2026年03月16日号

(2026年03月09日~2026年03月13日)

先週の為替相場

イラン紛争と原油価格の乱高下を受けた不安定な展開

 先週(3月9日〜13日)のドル円は、イラン紛争をにらみ、原油価格の極端な乱高下や主要中銀の金融政策見通しの変化なども絡んで、極めて神経質な展開を余儀なくされた。地政学リスクが原油を動かし、原油が金利を動かし、金利が為替を動かすというイベント・ドリブン型の相場パターンが続いた1週間であった。ドル円は157円から159円台後半まで大きな動きを見せる展開となった。

 週明け9日の市場はイランの最高指導者ハメネイ師の後継として、同氏の次男で対米強硬派のモジタバ師が選出されたとの報道に大きく揺れた。中東情勢の長期化懸念からNY原油は一時119.48ドルまで急騰し、有事のドル買いが加速。ドル円は158.90円まで上昇した。しかしその後、G7による石油備蓄放出協議やトランプ大統領の「イラン戦争はほぼ終結」との発言を受け、原油は83ドル台まで急落。これに伴いドル買いも大きく巻き戻されるという、極めてボラティリティの高い展開となった。

 10日も不安定な振幅が続いた。トランプ大統領の早期終結示唆により一時リスク警戒が後退したものの、紛争長期化への懸念は根強く、原油相場は91ドル台への反発と76ドル台への急落を繰り返した。特に、ライト・米エネルギー省(DOE)長官(用語説明1)による、米海軍によるタンカー護衛を巡るX (旧ツイッター)への投稿と削除といった情報の錯綜が、市場の不透明感をさらに強める結果となった。ドル円は157円台から158円台の間で、ニュースに一喜一憂する展開となった。

 11日には国際エネルギー機関(IEA)(用語説明2)による史上最大規模の備蓄放出提案が報じられたことで、一時リスク警戒が緩みドル売りとなった。その後、ECB高官の利上げ示唆により欧州債利回りが上昇、欧州株の売りも強まり、リスク警戒感が再燃。米消費者物価指数(CPI)が予想範囲内であったにもかかわらず、材料通過後はドル買いが優勢となった。ドル円は159円手前まで上昇。ユーロドルが同日東京市場午前の1.1640ドル台から1.1560ドル前後を付けるなど、ドルは全面高となった。

 12日には、ホルムズ海峡での貨物船攻撃報道や機雷設置の報道が入り、有事のドル買いが強まる形で、ドル円は159円台に乗せた。159円台では日本の通貨当局によるドル売り円買い介入への警戒感が強まることから、158円60銭台まで調整が入る場面も、ドル高の流れが根強く、すぐに反発して159円台半ばを付ける展開となった。ユーロドルが1.15ドル台前半を付けるなど、ドルの全面高基調が続いた。

 13日東京朝にドル高がもう一段強まり、ドル円は159.69円を付けた。その後海外市場にかけていったん調整が入ったが159.01円までと159円台を維持しての推移となり、ドル高基調が継続。NY市場午後にかけては、週末を挟んだドル売りポジション維持に慎重な姿勢を示した参加者によるポジション調整が入って159.75円と週の高値を更新し、2024年7月以来のドル高円安水準を付けた。ユーロドルは節目の1.1500ドルをしっかり割り込んで売りが強まり、1.1411ドルを付けた。同日発表の1月英月次GDPが予想を下回ったこともあり、ポンドも対ドルでしっかりと売りが出る展開。ドル主導の展開でユーロ円やポンド円は不安定な動きを見せた。

今週の見通し

 イラン紛争の状況をにらみながらの展開が続く。有事のドル買いに加え、原油高を受けた日本経済の鈍化懸念や、ガソリン高対応での政府支出拡大による財政赤字懸念が円売りを誘っている。ドル円は心理的節目である160円を超えると、通貨当局によるドル売り円買い介入への警戒が強まる。ただ、ドル全面高の展開でドル円だけドル安になるという展開は難しく、当局としても難しい判断になる。介入警戒感の下で、160円台トライには少し慎重姿勢も、下がるとドル買いが出る展開が見込まれる。

 今週は日本、米国、ユーロ圏、英、豪州、カナダなどの政策金利発表も予定されている。豪準備銀行(RBA/中央銀行)を除くと政策金利は据え置きの見込みであるが、原油高を受けた物価高への警戒感がポイントとなり、今後の金融政策姿勢がどのように示されるかが注目される。

 ドル円は心理的な節目でもある160円超えを強く意識。ドル全面高の勢い次第では2024年7月に付けた161.95円が視野に入ってくる。

 ユーロドルは節目であった1.1500ドルをしっかり割り込んだことで、売りが出やすい展開。1.1400ドルを割り込んでもう一段下げる可能性が十分にありそう。ターゲットは2023年、2024年に上値を抑えた1.1200-1.1250ドル。

 この後もドル主導の展開が見込まれ、ユーロ円などクロス円は当面不安定な動きが見込まれる。ユーロ円は181-185円レンジの中で上下となりそう。

用語の解説

米エネルギー省 米エネルギー省(DOE/Department of Energy)は、米国のエネルギー政策、核安全保障、および科学技術の研究を統括する閣僚級の連邦行政機関。米シェールガス採掘会社リバティー・エナジーの創業者兼最高経営責任者(CEO)を務めていたクリス・ライト氏が2025年2月3日より第17代長官に就任している。
国際エネルギー機関(IEA) 国際エネルギー機関(IEA/International Energy Agency)は第1次石油ショックを受けて1974年にOECDの枠内における機関として設立された。本部はパリ。加盟国は日本を含む31か国。産油国側の機関であるOPECに対し、消費国側からエネルギー問題解決のための国際協力を推進する機関。

今週の注目指標

豪準備銀行金融政策決定会合
3月17日12:30
☆☆☆
 豪準備銀行(RBA/中央銀行)金融政策会合について、先週から急速に利上げ期待が広がっている。豪中銀は2月に約2年3カ月ぶりの利上げに踏み切ったが、その決定が全会一致であったことや、会合後のブロック総裁の会見で「需要やインフレの動向次第では追加利上げが必要になる可能性がある」と示されたことなどから、利上げサイクル開始への期待が高まっている。3月4日に発表された豪10-12月期GDPは、国際商品価格の上昇などを受けた輸出の伸びに支えられ、前期比+0.8%、前期比年率で3.2%と高い伸びを記録し、これも利上げ期待につながった。
 もっとも、内訳を見ると個人消費や設備投資といった内需に伸び悩みが見られ、市場では「3月の利上げは難しく、追加利上げは5月」との見方が一般的であった。10日朝時点の金利先物市場における3月の利上げ期待は16%にとどまっていた。しかし10日にハウザーRBA副総裁が「原油高騰により豪州のインフレは2月に予測した数値を上回る見通し」「高すぎるインフレを中銀目標に戻すために必要な措置を講じることが極めて重要」と発言。このタカ派姿勢を受けて、市場では17日の見通しを「据え置き」から「利上げ」に変更する動きが広がっている。
 さらに5月の追加利上げ観測も浮上しており、声明などにおける今後の姿勢が最大の焦点となりそうだ。利上げが実施され、さらに追加利上げの可能性が示唆されると豪ドル高が見込まれる。豪ドル円は113円に向けた動きが見込まれる。
米連邦公開市場委員会(FOMC)
3月19日03:00
☆☆☆
 今回の米FOMCは、四半期に一度の参加メンバーによる経済見通し(SEP)が公表される回にあたる。政策金利は3.50-3.75%での維持が見込まれている。2月の雇用統計は弱さを見せたものの、イラン紛争を受けた原油高がインフレ懸念に直結していることから、当面の利下げは難しいと見られている。
 注目はドットプロットである。ホルムズ海峡閉鎖リスクによる原油急騰を受け、物価高を警戒して年内1回の利下げが本線となっており、据え置きの可能性も浮上している。CME FedWatchツールでは、据え置き見通しも34.3%とかなりの割合まで上昇している。
 前回12月のFOMCで示されたドットプロットの中央値は、年内1回の利下げ見通しであり、当時の金利先物市場の織り込みよりも利下げに慎重な姿勢であった。それでも、19名中8名は2回以上の利下げを見込むなど、積極的なメンバーも散見された。今回、この見通しがどこまで上方修正(利下げ回数の減少)されるかが焦点となる。前回の会合で利下げに投票したミラン理事は、その超ハト派的な姿勢から今回も大幅な利下げ見通しを示すと推測されるが、他のメンバーについては利下げに対して慎重な姿勢を強める可能性が高い。また、前回3名存在した「年内利上げ」を支持するメンバーが増加するシナリオも想定される。市場に当面の金利据え置き見通しが広がれば、さらなるドル買いを誘発することになる。ドル円は160円の大台にしっかり乗せ、2024年に付けた161.95円を意識する展開になると見込まれる。
日銀金融政策決定会合
3月19日
☆☆☆
 今週の日銀金融政策決定会合については、イラン紛争の長期化懸念もあり、据え置き見通しが大勢となっている。市場ではイラン紛争を受けた先行き不透明感から当面の利上げ見送りを見込む動きが一部でみられる。ただ、大勢の見方としては春闘の状況が判明する4月の会合での利上げとなっており、短期金利市場動向からの4月の利上げの織り込みは64%程度となっている。注目は声明や植田総裁の会見で、中東情勢を受けても利上げを進める姿勢が見られるかどうかである。利上げに向けた前向きな姿勢が意識されれば、一時的に円買いが強まる可能性がある。ドル円は157円台に向けた動きとなる可能性がある。

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