2025年11月10日号
先週の為替相場
ドル円はドル高円安継続も一時調整入る
先週(11月03日-07日)は、週の前半は10月30日から続きドル高円安の流れが継続も、その後ドル買いと円買いが交錯する展開となった。
28日、29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を受けた米追加利下げ期待の後退と、29日、30日の日銀金融政策決定会合を受けた早期利上げ期待の後退により、日米金利差縮小期待が後退。円キャリー取引拡大からのドル高円安となり4日朝に1ドル=154円48銭を付けた。154円50銭を付けきれなかったことや、片山財務相の為替相場についての「一方的で急激な動き」との発言を受けて上値を抑えられると、日経平均の大幅安を受けたリスク警戒の円買いも入ってドル売り円買いとなった。
4日は欧州株、米株共に下げており、海外市場でも円買いが継続。4日に米国株式市場でIT/ハイテク株の下げが目立ったことを嫌気して、5日の日経平均が一時2400円超の下げとなる中で、ドル円は152円96銭を付けている。東京株式市場は午後に入って下げ幅を縮小。それに伴って円買いも一服し、153円台後半までドル高円安となった。さらに同日の米ISM非製造業景気指数が予想を大きく上回り、8カ月ぶりの高水準となったことでドル高が進み、154円36銭まで上昇。
その後利益確定のドル売りなどに少し下げると、6日の米チャレンジャー企業人員削減数(用語説明1)が10月としては過去20年で最多となったことなどを嫌気し、152円80銭台までドル安となった。もっとも行き過ぎた動きには警戒感があり、7日の市場で153円50銭台を付けるなど、一方向の動きにはならなかった。
ユーロ円は4日の片山財務相の円安けん制発言などもあって週前半はユーロ安円高となった。株安を受けたリスク警戒の円買いも出ていた。30日に付けた1ユーロ=178円85銭からの下げが続く形で、5日東京午前に175円71銭を付けている。その後は米ISM非製造業景気指数の好結果を受けたリスク選好の円売りなどに反発。週末にかけてのドル円の安値からの上昇もあって、7日に177円61銭を付けている。
ユーロドルは米利下げ期待後退を受けたドル高などが重石となって先々週からのユーロ安ドル高トレンドが、先週半ばまで継続。5日に1ユーロ=1.1469ドルを付けた。その後は行き過ぎた動きへの警戒感や、6日の米指標を受けたドル安などを支えに7日に1.1591ドルを付けている。
今週の見通し
10月1日に始まり、先週過去最長を更新した米連邦政府機関閉鎖について、米共和党上院議員のリーダーであるスーン上院多数党院内総務が民主党の一部グループの賛同を取り付け、1月30日までのつなぎ予算合意の目途が立ったことを発表。10日昼(米東備時間9日夜)にはつなぎ予算合意に向けた重要な動議について賛成60、反対40で可決した。
現地時間10日午前11時(日本時間11日午前1時)に再開される上院でつなぎ予算の採決で合意し、本日にも収集がかかっている下院でも通過、大統領の署名を経て成立すると、政府機関閉鎖が解除されることとなる。
ただ、上院での通過はぎりぎり(上院は議員にフィリバスターと呼ばれる議事妨害の権利があるため、過半数では法案が通過せず、フィリバスターを早期に終了させるための60名が必要となる)。1名でも異議を唱える議員が出ると、審議遅延などが生じる可能性があるため、まだ予断を許さない状況。ランド・ポール上院議員(用語説明2)などが予算案の一部に不満を述べているなどの報道もあり、状況を見極める必要がある。
連邦政府機関閉鎖が解除されるとドル買い要因となるが、ドル円は節目の155円手前のドル売りが意識されており、動きは慎重なものとなりそう。政府機関閉鎖解除に伴う経済指標発表の再開についても、スケジュールなどがどうなるのかが不透明。2018年12月から2019年1月の22日間の閉鎖に際しては2019年1月8日に発表予定であった2018年11月の貿易収支の発表は、1月22日政府機関再開後もすぐには決まらず、本来2018年12月分の発表予定日であった2019年2月6日に発表された。その後同年5月に発表された3月の貿易収支発表まで、スケジュールは通常から遅れた。この時は雇用統計や消費者物価指数などを発表する労働省が閉鎖対象から外れていたため、影響が抑えられたが、今回は閉鎖されていることもあり、影響がまだ続くと見込まれる。
円キャリー取引の拡大期待もあり、こうした不透明感の下でもドル円は上昇トレンドが期待される。ただ、かなり神経質な動きになりそうで、上下の振幅を交えながらの展開が見込まれる。155円を超えると財務省によるドル売り介入も警戒する必要があり、上値追いは慎重なものとなりそう。
ユーロ円などクロス円も基本的にはしっかりとなりそうだが、ドル円同様に不安定な上下動を交えながらの展開が見込まれる。
ユーロドルは1.15ドル台を中心に方向性を見極める展開が予想される。
用語の解説
| チャレンジャー企業人員削減数 | 米民間再就職支援会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社が企業の人員削減数を調査して発表する指標。2025年10月の削減数は15万3074人と、前年同月の約3倍まで膨れ上がった。IT/ハイテク企業と倉庫業などが中心となっていた。 |
|---|---|
| ランド・ポール上院議員 | ケンタッキー州選出の上院議員(共和党)。父親はリバタリアン党から大統領選にも出馬したロン・ポール元下院議員。ティーパーティー運動からの支持が厚い保守派として知られている。 |
今週の注目指標
| 米連邦政府機関閉鎖解除 ☆☆☆ | 11月9日の米上院本会議で、1月30日までのつなぎ予算修正法案の通過に向けた手続き動議を可決した。現地米東部時間10日11時(日本時間11日午前1時)に再開される上院本会議での採決、通過を目指す。通過した場合、下院に移り、そこでも採決が行われる、上院、下院共に共和党が過半数を確保する中、下院議員は上院議員と違ってフィリバスター(議事妨害)の権利がないため、過半数で予算案通過となる。その後トランプ大統領の署名を経て、予算が成立すると、政府機関の閉鎖が解除される。 |
|---|---|
| 豪雇用統計(10月) 11月13日09:30 ☆☆ | 4日の豪準備銀行(中央銀行)金融政策会合は、市場予想通り政策金利の据え置きを決めた。豪中銀は物価の上振れと雇用の堅調さを受けて、据え置きを決定したと発表している。物価の上昇傾向もあり12月の会合でも据え置き見通しが広がっているが、雇用が弱く出た場合は、利下げ期待が再び広がる可能性がある。市場予想は雇用者数が前月比+2.2万人と9月の+1.49万人を超える伸びとなり、失業率は4.4%と9月の4.5%から改善見込みとなっている。予想通りの好結果が示されると、12月の据え置き期待が広がり、豪ドル高が期待される。一方、予想よりも弱く出た場合は、利下げ期待からの豪ドル売りが見込まれる。好結果を織り込んでいるだけに、弱い数字の方がインパクトが大きいと予想される。水準次第であるが豪ドル円は1豪ドル=99円00銭を割り込む動きも期待される。 |
| 英第3四半期GDP速報値 11月13日16:00 ☆☆☆ | 英中銀は先週の金融政策会合で大方の予想通り政策金利の据え置きを決定した。ただ、投票は5対4と僅差となっており、据え置き派のメンバーが一人でも利下げに回ると追加利下げが決まる。そうした中、判断にも影響するとみられる第3四半期GDP速報値が発表される。 市場予想は前期比+0.2%と、2期連続で伸びが鈍化もプラス圏を維持すると見込まれている。同時に発表される9月の月次GDPは前月比プラスマイナス変わらずと見込まれている。7月が-0.1%、8月が+0.1%となっており、厳しい状況が続く。同じく同時に発表される9月の鉱工業生産、製造業生産高はともに8月を下回り、前月比、前年比ともにマイナスの予想となっている。これらの英指標が予想通りもしくはそれ以上に弱く出た場合、利下げの期待が広がり、ポンド売りとなる見込み。ポンドドルは1ポンド=1.3000ドルを目指す可能性がある。 |
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