2025年10月20日号

(2025年10月13日~2025年10月17日)

先週の為替相場

ドル安円高優勢も、週末にかけ反発

 先週(10月13日-10月17日)のドル円は、ドル安円高が優勢となった。

 10月10日に付けた1ドル=153円27銭を高値にドル安円高となり、17日に149円38銭を付けた。4日の自民党総裁選で高市氏が勝利したことを受けて、同氏の積極財政路線や利上げに慎重な姿勢からのドル高円安が10日の153円27銭までの上昇につながったが、公明党の連立離脱表明などを受けて首相指名が不確実となったことなどが調整を誘った。また、米中関係の悪化懸念もドル安に繋がり、7日で3円89銭という大きなドル安円高となった。

 スポーツの日の祝日で東京市場が休場となった13日は、10日海外市場での急激なドル安円高に対する調整の動きで始まった。中国のレアアース輸出規制強化を受けて、トランプ大統領が関税強化を示したことなどから、10日朝の153円27銭から151円17銭まで下げ、ほぼ安値圏で先々週の取引を終えていた。10日米国夜にトランプ大統領が対中関税猶予の可能性を示すなど、態度が軟化したことが週明け月曜日のドル買い円売りに繋がった。14日東京朝まで流れが続き、152円61銭と、先週の高値を付けている。

 その後は一転してドル安円高となった。日本の首相指名選挙に向けた不透明感が円買いを誘ったほか、中国商務省が米通商代表部(USTR)の調査強化方針に対抗して、韓国の造船大手ハンファオーシャンの米国子会社に対する制裁を発表するなど、米中の対立が強まったことなどがドル安円高につながった。週後半まで流れが続き17日に先週の安値149円38銭を付けている。

 安値を付けたあとは、週末を前に反発を見せ、150円60銭台まで上昇して先週の取引を終えた。日本維新の会が自民党との連携方針を示し、高市氏の首相就任の可能性が高まったこと、米中関係について、トランプ大統領などから楽観的な発言が見られ、米中会談も実施される見通しが広がったことなどがドル円の反発につながった。

 ユーロドルは10月に入ってドル高の動きに加え、フランスの政局混乱への警戒もあって売りが続き、9日に1ユーロ=1.1542ドルを付けた後、いったん買い戻され、先週初めは1.1630ドルを付けた。その後、ドル円の反発にも見られるドル高の流れに14日に1.1543ドルと9日の安値に迫る動きとなった。

 その後、ドル円などでドル売りが進むと、ユーロドルも週後半にかけてユーロ高ドル安となり、17日に1.1728ドルまで上昇。その後はドル円の反発などを受けて終盤にかけて1.1651ドルを付けた。

 ユーロ円はドル円の反発に10日の1ユーロ=175円67銭から13日東京午前に176円91銭まで上昇。その後ユーロドルでのユーロ売りが出たことで、高値から少し下げると、週後半まで176円00銭を挟んでの推移が続いた。金曜日にドル円が149円台前半までの下げた局面で174円82銭まで売りが出たが、その後ドル円が反発したことで、175円台半ば超えを付けている。

今週の見通し

 日本の首相指名選挙が21日行われ、高市自民党総裁が首相に就任する見通しが強まっている。同氏の積極財政路線を受けた財政赤字の拡大懸念や日本株への追い風からのリスク選好の円売り、利上げに否定的な姿勢からの円売りなどが、ドル円の支えとなるとみられる。

 日本維新の会が自民党との連立で合意したことで、一時やや不透明となっていた高市氏の首相就任に向けた流れが強まった。もっとも、維新の会が連立に前向き姿勢を見せた先週の段階である程度想定された状況であり、ここからの円売りがどこまで進むかは微妙なところとなっている。

 米中関係については、韓国でAPEC(用語説明1)が開幕する10月31日に、首脳会談が行われることが発表されており、前向きな進展が期待されている。レアアース輸出規制の問題など、解決すべき問題がまだ残っているが、対立姿勢後退に向けた期待感がドル円を支えている。

 もっとも10月1日からの米連邦政府機関の一部閉鎖が継続。解決に向けた進展が見られない状況となっている。米経済にとってはかなりの痛手であり、ドルの上値を抑える材料となっている。

 連邦政府機関の一部閉鎖を受けて多くの米指標の発表が延期となっているが、そうした中、米労働省労働統計局(BLS)(用語説明2)は24日に9月の米消費者物価指数(CPI)の発表を決めた。BLSも基本的に閉鎖中であるが、一部職員を呼び戻して発表の準備に入ることが示されている。28日、29日の米連邦公開市場委員会の重要な参考資料となるだけに、注目を集めるところとなっている。

 今月及び12月のFOMCでの0.25%利下げはほぼ織り込み済み。今回のCPIの結果が予想から相当大きな乖離を見せない限り、その見方に変化はないとみられる。ただ、来年1月のFOMCについては利下げと据え置きも見方が拮抗している状況。CPI次第で来年に入っても利下げが続くとの見方が強まると、ドル売りとなる可能性がある。若干上値の重い展開が続く中、週後半にかけて先週の安値を試す展開を見込んでいる。

 ユーロドルはドル安の流れ継続でしっかりか。1.1600ドル割れではユーロ買いドル売りが出てくると見込んでいる。

 ユーロ円はドル円同様に上値が重い展開か。基本的には176円ちょうどを挟んでのレンジ取引と見ているが、ドル円の流れ次第で145円割れトライもありそう。

用語の解説

APEC APEC:アジア太平洋経済協力会議はアジア太平洋の経済協力を目的とした経済協力の枠組み。日本、アメリカ、中国、ロシア、韓国など21か国・地域が参加している。毎年秋に首脳会議を同年の議長国が開催する。今年は10月31日・11月1日の日程で韓国慶州で首脳会議が行われる。
労働省労働統計局 労働省労働統計局(BLS:Bureau of Labor Statistics)は労働省の一機関で、労働市場の動向や価格変動などの調査・集計を行っている。米雇用統計、米雇用動態調査、米消費者物価指数、米生産者物価指数、米輸出・輸入物価指数などの指標を担当している(雇用関連の指標では新規失業保険申請件数に関しては労働訓練局の担当)。連邦政府機関の一部閉鎖を受けて1日から基本的に閉鎖しているが、9月の消費者物価指数に関しては、一部職員を呼び戻して24日に発表すると公表した。

今週の注目指標

日本首相指名選挙
10月21日
☆☆☆
 退陣した石破首相の後任を決める首相指名選挙が、臨時国会が収集される21日に実際される。4日の自民党総裁選で勝利し、総裁に就任した高市氏が、日本維新の会などの協力を得て、首相に指名される可能性が高い。自民党は高市総裁が首相に指名された場合、24日に所信表明演説を行うとしている。従来からの積極財政の方針や、利上げに慎重な姿勢などが所信表明演説でも印象付けられると、円売りになる可能性がある。ドル円は152円に向けた動きが期待される。
日本全国消費者物価指数(CPI)(9月) 10月24日08:30
☆☆
 29日、30日の日銀金融政策決定会合を前に、利上げのカギを握る重要な材料となる9月の全国消費者物価指数が24日に発表される。前哨戦となる9月の東京都区部消費者物価指数が先月26日に発表され、生鮮食料品を除くコアの前年比は+2.5%と予想の+2.8%を下回り、8月と同水準となった。ただ、これは東京都の打ち出した第1子保育料無償化などの影響と見られる。全国消費者物価指数の生鮮除くコア前年比は5月の+3.7%から6月の+3.3%、7月の+3.1%と鈍化し、8月は+2.7%まで大きく鈍化した。ただ、これはコメ価格の伸び悩みなどの影響が指摘されており、今回は+2.8%と少し持ち直す見込み。予想通り小幅な反発であれば日銀の利上げのハードルになるとは考えられていないが、植田総裁の慎重姿勢、利上げに慎重な高市氏が首相就任濃厚であることなどから、今月の会合での利上げについては見方が分かれている。予想を上回る反発を見せると、利上げの期待が広がり円買いとなる可能性がある。ドル円は149円台に向けた動きが見込まれる。
米消費者物価指数(CPI)(9月)
10月24日21:30
☆☆☆
 9月の米消費者物価指数(CPI)が従来の発表予定日15日からは遅れるものの24日に発表される。
 8月の米CPIは前年比+2.9%と8月の+2.7%から伸びが加速。市場予想とは一致した。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコアCPIは前年比+3.1%と7月と同水準、市場予想とも一致している。内訳をみると、エネルギーが伸びており、総合の伸びにつながった。AIの利用が広がったことで電力消費量が伸びていることや、7月に成立した大きく美しい一つの法案(OBBB法)により、クリーンエネルギーの導入における税額控除などが撤廃され、コストが増加したことなどから電気料金が上昇している。食品とエネルギーを除いたコア項目は財部門の伸びが前年比+1.5%となり、7月の+1.2%から伸びた。同項目は3月の-0.1%から5カ月連続で伸びが加速している。自動車関連の伸びが特に目立っており、関税の影響が意識されている。コアサービスは5カ月連続となる+3.6%となった。CPI全体を100としたとき36.2%を占める最大の項目である住居費が5カ月連続で鈍化しており、サービス部門の伸びを抑えている。その他の項目は航空運賃が7月の+0.7%から+3.3%まで大きく伸びるなど、一部の項目で伸びが目立ったが、医療サービスの伸び鈍化なども見られまちまちという印象を与えた。
 今回の市場予想は、前月比が総合、コア共に8月と同水準の伸び、前年比は総合が+3.1%と8月の+2.9%から伸びが加速、コアは+3.1%で8月と同水準と見込まれている。昨年は8月から9月にかけてエネルギー価格の大きな下落が生じており、今回のエネルギー価格の前年比が強く出るとみられる。ただ、その他は総じて8月並みとの見通しとなっている。
 今月及び12月の米FOMCでの0.25%利下げはほぼ完全に織り込まれており、今回のCPIがある程度ブレたとしても状況に変化はないとみられる。ただ、来年1月のFOMCについては、利下げと据え置きで見通しがほぼ拮抗している。予想を下回る伸びに留まると、来年に入っても利下げが続くとの期待に繋がり、ドル売りが見込まれる。ドル円は150円をターゲットした動きが期待される。

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