2025年09月29日号

(2025年09月22日~2025年09月26日)

先週の為替相場

週後半にかけてドル高強まる

 先週(9月22日-9月26日)のドル円は、週の後半にかけてドル高円安となり、一時1ドル=149円90銭台と心理的節目である150円に迫る場面が見られた。先々週日米の金融政策会合をこなし、米国の積極的な利下げへの期待が後退したことなどを背景にドル高となった。ユーロドルが1ユーロ=1.1820ドル台から1.1640ドル台までユーロ安ドル高になるなど、ドルは全面高となっていた。

 先週月曜日22日のドル円は、先々週の市場で、米FOMC直後に付けた145円40銭台から148円20銭台まで上昇した流れを引き継いで、東京市場午前に148円38銭と先々週の高値を更新する動きを見せた後、一転してドル安円高となった。自民党総裁選の告示と各メディア世論調査での小泉農水大臣優勢の報道を受けた円買いが出ていた。海外勢を中心に有力候補の一人である高市前経済安全保障相の積極財政による財政赤字拡大を警戒する動きが見られ、小泉氏の支持率が高市氏を上回っているとの報道が円買いにつながったと見られた。秋分の日で東京市場が休場となった23日も円買いが継続し、147円46銭を付けた。

 米FOMCと日銀会合をこなしてのドル高円安基調再開への思惑もあって、調整局面での値幅が抑えられていたこともあり、下げ一巡後はドル買い円売りに復した。24日発表の8月豪月次消費者物価指数(CPI)の予想を超える伸びを受けた豪ドル買い円売りなども支えとなり、ドル円は148円台を回復。同日の9月独Ifo景況感指数(用語説明1)の予想外の悪化を受けたユーロ売りドル買いも見られ、ドル円は148円90銭台を付けた。

 148円台後半を中心としたもみ合いを経て、25日米国市場朝の米指標の強さからドル高が再び強まった。米第2四半期GDP確報値が、改定値から大きく上方修正。個人消費の大幅な上方修正によるもので、米景気への警戒感がやや後退した。同時刻に発表された米新規失業保険申請件数が予想以上に減少したことなども好感され、ドル高が強まり149円93銭を付けた。その後26日東京朝に149円96銭、ロンドン朝に149円95銭と149円90銭台を何度か付けたが、150円00銭手前のドル売り注文が上値を抑え、NY市場に入って週末を前にしたポジション整理の動きなどに149円40銭台を付けている。

 ユーロドルも週前半はドル安が優勢となった。22日朝に東京市場朝に1.1726ドルを付けた後、23日朝に1.1820ドルを付ける展開。24日朝にも1.1819ドルを付けており、ユーロ高ドル安が優勢となった。その後ドル全般の反発に加え、24日17時の9月独Ifo景況感指数が、前回からの改善予想に反して悪化したことがユーロ売りを誘った。同指数は建築業を除いたすべてのセクターで低下。独産業の厳しい状況が示された。

 25日の米指標の強さを受けたドル買いもあり、一時1.1640ドル台を付けている。週末にかけては行き過ぎたドル高への警戒感もあり1.1700ドル台を回復している。

 ユーロ円はじりじりと上昇。ドル円の上昇などを支えに下がるとユーロ買いが出る展開で、22日の1ユーロ=173円60銭台から26日に175円00銭台まで上昇している。

今週の見通し

 10月3日発表の9月米雇用統計と、10月1日から連邦政府機関の一部が閉鎖されるリスクが注目ポイントとなっている。

 先々週の日米会合を受けて、米国の積極的な利下げ期待が後退。先週の米第2四半期GDP確報値の予想外の改定値からの大幅上方修正もあって、それまで100%織り込んでいた11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ期待が85%程度に低下、11月、12月の連続利下げ期待は60%台に低下している。2026年の利下げペースも鈍化が見込まれており、ドル買いの大きな材料となっている。こうした状況がドル高円安基調に繋がり、ドル円が149円90銭台を試すなどの展開が見られた。しかし、150円手前のドル売り注文が上値をしっかりと抑えたこと、3日の米雇用統計はここ数回と同様に厳しい結果になると見込まれており、利下げ期待が広がる可能性があることなどが、ドル円の上値トライに慎重な流れにつながっている。

 さらにここにきて米連邦政府機関の一部閉鎖リスクが高まってきた。米国の会計年度(2025年会計年度は2024年10月から2025年9月)末にはよく見られる状況であるが、先週予定されていた予算案についての米民主党シューマー上院院内総務(用語説明2)、ジェフリーズ下院院内総務とトランプ氏の会談が直前でキャンセルされたことで、閉鎖リスクが一気に強まっている。

 29日にも民主党の両氏とトランプ大統領、さらにスーン上院院内総務が会談を行う予定となっている。ただ、下院で可決された共和党主導のつなぎ予算について、民主党側はトランプ減税で盛り込まれた低所得者向け医療制度メディケイド削減の撤廃を織り込むように主張しており、両党の間で妥協の兆しが見えない。上院での予算通過には、過半数ではなく、少数政党の議事妨害(フィリバスター)を回避するために60議席が必要となっており、民主党側から少なくとも7名の賛成が必要。

 連邦政府機関が一時閉鎖されれば、共和党側は政府職員の大量解雇を行うと示しており、かなりの混乱が生じる可能性がある。ただ、民主党側としても来年の米中間選挙をにらんで大事な予算交渉の場となっており、簡単には妥協できないところ。なお、連邦政府機関が一部閉鎖された場合、米雇用統計の発表は延期となる可能性が高い。

 米連邦政府機関の閉鎖が回避された場合、市場の注目は3日の米雇用統計に移りそう。前回は予想以上に雇用の伸び鈍化が見られた。今回も弱めの数字が示されると、ドル売りが強まる可能性がある。

 ドル円は流れ的には150円超えを強く意識する状況。地合いの強さもあって、下がると買いが出てくる可能性が高いが、米連邦政府機関閉鎖や米雇用統計の結果次第では流れが一転し、145円トライとなる可能性もあり、要注意。

 クロス円も同様に神経質な動きとなりそう。ユーロ円は175円台に乗せて、一時175円10銭台を付けたが、米連邦政府機関閉鎖などのリスク材料の結果次第で一転して円高となりそう。

 ユーロドルは1.1700ドルを中心とした推移か。ドル高基調がユーロドルの重石も、下押しにも少し慎重。

用語の解説

Ifo景況感指数 ドイツ5大経済研究所の一つで、ドイツ最大のシンクタンクであるIfo経済研究所が、ドイツの企業約9000社を対象に景況感をアンケート調査し、発表される指数。企業に対して現状の評価と6か月後の見通しをともに3段階に分けて回答を求め、総合指数と、現況指数、(6か月後の)期待指数が公表される。2015年の平均値を基準値の100としている。
院内総務 米国の共和党、民主党は伝統的に党首が存在しない。上下両院で各党の議員を代表するリーダーが院内総務で、各院で党所属議員の投票によって選出される、なお、下院での与党はトップが下院議長となるため、下院与党の院内総務は事実上の党No.2となる(上院議長は副大統領が兼務するため、上院与党トップは院内総務)。

今週の注目指標

連邦政府機関閉鎖期限
9月30日
☆☆☆ 
 米国の2025年会計年度(2024年10月から20025年9月)末を迎え、2026年会計年度での予算執行に対して、新しい予算案の承認が必要となる。米下院は11月21日までの政府機関運営を可能とするつなぎ予算を9月19日に可決したが、同日上院は同予算を否決した。現在両院とも共和党が多数派となっているが、上院での予算案可決には、過半数の51名ではなく、少数与党による議事妨害(フィリバスター)を回避するための60名の賛成が必要となる。
 米民主党はトランプ減税によって削減されたの低所得者向け医療制度メディケイドについて、削減の撤廃を予算に盛り込むことを求めている。もっとも民主党案では米国の債務は今後10年で1兆5000億ドル増加するとの試算があり、米共和党は強く否定しており、両党の溝は深くなっている。
 連邦政府の一部機関が閉鎖された場合、リスク警戒のドル売り円買いが強まると見込まれている。3日に予定されている米雇用統計の発表なども延期される見込みで、現状把握についての不透明感も広がることから、ドル売りが加速する可能性がある、ドル円は146円台を試すような大きなドル売り円買いとなる可能性がある。
米ISM製造業景気指数(9月) 10月1日23:00
☆☆☆
 前回8月の米ISM製造業景気指数は48.7と7月の48.0から小幅改善も、好悪判断の基準となる50を下回り、市場予想の49.0にも届かなかった。内訳をみると新規受注が4.3ポイント改善の51.4となり、節目の50も超える強い結果となったが、生産が3.6ポイント悪化の47.8に落ち込んだ。雇用は43.8と0.4ポイントの小幅改善も、水準的にはかなり低く、50が遠い状況となった。
 今回の予想は49.0と小幅改善見込みも、50には依然届かずとなっている。今回も50を下回ると7カ月連続となる。予想前後もしくは予想を下回る弱さが見られると、ドル売りにつながる可能性がある。雇用部門の数字と合わせて注意したいところ。3日の米雇用統計を前に、同指標での反応は予想から大きな乖離がなければ限定的と見られるが、ドル円などでの上値を抑える材料となりそう。
米雇用統計(9月) 10月03日21:30
☆☆☆
 6会合ぶりの利下げとなった9月16日、17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、「労働市場が堅調とはもはや言えなくなった」と発言。雇用動向が利下げに結びついたことを示した。もっとも市場の一部が期待していた大幅利下げへの積極的な姿勢が目立たず、今後について、利下げサイクル継続も、慎重な見方が広がっている。そうした中、利下げのカギを握る米雇用市場の動向に注目が集まっている。
 前回8月の米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が2カ月連続で市場予想を下回り、前月比+2.2万人とかなり低い伸びとなた。また7月分の発表時に+14.7万人から+1.4万人まで大きく下方修正された6月のNFPが-1.3万人とさらに下方修正された。単月での雇用の減少は2020年12月以来となる。失業率は市場予想通りとはいえ0.1%ポイントの悪化の4.3%。労働参加率が上昇していたため、失業率の悪化自体は問題視されなかったが、非自発的失業者も含む広義の失業率であるU6失業率が8.1%まで悪化し、2021年10月以来の水準となったことや、若年層失業者の増加、平均失業期間の長期化などが見られ、雇用市場の厳しい状況が示された。
 前回のNFPの内訳を確認すると、連邦政府の人員削減が継続する中、政府部門が-1.6万人となった。民間財部門は製造業の-1.2万人などもあって-2.5万人と、4カ月連続の雇用減。民間サービス部門は教育・医療サービスが+4.6万人と前回から伸びが鈍化も底堅さを見せたほか、娯楽・接客業が+2.8万人、小売業が+1.1万人など、比較的景気に敏感な部門の伸びが見られた。一方で卸売業、ビジネスアクティビティ部門、情報業、金融業など幅広い業種で雇用が減少している。幅広い業種での雇用の減少は、何らかの特殊事情ではなく、雇用市場全体が落ち込んでいるとの印象を与えた。前回の平均時給は36.53ドル。日本と比べるとかなり高い印象もあるが、伸びは鈍化傾向となっている。前年比は+3.7%となっており、2023年の平均が+4.4%、2024年が+4.0%と比べてかなり低い。失業率が悪化、雇用が伸びず、給与の伸びも鈍化という状況で、米物価が上昇する中で、個人消費などへの影響が危ぶまれている。
 今回の予想はNFPが+5.0万人と前回の+2.2万人と比べてやや伸びが加速する見込み。失業率は4.3%で8月と同水準見込み。平均時給は前月比が0.3%で前回と同水準、前年比は3.6%と前回から悪化し、2024年7月以来の低水準が見込まれている。予想前後でも米雇用の厳しい状況が継続という印象であるが、ある程度は織り込み済みと見られる。予想を下回った場合は、先週の米第2四半期GDP確報値などを受けたやや後退した利下げ期待が再び強まり、ドル売りとなる可能性がある。今回のNFPの予想では政府部門は増減なしの予想になっているが、直近3カ月連続で雇用減となっている連邦政府の雇用(8月は-1.5万人)の減少が続き、全体を押し下げるなどの状況に注意が必要。

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