2026年03月23日号

(2026年03月16日~2026年03月20日)

先週の為替相場

イラン紛争をにらんだ展開続く

 先週(3月16日〜20日)のドル円は、緊迫化を極める中東情勢と主要国中央銀行による政策イベントが重なり、不安定な展開となった。米軍によるカーグ島(用語説明1)爆撃やイラン高官の死亡といた深刻な地政学リスクが相次ぎ、原油価格は1バレル=100ドルを一時超えるなど荒い値動きとなった。為替市場でも、有事のドル買いとエネルギー価格上昇による各国のインフレ懸念などを受けて不安定な動きとなり、ドル円は節目の160円を前に激しい乱高下となった。

 週明け16日の東京市場は、13日の米軍によるイラン・カーグ島爆撃を受けた「有事のドル買い」が広がった。ドル円は朝方に2024年7月以来の高値となる159.75円まで上昇。原油価格が100ドルを突破する中、ドル全面高の様相を呈した。しかし、トランプ大統領がホルムズ海峡問題について言及し、リスク警戒感が一服すると原油の調整売りと共にドル円は159.26円まで押し戻された。ロンドン、NY市場にかけても、中東情勢の行方を注視しつつ、翌日以降に控える主要国中銀の政策発表を前にポジション調整が優先された。160円という歴史的な節目を前に、日本の為替介入への警戒感や財務省による円安牽制発言も、ドルの上値を抑える要因となった。

 17日も、イラン紛争の動向をにらみながらの展開となった。トランプ大統領による艦船派遣依頼の報道などで一時的な改善期待は出たものの、実態としての緊張緩和には至らず、原油価格の乱高下に連動してドル円も158円台から159円台半ばの間を往って来いの展開となった。市場は翌日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を見極めたいとの思惑から、明確な方向感を欠く時間帯が続いた。ユーロやポンドも対ドルで買い戻される場面はあったが、エネルギー価格高騰が欧州経済に与える悪影響への懸念が根強く、反発力は限定的であった。

 18日にイランの実質的ナンバー2とされるラリジャニ国家安全保障最高評議会事務総長の死亡が報じられ、地政学リスクが再燃。さらにNY市場では、2月の米生産者物価指数(PPI)が予想を上回る強い数字となったことで、米国のインフレ高止まりが意識された。この日の最大の焦点となったFOMCでは、大方の予想通り金利据え置きが決定されたが、その後のパウエルFRB議長の会見が市場にサプライズを与えた。パウエル議長は、エネルギー価格の上昇によるインフレ押し上げリスクに明確に言及し、「インフレ鈍化の進展が見られない限り利下げは行わない」と慎重な姿勢を強調した。これにより米利下げ観測が後退し、ドル円は再び160円を窺う159円台後半まで急騰した。一方で、欧州通貨は対ドルで大きく売られ、ユーロドルは1.14ドル台、ポンドドルは1.32ドル台へと水準を切り下げた。

 19日は日、欧、英の中銀会合結果発表があった。日本銀行は政策金利を0.75%に据え置くことを決定したが、その後の植田和男総裁の記者会見が市場を揺さぶった。植田総裁は「基調的なインフレ率に変化がなければ、利下げではなく利上げを継続する」というタカ派姿勢を表明。これにより市場では4月の追加利上げ観測が高まった。さらに中東でのガス田攻撃の応酬により欧州天然ガス相場(オランダTTF)(用語説明2)が35%も爆騰。エネルギー危機への懸念から欧州株が全面安となり、リスク回避の円買いが広がり、ドル円は植田総裁会見前の159.80円付近から一時157.51円まで2円以上の急落を見せた。NY市場では欧州中央銀行(ECB)やイングランド銀行(BOE)も会合でインフレへの警戒を強め、年内の利上げの可能性を示唆したことで、欧州通貨高ドル安も進み、ドル全面高に対する調整が目立った。

 20日は東京市場が春分の日の祝日で休場。アジア市場からロンドン市場にかけて再びドル買いが強まった。トランプ政権がイランのカーグ島占領を検討しているとの一部報道が有事のドル買いを誘った。NY市場に入ってもドル高が継続。ドル円は159円台前半で週の取引を終えた。ユーロやポンドは早期利上げ期待からの買いが入り、ドル円に比べるとドル買いの影響が限定的となった。その分ユーロ円などはしっかりの展開で週の取引を終えた。

今週の見通し

 イラン紛争の長期化が懸念されている。トランプ大統領は週末、イランに対して48時間以内のホルムズ海峡完全開放を要求した。開放が実施されない場合、イランの発電施設を壊滅させると警告。対するイラン側は強く反発し、米国および地域内の同盟国に属するすべてのエネルギー、情報技術、海水淡水化インフラへの報復攻撃の意向を示している。

 イラン紛争の深刻化が警戒される中で、有事のドル買いが意識されている。ただ、ドル円に関しては直近の上値を抑える160円前後の売りが残っているとみられ、上値追いには慎重な姿勢も目立つ。日本の通貨当局によるドル売り円買い介入への警戒感も、上値を抑制する要因となっている。

 欧州通貨の対ドルでの下げが限定的なことも、ドル全面高の流れを幾分和らげている。先週のECB理事会と英中銀金融政策会合は、ともにインフレへの強い警戒感を示した。これを受けて早ければ両中銀とも4月に利上げに踏み切るとの見方が強まっており、年内3回の利上げも見込まれる状況だ。こうした動きがユーロドルやポンドドルの下値を支えている。

 ユーロドルが再び1.1400ドルを試すといったドル高の再燃が見られれば、ドル円も節目の160円をあっさり超えて上昇する可能性がある。この場合は、大台突破後も上昇基調が続くと予想される。

 一方で、ユーロドルなどでのドル高が限定的で、円売り中心の動きで160円トライとなった場合は、日本の通貨当局による介入が入りやすくなる。そのため、大台を超えてからの追随買いには慎重な見方が広がりそうだ。

 ユーロドルは、先週のECB理事会でのインフレ警戒姿勢を受け、早ければ4月にも利上げが開始されると見込まれている。紛争前までは年内据え置き見通しが支配的であったため、金融政策見通しの大きな変化がユーロを支える格好だ。有事のドル買いの勢いは強いものの、ユーロの下押しは限定的なものになる可能性がある。

 ユーロ円などのクロス円は、不安定な動きが続きそうだ。基本的にはドル主導の展開が見込まれており、明確な一方向の動きにはなりにくいだろう。

 

用語の解説

カーグ島ペルシャ湾北東部に位置するイラン領の小島。イラン本土から約25km沖合にあり、面積は約20平方キロメートルのサンゴ礁に囲まれた平坦な島。
イラン産原油の約90%がこの島を経由する、世界最大級の原油積み出し拠点となっている。本土の主要油田から海底パイプラインで原油が送られており、巨大な貯蔵施設と、超大型タンカー(VLCC)が複数同時に接岸できる深水港を備えている。
オランダTTFオランダTTF(Title Transfer Facility)は、欧州における天然ガス市場のベンチマークとなる市場。オランダのガス輸送管理会社であるGasunie社が運営する仮想取引所となる。欧州の家庭向けガス料金や電気料金の多くが、このTTFの価格に連動して決まるなど広範な影響力がある。

今週の注目指標

日本全国消費者物価指数(2月) 3月24日08:30
☆☆
 1月の全国消費者物価指数(生鮮除くコア)の前年比は+2.0%と、12月の+2.4%から鈍化した。生鮮を含む総合指数は前年比+1.5%と、こちらも12月の2.1%から大きく鈍化し、3年10カ月ぶりに2%を下回った。2月は電気・都市ガスへの支援策再開を受けて、コアが+1.7%まで鈍化すると見込まれている。コアCPIの2%割れが実現すれば3年11カ月ぶりとなる。
 イラン紛争に伴う原油高を受けて3月以降は物価高が見込まれており、先週の日銀金融政策決定会合で植田総裁は利上げ姿勢の維持を示した。そのため、今回の全国CPIの鈍化を受けても相場への影響は限定的と予想される。ただし、予想を上回った場合は注意が必要だ。今後の物価高が確実視される中で2月も強めの数字が出た場合、警戒感が強まり円買いが加速する可能性がある。その場合、ドル円は158円台への下落も見込まれる。
ユーロ圏PMI(3月)
3月24日18:00
☆☆☆
 24日にユーロ圏および加盟主要国、英国、米国の購買担当者景気指数(PMI)が発表される。イラン紛争を受けて景況感がどこまで悪化しているかが最大の注目点となる。ユーロ圏およびドイツ・フランスは製造業、サービス業ともに前回からの低下が見込まれており、特にドイツとユーロ圏の製造業PMIは好悪判断の境目となる50を割り込む見通しとなっている。予想を超えて低下が目立つようだと、物価高を受けて強まりつつある4月のECB理事会での利上げ期待が後退し、ユーロ売りを誘う可能性がある。その場合、ユーロドルは1.1400ドルを試す展開も想定される。
英消費者物価指数(2月)
3月25日16:00
☆☆☆
 イラン紛争前まで、市場は英中銀による年内あと2回の利下げを織り込んでいた。しかし、紛争を受けた物価高への警戒感が先週の英中銀金融政策会合でも強調されたことで、年内の利下げ期待が払拭されただけにとどまらず、早ければ4月の利上げを含む年内3回の利上げが見込まれる状況となっている。
 そうした中、25日に英物価統計(CPI、RPI、PPI)が発表される。インフレターゲットであるCPI前年比は1月と同じ+3.0%が見込まれている。原油高による物価上昇圧力を背景に3月以降のインフレ加速が確実視される中、予想を上回り許容上限(+3.0%:同水準を超えると中銀総裁は財務大臣宛てに公開書簡を送付する義務を負う)を超える伸びを示せば、4月の利上げ見通しが強まりポンド高となるだろう。ポンド円は214円台に向けた動きを強める可能性がある。

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