2026年02月02日号
先週の為替相場
ドル安円高から週後半にドル高が進行
先週(1月26日-30日)のドル円は、週前半に強まったドル安・円高の流れが、週後半にかけてドル全面高へと劇的に反転する展開となった。米国での政治的リスクと日本当局による介入警戒感が相場の大きな材料となっている。
週明け26日は、米連邦政府機関の再閉鎖リスクや日米当局による為替レートチェック・介入への強い警戒感から、ドル売り・円買いが先行した。23日の市場でドル円は、植田日銀総裁会見後に円売りが強まり1ドル=159.20円台まで上昇した後、レートチェックの観測から155円台後半まで大きく下げて取引を終えていた。週明けは154.90円台までドル安・円高が進んで週の取引をスタートしている。米上院民主党トップのシューマー院内総務が25日の声明で、移民税関捜査局(ICE)を含む国土安全保障省関連予算を切り離さない限り、30日につなぎ予算の期限を迎える2026年度予算法案に反対する姿勢を示したことで、ドル売りが強まった。為替介入への警戒感からの円買いも見られ、ドル円は153.31円まで下落した。ユーロ円が23日終値の1ユーロ=184.06円から181.79円まで下げるなど、円高が進む一方、ユーロドルが1ユーロ=1.1907ドルを付けるなど、ドル安も優勢となった。
ドル円は安値からいったん調整が入り、27日東京夕方に154.88円まで反発したが、高値を付けた後、153.19円まで急落した。23日に続くレートチェックの噂が流れている。その後154円台までいったん回復したものの、日米当局の円安是正姿勢への警戒感から、再びドル安・円高が加速した。さらにトランプ大統領が、記者から直近のドルの急落について質問を受け「(ドルの水準は)素晴らしい」とドル安を容認する姿勢を示したことでドル売りが加速。NY市場午後に週間の安値となる152.10円を記録している。26日に一時1.1900ドル台を付けた後、1.18ドル台後半での推移が続いていたユーロドルは、ドル安の流れから節目である1.2000ドルを超えて上昇し、1.2081ドルを付けた。ユーロ円はドル円が153.19円まで急落した際にいったん下げたが、その後は対ドルでのユーロ買いに支えられて、急落前の水準を回復している。
28日に入ると、ベッセント財務長官が「米国は強いドル政策を維持する」(用語説明1)とトランプ大統領のドル安容認発言の火消しを行ったこともあり、ドル安が一服した。米連邦公開市場委員会(FOMC)が市場の見通し通り金利据え置きを決定し、声明などもほぼ想定通りであったことから、波乱なく通過。ドル円は154円台を回復する場面が見られた。
その後は再びドル安・円高が優勢となっている。米連邦政府機関の一部閉鎖リスクが高まったことや、イラン情勢の緊迫化などがリスク警戒の動きを誘い、ドル円は29日に152.68円まで値を下げた。
30日に入ると、ドル高が一気に強まった。トランプ大統領が現地時間29日(日本時間30日朝)に上院民主党首脳部と連邦政府機関閉鎖回避に向けた暫定合意に至ったことに加え、次期FRB議長人事について、ウォーシュ元FRB理事を指名することを明らかにしたことがドル買いにつながっている。ウォーシュ氏は他の議長候補者に比べてタカ派寄りとみられていることに加え、米大手金融機関での勤務経験から市場に精通しているとの評価が、ドル買いを後押しした。
午後7時には日本の財務省が2025年12月29日から2026年1月28日までの外国為替平衡操作の実施状況を公表し、介入が実施されていないことが確認された。23日および27日の急激な円買いが、介入によるものではないことが判明したことで買い安心感が広がり、ドル円は154.30円台まで上昇。その後もドル高・円安が進み、154.79円と金曜日の高値圏で週の取引を終えている。
ユーロドルは1.2081ドルを付けた後、利益確定の売りに押されていた。1.1900ドル割れでは買いが出る展開が続いていたが、週末にかけてのドル高進行により1.1850ドル前後まで下落した。ユーロ円は29日の円高進行時に182.09円まで下げた後、ドル円の買い戻しに反発した。30日に184.07円を付けた後、対ドルでのユーロ売りに押されて183.20円台を付ける場面も見られている。
今週の見通し
ドル安と円安が交錯する展開が見込まれる。先週末にかけてドル高になった要因の一つである米予算案の合意について、30日夜に上院で可決したものの、もともと下院で可決していた予算案から修正が入っているため、下院で再度の採決が必要となる。30日は下院が休会中で採決を行えなかったため、31日から米連邦政府機関が一部閉鎖された。2日に再開する下院ですぐに予算案を可決できた場合、影響はかなり軽微なものとなるが、下院の強硬派が上院で合意した案について「ICE(移民税関捜査局)の改革を条件にすることは、譲歩が過ぎる」と反対姿勢を示しており、ジョンソン下院議長(共和党)(用語説明2)は採決まで時間がかかる可能性に言及している。
短期間の閉鎖であれば、米経済に与える影響は限定的なものにとどまるとみられる。ただ、6日までに閉鎖が解除されない場合、市場が注目する1月の米雇用統計の発表が延期される可能性がある。市場の警戒感が強まる展開が予想され、円買いの動きにつながる可能性がある。
ここにきて強まる貴金属を中心とした国際商品価格の下落もリスク要因となっている。30日のNY金先物市場は次期FRB議長にややタカ派なウォーシュ氏が指名されると公表されたことで、利下げペースが落ち着くとの見通しもあって急落。11%を超える下げとなった。週明けも貴金属市場は大きな下げとなっている。さらに貴金属市場の下げをきっかけに、NY原油先物など、貴金属以外の商品市場や、ビットコインなど暗号資産の価格低下も目立っている。こうした動きがリスク回避の円買いにつながる可能性がある。
一方、8日の衆議院選挙は与党勢力の議席増が見込まれている。朝日新聞社は1月31日から2月1日にかけての約37万人を対象とした調査の結果として、自民党が単独過半数を大きく超え、維新と合わせて300議席超を窺うとの見通しを示した。海外勢を中心に高市政権の積極財政路線の加速を見越した円売りが強まる可能性があり、日米の政治状況を受けて売り買いが交錯する不安定な動きが見込まれる。
ドル円は上下ともに大きな動きを見せる可能性がある。円高が強まった場合152円台トライの可能性がある一方、米国の情勢が早期に落ち着くことで円売りが優勢となり157円台を付ける可能性もありそう。方向性をしっかりと見極めていきたい。
ユーロ円などクロス円も不安定な動きが予想される。ユーロ円は185円50銭から186円00銭にかけてが上値抵抗水準。下は182円00銭前後がサポートとなっているが、ここをはっきりと割り込むと大きな下げとなる可能性がありそう。
ユーロドルは先週のドル安局面で1.2081ドルを付けたものの、その後は上値が重くなっている。上値トライに一服感が出ており、1.19台では売りが出る展開が見込まれる。
用語の解説
| 強いドル政策 | 1995年に当時のクリントン政権においてルービン財務長官が提唱した「強いドルは米国の国益にかなう」という方針。その後も米国の為替に関する基本姿勢となっている。ドル円は同年4月に当時の史上最安値となる79円75銭を付けた。日本の対米貿易黒字が問題視されていた時期でもあり、米国がドル安を容認しているとの見方がドル安円高につながっていたが、ルービン長官が強いドルの方針を打ち出すことで、米国は自国通貨の価値を損なうような政策をとらないとの信頼を与えた。 |
|---|---|
| ジョンソン下院議長 | マイク・ジョンソン(Mike Johnson)下院議長。ルイジアナ州立大学大学院で法務博士号を取得後、弁護士となった。キリスト教系法的擁護団体「アライアンス・ディフェンディング・フリーダム」の弁護士を務めるなど、保守系弁護士として知名度を上げると、2015年にルイジアナ州下院議員となり、2017年に同州4区選出の連邦下院議員に初当選。その後も当選を重ねている。2023年10月に下院共和党のトップである下院議長に就任した。トランプ大統領の熱烈な支持者として知られている。 |
今週の注目指標
| 豪政策金利 2月3日12:30 ☆☆☆ | 豪準備銀行(RBA/中央銀行)金融政策会合は、利上げか据え置きかで見通しが分かれている。豪中銀の利上げについては、もともと2月が本線とみられていた。しかし、12月11日発表の11月豪雇用統計が予想外の減少、1月7日発表の11月豪消費者物価指数が予想を下回る伸びとなったことで、利上げ期待がいったん大きく後退した。その後1月22日発表の12月雇用統計で、雇用者数の伸びが一気に強まり、失業率も大幅に改善する強い結果となった。さらに、1月28日発表の12月豪消費者物価指数が予想を超える伸びとなったことで、利上げ期待が再燃している。 短期金利市場動向から見た今回の会合の見通しは75%が利上げ、25%が据え置きと、利上げ期待が据え置きを大きく上回っている。ただ、25%の据え置き見通しは無視できない割合である。大勢の見方に反し据え置きとなった場合は、豪ドル売りが一気に進み1豪ドル=0.6700ドルを試す可能性がある。金先物など貴金属価格の低下を受けて豪ドルが売られやすくなっている地合いもあって、下方向のリスクがやや高い状況となっている。 |
|---|---|
| 米雇用統計(1月) 2月6日22:30 ☆☆☆ | 前回は非農業部門雇用者数(NFP)が予想を下回る伸びとなったものの、失業率は改善した。弱さは残るものの、まずまずの結果であったと言える。前回の結果を確認すると、非農業部門雇用者数は前月比+5.0万人と、市場予想の+6.6万人を小幅に下回った。11月分が+6.4万人から+5.6万人に、10月分が-10.5万人から-17.3万人にそれぞれ下方修正されており、3カ月平均の数字は-2.2万人と3カ月連続でマイナスになるなど、厳しい状況が続いている。一方、失業率は4.4%と11月の4.5%から改善した。なお、失業率など家計調査関連の数字は季節調整係数の見直しに伴い年次改定が行われ、遡及改定の結果、11月分は速報時の4.6%から4.5%となっている。広義の失業率であるU6失業率は、9月分の8.1%から11月分が8.7%と一気に悪化していたが(10月分は連邦政府機関閉鎖に伴い計測なし)、今回は8.4%まで改善した。一方で、27週以上の長期失業者数の増加や平均失業期間の長期化など、弱さを見せる部分もあった。 NFPの内訳では、財部門が-2.1万人と2カ月ぶりにマイナスとなった。製造業が8カ月連続でマイナスとなったほか、建設業、鉱業もマイナスとなっている。サービス部門は+5.8万人と、11月の+3.2万人から伸びが加速し、9月以来の水準となった。特に11月に5カ月ぶりのマイナス圏に沈んだ娯楽・接客業が+4.7万人と回復し、全体を支えている。単体で1200万人以上の雇用者を有する飲食店が+2.72万人と堅調で、11月に弱さを見せたカジノ・アミューズメント部門も+1.41万人と回復した。これらは景気が比較的しっかりしているときに伸びやすい部門であり好印象だが、同じく景気に敏感な小売業が-2.5万人と弱く、まちまちという印象を与えた。 関連指標を見ると、新規失業保険申請件数は、雇用統計の基準日である12日を含む週の比較で、12月が22.4万件、1月が21.0万件(20.0万件から修正)となっており、やや改善が見られる。1月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は、予想の90.9を大きく下回る84.5に低下し、約11年半ぶりの低水準となった(12月分は速報時の89.1から94.2に上方修正)。同指数の雇用部門では「職が十分にある」との回答が23.9%に低下する一方、「職を得るのが困難」との回答が20.8%に上昇しており、ともに2021年2月以来の弱い結果となっている。ISM製造業/非製造業景気指数などは今週この後の発表となる。 今回1月雇用統計の市場予想は、NFPが+7.2万人と改善見込み、失業率は4.4%で横ばいの見込みとなっている。NFPが予想以上の伸びを見せると、米利下げ期待の後退につながる可能性がある。水準自体は過去の平均と比べると低いが、ダラス連銀が算出する「ブレークイーブン雇用者数」(失業率が悪化しない雇用水準)が+3万人程度まで低下していることを考えると、予想通りであれば「まずまず」の結果と言える。なお、今回は年次改定が反映されるため、予想がブレやすくなっている点には注意が必要である。予想通りもしくは失業率の改善や非農業部門雇用者数の大きな伸びが見られると、早期利下げ期待が後退しドル買いが見込まれる。ドル円は157円台に向けた動きが期待される。 |
| 衆議院選挙 投開票 2月8日 ☆☆☆ | 衆議院選挙の投開票が8日に行われる。各社の世論調査では自由民主党の単独過半数の可能性が報じられている。さらに、一部では自民党と日本維新の会を合わせて与党勢力で300議席超の圧勝見通しを報じるメディアもある。与党が議席を大きく伸ばした場合、高市首相の進める積極財政路線が加速するとの見方から、円売りが進む可能性がある。ドル円は157円に向けた動きが見込まれる。一方、状況が劇的に変わり、自民・維新合わせて過半数を取れなかった場合、円買いが一気に進む可能性がある点についても注意したい。 |
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