2025年09月22日号
先週の為替相場
日米の金融政策会合を受けて上下
先週(9月15日-9月19日)のドル円は、日米の金融政策会合を受けて上下する展開となった。16日、17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.25%利下げと今回を含め年3回の利下げ見通しを織り込みつつドル売りが先行。積極的な利下げを主張するとみられるミラン米大統領諮問委員会(CEA)委員長がFOMC直前の15日に理事として常任の承認を受けたことなどもドル売り材料となった。
週明けの1ドル=147円80銭前後から146円20銭台まで下げて17日(日本時間18日午前3時)のFOMC結果発表を迎えた。FOMCでは市場予想通り0.25%の利下げを決定。参加メンバーによる経済見通し(SEP)の中で示される年末時点での各メンバーの政策金利水準見通しをドットで示したドットプロットでは10月、12月の連続利下げを意味する3.50-3.75%が中央値となった。
利下げは市場予想通り、年末時点での政策金利水準も短期金利市場や金利先物市場での織り込みに一致した結果となったが、一部でより慎重な姿勢が示されるとの思惑があったため、発表後はいったんドル売りが強まり、145円49銭を付けた。週初の1ユーロ=1.1710ドル台から上昇し、一時1.1870ドル台を付け、1.1850ドル台でFOMCを迎えたユーロドルが、1.1919ドルを付けるなど、ドルは全面安となった。
すぐに反転すると、逆にドル高が優勢な展開となった。ドットプロットでは2025年末時点について、1名だけ2.75-3.00%と極端に低い水準を示した(その後ミラン理事が自分であるとメディアのインタビューに答えた)が、次に低い水準が中央値となった3.50-3.75%で、ミラン氏を除いて0.5%の大幅利下げを見込む動きが見られなかったこと、2026年末の中央値が3.25-3.50%で、年末時点で3.50-3.75%となっていたとすると、来年1回の利下げしか見込まれていないことなどが、ドル買いにつながった。
会合後のパウエル議長会見では「労働市場はもはや堅調とは言えない」など雇用市場の厳しい状況に言及し、利下げサイクルスタートを示したが、「インフレは幾分高止まり」など物価への警戒感を示し、金利をめぐり「急速に行動する必要はない」など、今後の慎重姿勢も示した。これを受けてドル高円安が強まり148円27銭まで上昇。
ユーロドルも高値からすぐに値を落とした後、ドル高に押されて1.17ドル台前半を付けている。
19日に英中銀金融政策会合は7対2での据え置きを決定。ティングラ委員、テイラー委員(用語説明1)の利下げ主張も含めて市場の予想通りとなった。QTを減額して700億ポンドとすることも市場見通しと一致している。発表後はポンドドルで一瞬ポンド買いも、すぐに発表前水準に戻すなど影響は限定的に留まった。
19日、20日の日銀金融政策決定会合は市場予想通り政策金利を据え置いた。2名の委員が0.25%の利上げを主張したことや、日銀の保有するETFの売却を決定(用語説明2)したことなどを受けて、ドル円は148円00銭前後から147円20銭前後まで円買いとなった。しかしETF売却はかなりゆっくりしたペースで、100年以上かけて解消する方針となっていたこと、午後3時半から会見を行った植田総裁が、利上げに向けた姿勢を示さなかったことなどから一転して円売りとなり、148円28銭と、先週の高値を更新する動きとなった。
ユーロドルではドル高基調が継続し、1.1729ドルを付けている。
ドル主導でクロス円はやや不安定。ユーロ円は株高などを支えにしっかり。米FOMC後のドル円の安値からの反発もあり1ユーロ=174円50銭前後を付けている。
今週の見通し
日米の金融政策会合をこなし、ドル高円安基調に復すると見込まれる。米FOMCでは年内あと2回の利下げ見通しが示されたが、大幅利下げの期待が後退したこと、2026年の慎重な姿勢が示されたこと、パウエルFRB議長が慎重な姿勢を崩さなかったことなどから、行き過ぎた利下げ期待が後退。日銀は植田総裁が今後のデータ次第との姿勢を崩していないことなどから、こちらも年内利上げと据え置きで見通しが分かれる状況が後退。日米金利差の早急な縮小への期待が後退し、ドル買い円売りにつながっている。
今週は日本の自民党総裁候補の演説や討論会、トランプ大統領の国連での演説など、日米の政治的な動きも相場につながりそう。財政赤字懸念が広がっている英国やユーロ圏の要人発言も合わせて注目したい。
ドル円は147円台から148円台にかけてのレンジを中心に、上方向トライのタイミングを伺う展開か。150円手前にはドル売り注文が入っているとみられるが、押し目ではドル買いが出る展開で、じっくりと上を試しそう。
ユーロ円はドル円の上昇を支えにしっかりした動きが続くとみられる。対ドルでのユーロ売りの流れが重石。
ユーロドルは1.17ドル台を中心に下方向を意識か。英財政赤字懸念の拡大でポンドが対ドル、対円で売られやすくなっている分、ユーロも対ドルでの戻り売りが出そう。
用語の解説
| テイラー委員 | アラン・テイラー(Alan Taylor)委員。英金融政策委員会(MPC)は5名の英中銀内部委員と4名の外部委員によって構成されており、テイラー委員は外部委員の一人。米コロンビア大学教授。イングランド北部ウェイクフィールド出身でケンブリッジ大学卒業後、米ハーバード大学で博士号を取得。その後モルガンスタンレー、PIMCO、マッキンゼーなどでシニアアドバイザーを務めた。金融緩和に積極的なハト派の代表格として知られており、0.25%の利下げを決定した8月の会合では当初0.50%の利下げを主張していた。 |
|---|---|
| ETF売却 | 日本銀行はデフレ対策として2010年よりETFの購入を開始、2013年以降の異次元緩和の一環として購入規模を拡大した。現在の保有額は簿価で37兆1861億円、時価では80兆円を超えるとみられている。今回、日銀は簿価ベースで年間3300億円(2025年3月末時点での時価で約6200億円)のETFを売却する方針となっており、同ペースを守ると、完全売却に112年かかる。 |
今週の注目指標
| トランプ大統領 国連一般討論演説 9月23日 ☆☆ | 国連総会が22日より開催され、23日から29日かけて行われる各国首脳による一般討論演説の初日23日にトランプ米大統領が演説を行う。第2期トランプ政権では初のトランプ氏による国連での演説となる。トランプ大統領は米メディアに対して、国連の良い面と悪い面を語ると発言している。米国と国連との対立姿勢が印象付けられると、リスク警戒の動きからドル円の重石となる可能性がある。相場への影響は限定的と見込まれるがドル円は147円台前半を意識する展開が見込まれる。 |
|---|---|
| 東京都区部消費者物価指数(CPI)(9月) 9月26日08:30 ☆☆☆ | 次回10月の日銀金融政策決定会合は、利上げと据え置きの見通しが拮抗している。カギを握る材料がインフレターゲットの対象である全国消費者物価指数(CPI)生鮮除くコア前年比となる。同指標の先行指標として注目されているのがこの東京都区部消費者物価指数(東京CPI)である。 前回8月の東京CPIはほぼ予想通りとはいえ7月から伸びが鈍化。生鮮を除いたコア前年比は7月の+2.9%から+2.5%となった。その後9月19日に発表された8月の全国CPI生鮮除くコア前年比も7月の+3.1%から+2.7%まで鈍化した。 今回の予想は生鮮除くコア前年比+2.8%と8月の+2.5%から上昇見込み。前回の鈍化要因となったエネルギー価格の反動分が大きいとみられ、生鮮に加えてエネルギーも除いたコアコア前年比は8月の+3.0%から+2.9%に鈍化見込みとなっている。予想を上回る伸びを見せると、10月の利上げ期待が据え置きを上回る展開となり円買いにつながる可能性がある。ドル円は146円台に向けた動きが期待される。 |
| 米個人消費支出(PCE)価格指数(8月) 9月26日21:30 ☆☆☆ | 16日、17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)は今年初となる利下げを決定。年内あと2回の利下げがメンバーによる見通しでも示された。もっとも大幅利下げ主張が新理事となったミラン氏を除いて見られず、2026年の利下げについても慎重姿勢が目立っている。パウエル議長の会見では、労働市場はもはや堅調とは言えないと雇用の厳しい状況を認めたが、物価については幾分高止まりと警戒感を残す形となっていた。米物価統計は米消費者物価指数(CPI)と米生産者物価指数(PPI)の注目度が大きいが、インフレターゲットの対象はPCE価格指数だけに、同指標にも注目が集まる。 8月の米物価統計は10日発表の米PPIが総合、コア共に前月比予想外のマイナス、前年比も予想を大きく下回る伸びに留まった。PPIのうち、PCE価格指数の算出に利用される項目については、ポートフォリオ管理費、航空運賃などが上昇も、医療サービス関連はまちまちながら全般に小幅な伸びに留まっていた。 PPI直後は物価の鈍化に警戒感が見られたが、11日に発表された米CPIがおおむね予想通りとなったことで警戒感が後退している。CPIの内訳をみると、関税の影響を受けやすいコア財の伸びが目立っており、関税の物価への影響については警戒感が見られる。 こうした状況を受けて今回のPCE価格指数の予想は、前年比+2.7%と7月の+2.6%から小幅上昇、コア前年比の予想は6月と同じ+2.9%となっている。前月比は+0.3%とこちらも7月の+0.2%から伸びるものの、コア前月比は7月の+0.3%から+0.2%へ伸び鈍化見込みとなった。エネルギー価格の上昇が見込まれており、総合の伸びを支えるものの、エネルギーと食品を除いたコアは落ち着いた伸びが見込まれている。予想前後であれば年内あと2回の利下げ見通しは変わらず、2026年も第1四半期中に1回利下げという大勢の見通しが継続するとみられる。予想から乖離が見られると、年内2回の利下げはともかく、2026年の利下げ見通しが変化する可能性があり、注意が必要。大きな乖離があると、ドル円の動きも予想以上に大きくなる可能性がある。 |
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