2025年10月14日号
先週の為替相場
ドル円は一時153円台
先週(10月06日-10月10日)のドル円は、円安が大きく進む展開となった。
10月4日に投開票された自由民主党総裁選は事前のメディア報道などで優勢とされていた小泉氏を破って、高市氏が勝利した。同氏の積極財政路線を受けた財政赤字懸念や、金融緩和志向を意識して、週明け6日の市場でドル円は3日の終値1ドル=147円47銭から149円台まで上昇してスタートした。ユーロ円が3日終値1ユーロ=173円19銭から174円台に上昇するなどクロス円でも軒並みの円安スタート。ユーロドルは落ち着いた反応ではあるが3日終値1ユーロ=1.1742ドルから1.1720ドルへユーロ安ドル高スタートと、ドル円の大きな上昇を受けたドル高が優勢となった。
6日の市場でドル円はドル高円安スタート後も勢いが止まらず、9月25日、26日のドル高円安局面で上値を抑えた150円00銭手前の売りをこなし8月1日以来となる150円台を付けた。さらに同日欧州朝にフランスのルコルニュ首相(用語説明1)が退陣を発表。組閣からわずか14時間での退陣発表という事態に、ユーロ売りドル買いが広がった。ユーロドル主導でのドル高が進行し、ドル円でもドル高となった。
高市氏が首相に就任した場合でも年内の日銀の利上げは実施されるとの思惑が広がったことで、いったん149円70銭台までドル売りが入る場面が見られたが、その後再びドル高円安となり、150円台を回復。
その後も高市新総裁の積極財政期待からのドル高円安が継続し、8日には153円00銭前後まで上値を伸ばした。ユーロ円がユーロ発足後の最高値を更新する177円80銭台を付けるなど、クロス円でも軒並みの円安進行となった。
さすがに円安の過熱感も広がっており、ドル円は152円10銭近くまで調整売りが入る場面も、動きは続かず。10日に153円27銭を付けるなど、ドル高円安の流れが金曜日東京朝まで続いたが、同日公明党が連立の離脱を表明。高市新総裁の首相指名選挙への警戒感などもあって、いったん円高となり152円39銭を付けた。その後152円90銭台までドル買い円売りが入り、公明党離脱の影響は限定的なものとなったが、週末を前にしたポジション整理の動きもあって153円台を回復しきれず。少し下げたところに、トランプ大統領が「中国はとても敵対的になりつつある」と発言。追加利上げの可能性も示したことで、ドル売り円買いが一気に強まり151円銭台まで大きく下げて、ほぼ安値圏で先週の取引を終えている。
ユーロ円も175円60銭台と、9日に付けた177円94銭から2円以上ユーロ安円高で先週の取引を終えるなど、先週終盤は円安の調整が優勢となった。
ユーロドルはドル円でのドル高の進行とフランスの政局懸念でのユーロ安から軟調。6日に1.1730ドル台から1.1652ドル台を付けた後、いったん1.1720ドル前後まで反発も、その後はユーロ安が週後半まで優勢となり、9日に1.1540ドル台を付けた。その後、トランプ米大統領の中国に対する発言を受けたユーロ買いドル売りもあり、週末にかけて1.1630ドル前後を付けている。
今週の見通し
トランプ大統領は12日、自身のSNSで「中国については心配いらない、すべてうまくいく」と、10日の中国に対するけん制発言を打ち消すような発言を行った。
これを受けてドル円はドル高円安でスタート。ユーロドルでもドル高が出たが、マクロン大統領が10日夜に6日に辞任したルコルニュ首相を次期首相に再指名すると発表したこともありユーロ売りの動きが抑えられた。
もっとも米中関係の緊張感は継続。中国商務省は韓国の造船大手ハンファオーシャン(用語説明2)の米関連企業5社に対し制裁を科すと発表。米国による通商法301条に基づく中国海事・物流・造船業界に対する調査への対抗措置だとしている。米国側からの反発が予想される状況となっており、世界的にリスク警戒感が強まる状況となっている。
米連邦政府機関の閉鎖が続いており、本来であれば今週予定されていた米生産者物価指数・小売売上高などの指標の発表は延期される見込み。また16日発表予定であった消費者物価指数に関しては、担当する米労働省労働統計局(BLS)が閉鎖中であっても発表を行う対応を示したが、発表日は当初の予定日から24日に延期されている。
連邦政府機関の閉鎖については予算協議が難航しており、先行き不透明感が続く。自宅待機中の職員に対する解雇も始まっており、社会不安が広がる可能性が意識される。
来週にも予定される日本の首相指名選挙の動向も注目が集まるところ。結局高市氏が指名されるとの思惑が広がると円売りになる可能性があるが、状況が不透明で対応が難しい。
政治相場は状況の変化によって相場の流れが一変するだけに難しいところ。ドル円に関しては、先々週末の147円台前半から先週後半に153円台まで上昇したこともあって、いったん調整が入りやすい。やや上値の重い展開が見込まれる。152円台前半が重くなると、週後半にかけて150円00銭が意識される展開となる可能性。
用語の解説
| ルコルニュ首相 | セバスティアン・ルコルニュ(Sébastien Lecornu)はフランスの政治家。パンテオン=アサス大学で修士号を取得、ヴェルノン市長、ウール県議会議員を経て、2017年ユロ国務大臣付政務官、2018年に地方自治体担当大臣、2020年に海外領土大臣、2022年に軍務大臣などを務め、2025年9月10日にマクロン大統領より首相に指名された。首相任命から1カ月近くたった10月5日に新内閣の組閣案を発表したが、9月9日に辞任したバイル政権の重要閣僚を受け継ぐものとして批判が強まり、10月6日、組閣発表からわずか14時間後に辞任した。マクロン大統領は10日に入ってルコルニュ首相を再度指名。12日に新内閣を発表した。 |
|---|---|
| ハンファオーシャン | 韓国の造船会社大手。韓国造船ビッグ3の一角。旧大宇造船海洋。大宇財閥解体後、最大株主の韓国産業銀行が主導し売却を計画。売却最有力候補であった現代重工業との売却計画は独禁法の問題などもあって計画がとん挫し、2022年に韓国の火薬メーカーハンファグループへの売却で合意、2023年に売却が完了し、社名がハンファオーシャンに変更された。 |
今週の注目指標
| パウエル米FRB議長講演 10月15日01:20 ☆☆☆ | パウエル米FRB議長が全米企業エコノミスト協会(NABE)年次総会で講演を行う。テーマは経済見通しと金融政策。同総会で講演は定例となっており、比較的しっかりと姿勢を示すことから注目を集めている。昨年の講演では、経済が概ね予想通り進めば、金融政策はより中立的になると、年明けから5会合続いた政策金利据え置きを示唆した。米政府機関一部閉鎖などを受けて、米経済への悪影響が警戒される中、市場は年内あと2回のFOMCでの利下げの実施をほぼ完全に織り込み、来年1月のFOMCでも利下げを行うとの見方が半分程度まで上昇してきている。こうした市場の利下げへの期待に対して、議長がどのような姿勢を示すかがポイントとなる。利下げに少し慎重な姿勢を示すとドル高となる、ドル円は152円台後半に向けた動きが見込まれる。 |
|---|---|
| 米地区連銀経済報告 10月16日03:00 ☆☆☆ | 今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の重要な資料となる米地区連銀経済報告(ベージュブック)が公表される。前回は大半の地区で経済活動がほぼ変わらずとなった。物価はすべての地区で上昇。雇用は12地区中11地区がほぼ変わらず、1地区が緩やかに減少となり、ここにきて厳しさが目立つ雇用については比較的落ち着いた報告となっていた。今回の報告で雇用の厳しい状況が示されるようだと、FOMCでの利下げに向けた動きが強まると期待され、ドル売りにつながる。ドル円は150円台に向けた動きが期待される。 |
| 田村日銀審議委員講演 10月16日10:30 ☆☆☆ | 利上げに積極的なタカ派として知られる日本銀行の田村審議委員が沖縄の金融懇談会で講演と記者会見を行う。今月初め時点では68%となっていた今月の日銀金融政策決定会合での利上げ期待は、自民党新総裁に高市氏が選出されたことで後退。直近10%を割り込んでいる。ほぼ織り込む形となっていた年内利上げの期待も50%を下回っている。こうした状況に対して、利上げに積極的な田村委員がどのような姿勢を示すかが注目される。タカ派の同氏が利上げにやや慎重な姿勢を見せるようだと円売りになる。ドル円は153円を意識する展開が見込まれる。 |
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