2025年10月27日号

(2025年10月20日~2025年10月24日)

先週の為替相場

ドル高円安が優勢

 先週(10月20日-10月24日)のドル円は、ドル高円安が優勢となった。高市新首相による積極財政期待などがドル円を押し上げた。

 週明け20日の市場でドル円は1ドル=151円20銭を付けた。自由民主党と日本維新の会の連立により21日の首相指名選挙での高市氏の新首相就任がほぼ確実になったことを受けて、高市政権による積極財政を期待する動きがドル高円安につながった。高値を付けた後は、行き過ぎた動きへの警戒感や、同日の高田日銀審議委員(用語説明1)による利上げに前向きな発言を受けて、少しドル売り円買いが入った。さらに来週の日銀金融政策決定会合で公表される経済・物価情勢の展望(展望レポート)で経済成長見通しが上方修正されるとの見通しが広がったことで、150円台前半をつけた。

 21日に入っても150円台を中心とした推移。同日午後の高市新首相の誕生を受けて、やや円売りも値幅は限定的。その後円高志向とされる片山さつき氏(用語説明2)が財務相に就任との報道で円買いが入る場面も、こちらも値動きは限定的に留まった。その後、ハセット米国家経済会議(NEC)議長が週末にも連邦議会閉鎖が解除される見込みとの前向き発言などでドル高が強まり、一時152円10銭台まで上昇。日銀の10月会合での利上げ見送り見通しなども円売りにつながった。

 もっとも行き過ぎた動きへの警戒もあり、その後23日まで152円台では売り、151円台半ば前後で買いという展開。23日に入って152円台にしっかり乗せると、ストップロス注文などを巻き込んで上昇。週末にかけてもしっかりした動きが継続し、24日海外市場で153円06銭まで一時上昇した。

 ユーロ円などクロス円もドル円の上昇を支えにしっかりした動きとなった。ユーロ円は先々週末17日に付けた1ユーロ=174円82銭からの上昇が続き、週明け20日東京午前にドル円が151円台を付ける局面で176円37銭を付けた。その後、ドル円の高値からの調整や17日に格付け会社S&Pグローバル・レーティングがフランスのソブリン格付けを引き下げたことへの警戒感などがユーロ売り円買いを誘い、175円25銭を付けた。

 その後高市新首相誕生を受けた円売りなどに176円60銭台まで一時上昇。176円00銭を挟んでの推移を経て、週後半にかけてユーロ高円安が強まり、177円80銭台まで上値を伸ばした。22日の9月英消費者物価指数(PI)が予想を下回る伸びに留まったことで、ポンド売りが出る場面が見られたが、ユーロ売りの影響は限定的。ECBの当面の金利据え置き見込みもあり、ユーロポンドでのユーロ買いポンド売りとなっていた。

 ユーロドルはドル高傾向もあり、上値の重い展開も、下押しにも慎重。22日の英CPIを受けてのポンドドルの下げに連れてのユーロ売りは1ユーロ=1.1570ドル台に留まり、その後1.16台を回復、23日も1.1585ドルまで下げたが、すぐに1.16台に戻し、24日のドル高局面では1.1601ドルまでと、下がると買いが出る展開が見られた。

今週の見通し

 ドル高円安基調が警戒される。今週は日、米、欧の金融政策会合が予定されており、その結果次第という面があるが、流れは上方向。注目された24日の米消費者物価指数(CPI)が予想を下回る伸びに留まったが、ドル売りは限定的で、その日のうちに戻すなど、地合いの強さが印象的となっている。

 米FOMCは利下げがほぼ完全に織り込まれており、利下げ実施でもドル売りの材料とはなりにくい。12月FOMCでの利下げもほぼ確定的となっており、それらを織り込んだ上でのドル高ということで、ドル売りが入りにくくなっている。

 ただ、解決が見えない連邦政府機関の一部閉鎖が警戒材料。航空管制官の不足などが深刻化してきており、ダフィー米運輸長官は25日に22件の航空管制官不足が生じたと明らかにした。今後管制官不足が続くことで航空便の欠航や遅延が生じるとみられており、米経済への悪影響が警戒される。

 こうした状況からドル円は上昇基調を意識も、動き自体は慎重なものとなりそう。中期的なターゲットである155円00銭トライまでは少し時間がかかりそう。下方向は152円00銭から152円20銭にかけての水準がサポートとなりそう。

 ユーロ円もドル円の上昇を受けてしっかりの動きが見込まれる。177円00銭から177円30銭にかけてがサポートとして意識される。

 ユーロドルは上値が重いものの、1.15台でのユーロ売りに慎重。流れは下方向も値幅は限定的となりそう。

 

用語の解説

高田日銀審議委員 高田創日本銀行政策委員会審議委員。東京大学経済学部卒業後日本興業銀行に入行。オックスフォード大学修士課程修了。みずほ証券執行役員やみずほ総合研究所副理事長などを経て、令和4年7月より現職。5会合連続で政策金利を据え置いた9月の日銀金融政策決定会合で、田村委員と共に0.25%の利上げを主張して据え置きの議長提案に反対に回るなど、田村委員と並んで利上げに積極的なタカ派委員として知られている。
片山さつき氏 片山さつき財務大臣。東京大学法学部卒、大蔵省に入省。フランス国立行政学院修了。女性初となる主計局主計官に就任などののち、2005年に退官。同年の衆議院選挙に当選。2009年の衆議院選挙で敗北。2010年の参議院選挙比例区で当選、現在3期目。内閣府特命担当大臣(地方創生、規制改革、男女共同参画)及び女性活躍担当大臣などを歴任。高市政権で財務大臣及び内閣府特命担当大臣(金融担当)に就任した。2024年4月に「過度な円安は消費を圧迫する要因であり、消費下支え策を検討すべきだ」、2025年3月に「物価高を落ち着かせるためには円高が望ましい」などと発言しており、市場では円高志向が強いのではとの見方がある。

今週の注目指標

米連邦公開市場委員会(FOMC)
10月30日03:00
☆☆☆
 28日、29日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。米連邦準備制度理事会(FRB)は9月のFOMCで市場予想通り6会合ぶりの利下げに踏み切った。9月FOMCでの声明では雇用の増加ペースが減速、失業率はまだ低い段階も、小幅に上昇、物価の安定と雇用の最大化のうち、雇用に対する下振れリスクが高まっていると判断など、雇用に対する警戒感を強く示していた。10月1日からの連邦政府機関閉鎖を受けて、本来10月3日に発表される9月の米雇用統計の発表が延期になるなど、雇用の最新データが不透明となっている。今月15日に公表された米地区連銀経済報告(ベージュブック)では、経済活動にほとんど変化がないと示され、雇用については概ね安定と評価も、多くの地域でレイオフや自然減などにより人員を削減したと報告した雇用主が増加したと示されるなど、雇用市場の厳しい状況が継続しているとみられている。そうした中で、今回の連続利下げを織り込む動きが広がっている。
 米金利先物市場の動きから市場の政策金利見通しを示すCMEFedWatchツールでは、今回のFOMCでの利下げを98.9%とほぼ完全に織り込んでいる。12月の3会合連続利下げも91.8%の織り込みとなっている。来年1月のFOMCでの4会合連続利下げについては、据え置きと利下げで見方が拮抗している。今回のFOMCでの声明などで、米政府機関閉鎖で正確なデータが不足する中でも、利下げを実施していく姿勢が強調されると1月の利下げ期待が強まり、ドル売りにつながる可能性がある。ドル円は151円台に向けた動きが期待される。
日銀金融政策決定会合 10月30日昼前後
☆☆☆
 29日、30日に日銀金融政策決定会合が開催される。結果は会合終了後で時刻未定。11時から13時の間になることがほとんど。24日の9月全国消費者物価指数(CPI)生鮮除くコアは前年比+2.9%とインフレターゲットである+2.0%を大きく超えて上昇する展開となった。ただ、植田日銀総裁は基調的物価はまだ2%から遠いと、慎重な姿勢を崩していない。そうした中、前回9月の日銀会合では、田村審議委員と高田審議委員の両名が利上げを主張して反対するなど、日銀の中でも物価上昇を警戒する動きが広がっている。前回の会合直後は10月の利上げを期待する動きが見られ、9月末時点の短期金利市場での利上げの織り込みは68%と据え置き見通し32%を大きく上回っていた。しかし、以前の発言で日銀の利上げに消極的な表現が見られた高市氏が首相に就任したことなどから利上げ期待が後退。直近では90%超が据え置きを見込む状況となっている。
 市場の注目は投票の内訳と、声明及び総裁会見での今後に向けたヒント、さらに今回発表される回に当たっている経済・物価情勢の展望(展望レポート)となっている。今回は据え置きが濃厚も、12月までの利上げについては据え置きと見方がほぼ拮抗している。前回の2名以外に利上げを主張するメンバーが出た場合や、展望レポートで物価見通しの引き上げがあった場合などは、利上げ期待が強まり、円買いとなる可能性がある。その場合、ドル円は150円台に向けた動きが期待される。
ECB理事会
10月30日22:15
☆☆☆
 日銀同様に29日、30日にECB理事会が開催される。今回の理事会では据え置きがほぼ完全に織り込まれている。昨年6月に利下げを開始したECB。昨年7月の据え置きを挟んで、今年6月まで7会合連続、計8会合で利下げを実施し、ECBの主要3金利のうち、市中金利に最も近い預金ファシリティ金利は4.00%から2.00%となった。その後7月、9月と2会合連続で政策金利を据え置いている。ラガルド総裁はデータを基に会合毎に政策を決定していく方針を繰り返し示しているが、現状の経済やインフレ見通しリスクが概ね均衡とも発言しており、当面の据え置きを示唆している。来年に入っても据え置きが続く可能性が高いとみられており、ECBの利下げサイクルは打ち止めになったとみる参加者も出ている。ラガルド総裁の会見などで、利下げ打ち止め感が強まると、ユーロ高が期待される。ユーロドルは1.1700に向けた動きが期待される。

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