2025年09月16日号

(2025年09月08日~2025年09月12日)

先週の為替相場

日本の政局なども含め不安定な動き

 先週(9月8日-9月12日)のドル円は、日本の政局などを含め不安定な動きを見せた。5日発表の8月米雇用統計が弱い雇用の伸びを示したことで、16日、17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げがほぼ確実となり、また今月を含め年内3回の利下げを見込む動きが広がる形でドル売りが進んで迎えた週明けの市場。7日に石破首相が退陣を表明したことで一気に円安となって週の取引がスタートした。

 政局の混乱自体が当該通貨売りの材料になることに加え、次期首相の有力候補、特に高市前経済安全保障相が積極財政論者として海外勢にも認識されており、財政赤字警戒が強まるとの思惑が円売りにつながった。ドル円は5日終値の1ドル=147円40銭台から148円台に乗せてスタートし、148円58銭を付けた。ユーロ円が5日終値の1ユーロ=172円74銭から173円91銭まで上昇、ポンド円が5日終値の1ポンド=199円15銭から200円35銭まで上昇と、クロス円でも軒並みの円安進行が見られた。円主導の動きでユーロドルなどはやや蚊帳の外となっていた。

 8日東京朝に高値を付けた後は少し動きが落ち着き、海外勢が本格参加する時間に入ってドル売り円買いが優勢となった。日本の政局については、まだ情勢が不透明として動きが一服。5日米雇用統計を受けた利下げ期待からのドル売り基調に復す展開が見られた。9日23時発表の米雇用統計、非農業部門雇用差数の年次改定暫定値を前に、大幅下方修正を警戒するドル売りが広がったことや、9日に複数の関係者筋情報として、日本銀行は石破首相退陣による国内政治情勢の混乱を受けても年内利上げの可能性を排除しないとの報道が出たことが円買い材料となり、146円31銭までドル安円高となった。ユーロ円が172円14銭を付けるなど、軒並み円高となっていた。同日23時の米雇用統計年次改定前提値は91.1万人の下方修正と、過去最大の下方修正を示した。該当期間である2024年4月から2025年3月までの期間に非農業部門雇用者数は179万人(季節調整前、季節調整後は175.8万人)の雇用増となっていたが、暫定値とはいえ半分以下の雇用増であったと示された形で、米雇用市場の厳しい状況が浮き彫りとなった。もっとも結果発表直後はドル売りの場面も、事前の警戒感からのドル売りが進んでいたこともあり、その後はドル買いが優勢となった。

 10日の市場で147円台半ば前後での推移となったところで、8月14日に発表された7月分の数字が予想を大きく上回る伸びとなり、米利下げ期待を後退させたこともあって、今回も結果が注目されていた8月の生産者物価指数(PPI)が発表され、前月比が予想外のマイナス圏となり、前年比の伸びも予想を大きく下回る伸びに留まったことで、利下げ期待がもう一段強まった。ただ、9月の0.25%利下げ自体はすでに織り込み済みで、さすがに0.5%利下げの可能性は低いとの思惑が広がっており、相場への影響は限定的に留まり、11日の米消費者物価指数(CPI)待ちとなった。

 11日東京市場午後に高市前経済安全保障相が総裁選に出馬する意向を岸田前首相に伝達との報道が流れたことをきっかけに円売りが強まった。ドル円は147円99銭まで上昇して米CPIを迎えた。米CPIは総合の前月比が予想を上回る伸びとなったほか、関税の影響が警戒されるコア財の伸びが強まり、関税の影響が小さいコアサービスの伸びが鈍化となったことで、瞬間ドル買いとなり、148円17銭までドル高円安となった。しかし米CPIと同時に発表された米新規失業保険申請件数が予想を大きく上回る増加となったことを嫌気して、すぐにドル売りが優勢となった。米雇用状況の厳しさを再認識した形でドル円は146円台を一時付ける動きを見せている。ドル主導の動きが目立ったことで、ユーロ円などクロス円の動きはある程度抑えられ、8日の高値から9日の安値の間委のレンジ内での取引に終始している。ユーロドルは対円でのユーロ買いもあって9日に1ユーロ=1.1780ドルを付けた後、上値が重い展開ながら1.17台での推移となっていたが、米CPI直後のドル買いに1.1662ドルを付けた。すぐにドル安に転じたことで1.1740ドル台へ反発している。

 12日にかけてはいったんドル高となった。ドル円は一時148円台を付けた。次期総裁選で高市氏優勢とのメディア報道などに海外勢が反応したことがきっかけ。もっとも11日の高値に届いておらず、限定的な動きに留まった。15日は日本市場が休場ということもあり、週末を挟んでのポジション維持に少し慎重な姿勢が見られた。ユーロドルは1.17台前半での推移。1.1750ドルに迫った後、ドル全般の上昇に1.1700近くまでユーロ安ドル高も大台を維持し、その後少しユーロ買いが出ていた。ユーロ円はドル円の上昇もあって173円40銭台まで上昇も、173円50銭前後が上値抵抗水準となり、その後少し売りが出ている。

今週の見通し

 16日、17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)次第の面が強い。政策金利自体は0.25%の利下げで見通しがほぼ一致している。一時0.5%の大幅利下げを期待する動きが一部で見られたが、金利先物市場動向からの政策金利見通しを示すCMEFedWatchツールで0.5%利下げは4%程度まで低下しており、0.25%をほぼ完全に織り込んでいる状況。注目は声明、パウエル議長の会見と四半期に一度公表されるメンバーによる経済見通し(Summary of Economic projections/SEP)となっている。中でもSEPの中で示される各メンバーの年末時点での政策金利水準見通しをドットで示したドットプロット(用語説明1)が注目されている。

 前回6月のSEPで示されたドットプロットでは2025年末まで現水準での維持との見通しが7名、1回利下げが2名おり、下方修正が不可避。市場が期待する3回利下げまで見通しが進むかがポイントとなる。

 15日にはFRB理事に指名されていたミラン米大統領諮問委員会(CEA)委員長(用語説明2)が上院本会議で指名承認を受けた。16日からのFOMCに参加する。大幅利下げを主張してくる可能性が高く、ドットプロットなどでもかなり大胆な利下げを示してくる可能性がある点に注意したい。

 米利下げ期待が強まると、ドル円は下げが強まる可能性がある。ドル円は145円台に向けた動きが期待される。

 日本の政局も波乱要因。次期総裁選に関しては高市前経済安全保障相と小泉農林水産相が有力と報じられている。小泉氏が加藤財務相を選対委員長に迎えたことで、議員票の取り込みなどが期待されている。海外勢を中心に高市氏優勢で円売り、小泉氏優勢で円買いという流れが出来つつある。今後の議員票、自民党員票の見通し報道などによって相場が左右される流れもありそう。高市氏優勢との見方が強かっただけに、小泉氏優勢での円買いの勢いの方が付きやすいとみられる。

用語の解説

ドットプロット 年8回のFOMCのうち、3月、6月、9月、12月のFOMCで示される参加メンバー(理事・地区連銀総裁)による経済見通し(SEP)の中で示される年末時点での政策金利水準の予想。各メンバーの予想がドットで示されることからドットプロットもしくはドットチャートと呼ばれる。
ミラン米大統領諮問委員会委員長 スティーブン・ミラン(Stephen Miran)米大統領諮問委員会(CEA)委員長。ハーバード大学で経済学博士号を取得後、フィディリティインベストメントやソヴァーナムキャピタルなどでアナリストとして勤務。第1次トランプ政権下の2020年4月に米財務省で経済戦略シニアアドバイザーに就任。バイデン政権となって民間に転じた。2024年12月にCEA委員長に指名され、2025年3月に上院で承認されて同職についている。2025年8月7日付でクーグラーFRB理事が退任。後任として同氏が指名され、9月15日に上院で承認された。任期はクーグラー理事の残存任期である2026年1月31日までとなっている。ミラン氏はFRB理事職にある間、CEA委員長を無休休職とするとしている。

今週の注目指標

米小売売上高(8月)
9月19日21:30
☆☆☆ 
 前回7月の米小売売上高は前月比+0.5%、自動車を除くコア前月比+0.3%となった。市場予想とほぼ一致している。自動車の売上上昇は9月30日のEV車に対する税額控除期限を前にした駆け込み需要と見られているが、その他項目も幅広く上昇しており、好調さが見られた。
 今回は前月比+0.2%、自動車を除くコア前月比+0.4%が見込まれている。自動車は前月の反動。ここにきて厳しさが見られる雇用が個人消費にどこまで影響しているかがポイントとなる。予想はかなりしっかりした数字となっているが、家計の消費意欲が予想以上に減退している可能性は十分にある。弱く出たところで、FOMCでの0.5%利下げなどにはつながらない見込みも、年内3回利下げ期待の拡大などを通じてドル売りとなる可能性がある。ドル円は145円台に向けた動きが見込まれる。
米連邦公開市場委員会(FOMC) 9月18日03:00
☆☆☆
 16日、17日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され、日本時間18日午前3時に結果が公表される。今年初となる利下げの実施がほぼ確実となっている。利下げ幅は0.25%で見通しがほぼ一致。一時は0.5%の大幅利下げ期待が少し強まる場面が見られたが、金利先物市場や短期金利市場での0.5%利下げの可能性は5%程度となっており、0.25%をほぼ織り込む形となっている。
 注目はパウエル議長の会見、FOMC声明と、四半期に一度公表されるメンバーによる経済見通し(SEP)となる。物価見通しや経済成長見通しの変化も注目材料であるが、一番の注目はドットプロットでの2025年末と来年末の政策金利見通し。6月のFOMCで示された前回のSEPでのドットプロットは、年内2回の利下げが中央値となり、19名中7名が現行の4.25-4.50%に据え置き、2名が年内1回の利下げを見通しとして示していた。今回利下げがほぼ確実となっており、年内の追加利下げも少なくとも1回(計年内2回)、大勢の見通しはあと2回(年内3回)の利下げとなっている。今回のドットプロットでこうした市場の見通しにどこまで沿ったものになるかが注目される。
また、2026年に入っても利下げサイクルが継続するとの見方が強い。前回は2026年末の政策金利見通しが3.50-3.75%が中央値となっていた。金利市場では来年末時点を2.75-3.00%と見込んでおり、どこまでこうした市場見通しに沿ったものになるかが注目される。
 なお、ミラン氏が理事に就任したことで、同氏と前回7月会合で利下げを主張したウォラー理事(チーフエコノミスト)、ボウマン理事(FRB副議長)が0.5%の大幅利下げを主張する可能性がある。その場合でも9対3での0.25%利下げの決定が見込まれており、波乱要素は少ないが、今後の利下げ姿勢強化への思惑もあり、ドル売りに反応する可能性がある。展開によってはドル円の144円台も視野に入ってくる。
 
日銀金融政策決定会合 9月18日、19日 ☆☆ 日銀金融政策決定会合が18日、19日に開催され、19日の昼前後に結果が公表される。植田総裁が19日午後3時半ごろから会見を行う予定。政策金利は0.5%での据え置きが見込まれている。据え置きとなると5会合連続。声明や総裁会見で今後の追加利上げの可能性を探る展開が見込まれる。次回10月の会合での利上げについては金利市場で30%程度、エコノミスト予想でも3割強が期待している。12月も含めた年内利上げの予想は50%を超えてくる。植田総裁が会見で利上げにどこまで前向きな姿勢を見せるかが注目ポイント。利上げ期待が強まると円買いにつながる。ユーロ円は171円台トライの可能性がある。

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