2026年02月16日号
先週の為替相場
ドル安円高優勢 円安に一服感か
先週(2月9-13日)のドル円は、週の半ばまで円高が優勢となり、その後ドル安円高圏でもみ合った。ドル円は1月27日に1ドル=152円10銭を付けた後、ドル高円安に転じた。8日の衆議院選挙を前に、与党勢力の優勢が報じられたことや、高市首相が選挙戦の中で「円安で助かっているのは外為特会。今は、ほくほく状態」と発言したことなどを受けて、選挙後の高市政権下での積極財政期待と円安容認の思惑から円が売られた。8日の衆議院選挙は自民党が単独で3分の2議席以上を確保する歴史的大勝となった。これを受けて9日朝の市場で157円76銭までドル高円安となった。
しかし、朝の円売り一巡後は一転してドル安円高となった。片山財務相が8日に「必要であれば月曜日に市場とコミュニケーションをとる」と発言していたことや、9日午前に三村財務官が(円安について)「高い緊張感をもって注視」と発言したことなどが、介入警戒感につながり、ドル売り円買いが広がった。
衆議院選挙前後でドル買い円売りポジションが積み上がったが、衆議院選挙後の円安が、6日終値の157円22銭から157円76銭までと50銭ちょっとにとどまったことで、利益確定が進んでおらず、その後もポジション整理の意識が強いまま、戻りですぐに売りが出る展開となって、上値が重くなった。また、同日午後に中国当局が中国国内の大手銀行に対して米国債保有の抑制を促したとの関係者筋情報が報じられたことも、ドル全般の売りにつながり、ドル円の上値を抑えた。
10日の12月米小売売上高が予想を下回る前月比横ばいに留まったことや、ラトニック米商務長官(用語説明1)がドル安について質問され「現在のドル水準はより自然」とドル安容認とも取れる発言を行ったことで、節目の155円00銭を割り込んで、ドル売り円買いが加速する展開となった。
建国記念日で東京勢が不在の11日アジア市場で152円80銭まで売りが出ると、同日発表の1月米雇用統計を前にいったん反発。153円60銭台で米雇用統計の発表を迎えると、予想を大きく超える非農業部門雇用者数(NFP)の伸びや、予想外の失業率低下などを受けて、発表直後に154円50銭台へ急騰。しかし戻りでは売りが出る流れが継続しており、すぐに反落して152円50銭台を付けた.その後発表前の水準に戻すなど、荒っぽい展開を経て、じりじりとドル売り円買いが優勢となった。
米雇用統計はNFPや失業率に加え、雇用情勢が厳しい時に数字が悪くなりがちな広義の失業率(U6失業率)(用語説明2)が12月の8.4%から8.0%まで大きく改善しており、雇用状況の改善を示す結果となったが、それでもドル買いが続かない状況が、ドル買い円売りポジションの整理を促したとみられる。
12日東京市場で週間の安値となる152円27銭まで下げた後、円買いが一服。1月27日に付けた152円10銭をトライするところまで下がらなかったことで、動きが落ち着いた。もっとも戻りは鈍く、その後は週末まで153円00銭を挟んでの上下となった。13日の1月米消費者物価指数(CPI)が予想を下回る伸びとなったが、153円30銭前後から152円60銭台までの下げと、週間のレンジ内での動きにとどまっている。
ユーロ円はドル円同様に週の半ばまで円買いが優勢となった。週明けすぐの円安で1ユーロ=186円36銭を付けた後、12日に180円81銭を付けた。その後181円台を回復すると、181円00銭前後がサポートとなったが、182円台では売りが出る展開となった。
ユーロドルは9日の中国当局関係者筋報道を受けたドル売りもあり、朝の1ユーロ=1.1810ドル前後での推移から1.1927ドルまで上昇した。その後1.1900ドルを挟んでの推移が続いたが、11日の米雇用統計を受けたドル買いに1.1833ドルまでユーロ安ドル高となった。その後少し戻して1.18ドル台後半で落ち着いた取引が続いた。
今週の見通し
円安一服感から上値が重い展開が続いている。ドル円は衆議院選挙前後で積み上がった円売りポジションの整理がまだ終わっていない印象。先週の円高局面での安値が152.27円にとどまり、1月27日に付けた152.10円に届かなかったことで、円買いにも慎重姿勢が見られるが、戻りでは売りが出る流れが継続するとみている。先週の米雇用統計が好結果で米国の早期利下げ期待が後退。金利先物市場の動向から政策金利見通しを示すCME FedWatchツールでは、次回3月のFOMCは据え置き見通しが90%を超える圧倒的な状況となっている。ただ、年内の利下げ見通しについては、1週間前の「2回」が優勢という状況から、「2回と3回」で見通しが拮抗するところまで期待が高まるなど、根強い米利下げ期待がドルの重石となっている。
1月のトランプ大統領によるドル安容認ともとれる発言に続き、先週はラトニック商務長官がドル安容認の発言を行っている。ベッセント財務長官が先月のトランプ大統領の発言を受けて、従来の「強いドル」政策を堅持する姿勢を強調しているものの、米政権が米輸出企業に有利となるドル安を好ましく思っているとの見方が広がっており、ドル売りが出やすい地合いとなっている。
今週の注目は18日(日本時間19日午前4時)のFOMC議事要旨(1月27・28日開催分)と20日の米第4四半期GDP(改定値)。1月のFOMC後の会見でパウエル議長は「経済活動が着実なペースで拡大している。雇用の伸びは鈍いままで、失業率は安定の兆しを示している」と米経済の堅調さに自信をにじませた。議事要旨で他のメンバーの姿勢を確認し、今後の利下げ見通しが変化するかが注目される。米GDPは前回よりは低いものの、堅調な成長が見込まれている。ただ、ブレの出やすい指標だけに、予想からの乖離に注意したい。
今週前半は週半ばからの米国の材料を前に様子見ムードが広がりそうだ。16日は米国がプレジデントデーで休場となることも、様子見ムードに拍車をかけるか。今週から中国が春節で休場となり、アジア市場での取引参加者が減ることも様子見につながりそうだ。
ドル円は152円台から153円台にかけてのレンジを中心に次の方向性を探る展開。リスクはやや下方向とみており、1月に付けた直近安値152.10円をしっかり割り込むと動きが加速する可能性がある。レンジ取引が続いて週の後半を迎えるようだと、米GDPの結果待ちとなりそうだ。
ユーロ円はドル円に準じた動きか。リスクは下方向も、行き過ぎた動きには警戒感が出そうだ。
ユーロドルは1.18台を中心とした推移が見込まれる。下がると買いが出る展開も、1.1950-1.2000ドルの上値抵抗水準が重い。
用語の解説
| ラトニック商務長官 | ハワード・ラトニック(Howard Lutnick)商務長官。ハバフォード大学卒業後、米証券会社キャンター・フィッツジェラルドに入社。1991年より同社CEOとなった。2025年2月の商務長官就任に際して、同社CEO職を退いている。 |
|---|---|
| U6失業率 | ILOの定める世界共通の指標である通常の失業率(U3)に加えて、正規雇用を望んでいるが、パートタイムしか仕事のない人や、調査対象期間中に求職活動を行っていないが以前求職活動を行い、働く用意のある人(縁辺労働者)などを加えた広義の失業率。 |
今週の注目指標
| 米FOMC議事要旨(1月開催分) 2月19日04:00 ☆☆☆ | 4会合ぶりに政策金利を据え置いた1月27日、28日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が公表される。据え置きは10対2となり、ミラン理事とウォラー理事が0.25%の利下げを主張した。ミラン理事はこれまで出席したすべてのFOMCにおいて、委員会の決定よりも大幅な金融緩和を主張しており、今回の利下げ主張も違和感はない。かつてはタカ派であったウォラー理事も、昨年以降ハト派姿勢が目立っており、サプライズ感はないが、予想以上にハト派という印象。ウォラー氏は利下げの理由として将来の労働市場の著しいリスクを示した。他のメンバーの雇用に対する見方などが注目されるところで、年内の利下げ期待に影響を与えるような慎重な姿勢が目立つようだと、ドル売りになる可能性がある。ドル円は151円台に向けた動きとなる可能性がある。 |
|---|---|
| 豪雇用統計(1月) 2月19日09:30 ☆☆ | 前回12月の豪雇用統計は雇用者数が+6.52万人となり、+2.7万人の予想を大きく超える伸びを示した。正規雇用が+5.48万人となっており、内訳的にも力強さが見られた。今回の予想は+2.0万人と伸びの鈍化が見込まれている。ただ、もともと人口が2750万人程度の豪州だけに、前回の+6.52万人は突出して強い数字という印象であり、予想前後であれば決して悪くない伸びとなる。今後の豪中銀の利上げに向けた動きに大きな変化はないと期待され、豪ドルを支える材料となりそうだ。 ただ、予想に反して弱く出た場合、特に前月比でマイナス圏に落ち込むような動きが見られると要注意となる。短期金利市場では5月までの利上げを80%前後織り込む動きとなっている。雇用統計が弱く出ることで利上げ期待が後退するようだと、豪ドル売りが強まる可能性が高い。その場合、豪ドル円は106円台に向けた動きが見込まれる。 |
| 米第4四半期GDP速報値 2月20日22:30 ☆☆☆ | 20日に米第4四半期GDP速報値が発表される。第2、第3四半期とかなり好調な経済成長を見せた米国だが、第4四半期は10月1日からの米連邦政府機関の閉鎖の影響などもあり、注目を集めている。前回第3四半期は前期比年率+4.4%と、第2四半期の+3.8%に続いて2期連続で力強い伸びとなった。+4.4%は2年ぶりの高水準である。第2四半期は関税を受けた輸入の減少(-29.3%)が伸びの要因となっていたが、第3四半期は-4.4%と減少率は鈍化した。一方、輸出が+9.6%と好調で、純輸出(輸出-輸入)の寄与度は+1.62%と、第2四半期の+4.83%ほどではないものの高いものとなっている。第3四半期は在庫投資の寄与度が-0.12%と、第2四半期の-3.44%から落ち着いたことも全体の押し上げにつながった。在庫投資はトランプ関税発動を前に第1四半期に積み上がりが見られ、第2四半期以降で取り崩す動きとなっていた。個人消費の好調さも目立った。GDP全体の約7割を占める米個人消費は、第3四半期に+3.5%としっかりした伸びを見せた。米国の雇用市場が厳しい状況となっていることで、雇用と密接な関係のある個人消費への影響が警戒されていたが、第3四半期時点では逆に力強さが見られた。 こうした状況を受けての今回の第4四半期GDPだが、市場予想は+3.0%と、前期からは鈍化するも比較的堅調な伸びが期待されている。エコノミスト予想は+2.5%から+3.8%のレンジである。アトランタ連銀によるGDPNowは+3.7%と、市場予想の中央値を大きく超える伸びを見込んでいる。堅調な個人消費動向と、データセンター建設をはじめとするAI投資の拡大が全体を支えると期待されている。ただ、12月の米小売売上高が市場予想の前月比+0.4%に対して、前月比横ばいとやや冴えない結果となった。消費者心理により近いとされるガソリンと自動車を除いた売上も前月比横ばいであった。年末商戦が予想に比べて低調となっており、個人消費の堅調さに対する警戒感が出ている。 もう一つ大きな不透明要因がある。10月1日から歴代最長の43日間に及んだ米連邦政府機関の閉鎖の影響だ。空の便の乱れや、国立公園などの一部閉鎖などもあって観光などの動きが鈍っており、ある程度のGDPの減速が織り込まれている。それを含んでの今回の予想値だが、予想以上に減速が進んでいた可能性がある。 11月分まで出ている貿易収支は、第3四半期に比べて赤字幅がやや落ち着いている。しかし、11月は輸入が前月比+5.0%と予想を超える伸びとなっており、このあたりも警戒感がある。 予想近辺もしくはそれ以上に好調なGDPの伸びが見られると、早期の利下げ期待が後退し、ドル買いにつながると見込まれる。特に3%を超えるような伸びとなった場合は、パウエル議長の任期中の利下げはないとの見方につながりそうだ。一方、成長の鈍化が目立つようだと、利下げ期待が強まる可能性がある。次回3月のFOMCは金利据え置きで見通しがほぼ一致しているが、4月については短期金利市場で30%程度の利下げを織り込んでいる。この期待が50%前後まで上昇するようだと、ドル売りが加速する可能性がある。ドル円は心理的節目である150円00銭に向けた動きが見込まれる。 |
免責事項
本レポートは株式会社時事通信社が提供しています。また本レポートの内容は、株式会社時事通信社が提供する情報をもとに、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが執筆しています。本レポートは、情報提供のみを目的にしたもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。投資決定に当たっては、投資家ご自身のご判断でなされますようお願いいたします。株式会社時事通信社、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドおよび情報提供元は、本レポートに記載されているいずれの情報についても、その信頼性、正確性または完全性について保証するものではありません。また本レポートに基づいて被った損害・損失についても何ら責任を負いません。本レポートに掲載されている情報の著作権は、株式会社時事通信社および株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに帰属します。本レポートに掲載されている情報を株式会社時事通信社の許諾なしに転用、複製、複写等することはできません。
Copyright(C) JIJI Press Ltd. All rights reserved.
auじぶん銀行からのご注意
- 本画面に掲載されている情報は、auじぶん銀行の見解を代弁したものではなく、auじぶん銀行がその正確性、完全性を保証するものではありません。
以上の点をご了承のうえ、ご利用ください。


