2025年08月18日号

(2025年08月11日~2025年08月15日)

先週の為替相場

米物価統計受けて上下

 先週(8月11日-8月15日)のドル円は、12日の7月米消費者物価指数(CPI)(用語説明1)を受けてドル売りが強まるも、14日の米生産者物価指数(PPI)(用語説明2)を受けて、ドル買いが入る場面が見られるなど、米物価統計を受けて相場が上下する展開となった。

 1日の米雇用統計が衝撃的な弱さを見せたことを受けて1ドル=150円台後半から急落したドル円。146円台ではドル買いが入る展開となり、注目された12日の米CPIを前にいったんドル買いが入った。148円50銭台まで上昇した後、米CPIを受けてドル売りが優勢となった。

 米CPIは前年比+2.7%と市場予想の+2.8%を下回る伸びも、市場が注目する食品とエネルギーを除いたコアの前年比は+3.1%と予想の+3.0%を上回る伸びとなった。前月比は総合が+0.2%、コアが+0.3%と共に市場予想通りとなった。弱い数字ではないが、1日の米雇用統計を受けて強まった利下げ期待を覆すほどではないとの見方が広がりドル売りとなった。特に市場予想通りとはいえ1月以来の伸びとなったコア前月比について、航空運賃、医療、娯楽といったサービス価格の上昇が主要で、関税の影響を受けやすいコア財の伸びが抑えられたことが利下げ期待につながった。

 さらにベッセント米財務長官が9月のFOMCでの0.5%利下げに言及。同時に日銀の利上げを望む姿勢も見せたことで、日米金利差縮小期待からのドル売り円買いとなった。ドル円は14日に146円21銭を付けている。

 しかし、同日の米PPIを受けて一転してドル高となった。PPIは前年比が市場予想の+2.5%を大きく超える+3.3%、食品とエネルギーを除いたコア前年比が市場予想の+3.0%を大きく超える+3.7%となった。前月比は総合、コア共に市場予想の+0.2%を大きく超える+0.9%となっている。約3年ぶりの大幅上昇であり、企業が関税コストを転嫁し始めていることを示唆しているとの思惑が広がった。

 予想を大きく超える強さに、米CPI後に一部で広がった9月の0.5%大幅利下げ期待が払しょくされ、年内3回利下げ期待も後退。9月の利下げ自体は織り込むものの、行き過ぎた期待感には警戒感が出る形となり、ドル売りが落ち着いた。

 ドル円は147円90銭台まで大きく上昇。148円を付けきれずにいったん146円70銭台までドル売りが出たが、週末にかけて買い戻しが入り、147円台前半で先週の取引を終えた。 

 ユーロドルは米雇用統計を受けて1ユーロ=1.1390前後から1.1590ドル台へ上昇。その後もユーロ高ドル安が進み1.1700ドルに迫ったものの、米CPI前の調整に1.1590ドル前後を付けた。米CPI後のドル安に1.1730ドル前後まで上値を伸ばしたが、米PPIを受けて1.1630ドル前後までいったんユーロ安ドル高となった。その後1.17台を回復して先週の取引を終えるなど、堅調な動きとなっている。

 ユーロ円は対ドルでのユーロ買いに加え、世界的な株高を受けてのリスク選好の円売りが支えとなり、13日に7月28日以来のユーロ高圏となる1ユーロ=173円00銭台を付けた。ベッセント発言の円買いもあって14日に170円90銭台まで売りが出たが、その後172円台を回復して週の取引を終えるなど、地合いは堅調。

今週の見通し

 今週は週後半にカンザスシティ連銀主催の経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」が開催される。各国の中銀関係者などが集う同会合では今後の金融政策の姿勢を示す機会として利用されることが多く、市場の大きな注目を集めている。

 今年に入ってパウエル米FRB議長は利下げに慎重な姿勢を続けてきた。トランプ米大統領などからの厳しい利下げ要請などを受けても、据え置き姿勢を崩していなかった根拠として、雇用市場の堅調さと関税が物価に与える影響の不透明性が挙げられていた。しかし、1日に発表された米雇用統計で、前回値、前々回値の大きな下方修正が示されたことで、雇用市場の堅調さへの信頼が揺らいでいる。市場が9月の利下げ再開をほぼ織り込む中、パウエル議長がどのような発言を行うかが注目される。

 市場は米CPI後に強まった年内3回の利下げ見通しが後退。短期金利市場では年内2回の見通しを80%程度織り込み、3回の利下げは20%程度となっている。パウエル議長がこれまでの慎重姿勢から一転して利下げへの意識を強める発言を行うと、3回利下げの期待が強まり、ドル売りとなる一方、関税の物価への影響を強調し、慎重な姿勢を続けるようだとドル高となる。慎重姿勢維持の可能性が高そうで、ドル円は比較的しっかりした動きが期待されるが、実際の発言を待ちたいとの思惑も強く、ジャクソンホール会議まではレンジ取引が続く可能性も高い。

 146円台から148円台半ばにかけてのレンジ取引を中心に、ジャクソンホール会議次第で150円トライの流れを意識する展開を見込んでいる。

 ユーロドルは1.1600-1.1800ドルのレンジを中心に、ジャクソンホール会議待ちか。ユーロ円は株高の動きが続くようだとややしっかりとなりそう。ただ、ジャクソンホール会議を前に積極的な上値トライも難しい。下がると買いが出る展開が続くか。

用語の解説

米消費者物価指数 米消費者物価指数(CPI:Consumer Price Index)は米労働省労働統計局が米国の都市部における消費者が購入する商品やサービスの価格変化を調査して指数化した指標。米国のインフレターゲットは同じく個人の消費時点での物価統計である個人消費支出(PCE)価格指数であり、CPIではない。ただ、CPIはPCE価格指数に比べて発表が2-3週間早く、水準自体は違うが、変化の傾向は似通るため、市場はCPIに注目する傾向がある。
米生産者物価指数 米生産者物価指数(PPI:Producer Price Index/卸売物価指数との表記もある)は米CPIと同様に米労働省労働統計局が、米国の生産者の販売品目(原材料・中間財含む)の価格変化を調査し指数化した指標。構成項目のうち、医療サービス関連や航空旅客サービス、ポートフォリオ管理費などはPCE価格指数の算出に利用されるため、特に注目度が高くなっている。

今週の注目指標

NZ中銀政策金利
8月20日11:00
☆☆☆
 NZ準備銀行(中央銀行)は昨年8月に利下げを開始。その後6会合連続で利下げを実施も、前回7月の会合で7会合ぶりに政策金利を据え置いた。もっとも声明で「委員会は中期的なインフレ圧力が予想通り緩和を続ける場合、政策金利をさらに引き下げる可能性がある」と追加利下げの可能性に言及している。
 今月7日に公表されたNZ中銀の四半期報告では、2年後の期待インフレ率が2.28%となり、前期の2.29%から小幅ながら鈍化した。1年インフレ見通しも2.41%から2.37%に鈍化している。こうした状況から今回のNZ中銀は利下げがほぼ確実視されている。短期金利市場では90%以上が現行の3.25%から3.00%への利下げを見込んでいる。エコノミストなど専門家の予想もほとんどが0.25%利下げとなっている。
 市場予想通り0.25%の利下げが実施された場合、注目は声明などでの今後の姿勢となる。今のところ短期金利市場は年内の追加利下げを65%程度織り込んでいる。声明などで追加利下げ期待が強まるとNZドル売りとなる可能性が高い。NZドル円は1NZドル=85円台に向けた動きが見込まれる。
米FOMC議事要旨 8月21日21:30
☆☆☆
 20日(日本時間21日午前3時)に米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(7月29日、30日開催分)が公表される。市場予想通り政策金利の据え置きを決めた7月のFOMCであるが、全会一致の多いFOMCとしては珍しくボウマン、ウォラーの両理事が0.25%利下げを主張して反対に回った。なお、8月6日付で退任したクーグラー理事は欠席している。このところ利下げに前向きな発言が目立つ両理事と、今回据え置きに投票したジェファーソン理事、今回投票権のなかったローガン・ダラス連銀総裁が次期FRB議長の候補者として米メディアで名前の挙がる11人に含まれている。利下げに前向きなメンバーが含まれているとはいえ、1日の米雇用統計前で市場でも利下げに向けた積極的な見方がそれほど強くなかった前回のFOMCの中で、どこまで今後の利下げに向けた姿勢が見られたのかが注目される。
 市場の見方以上に利下げに向けた姿勢が見られると、9月の利下げの織り込みが進み、年内3回の利下げに向けた期待も強まる形でドル売りとなる。ドル円は145円台に向けた動きが期待される。
 
ジャクソンホール会議
8月22日23:00
☆☆☆
 ワイオミング州ジャクソンホールで21日から23日にかけて、カンザスシティ連銀が主催する経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」が開催される。毎年多数の各国中銀関係者、学者などが参加する同シンポジウム。参加した各国中銀のトップによる発言によって、その後の金融政策に関する見通しが変化し、相場が大きく動く例が何度も見られたこともあり、市場が大いに注目する夏の風物詩となっている。
 パウエル議長は昨年の同会議で「政策金利を変更する(利下げする)時は来た」と発言。同年9月から始まった米FRBによる利下げサイクルのスタートを示した。今回の会議でも22日午前8時(日本時間同日23時)から「経済見通しと枠組みの見直し」をテーマに基調講演を行う予定。今年のジャクソンホール会議自体のテーマ「転換期の労働市場:人口動態、生産性、マクロ経済政策」とも合わせ、1日の雇用統計後に一気に進んだ利下げに向けた動きなどについて発言があると期待されている。
 FRBは昨年9月のFOMCで0.5%利下げを実施した後、11月、12月のFOMCで0.25%利下げを実施、計1%の利下げで政策金利を現行の4.25-4.50%とした後は、直近7月のFOMCまで政策金利の据え置きを続けている。この政策金利据え置きの根拠としてパウエル議長が示しているのが雇用市場の堅調さと関税が物価に及ぼす影響がまだ不透明であること。しかし1日発表の米雇用統計において、5月、6月の数字が大きく下方修正され、7月も予想より弱い伸びとなったことで、雇用市場の堅調さのデータが崩れている。関税の物価に与える影響については12日発表の米消費者物価指数(CPI)では目立たなかったものの、14日発表の米生産者物価指数(PPI)が高い伸びとなったことで、判断が難しくなっている。
 もっとも弱い雇用のインパクトが相当強いだけに利下げに向けた姿勢が強まることは不可避と見られており、これまで利下げに慎重な姿勢が目立ったパウエル議長がどのような発言をするのかが相当に注目されている。利下げへの積極的な姿勢が見られるとドルが大きく売られる可能性がある。内容次第となるが144円台を付けるような動きとなる可能性がある。

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