2026年03月02日号
先週の為替相場
ドル高円安優勢 一時156円82銭
先週(2月23-27日)のドル円は、週初にドル安円高が一気に進む場面もあったが反発。週の中盤にかけてドル高円安が優勢となった。日本政府の姿勢などが円売りを誘った。週末にかけては利益確定売りなどが入ったが、下値は限定的だった。
天皇誕生日で東京市場が休場となった23日の市場。20日に米連邦最高裁判所が、米国による相互関税など国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠にする関税について、「大統領の権限を越えており違法」との判断を示した。これを受けた混乱を嫌気して、アジア市場で一気にドル安円高が進む場面が見られた。ドル円は早朝の1ドル=155.00円付近から154.00円まで急落。ユーロドルが1ユーロ=1.1780ドル前後から1.1835ドルを付けるなど、ドル安が一気に進んだ。ドル主導の展開であったが、リスク回避の円買いも見られ、ユーロ円は早朝の182.50円台から182.18円まで下げる場面があった。海外市場に入って関税問題の影響を見極めるムードが広がると、ドル円が155円台を回復するなど反発。その後154円台前半まで押し戻されるなどリスク警戒は根強かったが、朝の安値をトライするほどの勢いはなかった。
23日の米国市場で、1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げに投票したウォラー理事が、2月の米雇用統計の結果次第では3月のFOMCで「据え置きに傾く可能性がある」と発言。これを受けてドル買いが入ると、24日の東京市場で前日の高値を更新するドル高円安となった。さらに毎日新聞が「高市首相が植田日銀総裁との会談で追加利上げに難色を示した」と報じたことで、日銀の早期利上げ期待が後退。円安が一気に進み156.28円を付けた。クロス円でも円安が加速し、ユーロ円が182.50円台から184.19円を付ける場面が見られた。その後、高市首相の緩和姿勢は織り込み済みとの見方が広がったことで円売りは落ち着いたが、押し目は限定的なものにとどまった。
米東部時間24日21時(日本時間25日午前11時)ごろから行われたトランプ大統領による一般教書演説において、低インフレが強調されたことなどを受けて一時ドル売りとなり、ドル円は155.35円を付けた。しかし、その後の日銀審議委員人事の発表で一気に円売りとなった。3月に退任する野口委員の後任に中央大学名誉教授の浅田氏(用語説明1)、6月に退任する中川委員の後任に青山学院大学教授の佐藤氏(用語説明2)の指名が国会に提出された。ともに金融緩和に積極的な「リフレ派」とみられており、政府のハト派姿勢への警戒感が円売りにつながった。退任する野口委員はハト派として知られていたが、中川委員は中立派とみなされていたため、委員の陣容がややハト派寄りとなる。海外市場に入っても円売りが続き、ドル円は週間高値となる156.82円まで上昇、ユーロ円は184.77円を付けた。高値を付けた後は利益確定売りなどに押された。
26日に入り、植田日銀総裁の読売新聞インタビュー記事を受けていったん円買いが強まった。総裁は「3月・4月の会合で情報を点検」「必ずしも短観を待たない」と早期利上げの可能性を示唆。ドル円は156円台から155.70円台を付けた。円買い一服後はドル高が優勢となり、ドル円は156円台を回復。中東情勢をにらみ、週末越しのドル売りポジション維持に慎重な姿勢が見られた。
今週の見通し
米国とイスラエルがイランを攻撃し、イランの最高指導者であるハメネイ師が死亡したことを受けた中東情勢の緊迫化を受けて、不安定な動きとなっている。有事のドル買いが優勢となっているが、過去には湾岸戦争の際に有事でもドル売りが進んだケースがあるなど、米国が紛争当事国になった場合は、ドル買い、ドル売りどちらが出るのかが定まらない部分があること、リスク回避の円買いと有事のドル買いのどちらが優勢になるのかも定まっていないことなどから、上下に不安定な動きとなりやすい。
ホルムズ海峡の閉鎖が長期化すると、日本経済にはかなりのマイナスが見込まれ、日銀の追加利上げの可能性が低下する。また、原油高から米国の物価にも影響を出て、インフレの高止まりから利下げ見通しが低下することもあり、日米金利差縮小見込みが後退する、そのため中期的にはドル高円安の流れが強まる可能性が高いとみている。
中東情勢はかなり流動的。ハメネイ氏死亡を受けてイラン憲法第111条に基づき、後継者が決定するまでの国政を担う「暫定指導評議会(Interim Leadership Council)」が設立され、ペゼシュキヤーン大統領などがメンバーとなっている。同評議会は米国との対話を打診していると報じられているが、イラン最高指導者を決定するのは、同評議会ではなく88人の聖職者で構成される専門家会議(Assembly of Experts)となる。現在後継の最有力とされているのはアリ・ラリジャニ最高安全保障委員会(SNSC)事務局長で、同氏は米国との対話を拒否する姿勢を示している。イランと米国・イスラエルの紛争が長引く可能性は十分にありそうで、今後の情勢を見極める必要がある。
中東情勢が落ち着けば、米経済指標などに注目が移る可能性がある。今週は6日の米雇用統計をはじめ、重要指標の発表が複数予定されており、注目が集まるところとなっている。
ドル円は上下ともにかなり不安定な動きとなりそう。流れはやや上方向であるが、158円に近付くと介入警戒感が高まることもあり、動きは慎重なものとなりそう。
ユーロドルは有事のドル買いもあり、戻りの重い展開が続くか。1.18台前半が重くなる印象。
ドル主導でユーロ円などクロス円はかなり不安定な動きが見込まれる。
用語の解説
| 浅田中央大学名誉教授 | 浅田統一郎(あさだ・とういちろう)中央大学名誉教授。一橋大学大学院博士課程単位取得退学後、一橋大学助手、駒澤大学助教授、中央大学助教授を経て、1994年に中央大学教授。同大学学長補佐などを務めた後、2025年に定年退職し、同大学名誉教授。リフレ派として知られており、2023年4月の自民党財政政策検討本部での講演では、日本経済を成長軌道に完全に乗せるまで、反緊縮的な財政と金融のポリシーミックス(政策の組み合わせ)を継続すべきとの見方を示している。 |
|---|---|
| 佐藤青山学院大学教授 | 佐藤綾野(さとう・あやの)青山学院大学教授。早稲田大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学。内閣府経済社会総合研究所客員研究員、高崎経済大学教授などを経て、2022年4月から青山学院大学教授。2023年2月の「責任ある積極財政を推進する議員連盟」による勉強会で講師を務めた際に、円安のメリットや緩和的な金融政策の維持などを主張。高圧経済(積極的な緩和と財政出動による需要超過により潜在成長率の引き上げを促す手法)の専門家として知られる。 |
今週の注目指標
| 米ISM製造業景気指数(2月) 3月3日00:00 ☆☆☆ | 米ISM製造業景気指数は、前回1月分が新規受注の高い伸びなどを受けて一気に4.7ポイントの改善となり、1年ぶりに好悪判断の節目である50.0を超え、52.6を記録した。今回は51.7とやや低下の見込みだが、50超の水準を維持する見通しであり、水準としてはまずまずといえる。前回3.3ポイント改善したものの、48.1と50に届かなかった雇用部門の数字にも注目が集まる。 なお、4日には同非製造業景気指数が発表される。こちらは前回1月分が53.8と12月から横ばいとなった。今回は53.5と小幅な低下が見込まれるが、水準的には50をしっかり上回る見通しである。米景況感の好調さが維持されれば、ドル買いに安心感が出る。ドル円は158円に向けた動きが期待される。 |
|---|---|
| 中国全国人民代表大会(全人代)開幕 3月5日 ☆☆ | 中国全国人民代表大会(全人代)が5日から11日の日程で開催される。2026年の経済成長率目標は4.5-5%に設定される見込みであり、ここ数年の5%前後から引き下げられる見通しだ。消費低迷が続く国内経済の状況を受けて、どのような刺激策が示されるかが焦点となる。内需拡大に向けた姿勢が強調され、景気敏感株などに好影響が出るようであれば、ドル安元高からアジア市場を中心にドル売りの動きが強まる可能性がある。ドル円にとっても、158円前後で上値を抑える材料として意識されることになりそうだ。 |
| 米雇用統計(2月) 3月6日21:30 ☆☆☆ | 前回1月分は失業率が予想外に低下し、2か月連続の低下となった。期間中に求職活動を行わなかったものの働く意思のある者や、正規雇用を望んでいるもののパートタイムに従事している者などを含めた広義の失業率(U6失業率)も、12月の8.4%から8.0%に大きく低下した。非農業部門雇用者数(NFP)は+13.0万人と予想の+7.0万人を大きく上回る伸びとなり、2024年12月以来の高い伸びを記録している。NFPについては年次改定に伴って2024年および2025年の数値が修正され、新規雇用者の伸びが月平均で2024年は12.2万人、2025年は1.5万人と、改定前の16.8万人、4.9万人からそれぞれ下方修正された。しかし、年次改定での下方修正は織り込み済みであり、1月の雇用統計の強さから米雇用市場の堅調さが改めて意識される結果となった。 1月NFPの内訳を確認すると、政府部門が-4.2万人と大幅な減少となった一方、民間雇用は+17.2万人とかなりの伸びを見せた。これも2024年12月以来の高い伸びである。そのうち財部門は、建設業の伸びを受けて+3.6万人と2023年6月以来の高水準となった。製造業は+0.5万人であった。プラス幅はわずかだが、昨年は1年を通じて前月比マイナスが続いており、プラス圏浮上は2024年11月以来のことである。民間サービス部門は+13.6万人と高い伸びになった。景気動向に比較的敏感な小売業は+0.1万人と、わずかながら4か月ぶりにプラス圏を回復した。ただ、卸売業や運輸・倉庫が3か月連続のマイナスとなり、商業・運輸・倉庫セクションは6か月連続のマイナス圏にある。報道などで人員整理が目立つICT関連を含む情報業は-1.2万人と、13か月連続のマイナスとなった。娯楽・接客業は+0.1万人と小幅なプラスにとどまった。こちらも景気に敏感な飲食業が+2.78万人とまずまずの結果であったが、劇場・カジノ・アミューズメント部門や宿泊部門がマイナスとなった。1月に米国を襲った寒波の影響などが背景にあるとみられる。一方、雇用の伸びを支えたのが教育・医療部門で+13.7万人となっている。伸びの著しい介護部門に加え、外来医療・在宅医療・病院などの医療部門も軒並み伸びている。 今回の見通しは+6.0万人と、前回から伸びが鈍化する見込みである。失業率は4.3%で据え置かれる見通しとなっている。6万人という伸びは2023年の月平均21万人などと比べるとかなり低い水準だが、移民の減少などもあり、ダラス連銀が算出する「失業率を維持するために必要な雇用者数(ブレークイーブン雇用)」が、2023年の最大25万人から最新の2025年12月時点で3.4万人まで低下していることを踏まえれば、まずまずの水準といえる。予想前後であれば、米国の雇用の堅調さが印象付けられそうだ。1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でミラン理事とともに0.25%の利下げを支持したウォラー理事は、今回の雇用統計が力強さを見せた場合、3月のFOMCでは据え置きに回る可能性があると言及しており、米利下げ期待の後退を伴うドル買い要因となりそうである。ドル円は158円台に向けた動きが強まる可能性がある。 |
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