2025年11月04日号
先週の為替相場
ドル高円安が優勢
先週(10月27日-31日)はドル高円安が進行した。米連邦公開市場委員会(FOMC)と日銀金融政策決定会合を経て日米金利差縮小の期待が後退。円キャリー取引(用語説明1)の拡大などによるドル買い円売りが広がった。
先々週までのドル高円安の流れが継続したことや30日の米中首脳会合への期待などから、週明け1ドル=153円26銭と10月10日の高値153円27銭に迫った。その後は利益確定売りに押された。日米欧の金融政策会合を前にポジション整理が先行した。
28日の日米首脳会合は無難に終了。同日の日米財務相会合でベッセント財務長官が「為替の過度な変動を防ぐ上で健全な金融政策策定とコミュニケーションが重要」など述べたことが円安けん制と受け止められて151円76銭までドル安円高となった。しかし、片山財務相が「米財務長官は、利上げを促す発言ではなかった」と発言すると、ドルは152円30銭台まで値を戻した。
29日にはベッセント財務長官が「日銀に政策余地を与える」と発言したことで再び円買いとなり、151円54銭を付けた。もっとも同日のFOMC結果発表を前に少し戻すと、FOMC後にドル高が進んだ。米FOMCでは市場予想通り、政策金利の0.25%引き下げが決まった。パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で「12月の利下げは確定した結論には程遠い」と述べるとと、12月の利下げ見通しが会見前の90%台から60%台まで低下する中、ドル高となった。
30日の日銀金融政策決定会合は市場予想通り政策金利を据え置いた。利上げを主張する委員が9月会合の2人(高田、田村の各委員)から増加するとの見方があったものの、9月同様に利上げ派は高田氏ら2人にとどまり、円売りを誘った。経済・物価情勢の展望(展望レポート)(用語説明2)で2025年物価見通しの中央値が7月レポートと同水準だったことも円売り材料となった。会合後の記者会見で植田総裁から早期利上げへの言及がなく、12月の利上げ観測が後退。米国の利下げと日本の利上げの見通しがともに後退してドル買い円売りにつながり、154円45銭前後まで上値を伸ばした。
31日には片山財務相が為替について「足元で一方的、急激な動きがみられる」と発言したことで、円買いが強まり、一時153円64銭を付けた。ただ日米金利差の縮小観測の後退による円キャリー取引拡大がドル円を支え、ロンドン市場午前に154円41銭まで上昇。154円00銭前後で先週の取引を終えた。
ユーロ円もドル円同様に先週初10月27日に先々週の高値を超える1ユーロ=178円00銭台を付けた後は利益確定売りに押された。日銀会合やECB理事会前のポジション調整もあって、29日には176円64銭まで売られた。日銀会合後は円売りが強まって178円82銭と史上最高値を更新。ECB理事会は市場予想通り政策金利を据え置き、ラガルドECB総裁の記者会見も目立ったものがなく、市場の反応は限定的だった。週末にかけてはポジション調整などに押された。
ユーロドルは1ユーロ=1.1660ドルを挟んだ推移から、米FOMC後のドル高に1.1570ドル台まで売られた。その後1.1630ドル台まで回復したが、ドル買いの勢いは強く、週末にかけて1.1520ドル台までユーロ安ドル高となった。
今週の見通し
日米金融政策会合を経て、円キャリー取引の拡大が見込まれ、ドル高円安の流れがもう一段強まるとの観測が広がっている。ただ、行き過ぎた動きには為替介入が入るとの警戒感があり、上値追いにも慎重。心理的な節目となる155円を前に少し神経質な動きとなっている。
今週に最長記録更新が予想される米連邦政府機関の一部閉鎖による悪影響などもドル買いをためらわせる材料だ。ただ。日米金利差を意識したドル買いの勢いは強く、下がるとドル買いが入る。リスクはドル高円安方向とみられる。
ユーロは目立った材料がなく、ポンドの動きなどを警戒する展開か。ポンドは今週の英中銀金融政策会合が注目されている。財政赤字への警戒感などからポンド売りが出やすい地合いにあって利下げを主張する委員が増えればポンド売りドル買いが加速し、ユーロ安ドル高にもつながる可能性がある。8月1日に付けた1ユーロ=1.1391ドルがターゲットとなる。
用語の解説
| 円キャリー取引 | キャリー取引とは金利の低い通貨で資金を調達して金利の高い通貨に投資する取引のこと。主要通貨でスイスに次いで金利が低く、流動性も高い日本円を調達し、高金利通貨で運用する取引を円キャリー取引という。米国の利下げと日本の利上げの見通しがともに後退したことで、現状の金利差が当面維持されるとの見方につながり、金利差を狙った取引が活発になりやすい状況となっている。 |
|---|---|
| 経済・物価情勢の展望(展望レポート) | 日本銀行が年4回(通常1、4、7、10月)の金融政策決定会合の結果とともに、先行きの経済・物価の見通しや上振れ・下振れの要因を分析して公表するレポート。 |
今週の注目指標
| 米連邦政府機関閉鎖歴代最長 11月05日 ☆☆☆ | 米国の2026年会計年度の予算が議会で合意されず、10月1日に始まった米連邦政府機関の一部閉鎖は11月5日で36日目と、過去最長だった2018年の35日間を上回る。米経済への悪影響が警戒されていることに加え、各種経済指標の発表が延期されていることで、米経済状況の不透明感が広がっている。2018年の35日間の閉鎖時は対応マニュアルが今回と違うこともあって雇用統計などの重要指標の発表は継続されていた。その分、今回の方が金融市場への影響が大きいようだ。今回の閉鎖では1万3000人超の航空管制官と約5万人の米運輸保安局(TSA)職員が無給で勤務している。前回の長期閉鎖でも見られた欠勤の拡大により、航空便への支障から米経済への打撃が大きくなる。ただ、こうした状況にあってもドルは比較的しっかりした動きとなっており、今後予算が成立して政府機関閉鎖が解除されると、ドル買いが加速する可能性がある。 |
|---|---|
| ADP雇用者数(10月) 11月05日22:15 ☆☆☆ | 米連邦政府機関閉鎖を受けて米雇用統計などの発表が延期される中、民間の雇用関連指標が注目されている。米給与計算代行大手ADP傘下のADPリサーチ・インスティテュートによるADP雇用者数は、米民間雇用の約20%をカバーし、調査対象がかなり広いこともあって、特に注目度が高い。 前回9月のADPは前月比-3.2万人と市場予想の+5.2万人を大きく下回った。8月の数字も速報時の+5.4万人から-0.3万人とマイナス圏に沈んだ。この弱い数字は米政府機関閉鎖により米労働省労働統計局(BLS)の四半期雇用・賃金調査(QCEW)のデータの欠損などが影響していたとされた。ただ、特殊事情を除いても雇用の失速が生じているとADPは発表している。 今回は+2.5万人とプラス圏回復が予想されるが、増加幅はかなり小さい。予想に反して今回もマイナス圏に沈むと、雇用悪化観測がさらに強まり、先週のパウエル発言で後退した12月FOMCでの利下げ期待が再燃する形でドル売りとなりそう。ドル円は152円台に向けた動きが予想される。 |
| 英中銀政策金利 11月6日21:00 ☆☆☆ | 6日の英中銀金融政策会合は据え置き見通しが大勢だが、一部で利下げ見通しも出ている。短期金利市場では73%が政策金利の据え置きを見込み、27%が利下げを見込んでいる。専門家予想でも据え置き見通しが大勢だが、米大手投資銀行ゴールドマンサックスが顧客向けレポートで0.25%利下げの見通しを示しており、警戒感が漂う。 10月22日発表された9月の英物価統計で、インフレ目標の対象となる消費者物価指数(CPI)前年比が8月と同水準の+3.8%と市場予想の+4.0%を下回り、物価上昇への警戒感が一服したことが材料視されている。英財政赤字懸念などもって、英経済の先行き見通しがやや不安定との印象を与える中、物価上昇が落ち着いてきたとのデータが利下げ期待につながった。 とはいえ据え置き見通しの方がかなり強く、実際に利下げが決まればポンド売りが進むとみられ、1ポンド=200円00銭がターゲットとなりそう。金利据え置きの場合でも、投票の内訳次第ではポンド安が予想される。 英中銀金融政策会合は今年に入って全会一致の決定が一度もない。前回は7対2で2人が0.25%利下げを主張した。超ハト派として知られるディングラ、テイラーの両委員が利下げを主張した。今回の会合で据え置きが多数派となったとしても、利下げ意見が増えれば次回以降の利下げ観測が広がり、1ポンド=201円台のポンド安円高が予想される。 |
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