2025年10月06日号
先週の為替相場
米連邦政府機関一部閉鎖リスクなどがドルの重石
先週(9月29日-10月03日)のドル円は、10月1日からの米連邦政府機関の閉鎖リスクを警戒したドル売りが優勢となった。
ドル円は先々週後半にかけて米第2四半期GDP確報値の大幅上方修正などを材料にドル高円安となり、26日朝に8月1日以来の高値となる1ドル=149円96銭を付けるなど、25日から26日にかけて何度か149円90銭台まで上昇。心理的な節目でもある150円00銭を付けきれなかったことで、週末を前にポジション整理のドル売りが入り、149円台半ばまで落として先々週の取引を終了。週明け29日は先々週末終値前後でスタートも、すぐにドル売りに転じた。10月1日からの2026年米会計年度スタートを前に予算案がまとまらず、1日からの連邦政府機関一部閉鎖の可能性が強まったことがドルの重石となった。
9月19日に米下院は共和党提出のつなぎ予算法案を可決。同日、上院で否決された。米上下両院とも共和党が過半数を占めているが、単純過半数で可決となる下院と違い、上院では少数派による議事妨害(フィリバスター)で法案を廃止に持ち込めるため、フィリバスター抑制のため60票が必要となる。23日にトランプ大統領と民主党のジェフリーズ下院院内総務、シューマー上院院内総務ら民主党首脳部との協議が直前でキャンセルになったことなどで閉鎖の可能性が高まったとの報道が週末に報じられていたことなどが重石となった。
29日午後に148円40銭台を付けた後、クリーブランド連銀ハマック総裁がインフレ警戒から利下げ時期はまだ先と発言したことなどでドル安進行が一服。もっとも、149円台を回復できないなど、ドルの重さが目立つ中で、30日に入って円買いが強まった。同日、日本の財務省による2年利付国債入札で応札倍率が2.81倍と、過去12カ月平均の3.79倍を大きく下回り、2009年以来17年ぶりの低水準となったことで、円債価格が下落(利回りが上昇)。債券市場で日銀の早期利上げが見込まれている状況を印象付けたこともあって、円買いとなった。米政府機関閉鎖を目前に、共和党と民主党の予算案を巡る溝が埋まらず、7年ぶりの閉鎖の見通しが強まったことによるドル売りも入った。
閉鎖回避の期限は米東部時間1日午前0時、日本時間1日13時であったが、30日の上院で共和党と民主党のつなぎ予算案が共に成立しなかったことで日本時間1日朝には閉鎖が事実上確定。ドル円は1日朝一にポジション整理の動きから148円23銭を付けた後、ドル売りに転じ、9月17日以来のドル安圏となる146円59銭を付けた。
2日には内田日銀副総裁による金融引き締めを急がないとの発言を受けた円売りに147円30銭台を付ける場面も、ドル売りの流れは止まらず、2日海外市場で146円60銭を付けている。
3日には植田日銀総裁がまずは緩和的な金融環境を維持することが大切と発言したことなどを受けて147円80銭台を付けるなど、円売りの場面も、戻りは鈍く147円40銭台で先週の取引を終えた。
ユーロ円などクロス円もドル円に準じた動き。ユーロ円は週明け29日朝の1ユーロ=175円13銭が先週の高値となり、172円20銭台まで円高が進行。週末にかけて少し戻すも、173円10銭台で先週の取引を終えた。ポンド円は1ポンド=200円43銭を高値に197円40銭台まで売りが出た。
ユーロドルは先週初めの1ユーロ=1.1700ドル前後から1日に1.1779ドルまでユーロ高ドル安となったが、対円でのユーロ売りに押されて2日に1.1683を付けている。
今週の見通し
10月4日に行われた自民党総裁選で、下馬評で有利とされていた小泉農林水産大臣を高市前経済安全保障相が破り、新総裁に選出された。高市氏は以前に利上げに消極的発言を行っていたこと、積極財政志向で財政赤字への警戒が広がることなどを材料に、週明けは一気に円売りが進んでいる。
今週はこの高市新総裁による円安効果がどこまで続くかが注目ポイントの一つとなる。事前のメディア報道が小泉氏がかなり優勢というものになっていた分、サプライズ感もあり、反応が大きくなっている。
ユーロ円が史上最高値を更新するなど、クロス円でも円売りが一気に進む展開。先週まで50%を超えていた10月の日銀金融政策会合での利上げ期待は20%を割り込むところまで低下、年内の利上げ期待は80%を超えていたいが、一時50%を割り込んだ。
こうした状況から円売り圧力が当面続くと見込まれる。ドル円は149円台がしっかりとなり、上を意識する展開か。ユーロ円もこの後175円台で買いがしっかり入ると177円トライの意識となりそう。
もう一つの材料が米連邦政府機関の一部閉鎖がいつまで続くか。米労働省や商務省の統計担当部署(用語説明1)が閉鎖されており、2日の新規失業保険申請件数、3日の米雇用統計などが発表延期となっている。今週の米貿易収支、さらに長引けば来週の米消費者物価指数や生産者物価指数なども発表が延期になる。今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)は開催されるが、メンバーはデータが不足する中での難しい判断を迫られることとなる。また、2018年に35日間の閉鎖となった際には、閉鎖対象となっていなかった航空管制官に欠勤が相次いだことで米国の交通網にも影響が出るなどの展開が見られた。今回の閉鎖も長引けば米経済に大きな悪影響があるとみられ、ドル売りの材料となる。
民主党、共和党ともに強硬姿勢を崩していないが、大きな争点となっている医療費負担適正化法(オバマケア)(用語説明2)の延長については、期限が切れる年末まで時間があり、共和党が提出している11月21日までのつなぎ予算で政府機関を運営しつつの議論が可能なだけに、急転直下の合意がありうる点には注意。合意が発表された瞬間にドル買いとなる可能性がある。
用語の解説
| 米統計担当部署 | 米雇用統計や雇用動態調査などを担当する米労働省労働統計局(BLS)、新規失業保険申請件数を担当する米労働省雇用訓練局(ETA)、米GDPや貿易収支などを担当する米商務省(経済分析局・国勢局)などは、政府機関閉鎖の間、統計データの発表、収集、分析などを休止することを発表している。 |
|---|---|
| 医療費負担適正化法 | 医療費負担適正化法(Affordable Care Act)、通称オバマケアはオバマ大統領の下で2010年3月に成立した連邦法。低所得者への補助により保険加入率を向上させることを目的としている。成立当時国民の6人に1人が保険に未加入という状況となっていた。成立当時副大統領であったバイデン氏が大統領となった2021年1月に制度が拡充されたが、同制度の下での保険料補助について、2025年12月末が期限となっている。 |
今週の注目指標
| NZ中銀政策金利 10月08日10:00 ☆☆☆ | NZ中銀は昨年8月に利下げを開始し、6月まで8会合連続で利下げを実施。7月はいったん据え置きとなったが、前回8月の会合で利下げを再開している。前回の会合では投票結果が0.25%4名に対して、2名が0.5%の大幅利下げを主張。声明でも利下げ姿勢の継続が示された。 そのため、今回も前回に続いての利下げがほぼ確実視されている。利下げ幅については、0.5%と0.25%で見通しが分かれている。短期金利市場動向などをみると、0.25%利下げ見通しが70%程度の織り込みとやや優勢であるが、0.5%利下げ見通しも30%と無視できない割合で見られる。先月18日に発表されたNZ第2四半期GDPは第1四半期の+0.9%から一気に悪化して、前期比-0.9%と予想の-0.3%を超える大きなマイナス成長。前年比も第1四半期の-0.6%から±ゼロまで回復の期待が、-0.6%と弱さが継続しており、大幅利下げとなる可能性が十分にある。0.5%利下げとなった場合、NZドル売りが強まり、対ドルで1NZドル=0.5750ドル割れを試す可能性がありそう。 |
|---|---|
| 米FOMC議事要旨 10月9日03:00 ☆☆☆ | 6会合ぶりに利下げを行った9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が公表される。9月のFOMCではメンバーによる経済見通しも示され、年内2回の利下げがメインシナリオとなった。もっともより慎重な利下げを示すメンバーが19名中9名見られた。連邦政府機関の一部閉鎖などもあって先行き不透明感が広がる中、FOMC内での今後に向けた姿勢が議事要旨でどこまで示されるかが注目される。利下げ姿勢が市場の期待以上に消極的であった場合、ドル高となる可能性がある。ドル円は152円に向けた動きが見込まれる。 |
| 米連邦政府機関の一部閉鎖の動向 10月6日-10日 ☆☆☆ | 米連邦政府機関の一部閉鎖により、先週の米雇用統計などの指標が発表されなかった。今週は米貿易収支などが発表予定となっているが、政府機関の閉鎖が続くと、指標発表も延期される。共和党と民主党のつなぎ予算をめぐる合意がなされない限り、政府機関の閉鎖が続く。1976年の最初の閉鎖以来、20回以上の閉鎖を経験してきたが、80年代以降は短期の閉鎖がほとんどであった。過去最長は前回2018年の35日間。今回は1カ月半ほどのつなぎ予算での協議であり、比較的短期間で合意が形成されるとの見方がある一方、両党の強硬な姿勢から、前回を超える長期の閉鎖となる可能性も指摘されている。閉鎖継続でじりじりとしたドル売りの材料となり、解消で一気のドル買い材料となる。閉鎖が続いた場合、ユーロドルで1.1800ドルを試すようなドル全般の売りがが広がる可能性がある。 |
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