に米コンファレンスボード消費者信頼感指数、米雇用動態調査(JOLTS)求人件数、30日の米ADP雇用統計、米第2四半期GDP速報値など関連指標の動向にも注意したいところ。

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