2026年03月09日号
先週の為替相場
イラン紛争をめぐるリスク警戒が優勢
先週(3月2日〜6日)のドル円は、中東情勢を受けたリスク警戒の動きが一気に強まる展開となった。2月28日に始まった米国とイスラエルによるイランへの攻撃で、イランの最高指導者であるハメネイ師が死亡したと報じられ、市場のリスク警戒が一気に強まった。「有事のドル買い」からドルは全面高となり、ドル円は2日朝の155円台から、6日金曜日には158円台まで上値を伸ばしている。
28日に米国とイスラエルがイランへの攻撃を実施し、ハメネイ師死亡の報道を受けて、週明け3月2日は有事のドル買いとリスク回避の円買いが交錯した。2月27日終値の156.05円前後で取引をスタートした後、いったん155.85円を付けたが、すぐにドル買いが優勢となり156.70円前後まで上昇。その後、イラン臨時政府が米国との対話を打診との報道で156.16円まで下げる場面もあったが、イランの最高安全保障委員会(用語説明1)のラリジャニ事務総長が交渉を拒否する姿勢を示したことで、再びドル買いが強まった。
157.25円前後まで上昇した後、ロンドン市場の本格参入時間帯には行き過ぎ警戒感から156.80円前後まで調整されたが、すぐに買い戻され157.75円前後まで上昇した。原油高に起因する物価上昇警戒から米国の年内追加利下げ期待が後退したことや、原油決済需要に伴うドル高も意識された。ユーロドルも、2月27日終値の1.1812ドル前後から1.1672ドルまで下落するなど、ドルの独歩高となった。このドル主導の展開により、ユーロ円などのクロス円は方向感の乏しい不安定な動きとなった。
3日の取引では、片山財務相が「金融市場を極めて高い緊張感を持って注視」「日米の覚書には介入も含まれている」と円安を牽制したことで上値が抑えられたものの、押し目買い意欲は強く、157円台を維持。海外市場では攻撃激化やホルムズ海峡(用語説明2)封鎖への懸念から157.97円と、節目となる158円に迫る動きを見せた。
4日に入り、米紙が「イラン側からの戦争終結に向けた条件協議の提案」を報じると、いったんドル売りが優勢となり156.80円前後まで下落。5日東京市場では米株価の反発を受けて156.46円までドル安が進んだ。しかし、イランが周辺国の米軍基地への攻撃を強めたことや原油高の波及を受け、再びドル高の流れとなり、ドル円は157円台後半へ値を戻した。
6日もドル高の流れは続き、米雇用統計の発表を前に158.09円まで上昇。22時半発表の2月米雇用統計では、非農業部門雇用者数が予想(6万人増)に反して9.2万人の減少となり、失業率も4.4%へ悪化したが、この結果を受けて一時157.40円まで急落したものの、すぐに反発した。中東情勢の不透明感から週末を跨ぐポジション保持には慎重な姿勢が見られ、最終的にドル円は157.70円台、ユーロドルは1.1610ドル台で週の取引を終えた。
今週の見通し
イランメディアはイラン最高指導者に亡くなったハメネイ師の次男で対米保守強硬派のモジタバ師が選出されたと報じた。米国とイスラエルに対する姿勢がより強硬となり、イラン紛争が長期化するとの懸念が広がっている。
有事のドル買いから、基本的にドル高が見込まれる展開。ドル円に関しては節目の158円をしっかり超えて、次の大きな節目である160円トライが現実味を帯びている。介入警戒感が高まる水準であるが、ドル全面高の中での介入は効果が限定的なものにとどまりやすい。紛争で混乱する中での介入にも慎重な姿勢が求められる。それだけに介入のハードルが高くなっているとみられ、もう一段のドル高円安が見込まれる。
紛争の動向をかなり神経質に見ながらの展開となっており、大きめの調整が入る局面もありそう。下がると買いが出る展開が見込まれるが、押し目が意外と大きなものになる可能性には注意したい。
ユーロドルもユーロ安ドル高の進行が見込まれる。節目である1.1500ドル割れを意識する展開。
ユーロ円はドル主導でかなり不安定な動きになりそう。182円から183円台にかけての水準での不安定な上下を見込んでいる。
用語の解説
| 最高安全保障委員会 | イラン最高安全保障委員会(SNSC)は、最高指導者の直属機関として、イランの外交・軍事・安全保障政策を決定する最重要機関。大統領・軍幹部・外務大臣、情報機関代表らがメンバーとなっている。2025年8月にアリ・ラリジャニ氏が事務局長に就任している。 |
|---|---|
| ホルムズ海峡 | ペルシャ湾とオマーン湾の間にある海峡。北をイラン、南をオマーンの飛び地であるムサンダム半島に挟まれており、もっとも狭い箇所は33キロメートルとなっている。ペルシャ湾沿岸諸国で算出する石油の搬出路として重要な地点となっている。 |
今週の注目指標
| 米消費者物価指数(2月) 3月11日21:30 ☆☆☆ | 11日に2月の米消費者物価指数(CPI)が発表される。イラン紛争への警戒感が広がる中、原油高が物価に与える影響も注目されている。調査対象期間の関係上、今回のイラン紛争の影響が出るのは次回3月分以降となるが、紛争激化前の段階で米国の物価動向がどのような状況であったかは、今後の米金融政策に影響を与えるため、大きな注目を集めている。 前回1月の米CPIは前年比+2.4%、変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア前年比は+2.5%と、12月の2.7%、2.6%を下回った。総合は市場予想の+2.5%を下回り、コアは市場予想と一致している。内訳を見ると、エネルギー価格が12月の+2.3%から-0.1%まで大きく低下した。電気料金などは上昇しているが、ガソリン価格が2か月連続で大きく低下(11月+0.9%、12月-3.4%、1月-7.5%)したことで、エネルギー全体が押し下げられた。食品は+2.9%と、12月の+3.1%から若干鈍化した。+15.0%と大きく伸びた牛肉などが全体を支えたほか、賃金上昇の影響もあって外食費が+4.0%と高止まり傾向を見せていることも、上昇要因となっている。コア部門は財、サービスともに12月から前年比での伸びが鈍化した。財は12月の+1.4%に対して1月は+1.1%。中古車が12月の+1.6%から-2.0%まで低下し、全体を押し下げた。サービスは12月の+3.0%に対して+2.9%と小幅に鈍化。住居費が12月の+3.2%から+3.0%に鈍化したことが押し下げ要因となった。住居費を除くコアサービスは12月と同じ+3.4%となっている。 今回の予想は総合が前月比+0.2%(1月+0.2%)、前年比+2.5%(1月+2.4%)、コアが前月比+0.3%(1月+0.3%)、前年比+2.4%(1月+2.5%)となっている。 前回総合を押し下げたガソリン価格は、米エネルギー情報局(EIA)による2月の全米全種平均が1ガロン当たり3.039ドルと、1月の2.936ドルから3.5%上昇しており、全体を押し上げる見込みだ(EIAは全米平均だが、CPIは都市部のみのデータのため、ある程度の誤差は生じる)。一方、コアは住居費の鈍化が継続すれば、市場予想通りの小幅鈍化が期待される。関税の影響や、2026年に入ってから乱高下を見せる貴金属をはじめとした国際商品価格の上昇も懸念材料ではあるが、直近の輸入物価指数の落ち着いた動きから、影響は限定的とみている。 イラン紛争への警戒感から米指標に対する反応が限定的になっているが、今後の金融政策に直結するため、物価動向には引き続き注意が必要だ。特にCPIが強めに出た場合は要注意である。紛争を受けた原油価格の上昇による物価高への警戒から、米国の早期利下げが難しいとの見方が広がる中、物価上昇が紛争前の段階ですでに見られるとなれば、当面の利下げ見送り見通しに拍車がかかり、ドル高が進む可能性がある。ドル円は160円に向けた動きが見込まれる。 |
|---|---|
| ミシガン大学消費者信頼感指数(3月/速報値) 3月13日23:00 ☆☆ | 前回2月分は速報値が57.3と1月の56.4から55.0に悪化するとの見通しに反して改善を見せたが、確報値で56.6まで下方修正された。1年期待インフレ率は1月の4.0%から2月速報値で3.5%となり、確報値で3.4%まで低下した。約1年ぶりの低水準の伸びとなっている。今回は55.0への鈍化が見込まれている。イラン紛争の状況はまだ反映されていないとみられるが、2月の米雇用統計の厳しい結果にみられる米景気の鈍化懸念が景況感の重石となりそう。予想以上に悪化を見せるようだと、イラン紛争でさらなる悪化が見込まれる状況だけに、いったんのドル売りにつながる可能性がある。もっとも下げたところでは買いが出そう。 |
| 米JOLTS求人件数(1月) 3月13日23:00 ☆☆☆ | ミシガン大学消費者信頼感指数と同時刻に1月の米雇用動態調査(JOLTS)求人件数が発表される。前回12月分654.2万件と11月の692.8万件から減少。2020年9月以来5年超ぶりの低水準となった。AIに起因して企業が人員を削減しているとの見方が広がっており、警戒感が強まっている。 今回の予想は675万件と前回から少し改善の見込みとなっている。ただ2月の米雇用統計が予想外に前月比マイナス(JOLTSは1月末のデータのため、2月12日を基準日とする2月の雇用統計と相関がある)となったことから、予想を下回る弱さとなる可能性が十分にある。その場合、米雇用市場の厳しい状況が意識され、ドル売りとなる可能性がある。同時に発表されるミシガン大学消費者信頼感指数の結果にもよるが、ともに弱く出た場合、ドル円は一時的に156円台程度まで下げる可能性がありそうだ。 |
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